東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny.   作:あめじすと

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EPISODE7:館の主人

 

昼食も終わり、迎えに来た昨夜に連れられ、今は玉座の間に来ている。

昼食と言っても、時間的に少し遅かったため、今はもう夕方だ。

玉座の間は日が差し込まないよう暗くなっている。

そんな中、ぼんやりと灯る蝋燭の炎を見ながら、当主であるレミリアは彼に感想を聞く。

 

「今日の案内はどうだった?怖かったかしら、それとも未知に対して好奇心を抱いた?」

 

「はい、仕事の内容や部屋の内装などを見せてもらいましたけど、どれも興味が湧きました」

 

感想を述べると彼女は微笑み翼を少し揺らした。

なんだろう、ちょっと可愛い。

 

「そう......咲夜、服を持ってきなさい」

 

「はい、お嬢様」

 

そう言った後、咲夜はすぐに服を持ってきた。

執事の着る燕尾服であり、咲夜いわく男が誰もいないのでずっと置いてあったようだ。

だが何故いきなり執事にしようとしているのか。

そもそも仕事もまだしてないのに上級使用人とは一体どういうことだろう。

 

「............」

 

「どうしていきなり執事にするのかって顔をしているわね。......今はそんなことどうでもいいわ。わかったのなら、明日から働いて頂戴」

 

そう言うと、今度は咲夜が仕事の手順を教える。

まず起きて最初にすることは、当主に朝の食事を用意すること。

食事は妖精メイドが作るので、食堂でそれらを台車に乗せ運ぶのだとか。

食事が終われば、次は主の管理だ。

主に身の周りの世話や、頼みごとなど常に側にいなくてはならないらしい。

その後は玉座の掃除など、たくさんある。

1週間は慣れさせるために咲夜を向かわせてくれるからいいが。

そして説明が終わり、咲夜も部屋を出て彼も部屋へ戻って行く姿を見て、彼女は微笑むのだった。

 

「また一人ここの住民が増えたわね。さて、どう成長するのかしら?」

 

 

 

─自室

 

「ふぅ、明日から働くのか。......それにしても、今日は色んなことがあったな」

 

夕食とシャワーを済ませ、早速ベッドに横たわる。

そこで今日一日を振り返ってみる。

まず庭園に向かい、そこで美鈴に案内してもらった。

どれも赤で統一されているが、それがとても美しかった。

次に向かったのは大図書館だ。

小悪魔に色々案内してもらったけど......様子が変だと思ったらいきなり襲われるとは......あと少しで貞操の危機だった......

あの魔法使いのおかげで助かったが、結局あいつは何者だったんだ?

......で、次は食堂で食事か。

最後に玉座、それからまた食堂と、考えるだけでもたくさん出てくる。

たった一日のことなのに、もう何日も過ごした気分だ。

 

「......さてと、もう寝るか」

 

早速目を閉じ、眠ることにした。

しかし、ここでまたあの夢を見る。

 

 

 

「......またここか」

 

再び現れた真っ暗な空間。

そして前の時と同じように、ぼんやりと映る人影。

前よりは見える気がするが、それでも誰かはわからない。

前と違うのは何も語らないこと。

それにしても、前に伝えようとしていたことはなんなのか。

疑問を持っているのですかさず聞いてみてる。すると、

前方にいる人影は振り向き、何かを呟き始めた。

しかし、こもっていてよく聞こえない。

が、その口調は丁寧さの中に強い意志があるように感じた。結局何を言っていたのか今回も分からず、視界がぼやけていった。

 

 

 

─翌朝

 

コンコン

 

「十六夜です、起きてますか?」

 

「はい、今行きます」

 

昨日渡された燕尾服に着替える。

燕尾服は初めて着るが、とてもかっこいい。

執事の職など上級使用人がするもので、自分はまったくの初心者だが、なんだかできる人になったように感じる。

鏡で襟もしっかり整え、部屋から出る。

まず最初にすることは......主へ朝食を運ぶことだ。

 

「まず食堂に行くわ。妖精メイドが入り口まで持ってきているから、冷めないように急いで向かわないと。......手を握って」

 

「え?わ、わかった」ギュッ

 

手を握るように言われて驚くが、とりあえず言われたことはしなければ。

そして手を握った瞬間......

 

「着いたわ」

 

「あれ?部屋の前にいたはず......」

 

目の前にあるのは食堂だ。

部屋の前にいたはずなのに、手を握った瞬間にこうなったのだ。

一体どういうことだろう。咲夜に聞いてみたところ、時を操る程度の能力らしい。

常人なら理解できないだろうが、この世界に来て間もないうちに色々あったのですぐに理解する。

ていうか凄い能力なのに程度というのだろうか。

と、こちらに気づいた妖精メイド数人が挨拶をする。

 

『おはようございます』

 

「おはようございます」

 

挨拶が済むと、咲夜は食事の乗っている滑車を玉座に運ぶよう指示する。

滑車に乗せられた朝食はとても良い匂いがして、思わず笑みが出てしまう。

さて、そんなことを思っていたら朝食が冷めてしまう。早く向かわないと。

 

 

 

─玉座の間

 

「いい?まず部屋に入る前にノックをして用件を話すの。使用人たる者、これは常識よ。さぁ、やってみて。くれぐれも敬語でね」

 

「はい、わかりました。それじゃあ......」

 

コンコン

 

「天澄です。朝食を持って参りました」

 

「入りなさい」

 

咲夜にも進められ、ドアを開ける。

中に入るとベッドに腰掛けるレミリア......いや、お嬢様が笑みを浮かべてこちらを見ている。

まるで優しく見守るような感じだ。

ええと、次は紅茶を淹れるのか。どれどれ、早速やってみよう。

 

「そ、それでは......こ、紅茶を淹れます......」

 

「あら、声が震えているわよ?やっぱり初めては緊張するものね......」

 

部屋に入る前はあまり緊張しなかったが、いざ中に入り仕事をしてみると、思ったよりも緊張する。

すぐ近くには美少女がいて、その方のためにお茶を淹れるのだ。

おまけに笑みを浮かべながらこちらの作業を見つめている。

そうこうしているうちに、紅茶も淹れ終わった。

そして一歩下がると、主が紅茶を飲み始める。

ところが、最初は優雅な顔をしていた主が、だんだんと表情をおとしていった。

一体どうしたのか?そう疑問に思っていると、主は切り出した。

 

「貴方......じゃなくて咲夜、また珍しいお茶を用意したわね?それにこの人に淹れさせるなんて」

 

「ええ、気に入ってもらえたらと思いまして......」

 

レミリアがため息をついた後、礼を済ませ部屋から出る。

次は自分達が食事を取る番だ。

朝食を楽しみにしながら食堂へ向かうのであった。

そんな中、二人が出ていった部屋では、彼女は一人呟いていた。

 

「ふふ......まったく可愛いわね。あんなに緊張しちゃって......咲夜ほどにはいかなくても、私が気に入ったのだからいいのだけど......」

 

彼女は、彼に気があるようだった。

B型で非常食にぴったりだからというのもあるが、実のところ彼女は恋というものを知りたいためだ。

吸血鬼となって500年いや、吸血鬼になる前も恋というものを知らなかった彼女は、今になりようやく興味が湧いたのだ。

そんな時に館の前で倒れていた彼を見た彼女は運命を操る......ことはせず、自らの手で恋を確かめたくなったのだ。

もちろん気に入らなければ、命を奪うことも(いと)わない......そう考えつつ、彼女は試すという考えで彼を雇ったのであった。

そして今日も一日が過ぎていった。

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