御剣は暁を裂く~沖ノ島の鬼神~   作:夜芝生

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ゲームに嵌りに嵌った挙句、こんなものを書いてみました。

基本コンセプトは、「もしも艦これの各戦域にお助けキャラがいて、その設定を掘り下げたら?」というものです。

色々と独自設定だらけではありますが、どうか宜しくお願いいたします。


鬼神の原点

 

 

 

――ある日、『ソレら』……あるいは『彼女達』は突如海の底から現れた。

 

 

 

 

 まるで砕けた黒鉄のような装甲を持つ彼らの姿形を一言で言い表すのならば、『異形』。

 

 

 

 

――そこには、単眼の如き砲を持つ顔がいた。

 

 

 

 

――捻くれた女性の手足と体を生やした砲塔がいた。

 

 

 

 

――ガチリ、ガチリと歯を打ち鳴らす口がいた。

 

 

 

 

――四肢のあちこちを失い、残る手足を異形の化け物へと変じさせた少女達がいた。

 

 

 

 

 そのどれもが、誰もが、打ち砕け、捻くれ、傷つき、歪だった。

 

 

 

 

 それでも、それを見た人々は誰もが思った――美しいと。

 誰もが彼女達に目を奪われ、誰もが動きを止めてしまう程に、彼女達の姿は人智では計り知れない誇り高さと、背徳的な美しさを持っていた。

 

 

 

 

――しかし、そんな人々の戸惑いと畏怖の視線を嘲笑うかのように、一際大きく、一際禍々しく、一際蠱惑的な姿の『彼女』は、自らの躰から生えた巨大な異形の化物を愛おしそうに撫でながら、軋みきった声で告げる。

 

 

 

 

『……ミナソコニ…………シズミナサイ……!!』

 

 

 

 

 生きとし生ける者全てを憎むかのような呪詛と共に、『彼女達』の蹂躙は始まった。

 最新鋭の装備を持った艦艇(フネ)が、戦闘機が、戦車が、まるで紙屑のように彼女達の放つ砲撃と魚雷によって打ち砕かれていく。

 有史以来、決して協力し合う事の無かった世界中の国々は、この共通の敵に総力を結集して立ち向かったが、彼女達の力はそんな彼らよりも遥かに強大であった。

 

 

 

特筆すべきは、その圧倒的な物量。

 

 

 

――打ち砕けども打ち砕けども、すぐに海の底から這い上がって来る彼女達の波状攻撃に、人類は程無くして陸地へと押し戻され、地球上の海の八割近い領域を喪失する事を余儀なくされた……海は、かつての中世の頃のような、人智の及ばぬ悪魔たちが住む魔界へと変貌したのである。

 ありとあらゆる物資や補給、情報を寸断された数々の少国家が、瞬く間に干上がり、姿を消していった。

 

 

 

 

――深き海底に棲み、目を背けたくなるようなむごたらしい姿で、目を覆いたくなるような凄惨な死と破壊をまき散らす、水底の鉄塊から生み出されし荒ぶる魂達。

 

 

 

 

 人々は彼女達を、『深海凄艦』と呼んだ。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 南西諸島海域 沖ノ島 Jポイント近海

 

 

 

『――敵戦艦発砲!! 弾着まで10秒……3!! 2!! 1!! 弾着!! 今!!』

 

 

 

 南西諸島特有の強い日射しの向こうから飛来した砲弾が、悲鳴のような唸りを上げながら次々と襲いかかる。

 それはまるでスコールのように突然に、途切れなく海面を叩き、その上に浮かぶ二隻の艦に向かって降り注いだ。

 

 

 

 

 

――いくつかは艦を外れ、巨大な水柱を上げるが、その内のいくつかは甲板に、艦橋に突き刺さり、装甲を食い破りながら炸裂した。

 

 

 

 

 その凄まじい衝撃は、艦橋の艦長席に座って指揮をしていた提督をも吹き飛ばしそうな程に揺らす。

 

「うっ……!?」

『ぐっ……ああっ!?』

『やめてぇっ!!』

 

 

 

 それと同時に、二隻の艦――重巡洋艦『那智』と『羽黒』から悲鳴が上がる。

 

