東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
─???
「......ここは......また夢か?」
暗闇が広がる空間。
一度夢で見た光景なので特に取り乱しはしない。
また夢を見ているのだろうと思い、目が覚めるのを待つことにした。
「ようこそ、私の境界へ......」
「っ!?」
突然後ろから声をかけられ、振り向くと同時に後ずさる。
目前には妖艶な笑みを浮かべた女性が一人いた。
怪しく映るその目は、まるで全てを見透かしているようだった。
そのただならぬ雰囲気に警戒心を出す。
しかしそうしている間にも女性は笑みを浮かべ、こちらに話しかけてきた。
「そんなに警戒することないわ。私は
それでも夢だろうと頬をつねるが、痛く感じる。
他のことを試しても、目が覚める気配はない。
警戒心は緩めないが、仕方なく自己紹介をすることにした。
それと幻想郷?とやらの話も聞いてみたい。
彼女の思惑はわからないが、聞いておいて損はないだろう。
「俺は天澄仁太郎。あんたが誰かは知らないが、詳しく聞かせてもらいたい。それと残された家族は......」
「そう......それじゃあ話しましょうか。幻想郷、そこは忘れられたものたちの行き場......人妖が住むの。そして神も......貴方の家族なら心配ないわ。一時的に貴方の記憶は無くなっているから」
説明を受けたがいまいち飲み込めず、呆然としている間にも八雲紫?とやらは続けてきた。
自分を幻想郷に招待するというが、何の目的があるかは教えてもらえず、時期がくれば話すとか。
その後も話は続けられ、最終的に貴方へのプレゼントと締めくくってしまった。
「大丈夫、事が済めば元いた場所・時に戻してあげるから。それまでは幻想郷にいてもらいたいの。いいかしら?」
「いいかしら?」とは聞いているが、おそらく事が済むまでいさせる気だろう。
用件も伝えられず、いつまで幻想郷にいさせるのか不明だが、ここは大人しく飲むことにした。
いや、断ってもいさせるつもりなのだろう。彼女からはそんな気がしてくる。
「あぁ、わかった。......でもここで」
「せいぜい楽しんで頂戴、また会いましょう」パチンッ
彼女が指を鳴らすと同時に、視界は再び闇に包まれていった。
「んん......?」
目が覚めると、今度は両脇に木々が生えている道にいた。
空は明るく、夜まではまだありそうだ。
彼女こと八雲紫いわく遅くなったら妖怪も出るから気をつけなさいと言っていたが、どうなのだろうか?
この世界では、妖怪は人を襲い、人は妖怪を退治することになっていると聞いて不安しかない。
先程も思ったが、何かを成すまで帰らせないとは、まったく迷惑な話だ。
「どうしろってんだ......あいつによると家族や親戚も一時的に存在を忘れてるって......明らかに怪しいよな」
そんなことをブツブツ言いながら、足を進めた。
行く先などわかるはずもなく、ただこうすることしかできない。
さて、どんな場所があるのだろうか。
「はぁ......はぁ......疲れたな......それにしても何処に行けばいいんだ?何も伝えられてないし............」
幻想郷とやらに来て、歩き続けて数十分が経った。
未だに何処に行けばいいのかわからず、俺は途方に暮れていた。
休憩する間も無く歩き続けていたので、もうくたくただ。
しかしそこで、ある音に気がついた。
それは右の方から聞こえてきた。
ザザァー
水の音だ。
早くカラカラになっている喉を潤さねばならない。
木々を抜けるとそこには、とても大きな湖が広がっていた。
水も透き通っていて、キラキラと輝いていた。
「綺麗だなぁ......そうだ、早く飲まないと......」
湖の大きさに気を取られながらも、水を飲もうとしたが、ここで思わぬ来訪者が現れた。
それは見たこともない、変わった来訪者だった。
「ちょっと待ったーー!!」
「なっ何だ!?」
突然の来訪者に驚き、手ですくった水を溢してしまった。
その来訪者は見るからに"氷"のイメージがある妖精?だった。
おまけに周りの気温まで下がったような......
「ここは私の縄張りだ!進みたいなら私を倒していけ!」
ゲームによくありそうなセリフを言うその妖精は、水を飲ませる気は無さそうだ。
というより私を倒せって?何処の誰とも、いや、子供に手を出せるか。
相手にしたら面倒くさいと思い、再び水をすくおうとすると彼女は突然......
