「んじゃあ、行くか!」
化け蜘蛛に襲われていた幼馴染の朱乃と後輩の少女である裕奈を使い魔である黒歌に任せた悠斗は化け蜘蛛との戦闘を始めた
「まずはあいつの意識をこっちに向けるか。魔法の射手・火の5矢」
悠斗は5本の火の矢を無詠唱で放って、当て化け蜘蛛の意識を自身へと向けさせた。さらに
「щ(゚Д゚щ)カモーン」
化け蜘蛛を挑発する。その挑発が効いたのかは解らないが化け蜘蛛は悠斗に襲い掛かる。化け蜘蛛は多数ある足を槍にように悠斗へと突き出して攻撃していく
「(さすがは上級種、一撃一撃が鋭い。だけど・・・)母さんや、叔母さん2人の鋭さに比べれば、たいしたことない」
悠斗は足による多段攻撃を細かな動きで躱し、近づいていくが、ふいに動けなくなった
「これは、蜘蛛の糸を使ったトラップ?いつの間に?」
悠斗の足元には粘着性の高い糸で出来た罠があり、足を動かそうにも動けない。化け蜘蛛はそんな悠斗に近づき、多数の足を使って全方位からの攻撃を繰り出す
「ユウ君!?」
「逃げてください!?」
黒歌の張った結界内で戦いを見ていた朱乃と裕奈は絶体絶命の悠斗を見て黒歌に助けるよう言うが
「大丈夫にゃ。私のご主人様はあの程度で倒せないにゃ」
黒歌は余裕の笑みを浮かべていた。そして全方位からの足の攻撃を受けた悠斗だったが、予想外なことに悠斗の肉体はその足の攻撃をすべてはじき返した。悠斗は火属性の無詠唱魔法の射手3本を蜘蛛の巣に放って糸を焼くと
「奥義 百烈桜華斬」
円を描くように刀を振るい剣風を巻き起こし、化け蜘蛛の多数ある足を斬った
「これで止めだ。奥義 斬魔剣」
足を斬られ、悲鳴?を上げている化け蜘蛛に悠斗は退魔の気を込めた斬撃を飛ばして化け蜘蛛を両断した
「・・・・・」
刀を鞘に納めつつも周囲への警戒をしていると
「どうやら片付いたようだな」
「エヴァンジェリンさん。術者は?」
「討伐には新門紅丸を向かわせた。決着は・・・今し方ついたようだな」
天へと上る炎の柱が遠くから上がるのが見えた
「エヴァちゃん?」
「ほう、巻き込まれた1人はお前だったのか明石裕奈」
エヴァンジェリンは事件の巻き込まれた一般人の1人が自分のクラスメイトだと知り多少なりとも驚いた
「ユウ君」
「朱乃」
「さっき言った通り教えてくださいますわよね?」
「・・・あぁ、約束だからな」
「桜井悠斗、そんな約束をしていたのか?」
「知ったうえでどうするかを聞きたかったんでね。場所を借りても?」
「ふむ」
悠斗の問いにエヴァンジェリンは一瞬思案すると
「いいだろう。クラスメイトを助けてもらった借りもあるのでな」
「ありがとうございます。黒歌、お前はどうする?」
「私は先に帰ってるにゃ。それと後でご褒美を要求するにゃ」
「俺が出来る範囲ので頼むぞ」
「解ってるにゃん」
悠斗の返答にいい笑みを浮かべると黒歌は胸元から自家製の転移符を取り出し、魔力を流して悠斗の部屋へと戻っていった
「エヴァンジェリンさん、2人を連れて先に行っていてください。終わり次第、俺も向かいますんで」
「仕方ないな。明石裕奈、それと・・」
「姫島朱乃ですわ」
「私はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ。では姫島朱乃、ついて来い」
「う、うん」
「はい」
裕奈と朱乃は先導をかねて先を歩くエヴァンジェリンの後を追ってこの場から去っていった
「・・・明石裕奈・・か。まさかとは思うが一応確認しておくか」
裕奈の名字に思うところがあったのか悠斗は携帯に登録しているある人物に電話をかける
「もしもし、明石教授ですか?」
「ここだ」
朱乃と裕奈がエヴァンジェリンに連れてこられたのは木造のペントハウス
「寮でエヴァちゃんの姿を見たことなかったのってここに住んでたからなんだね」
「そういうことだ。私のほかに茶々丸も住んでいる。あいつは私のメイドも兼ねている」
「へぇ~~~~」
「お帰りなさいませマスター。それといらっしゃいませ明石裕奈さん、姫島朱乃さん」
「お邪魔しますわ」
「お邪魔します」
「マスター、桜井様から先ほど連絡があり、少し遅くなりそうなので代わりに2人に説明をしていてほしいとのことです」
「私がか?面倒だ」
「対価に自分の料理をごちそうすると言っていました」
「・・・・茶々丸、人数分の茶を淹れて来い」
「はい」
悠斗が出した対価を聞いたエヴァンジェリンは悠斗に代わって2人に裏のことについて詳しく話した
