東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny.   作:あめじすと

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EPISODE34:妖魔昼行

 

「............はっ!?」

 

気付いた時には、門の外に出ていた。

後ろを振り向くが、門は厳重に閉まっており、お札が貼られていた。

とてもじゃないが、今から人里の中に戻ることなど出来ないだろう。

 

「そういえば、どうやって門の外に出たんだっけ......」

 

ふと、直前までのこと思い出そうとする。

確か自分は今朝、食事を済ませた後、霊夢と魔理沙と一緒に紅魔館へ向かっていた。

空から向かったはずだけど......途中で手を滑らせたのか箒から落ちて......?

 

いまいちパッとしない。

どこも間違っていないはずだが、何かが抜けているような気がする。

 

「えっと......人......」

 

再び思考を凝らすと、ある一人のシルエットが浮かんできた。

そうだ、箒から落ちた後に美鈴と対峙したんだ。

ある程度の実力が無いと、咲夜やレミリアに触れることすら出来ずにやられてしまうからと、力量を量るために......

いや、俺を止めようとしてくれたんだ......傷つかないように、死なないようにと......

それでも俺は彼女を超えた(・・・・・・)

だから行かなくちゃならない......皆を守る為に。

......でも、どうやって倒したんだったかな?

 

「深呼吸は......止めておこうか............よし!」

 

紅い霧の立ちこめる森に向かって走り出す。

あまり長居して心地の良いものではないし、体に害があるだろう。

ここから紅魔館までは走れば一時間もかからない。

もちろん、道に迷ったり妖怪に遭遇しなければならないの話だが......

 

 

 

─数十分後

 

「あんたは食べれる人類?」

 

「..................」

 

目の前には両手を広げた少女がいた。

ふわふわと宙に浮かんでいて、その周りには黒いモヤのようなものが漂っている。

見た目の可愛らしさに思わず警戒を......解くはずもなかった。

なぜならなぜならそれは......この幻想郷で最初に俺を襲った妖怪だったからだ。

......ご丁寧に口元まで血に染めてやがる。

 

「食べれない......いや、食べちゃダメな人類。わかったか?......ルーミアだったか」

 

「そーなのかー、それにしてもよく覚えてたわね。......そういえばあんたの名前、聞いてなかったけどなんてゆーの?」

 

「知ってどうする?」

 

「食べる」

 

やはりそう来るか......

妖怪だもんな......こいつに限らず喰われかけたことだってある。

あの時はレミリアが助けてくれたからいいものの、今ここにいるのは自分だけだ。

走って逃げたところで、前のように追いつかれるのは目に見えてる。

 

「で、名前は?」

 

「俺は天澄仁太郎......そんなことより先を急いでるんだ。なるべく手荒な真似はしたくないから退いてくれ」

 

「えーでもお腹空いてるし......まだあんたを食べきれてないし......」

 

やはり通す気はないようだ。

それにしてもこいつにとって俺は食べかけなのか......

ともかく交渉が決裂した以上、戦うしかない。

 

「..................」

 

目を瞑り、精神を集中させる。

すると、体の内側から沸々と熱が込み上げてくる感覚に包まれる。

やがてそれは頭、胴、手足と全身に広がり満たされていく。

......不思議なことに、その場にいないはずの美鈴がすぐそばにいるような気がした。

 

「そっちから来ないなら、こっちから行くよ!!」

 

そう言うや否や、勢いよくこちらへ飛んで来る彼女。

目は血走り、牙を剥き出しにし、鋭い爪のある両手をワキワキさせている。

それと対峙するのは力を手にした自分だ。

 

「すぅ......はぁ......」

 

頭の中に美鈴のとっていたような構えのイメージが流れて来る。

自分の体はそれと連動し、まるで美鈴と一心同体になったかのように動く。

 

これがアイツの言っていた能力......『心を通わせた相手と一心同体になる程度の能力』なのか?

