東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
「ほら、さっさと行くわよ」
「早くしないと置いてくぞ〜」
「っと......待ってくれよ......!」
朝食を食べ終えてすぐのこと、霊夢と魔理沙は出発する気で満帆だ。
俺も急いで支度を済ませ、慌てて玄関の方へと向かう。
本当は少し休憩したいところだが、今は非常事態だ。
こうしている間にも、紅い霧が幻想郷を侵蝕している。
そして何よりついて行くことを決めたのは自分自身だ。
俺に居場所をくれた紅魔館の皆を助けたい......その一心でここにいる。
「霊夢さん、魔理沙さんはともかく......本当に行かれるのですね?」
「............」コクッ
阿求の問いかけに黙って首を縦に振る。
応援というよりは折れたという方が正しいが、こうして彼女は見送りに来てくれている。
心の中で感謝していると、小鈴と美宵の二人も見送りに来た。
「皆さん......絶対......絶対に生きて帰ってきてくださいね......」
「私たちも全力で応援しますからっ!」
二人とも目が潤んでいる。
よほど心配しているのだろう、ならばする事は一つ。
必ず生きて帰ることだ。
「本当に置いてくわよ!!」
「ああ、今行く!......それじゃあ皆......ありがとう......行ってくるよ」ニコッ
最後に笑顔を見せ、俺は屋敷に背を向けた。
これから先、何が起こるかわからない。
それでも......それでも行くしかない。
諦めはしない、もう目覚めたから。
─数分後 上空
「ちょっと魔理沙、あんた、遅いわよ」
「仕方ないだろ?定員オーバーなんだから」
「落ちたら拾ってくれるよな......?」
ついて行くとは言ったものの、俺は空を飛べない。
魔理沙の箒に乗っているが、定員オーバーということもあり思うようにスピードが出せないようだ。
何というか申し訳ない気分だ......
「もし大変だったら、走って行こうか......?」
「いえ、空から向かう方がいいと思うわ。見た感じ霧は下に溜まっているし、いくらあんたでも悪影響を受けると思うの」
「私も同感だ。実際に霊夢と紅い霧を吸って妖怪化した村人を見たんだ。ちょっと重いけど頑張って連れて行くからな」
「そっか......ありがとう」
と、
ブオンッ
「っ仁太郎避けろ!!」
「え......うわっ!?」パッ
突如、下から紅い光球が高速で迫ってきた。
驚いた俺は思わず手を離し、箒から落下した。
そして落ちていく最中に見えたのは、こちらを険しい表情で見るある人物の姿だった......
─人間の里 入口
「仁太郎っ!大丈夫か!?」
「ああ、何とか......」
地面にぶつかる直前、魔理沙が助けてくれたお陰で怪我はない。
しかし、目の前にいる人物に俺はショックを受けた。
「美......鈴......?」
そこには門前で腕を組み、仁王立ちをする美鈴の姿があった......
その目は俺を真っ直ぐに捉え、威圧感がひしひしと伝わってきた。
戸惑っていると、霊夢も地上へと降りてきた。
そして彼女に声を上げる。
「これはどういうことかしら?敵対するのなら容赦しないわよ」
「手荒な真似をしてすみません。私が用があるのは天澄さんです」
そこにいる美鈴はいつもの温和な雰囲気ではなく、真剣そのものだった。
睨む二人をよそに、彼女は続ける。
「霊夢さん、魔理沙さんは紅魔館の方へ向かってください。私はどうしても天澄さんに伝えたいことがあるんです」
「行くわよ、魔理沙」バッ
「おい霊夢、いいのか!?......仁太郎、悪いが先に行くぜ」バッ
彼女の意向を読み取った霊夢は先に紅魔館へ向かうことにした。
その様子に魔理沙も渋々承諾し、同じく紅魔館へと向かった。
後に残されたのは俺たち二人だけだった。
「天澄さん、単刀直入に言わせてもらいます。ここを通すわけにはいきません」
彼女は何故か俺を通す気がないらしい。
だがこんなところで立ち止まっていては、異変の解決に向かうことができない。
納得できるはずもなく、俺は彼女に抗議する。
「美鈴、通してくれないか......?早く行かないと被害は広まる一方だ......よくわからないけど、俺にも戦える能力があることがわかった......それに俺は紅魔館の皆を助けたいんだ......だから.....」
「助けたいことぐらいわかっています!!私だってできるなら紅魔館に向かって皆さんを助けたいですよ......でも、私は今は人里の門番をしています。いくら結界があるからといって此処を離れれば皆さんの命が危ない......中にいる人が危険な外に行くことを防ぐのも門番の仕事なんです!!」
「こんな時に限って仕事仕事ってなんなんだよ!!いつもはそんなんじゃないのに......」
俺も彼女も思わず声を荒げてしまう。
それ程までに状況は切迫しているのだ。
お互い譲れない状態が続いていると、彼女は口を開いた。
その言葉は焦燥感に駆られる俺の心を揺さぶるものだった。
「私は......あなたに感謝しているんです」
「............」
「仕事をしているうちに、貴方と喋るのが楽しくなって......少しだけ長く起きていられるようにもなりました。お陰で咲夜さんに怒られることも減りましたし......何より、
黙って彼女の言葉を聞く。
声色は微かに震えていた。
それだけ彼女の感情は高まっていることが窺えた。
「私は......私は貴方に死んで欲しくない......他の人たちは行くことを許したかもしれませんが、私は許しません!!せっかく出来た大切な友達を失いたくないんですっ!!!」
「............!」
彼女の本気に思わずたじろぐ。
でも......それでも俺は......
「俺は行くよ......美鈴。大切な人を守るためなら尚更、戦いに行く。今までもそうだったから......」
少ない語彙で彼女に告げる。
彼女は一瞬驚いた顔を浮かべたが、すぐに気を取り直し深呼吸をした。
そして改めて俺の目を真っ直ぐに見据え、告げる。
「......わかりました。それでも貴方は行こうとするんですね......ですが一つだけ頼みごと......いや、勝手があります」スッ......
「......これは?」
彼女が構えをとると、黄色いオーラのようなものが彼女から湧き上がり始めた。
それが何を意味するかは、言わずとも理解できた。
対する俺も見よう見まねで構えをとる。
だが、最初に戦った時のような感覚がない。
「わかっているとは思いますが、一応言わせてください............ここを通りたければ、私を倒していきなさい!!......一回言ってみたかったんですよね、これ」
「あ、ああ......」(結局言うのか......)
決め
「さて......言わせてもらいますが、私程度に勝てないようじゃ貴方は確実に死にます。恐らく、咲夜さんやお嬢様に触れることすらできません」
「ああ......」
「もちろん、この戦いも手加減はしません。全力で貴方をねじ伏せます。......覚悟はいいですか?」
その言葉を皮切りに、俺たちはぶつかり合うのだった。