「この世界には魔法が存在し、悪魔等といったものも存在する」
「普段ならおとぎ話や伝承と切り捨てるところですけど、実際に目にしてしまった以上、本当のことなのでしょうね」
エヴァンジェリンから魔法のことなどを教えられた裕奈と朱乃は信じられなかったが自分たちが見たものが夢ではなく現実だったため信じるを得ずにいた
「さて、本来なら魔法のことを知った人間は記憶を消されるのが普通だ」
「き、記憶を消すってそこまでする必要あるの?」
「あるんだ。噂というのはあっという間に広がるからな、さらに今は情報社会。ふとしたことで呟いたことがネットにあげられ、ばれてしまう。まぁ、私は魔法がばれようがどうでもいいがな」
そう語るエヴァンジェリンに2人は苦笑いする
「少し話が脱線したな。お前たち2人は現在3つの選択がある。1つは私が最初に言った通り記憶を消し、今日見たこと、聞いたことを忘れ、元の平和な生活に戻ること。2つ目は、記憶を消さずに誰にも話さないという誓約を誓い、さらに監視をされながら暮らすこと。3つ目は・・・」
「マスター、桜井さんがいらっしゃいました」
「すいませんエヴァンジェリンさん。2人への説明を任せてしまって」
「今来た桜井悠斗と仮契約を結び裏の世界に足を踏み入れるかだ」
「・・・はい?」
「エヴァンジェリンさん、2人に説明をしてくれたのにはお礼を言いますが、何も仮契約のことまで話す必要はなかったんじゃないですか?」
「私は本来はない3つ目の選択肢を与えてやっただけだ。それよりも対価だが?」
「あ~~~何かリクエストでもありますか?」
「そうだな・・・ならフランス料理を頼もう」
「承りました」
悠斗はエヴァンジェリンのリクエストを聞き、脳内でメニューをくみ上げていると
「桜井さん、来るのが遅くなると電話で言っていましたが、報告に手間がかかったのですか?」
「いや、報告はすぐに済んだ。遅くなったの電話をかけていたからだ。ちなみに電話相手は朱乃の母、朱璃さんだ」
「母様に?」
「あぁ。朱乃に魔法を含む裏のことがばれてしまったっていう報告をな」
電話相手が自分の母親と知り朱乃が首を傾げたが、悠斗が告げた言葉に驚く
「ちょっと待ってユウ君。母様は魔法のことを知っているのですか?」
「・・・・あぁ知ってる。っというか、朱乃の家、姫島家は関西呪術協会の一員だ。朱璃おばさんは中学までは普通の学生として育って欲しかったらしくてな、裏のことは言わないでくれって頼まれてたんだ」
「そう、だったんですの」
「朱璃叔母さんからの伝言だ。“貴方の好きなようにしなさい”だってよ」
朱璃の伝言を悠斗から聞いた朱乃は苦笑いし後で改めて電話して詳しい話を聞こうと心に決めた
「マスター、この場で今すぐにどうするかを決めろというのは2人には酷だと思います。土日を使って決めさせるのが一番かと」
「ふむ、一理あるな。姫島朱乃、明石裕奈、今日は寮に帰り、土日を利用してどうするかを決めろ。決まらなかった場合は強制的に記憶を消すということを頭の隅にでも入れておけ。話は以上だ、茶々丸、2人を寮まで送っていってやれ」
「はい」
話すことはもうないとばかりに会話を終わらせたエヴァンジェリンは茶々丸に朱乃と裕奈を女子寮まで送っていくよう指示をした
「それで、遅くなったのは姫島朱乃の親に電話をしただけではないのだろう?」
2人が家からいなくなったのを見計らってエヴァンジェリンが悠斗に話しかける
「朱璃叔母さんに電話をしていたのは事実ですよ。その際、朱乃をお願いねとも言われましたけどね。裕奈ちゃんの名字が気になりましてね、確認の為に電話をしたんですよ明石教授に」
「それで返答はなんだったん?」
「裕奈ちゃんは明石教授の娘さんでしたが、魔法のことは教えていなかったん見たいで、裕奈ちゃんが巻き込まれたことを知った時はかなり慌てていました。・・エヴァンジェリンさんは当然知ってたんですよね、裕奈ちゃんの親が誰なのかを?」
「まあな。明石裕奈の父親は近年稀に見るかなりまともな魔法使いだと私は思っている。・・・その様子から見るにもしもの時は娘を頼むとでも言われたか?」
「・・・正解っす。エヴァンジェリンさんはあの2人はどんな答えを出すと思いますか?」
「そうだな・・・・・恐らく、貴様は契約を交わすことになると私は思っている」
悠斗の問いにエヴァンジェリンは自信満々な表情で答えた