紅魔館には謎がつまってる   作:野道春日

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その1

「お嬢様、紅茶が入りました」

 

良く晴れたある日のこと

 

完全で瀟洒なメイドはいつものように主人のカップに紅茶をそそぐ

 

「ありがとう咲夜」

 

 日のあたらないバルコニー

 

 紅魔館の主、レミリア・スカーレットはそこから外を眺めていた。

 

「不思議ね…吸血鬼というのは太陽を忌み嫌うものなのに」

 

 バルコニーからみえる館の庭には、無数の花が植えられている。

 

 そこは妖怪の管理するひまわり畑の満ち溢れる活気ではなく、もはメイドたちによって手入れされた優雅な静けさ。

 

「いえ、忌み嫌い、恐れているからこそ、私は太陽に憧れ、こんな時間に空なんて眺めたくなるのかしら…ねえ、咲夜」

 

 傍らの従者は何も言わない。ただ目をとじ、微笑む。

 

「急に何を言ってんですか気色悪い」

 

 普通に罵倒した。

 

「ちょっと!今のは私のカリスマ溢れる上品なシーンだったでしょ!」

「いやwwだってw太陽に憧れwwww空をww眺めwwwwwゲッホゲッホw」

「むせるほどか!?むせるほど私はおかしいことを言ったか!?」

「そりゃあwwもうwww」

 

 カリスマ-人を惹き付ける才

 

 レミリアは最近、それが明らかにないがしろにされていることに深く悩んでいた。

 

 東方紅魔郷が出た当時。その背景やbgm、また魅力のあるセリフで幼い見た目ながらいかにも6ボス、といった感じであった。

 

 しかし以降、ゲームでの言動は生意気な子供化、二次創作での扱いもぞんざいに。極めつけは弾幕格闘ゲームにおいて無様にも頭を抱えるガードモーション。

 結果、カリスマ(笑)、おぜう、チスイコウモリなど不名誉なあだ名が定着してしまった。

 

「従者に相談事なんて、情けない主人ね…」

「その通りですね」

「否定しろや」

「大丈夫ですよ、ここは幻想郷、人や妖怪の在り方も十人十色、主の形も一つではないはずです」

「咲夜…」

「それに私の主人は『紅魔館の主』ではなく『レミリア・スカーレット様』です…だからブッフォwwすんません限界っスw」

「台無しだよ!」

 

 はぁ、と

 

 思わずこぼれたため息と同時に紅茶の入ったティーカップを口にかたむける。

 

「…咲夜、お茶の葉を変えたの?何だか味が落ちた気がするけど」

「お気付きになりましたか」

 

 咲夜の表情が少し硬くなる。

 

「実は今、紅魔館はちょっとした経済危機でして」

「経済危機?」

「はい、それで紅茶の葉っぱもワンランク下のものに、最近はお嬢様の食事は血ではなくトマトソースを使用しています」

「しれっととんでもないこと口にしたわね…ちなみに、それっていつ頃から?」

「二年ほど前からですね」

「それ最近って言わねぇよ!二年間もトマトソースでよく健康体でいれたな私!」

「アリだと思いますよ、吸トマトソース鬼」

「吸トマトソース鬼!?」

「斬新で味がありますよソースなだけに」

「うまくねぇんだよ!」

 

 レミリアはまた一つため息をついて、庭園に目をやる。黄と赤、明るい色の調和が美しい花壇。

 

 平常心。気持ちのリセットをはかり紅茶をまた一口傾ける。

 

「ちなみに、今庭に植えてある花の七、八割はトマトの花です」

 

 吹き出した。

 

「自家栽培までしてたの!?」

「はい」

「やりすぎじゃない!?主食がトマトソースになるだけでそんなに食費浮く!?」

「マイブームなんです、トマトソース」

「お前の趣味かい!」

「ご安心を、それだけで終わらないのがメイドクオリティーです」

 

 ふふん、と鼻をならし得意気な咲夜。

 

「へぇ、どんな?」

「実は先日、できたトマトを収穫したのですが、その中から新種が見つかったんです」

「何ですって!?」

 

 絶対ろくなことじゃないだろうと思っていたレミリアにとっては意外な知らせだった。

 

「どんなトマトなの?その新種って?」

「はい、まずサイズがかなり小さいんです」

「うんうん」

「でも色は変わっていません」

「それでそれで?」

「そして何と!たくさん実がなるんです!」

「ただのプチトマトじゃないそれ!?」

「え、新種じゃないんですか!?」

「むしろ普通のトマトよりポピュラーなぐらいよ…」

「そんな!昨日徹夜でこの新種のトマトについて原稿用紙394枚にもおよぶ論文まで書いたのに!」

 