アイツはその場に相手がいないと能力は発動しないと言っていたけど、反応からして一人でも発動できる何かがあるんだろうな。

 

「あんたは美味しいから、残さず喰べたげる!!」

 

「そりゃ良い心掛けだ。食品ロスは削減しないとだもんな............が、食べれたらの話だっ!!」

 

その言葉と共に、彼女から繰り出される鋭い爪による斬撃を躱す。

まだ反応に体が追いついていないのか、先程まで自分の頭があった場所には切られた髪が舞っていた。

しかし、こちらもやられてばかりではない。

伸ばされた彼女の片腕を掴み、そのまま背負い投げをする。

 

「おぅっ!?」

 

小柄で軽い彼女は簡単に投げ飛ばされ宙を舞う。

当然だが手応えはない。

元々宙に浮いていることに加え、自重の軽さが力を受け流してしまうのだ。

彼女は空中で半回転し逆さになると、今度は光球を放ってくる。

 

「これならどう!?」

 

「この程度......どうって事ない!!」

 

放つ光球は小さく単調で、躱すことに何の支障もない。

軽い身のこなしで、彼女の元に向かう。

......見た目は可愛いけど、ここで戦闘不能にしなければ厄介なことに変わりない。

 

「このっ......」

 

「悪いな......喰らえっ!!」

 

「ゔっ......!!?」

 

一気に彼女の真下に詰め寄り、二起脚を腹部に打ち込む。

衝撃を受けた彼女は、まるで羽毛のようにゆっくりと地面に落ちていく。

罪悪感はあるが仕方ない......命が掛かっている以上、こうでもしないと対処できる気がしない。

それに初めて会った時も石で気絶させたけど、今じゃこの通りピンピンしてるしな......

 

「本当に悪かったな......でも俺は行かなくちゃならない。いつかまた会ったら、今度は食べ物でも用意しとくよ」

 

うつ伏せに倒れる彼女に背を向け、立ち去ろうとしたその時だった。

 

「この黒いモヤ......広がって......っ!」

 

「やってくれたわね......」

 

視界を闇に覆われ、身動きが取れなくなってしまう。

それもそのはず、倒したはずの彼女が四肢で羽交締めしてきたのだ。

無駄に喋ることで隙を与えないよう、彼女は牙を突き立てる。

 

「あ〜ん......」

 

「ぎっ............!?」

 

首筋に激痛が走る。

ただ牙を刺すだけでなく、顎を駆使して噛み千切ろうとしているようだ。

こんなところでやられる訳にはいかないのに、対処できない自分がいる......

ああ駄目だ......このままじゃ本当に......

 

 

 

「冷符!瞬間冷凍ビーム!!」

 

『..................!?』

 

突如、背後から聞こえてきた声と共に白い光線が差し込んでくる。

みるみるうちに周囲を冷気が包み込み、彼女の体ごと自分を凍らせ......

 

「ふふん、久しぶりにあんたを見たら苦戦してるようだったから助太刀に......ってあれ?」

 

「..................」

 

「あー悪い悪い............ここをこうしてと......」

 

 

 

─数分後

 

「死ぬかと思っただろこのバカ!!」

 

「ちょっ......誰がバカよ!?バカはあんたでしょこのバカ!!」

 

チルノのおかげでルーミアに噛み殺されずに済んだ......というより代わりに凍死しかけた訳だが、何とか解凍されて今に至る。

ちなみにルーミアは後ろで氷漬けのままだ。

そして現在、口論の真っ只中にある。

 

「バカにバカって言って何が悪い!?」

 

「バカじゃないもん!あ、わかった。私みたいな せんとうせんす?が無いから嫉妬してるんでしょ?」

 

「何だとぉ......」

 

思わず挑発に乗りそうになるが、ここはグッと堪える。

今は争ってる場合じゃない。

少しでも早く紅魔館に行き、霊夢と魔理沙に合流しなければならない。

......でも念の為こいつの話も聞いておこう、もしかしたら異変に関する情報を得られるかもしれない。

 

「ところでお前、この異変?について何か知ってたりしないか?」

 

「ふんっ......どうせ私をバカにするつもりなんでしょ?」

 

腕を組み、そっぽを向く彼女。

だが、口ぶりから察するに何かを知っているようだ。

こいつのせいで死にかけたのも事実だが、助けられたのも事実。

流石に言いすぎたな......口に乗せて聞こうとも思ったけど、やっぱり素直に謝ろう。

 

「さっきはごめん......熱くなりすぎた。助けてくれてありがとうな......それじゃあ俺は行くから......」

 

「え......?」

 

そう告げると、キョトンとして俺の顔を見る彼女。

何かおかしなことでも言ったのか問うと、彼女はこう返答した。

 

「いや、そんな普通に謝られると思わなかったから。てっきり私を煽てて話させようとしてるのかと......」

 

「そ、そうか......」

 

やっぱりチルノのやつ、本当は賢いんじゃないか......?

って感心してる場合じゃない、先を急ごう。

 

「ちょっと待った。せっかくだから私の話を聞いていけ」

 

............いい加減、先に行かしてくれ。

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