『悠斗君から電話で知らされて半信半疑だったけれど、本当に知ってしまったのね』
「母様、では私の家が裏の事情にも関わっているという話は・・・」
『本当よ』
寮に戻った朱乃は家に電話して母である姫島朱璃から詳しい話を聞いていた
『私達姫島家ははるか昔から魔を払う家系として裏の事情に関わっていたの。お父様、貴方のお爺様にも修行させるよう言われていたけど、せめて中学生までは普通の学生でいて欲しかったの』
「そうだったのですか。母様、私は一体どうしたら?」
『悠斗君にも言ったけど貴方の好きにしなさい。もし裏の事情に関わりたくないというのなら私が何とかお父様を説得してみるわ。もし関わるというのなら確か西洋魔術では“仮契約”だったかしら?それを悠斗君とするのも手だと思うわよ。確か契約を結ぶための方法はキスするだったはずよ?』
「キ、キ、キスですか?」
朱乃は契約を結ぶための方法を聞いて顔を赤くする
『貴方は悠斗君のことが子供のころから好きだったから思いを伝えるのも兼ねて丁度いいんじゃないかしら?このままだと貴方、負けちゃうかもしれないわよ?』
「負けるですか?」
『えぇ。前に悠斗君のお母さんと話したとき、悠斗君に1人仮契約を結んでいる子がいてこれがかなりの美人らしいわよ?互いに惹かれているみたいだったからくっつくのも時間の問題だって』
「・・・もしかして」
朱璃の話しを聞き、朱乃は自分たちを守るために悠斗が呼び出した黒歌のことを思い出す
『朱乃、もし悠斗君のことが好きなのならアタックしなさい。ここ日本では一夫多妻なんてものはないけど、私達の家ではそうでもないのよ。少しでも多くの後継者を残すという意味でね』
「母様」
『後悔の無い選択をしなさい。私から言えるのはそれだけよ』
「・・・・はい」
朱璃の言葉に朱乃はただ頷くことしかできなかった
「はぁ~~~~」
朱乃が朱璃に家のことを聞いていたころ、寮の部屋で裕奈もまた悩んでいた
「魔法・・かぁ~~~」
「裕奈、帰ってきてからため息ばっかりついてるけど何かあったの?」
どんな時も元気いっぱいの裕奈が部屋に戻ってきてからというものため息ばかりついていることに同室の少女 大河内アキラが心配そうに声をかける
「え?私そんなにため息ついてた?」
「自分で気づいてなかったの?最低でも10回は吐いてたよ?」
アキラの話を聞き、裕奈は何処か納得した。元気が取りえの自分がそんなにため息をつけば心配もすると
「ちょっとね。色んなことがあって頭がこんがらがっちゃって」
「そうだね。10歳の子供が先生だなんていわれて本当に驚いたよ」
裕奈が今日、転任してきたネギの話なのだと理解したアキラは苦笑いしながら話す
「ねぇ、アキラ?もし、もしさぁ、空想だと思っていたことが本当でそれに巻き込まれて、秘密を共有するか記憶を消されること、そのどちらかを選べって言われたらどうする?」
「私は・・・記憶を消してもらうかな?危ないこと嫌いだから」
「・・・だよね」
「もう遅いから私はもう寝るね。おやすみ」
「おやすみアキラ。・・・・これ以上考えても答えなんて出会いから私も寝よう」
アキラに挨拶を交わすと裕奈も寝るために服を着替え、ベッドに入る。暗闇の中、裕奈は自分がどうしたいのかを考えるが、すぐに意識が途切れ、眠ってしまった
日曜日の早朝
「(はぁ~~~昨日1日使って考えてみたけどどうしたらいいのか全然わからなかった)」
1日を使って考えてみたものの答えは出なかった。その際、クラスの中でも特に仲のいい、アキラと他2名に心配された
「ん?」
「あれ?桜井先輩?」
「確か明石裕奈だったな?」
朝早く目が覚めた裕奈だったが、2度寝をする気にもなれず気分転換も兼ねて散歩をしていると早朝ランニングをしていた悠斗とばったり出くわした
「こんな朝早くから走ってるんですか?」
「まぁな。これに加え、軽く素振りとかもやってる。そういう明石は?こんな朝早くに何やってるんだ?」
「えっと、散歩です。ちょっと早く起きちゃって」
「ふむ・・・・ならちょっと付き合え」
「え?」
「ほれ行くぞ。ついて来い」
「ちょ!?待ってください!?」
いきなり走るのに付き合えと言ってきた悠斗に裕奈は待ってくれと言おうとしたが、それを言い切る前に悠斗が走り出し、裕奈は慌てて悠斗の後を追って走り出した
~数分後~
「はぁ、はぁ、はぁ」
「たかが、2km走っただけで疲れるだなんて本当に運動部に入ってるのか?」
「2、2km、も、走る、だなん、て、聞いて、ません、よ」
「まぁ、言ってなかったからな」
息も絶え絶えな裕奈に悠斗は予備に持ってきていたタオルを被せると、近くにあった自販機でスポーツ飲料を買うと
「ほれ、ランニングに付き合ってくれたお礼だ」
裕奈に渡し、自分は持ってきていたスポーツ飲料を飲む
「あ、ありがとうございます」
裕奈は渡されたタオルで汗を拭きながら悠斗からもらったスポーツ飲料を飲んで喉を潤す
「少しはすっきりしたか?」
「え?」
悠斗の言った意味が解らず、首を傾げる裕奈
「大方、一昨日の件でどうすればいいのか悩んでいたのは丸わかりだったからな。気分転換を兼ねて一緒に走ってもらったのさ」
「そういえば」
悠斗の言う通り、思いっ切り走ったお陰で頭の中のもやもやが無くなっていることに裕奈は気づく
「あの、桜井先輩はいつ魔法のことを知ったんですか?」
「確か・・・魔法について知ったのは幼稚園のころで、本格的に関わるようになったのはこの学園に来てからだ」
「そんな小さいときから知ってたんですか!?」
そんな小さいころから魔法や裏の世界について知っていることに裕奈は驚く
「その、怖くはなかったんですか?」
「確かに怖かったぜ。初めての実戦の時なんか手足が震えてろくに戦うことが出来ずに危うく死にそうになったからな」
悠斗は初めての実戦の時のことを思い出し、笑いながら裕奈に語る
「その時にパートナーになっていた黒歌に守られてな。男なのに女の子に守られて本当に情けないって思った。家がそうだったから仕方なくっていう思いから、大切なものを自分の手でちゃんと守れるような強い男になろうって決意したんだ」
「なんていうか・・・」
「単純だって言いたいんだろう?きっかけなんてそういうもんさ」
「きっかけ」
「とある人物はこう言っていた。“思い立ったら吉日、その日以降はすべて凶日だ”ってな」
「それ、意味としては逆ですよね?」
「まぁな。でも、本当の単語よりいい言葉だと俺は思うけどな。とにかく、後悔のないようにしろ、俺からはそれしか言えない。じゃあな」
悠斗は持ってきたスポーツ飲料をすべて飲むとバックにしまうと、裕奈に別れを告げて、帰っていった
「・・・私は、私の思いは・・・。よし、決めた!!」