「それっ!!」ビュン
掛け声と共に、光の弾を放ってきた。
水色の弾でちょうどサッカーボールくらいの大きさだ。
「うおっ!?なんなんだお前は!」
間一髪のところで避けたが、当たったらどうなるのだろう。
そんなことを思っていると、向こうから話しかけてきた。
「ふんっ!私はチルノ、最強の妖精だ。名乗ったんだからそっちも名乗れ」
色々と生意気なやつだが、また攻撃されると厄介なので名乗っておこう。
てか最強の妖精ってなんだ?
他にもこんなやつがいたら大変だなぁ......
「俺は仁太郎、天澄仁太郎だ。ずっと歩き続けてんだ......水をわけてくれるといいんだが......」
緊張が走る。
彼女が、何をするかわからない。
両者は睨み合い間合いをとった。
しかし、その緊張は一瞬でとけるのだった。
「え?水が飲みたいのか?」
─数分後
「なんだ、てっきり私の縄張りを荒らしに来たのかと思った。悪かったわね」
「はぁ......まったく......こっちは生身なんだしやめてくれよ?」
やりとりの後、チルノと和解?して会話をすることにした。
彼女によると、縄張りを荒らしに来たのかと思ったらしいが、水を飲もうとしていたのに気付かなかったのだろうか。
その後も会話をしてわかったことがある。
それは頭が弱いということ。
......気づけばもう夕方だ。
カラスも鳴き、夕焼けが広がっている。
チルノに別れを告げ、再び歩き出すことにする。
......行くあては
辺りもすっかり暗くなり、少し肌寒くなってきた。
そんな中、また変わった人物と出会った。
「あんたは食べれる人類?」
「......食べれない人類。てか人類て......スケール大きいな」
目の前には両手を広げた少女?が一人いた。
ふわふわと浮かんでおり、周りには黒いモヤのようなものがある。
食べれるかどうか聞くとは......八雲が言ってた妖怪がこいつか?可愛らしさのあるソレはとても妖怪には見えない。
思わず警戒を解いてしまう。
しかしそれが失策だと気づくのは、後になってからだった。
「そーなのかー、私はルーミア。小腹が空いてるんだけど、どうしたらいいかな?」
「あいにく食べ物は持っていないんだ。悪いが他をあたってくれ」
そう言い避けていこうとするが、右に行けば右に、左に行けば左に......と、彼女は進路を塞いでくる。
本当に俺を食べようとしているのか?嫌な汗が出てくる。
相手は可愛らしい見た目に反して、いかにも俺を食べようとしている目をしている。
「............っ!」ダッ
解いていた警戒を戻し、隙を見て一気に走り出す。
走りには自信がある。全速で逃げれば大丈夫だろうと安堵したが、ここであることが起きてしまった。
「はぁ......はぁ......ここまで走れば......」
「いただきま〜す」バクッ
逃げ切ったはずだが、その妖怪はすぐにやってきて二の腕に噛み付いて来た。鋭い牙が突き刺さり激痛が走る。
「い"っっっ......!?くっ、くそっ......!!」ガンッ
「ぎゃっ!?」バタッ
偶然近くにあった少し大きな石を拾い、相手の頭に打ち付けると、その妖怪は気絶した。
噛まれたところから血が流れ、今もジンジンと痺れている。
まるで肉食動物に噛まれたような感覚だ。
「う、う〜ん......」クルクル
「早く逃げないと......」
今は気絶しているが、いつ目を覚ますかわからない。
噛まれた腕を押さえながら、必死に走って逃げた............
「ここまで......来れば......」ゲホッ ゲホッ
後ろを確認してみたが、何かが来る気配はもう無い。
しかし改めて思うのは、ここは本当に恐ろしいということだ。
随分と走ったためか、血がたくさん流れてしまったようだ。
体が痙攣し、意識が朦朧とする。
「ははっ......どうやらここまでみたいだな......結局は
閉じていく彼の視界に映ったのは......真っ赤に染まった館だった。
人物紹介
八雲紫(やくも ゆかり)
幻想郷の賢者を名乗る存在。
突然、目的も告げずに仁太郎を幻想郷に招いた。
瞳の奥に潜む、その真意とは?
チルノ
自称、最強の妖精。
仁太郎が幻想郷で初めて出会った人物。
水を飲みに来た彼を、勘違いで攻撃したが後に和解。
ルーミア
ふわふわと浮かんでいる妖怪の少女。
いつもお腹を空かせていて、幻想郷を放浪している。
偶然出会った仁太郎に襲いかかった。