 どこからか原稿用紙の束をとりだす咲夜。

 

「まったく、こんな無駄遣いして…あんたの食費削りなさいよ」

「いえ、私はもう一ヶ月ほど食事はとっておりません」

「…!」

 

 レミリアの心はざわつく。

 

 確かに失態をおかした咲夜。しかし彼女は知らない所で自らの身を削っていた。

 

 トマトの件も紅魔館の財政のため。

ではなかったみたいだが、一応レミリアの食事のためのことだった。

 

 そんな彼女に無神経な言葉をあびせてしまった自分を恥ずかしく思っ

 

「なのでそろそろパンツを摂取せねば」

「お前今なんつった」

 

ていた時期が彼女にもありました。

 

「ですから、パンツをですね…」

「お前今までパンツ食って生きてたのか?」

「はい」

「はい、じゃねぇよ!あなた一応人間よね!?」

「何を言ってるんですかお嬢様、私はどこからどうみても人間ですよ」

「パンツは食料、しかもそれで一ヶ月すごせるやつなんて人間じゃねぇよ!」

「ここは幻想郷、血を吸う鬼がいればパンツが主食の人間だっていますよ」

「どこにもいねぇよそんな人間!吸血鬼よりよっぽど化け物じみてるわよ!」

 

※この小説は二次創作です

 

「失敬な!私にだって思慮分別があるんですよ!幼女以外のパンツは食べません!」

「このロリコン駄メイド!」

「この私がロリコン?何をおかしなことを、食と性の嗜好が少し違うだけで」

「そんなレベルじゃねぇんだよクレイジーサイコペド!」

「何ですって!お嬢様、この仕事を続けられる秘訣って何だとおもいますか!?」

「忠誠心じゃねぇのかよ!」

「パンツ目当てに決まってんでしょォ!」

 

※この小説は二次創作です

 

「はぁ…もういいわ」

 

 息があがる咲夜とレミリア。あまりにも不毛な会話にさすがに疲れてきた。

 

「そんなことより、経済危機の原因は?」

「詳しくは分かっておりませんが、おそらくパチュリー様が原因かと」

 

 動かない大図書館、パチュリー・ノーレッジ。

 紅魔館にある図書館の管理者であり、レミリアの友人である。

 

「パチェが?」

「はい」

「失礼ね」

 

 静かな足音と共に奥の廊下から彼女は現れた。

 

「何で私が経済危機の原因なの?」

「パチュリー様の触手の製作費がかなり…」

 

 触手-同人誌ではもはやお約束のあれ

 

「うっわ…あんたまたそんなもん作って…」

「そんなもんですって!?レミィ、あなたは触手のことを何だと思ってるの!?」

「ゴミ」

「私の努力と研究の成果をゴミだとぉォ!?許せん!お前が読んでたハリポタの栞後ろの方にしてやる!」

「何でお前はやることがそう陰湿なんだよ!てかこの間も『冬のため~』とか言って触手作ってたじゃん!」

「今度は夏のためのやつよ!」

「一年中触手作ってんじゃねぇか!もう少し時間を有効に使いなさいよ!」

「その通りです!」

「いいぞ咲夜!言ってやれ!」

「幼女ものはないんですか!?」

「あなたに期待した私が馬鹿だったよ」

 

 完全に話が脱線してしまった。

 

「何の話だっけ?」

 

 首をかしげるレミリア。

 

「触手の美しさ、およびその実用性を」

 

 ホワイトボードを取り出すパチュリー。

 

「幼い女児の体や下着の魅力について」

 

 手に大量のパンツを握る咲夜。

 

「しまえ」

「「(´・ω・`)」」

 

 しぶしぶ片付ける二人。

 

「パチュリー様の触手の製作費についてですね」

「それよ」

「言っておくけど、研究費は自分の作品の売り上げからだしているから違うわよ」

「作品…?」

「レミィも出演してみる?」

「こうしちゃいられねぇ!」

「引っ込んでろサイコ野郎」

「解せぬ」

「作品って何よ?」

「us・異本よ」

 

 us・異本-パチュリーが独自に開発した触手についての研究や考察をまとめた魔導書の一種である。

 年二回、人里では素人が製作したあらゆる創作物を売買するイベントが催される。通称、個美家。

 

 彼女はこのイベントに毎回参加、そこそこの儲けをだしている。

 

 ちなみに、us・異本の詠唱は少々危険を伴うため、十八才未満の閲覧は禁じられている。

 

