東方紅魔郷 〜 Fate or Destiny. 作:あめじすと
─玉座の間
恐怖を持ち始めて早数時間。
昼から大して時間は経っていないが、彼にとっては長かった。
彼はこの数時間の間、宴会の後どう逃げようかと思考を巡らせていた。
そして今、ようやく宴会に行く時が来たのである。
どこに逃げるかは当然わからない。
しかしそれしか方法がないので、一か八かにかけるしかない。
「さて、そろそろ宴会に行こうかしら。二人共、行くわよ」
「はい、お嬢様。天澄さんも」
「は、はい......」
ベッドから降り優雅な足取りをとるレミリア。
美しい姿の裏には、どこか怪しさも含まれていた。
......二人の後を追っている間も、足取りは重たかった。
「そういえば貴方、昼食の時から緊張しているわね。どうしたのかしら?」
「そうでしたか?......はい、改めて見るとお嬢様が美しいので緊張していました」
恐怖心もあるが思ったことを口に出してみる。
お世辞っぽく聞こえてしまうかもしれないが、本心なので嘘にはならないだろう。
というより、レミリアに嘘は通用しないように見える。
ならば嘘を言うより本当のことを言っておいた方が無難だ。
「ふふ、素直なのは嫌いじゃないわ......」
「どういたしまして......はは......」
何と言われるのか気になっていたが、特に気にさわらなかったらしい。
しかしどう反応すればいいのかわからないので、とりあえずどういたしましてと言っておく。
「お嬢様、天澄さん、そろそろ見えてきましたよ」
途中で咲夜の声が入り、前方を見てみると何やら長い階段が。
上の方を見てみるとわずかに明かりが見える。
どうやらこの上に宴会の会場があるようだ。
......それにしても上まで結構ある。
ここに来るまで1時間以上はかかった......体力が持てばいいがな......
「貴方は初めてだものね、どう?よかったら私が貴方を連れて飛んで行ってあげるわ」
「え、えーと......」(確かに上まで結構あるし......体力の温存は必要だ。だったら......)
「飛ばないのかしら?」
「じゃあ......ぜひお願いします」
「お嬢様、私は先に行っております」
咲夜が先に行った後、ここは彼女の提案に乗る。
印象を悪くしては気にかけられて隙を作るのが難しくなる。
......そうこうしているうちに、レミリアが手を差し伸べる。
彼女に対し、恐る恐る手を伸ばす。
「それじゃあ......私の手を握って」
「は、はい......」ギュッ
手を握ると伝わってきたのは冷たさだ。
それは単なる冷たさではなく、まるで死人のような......生きていないようで生きている。
何百年と生き続ける吸血鬼とはこういうものなのか?
「んっ......」
私の手に伝わってきたのは彼の温かさ。
少し驚き変な声が出てしまったが、そんなことはどうでもいい。
......死んでいるような私にとって、彼の温かさは新鮮だった。
咲夜ともまた違う、愛しい者とはこういうものかしら?
すれ違う両者の想い。
夜空には星があるだけで遮るものは何も無い。
あるとすれば心の壁だろう。
たった一日で再び芽生えてしまった恐怖と、興味から本心に変わろうとする心。
それぞれの思いを抱き、長いようで短い夜間飛行は終わったのであった。
─博麗神社
ワイワイガヤガヤ
「お嬢様、天澄さん。それでは参りましょう」
「ええ、そうね」
上に着くと咲夜が丁寧に迎えた。
そして早速三人で足を進める。
歩いている最中、ふと隣が気になり見てみると......
「あ、こんばんわ!宴会へようこそ......って、貴方だれ?」
「しゃ、喋った!?」
そこにいたのは狛犬みたいな少女だった。
しかも急に大きな声で挨拶されたたまに驚いてしまった。
さっきまで石像だったよな?
「あ、驚かせてごめんなさい。私、
「お、俺は天澄仁太郎。紅魔館で働いていて、今日はお嬢様に着いてくるようにと......」
軽く自己紹介を済ませる。
彼女は本当に狛犬らしい。
守護するということに誇りを持ち、頼まれてもいないのに神社を護っているんだとか。
「そうだ、霊夢さんに報告してきますね!」
「そう、それはご苦労」
「はい!それでは!」タッタッタ......
レミリアがご苦労と一言いうと、彼女は霊夢?とやらの元へ向かった。
自分達も後に続いてようやく縁側に着いた。
「着いたわ霊夢」
「よく来たわね......ところで、隣の貴方は?」
「初めまして、天澄仁太郎と言います......」
「そう、私は
次に出迎えたのは博麗霊夢という少女だった。
紅白を基調にし、頭にはリボン、そして何より目立つのが脇。
巫女がこんな格好で大丈夫なのだろうかと思いつつ、上に上がらせてもらう。
......いや、早苗もそれなりの格好だったな。
それはともかく、中にはあうんの他にも数名がいた。
人魂みたいなのが隣に浮かんでる少女、その隣に座る幽霊みたいな人、そしてあれは......鬼?まあ、みんな酔い潰れて寝てるみたいだけど......そんな中、この前に会ったあの魔法使いもいた。
「あっ、お前この前の!」
「魔理沙、この人があの......」
「............」
二人が近づき、小声で何かを話すとレミリアが黙り込む。
一体どうしたのだろうか?疑問を抱いている自分をよそに、咲夜は他の面々に紹介をしているようだった。
そうこうしてるうちに話が終わり、霊夢と魔法使いは改めて歓迎をする。
「紹介が遅れたな、私は
「改めて、天澄仁太郎って言います。よろしくお願いします」
この前の彼女は霧雨魔理沙と言うらしい。
それにしても魔法使いに普通があるだなんて。
一向に話が進まないため、霊夢が飲み食いするように
食事は豪華だったが、何より驚いたのが彼女らは未成年にも関わらず酒を飲むということ。
大丈夫のかはさておき、もちろん自分は飲まなかった。
そして飲み食いするうちに、30分ほど経っていた。
......そろそろトイレを
「すみません、トイレって何処ですか?」
「トイレ?......それって
......そういえばあの妖怪が幻想郷は明治時代に誕生したって言っていたな。
外来語だから通じにくいのか。
「はい、できれば......」
「境内に出て左よ。それと敬語は仕事だけにして頂戴。同い年くらいじゃ話しづらいでしょ?」
「はい......じゃなくて、わかった。ありがとう」
─博麗神社 裏道
「早く逃げなきゃ......」
足早に、その場を後にする。
この機を逃せば、次はないかもしれない。
そんな思いを抱きながら、彼は神社の裏にある獣道を降るのだった。
「............」(何だか胸騒ぎがする。急いで話をつけないと)
何を思ったのかレミリアの顔に不安が現れる。他の面々は酔い潰れて寝ており、話は聞こえなさそうだ。
そして彼がいなくなり霊夢と魔理沙、レミリアと咲夜で向かい合うように話が始まった。
「さて、詳しいことを聞かせてもらうわ」
博麗の巫女の目は鋭かった。
人物紹介
高麗野あうん(こまの あうん)
狛犬の少女。
守護することが使命といい、博麗神社に住み着いている。
実はもう一人、狛犬仲間が欲しいと思っている。
博麗霊夢(はくれい れいむ)
幻想郷でも特に重要な役割を持つ、博麗の巫女。
普段はめんどくさがりだが、異変に関することには真面目。
後に仁太郎と共に様々な異変に巻き込まれていく。
霧雨魔理沙(きりさめ まりさ)
霊夢の友人で、普通の魔法使い。
いつか本物の魔法使いになるべく、努力を続けている。
負けず嫌いで活発な性格だが、冷静な一面もある。