「では答えを聞こうか」
週末あけの月曜日の放課後、エヴァンジェリンと茶々丸に呼ばれ2人の家にやってきた朱乃と裕奈はエヴァンジェリンから答えを促された
「私は裏の世界に入りますわ。高校生になってから入れられるのが多少早くなったと思います」
「ふむ、理由はそれだけではない気がするが、それを聞くのは野暮というものだろう」
おんなじ女だからか、はたまた見た目の割に人生経験が豊富だからかエヴァンジェリンは朱乃が家の決定だけではないことに気づく
「明石裕奈、貴様はどうするのだ?」
「私は・・・・・・受けることにします」
「ほぅ」
裕奈は数秒か口を閉ざした後、自分で考えた答えを言った
「クラスの中でも十の指に入るほどの面白好きのお前だからな。こういった話に乗らないとは思ってはいた」
「あははそうだろうね。だけどね目の前で生死がかかった戦いを見ちゃったからさ。面白そうって理由だけで決めちゃいけないって思って、2日かけて考えて出した答えだよ。まぁ、元気が取りえの私がこんな状態だったからアキラやまき絵、亜子に心配されたけど」
親友に心配されたことを思い出したのか裕奈は苦笑いする
「だけど、決定打になったのは桜井先輩の“思い立ったら吉日、その日以降はすべて凶日”って言葉かな?」
「なるほど、ならば貴様は明石裕奈をこちらの世界に引き入れてしまった責任をしっかりと取らねばならないな?」
裕奈の話を聞いたエヴァンジェリンは面白そうな表情で悠斗を見る
「分かってますよ。どんな理由であれ、こっち側に来て、契約をする以上、責任をもって守りますよ」
「ならば仮契約をさっさと済ませてしまおう。私もそこまで暇ではないのでな」
「エヴァちゃん、その仮契約だっけ?それってどうやるの?」
「なに簡単なことだ。桜井悠斗とお前たちがキスをするだけだ」
「・・・・・へ?」
エヴァンジェリンの言葉に裕奈の思考がしばし停止する
「キス、接吻ともいいます」
「言葉を変えても意味は同じだよね!?」
茶々丸の略に珍しく裕奈がツッコム
「・・・・」
朱乃は事前に母の朱璃から聞かされていたこともあり表情を変えず無言でいるが内心は悠斗と合理的にキスすることができるため嬉しがっていた
「キ、キスじゃないと契約は出来ないの!?」
「出来ないこともないが、準備に色々と手間がかかる。キスをしたほうが手っ取り早い」
「姫島先輩は嫌ですよね?」
「私は別に構いませんわ。好きな殿方とキスするだけで契約が可能なら私は構いませんわ」
「凄いノリ気だ!?」
「茶々丸、あれを」
「こちらですマスター」
エヴァンジェリンに言われ、茶々丸は2本の試験管を手渡す。試験管を受け取ったエヴァンジェリンは受け取った1本を地面に落とす
「ちょ、ちょとエヴァちゃん!?」
「問題ない、今の私が魔法を使うのに必要なことだ」
慌てる裕奈をよそにエヴァンジェリンは試験管を割った理由を告げると、床に仮契約用の魔方陣が展開された
「桜井悠斗、魔方陣の中に」
「・・・うっす」
「では、最初は誰かおこなうんだ?」
「・・私がいきますわ」
エヴァンジェリンの問いに朱乃が一歩前にでて名乗る
「では、姫島朱乃、魔方陣の中に入って桜井悠斗とキスをしろ。それを行えば仮ではあるが契約は完了だ」
「解りましたわ」
言われた通り魔方陣の中に入り、悠斗と向かい合う朱乃
「ふふ、不謹慎ですが、こういった形でユウ君とキスできるなんて思ってもいませんでしたわ。右も左も知らない不束者ですが、よろしくお願いしますね」
「まるで嫁入りする女性の発言だな。・・・ん」
「ん」
朱乃の言葉にツッコミを入れると悠斗は朱乃に一歩近寄り、キスをした。2人がキス行うと魔方陣が輝き、2人の頭上にパクティオカードが現れる
「では次だ」
現われたカードを回収するとエヴァンジェリンはもう1本の試験管を割り、再度仮契約用の魔方陣を展開する
「次は貴様の版だ。明石裕奈」
「う~~~本当にしないとだめなのエヴァちゃん?」
「強制はしない。だが、また巻き込まれたときに必ず助けられる保証はないぞ?」
「明石、無理にしなくてもいいぞ」
「そうですわよ明石さん。女の子にとってファーストキスは大事なものですから」
悩む裕奈にエヴァンジェリンはしなかった場合のリスクを話し、悠斗と朱乃は無理する必要はないと論す
「~~~っ!?」
「っ!?」
覚悟を決めたのか裕奈は魔方陣の中に入り、自分から悠斗へとキスをする。突然のことに悠斗は驚き目を見開いてしまう。そして、魔方陣の輝きが増し、2人の頭上にパクティオカードが現れる
「ふふ、1本とられたな桜井悠斗。茶々丸、録画は?」
「言われた通り、全部撮っています」
「ご苦労。今夜はその映像をつまみに1杯飲むとしよう」
「ちょっ!?エヴァンジェリンさん?」
「そう睨むな。いい物を見せてもらった礼に、私がその2人を鍛えてやる」
「・・・どういう風の吹き回しですか?」
無償で朱乃と裕奈の2人を鍛えるといったエヴァンジェリンに悠斗が尋ねる
「言った通り、面白いものを見せてもらった礼だ。鍛えがいがありそうだと私の勘が言っているのでな。任せておけ、私が2人を大ボスをも倒す立派な中ボスに鍛え上げてやる」
「「っ!?」」
エヴァンジェリンの浮かべた笑みに朱乃と裕奈は言いようのない寒気を感じた