「出演って、要するに実験台になれってこと?」

「まあそうなるわね」

「やめとくわ、命の危機を感じる」

「そこまで危険なものじゃないわ、ねえ小悪魔?」

 

 パチュリーが呼ぶと彼女の使役する使い魔、小悪魔。深紅の髪と黒のスカートをたなびかせ扉を開ける。

 

「如何にも、主の言葉に僻事(ひがこと)はありませぬ」

「パチェ、誰なのこの人?知らないわよこんな筋肉ダルマ」

 

 現れたのは深紅の髪、黒のスカートに身を包んだ身長190cmはあろうかという世界観を間違えたマッシブな巨漢だった。

 

「どうされたレミリア嬢?」

「確かに髪は赤色だし頭と背中に羽あるけど別人よきっとそうよ」

「何をおっしゃる。我が主、パチュリー様が使役せし魔物は我だけで候」

「レミィ、小悪魔のことを忘れたの?」

「何があった!?一体何があったらこんな劇的ビフォーアフターが起こるのよ!小悪魔というより大魔王じゃないのよ!?」

「仕事をしているうちに鍛えられたのね、イベントの売り子も頼んでるし」

「あんた普段この子に何をさせてるの!?

死線を潜り抜けた(つわもの)みたいな目をしてるんだけど!?」

「確かにこの間、体脂肪率が少し下がっていたで候」

「そんな些細な変化じゃないでしょ!?何だよこれ!どんな恐ろしい目にあったらこうなるのよ!」

 

 普段見せない友人の狼狽えぶりにパチュリーは少し心配になってしまった。

 

「まったく、少し落ち着きなさい…小悪魔、レミィに何か飲み物を」

「御意」

「おい、りんご手に持って何やってる?やめろ!コップを下に置くな!」

「覇亜亜亜ァァッ!(cv:大塚明夫)」

「やりやがった」

「どうぞ」

「ドウモアリガトウ」

 

 小悪魔のお手製りんごジュースを飲もうとした時、レミリアはふと手を止める。

 

「…一応、あなたたちにも聞いておくべきね」

「何を?」

「どうしたら私のカリスマは戻ってくるかしら?」

「ムリゲー乙w」

 

 終了

 

「ぶっ○すぞ紫もやし」

「そんな事急に言われてもどうしようもないわよ」

「む…」

「そうねぇ…戦闘能力をしめすとか?」

「戦闘能力…?」

「やっぱり強いキャラっていうのはそれだけでカッコいいものよ」

 

 と、その時

 

 耳をつんざくようなガラスの割れる音と共に箒に乗った少女が頭上を舞う。

 

「じゃあな、のろまなお嬢様達よぉ!本は借りてくぜ、一生な!」

「しまった!図書館を留守にしておきすぎたわ!小悪魔!」

「承知!」

「へっ!もう遅いz…って何だあれ!?あんな化け物ここにいたっけ!?」

「化け物…?違う、俺は(小)悪魔だ…!」

「ふおぉぉぉぉッ!?」

 

 この不道徳な白黒に制裁ラリアットを。

 

「ね?」

「まず白黒の魔法使いを放してあげて」

 

 とりあえずロープで椅子に縛り拘束。

 

「気絶してるわね」

「ちょうどいいわ、盗みに入った罰として、魔理沙にはこの間完成した新しい魔法の実験台になってもらいましょう」

「新しい魔法?」

「一時的時間逆行による魔力縮小、および身体能力の抑制」

「つまり?」

「幼児化ね」

 

 メイドに電流走る。

 

「お嬢様、実は私、前々から魔法使いになりたいと思っておりまして」

「嘘つけ!聞いたことねぇわそんな話!」

「お嬢様…私が嘘偽りを申していると?」

「鼻から本音が出てるのよ!」

「ち、違います!これはあれです!まだ見ぬ知識への好奇心と興奮です!断じて邪な感情など…う…WRRRRRYYYYYYYYY!!!」

 

 周囲に降りそそぐ赤いシャワー。ひとしきり鼻血を出しきった後、音を立てて倒れる咲夜。

 

「で、どうする?この白黒」

「返り(鼻)血で真っ赤なんだけど…」

「どうやら我のはじいた血飛沫が全てかかったようで候」

「はじ…え?」

「まあ、命に別状がない範囲ならいんじゃないいわ、実験開始よ♪」

 

 手際よく準備をするパチュリー。

 

「これでよし…さて、はじめるわよ」

「待ってましたァァ!」

「まるで巻き戻しかのように立ち上がるわねあんた」

「『センタクシチャッタセーター…センタクシチャッタセーター』」

「呪文だっさ」

 

 

 

<とぅーびーこんてぃにゅー>


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