「那智っ!! 羽黒っ!! 大丈夫かっ!!」

『くっ……済まん……思うように、動けん……っ!!』

『はぁっ……はぁっ……痛い……痛い、です……』

 

 彼が乗り込んでいる那智と、無線の向こうから聞こえる羽黒の声は、どちらも苦痛に歪み、痛々しい吐息を漏らすばかりだ。

 提督の頭に流れ込んでくる痛み、恐怖、苦しみ……気弱な性質を持つ羽黒はともかく、常に沈着冷静である筈の那智がこのような状況に陥っているのを感じ、提督の脳裏に最悪の想像が過ぎる。

 

「くっ……損害状況知らせ!!」

『那智サマに羽黒サマ、共に艦体各所に直撃弾にて大破!! 主砲、魚雷、共に使用不能デス!!』

『損傷により艦体が傾斜中!! ダメコン急ぎマス!!』

 

 焦る提督の声に従って現れたのは、セーラー服に身を包んだ膝下程の大きさの少女達――『艦妖精』。

 彼女達の言葉に、提督は顔を青ざめさせる。

 

 

 

 

 『大破』――それは、この艦隊における主力である二人が、ほぼ戦闘不能になった事を示していた。

 

 

 

『――敵艦更に接近中!! 戦艦ル級2!! 共にelite級デス!!』

 

 更に最悪な報告が艦妖精から伝えられる。

 弱り切った彼女達目掛けて、敵の主力の一部がこちらに目掛けて接近して来ている……止めを刺すつもりなのだ。

 

「くっ……神通!! 多摩!! 那智と羽黒の援護に回れるか!?」

 

 急いで目の前の鏡のような形状をしたモニターを操作し、敵を迎撃している友軍の軽巡洋艦『神通』と『多摩』へと通信を繋ぐ。

 目の前にノイズだらけの映像が表示され、そこには気の弱そうな巻き毛の黒髪を持つ女性と、ショートカットの猫目の少女が映し出された。

 

『ご、ごめんなさい……っ!! こちらもル級を抑えるのに、手一杯……でっ!!』

『今反転したら、こっちがやられちゃうにゃ……!!』

 

 彼女達の顔は一様に、艦体のダメージのフィードバックによって苦痛に歪み、彼女達の、そして敵の砲弾による衝撃と爆音が絶え間なく無線の向こうからノイズと共に響き渡っている。

 ひと目見ただけで、音を聞いただけで苦戦と分かる――艦隊の脇を固めるべき彼女達が、たった一隻の艦に足止めされてしまっているのだ。

 

 

 

 無理も無い……彼女達の前に立ち塞がっているのは、戦艦ル級――人類の天敵たる深海棲艦中でも、最大級の戦闘形態と火力、装甲を持つ殺戮者(スローター)

 しかもその姿は、ヒトのカタチに近ければ近いほど強力になると言われる彼女達の中でも、最も人間に近い姿を取る人間(ヒューマノイド)型。

 

 それが三隻――しかもその全てが通常とは違い、艦体の周囲に赤いオーラのようなものを漂わせている。

 幾多もの艦艇を沈め、力を蓄えて更なる禍々しい変貌を遂げた深海棲艦――elite級と呼ばれる個体だ。

 

『このぉーっ!! こっち向けーっ!!』

『全く……お硬い女性はっ……嫌われるわよっ!!』

 

 特にその装甲は通常の個体よりも更に堅く、神通と多摩の負担を減らすべく撹乱するような軌道を取りながら牽制する駆逐艦『睦月』と『如月』の二人を全く意に介していない。

 懸命に放たれる駆逐艦の主砲である12.7cm連装砲も、隙を見て放たれる魚雷も、その全てが装甲板に虚しく煤と凹みを作るのみだ。

 代わりに、彼女達に対してこれといった攻撃もしない――駆逐艦など、いつでも葬れるという自信の現れだろうか?

 そう錯覚しそうになるほど、彼我の戦力は圧倒的だった。

 

 

 

 とは言っても、この若い提督と彼が率いるこの艦隊は、幾度もル級とは対峙しており、時にはelite級ですら撃沈、もしくは撤退させた事もあった。

 

 

 

……しかし、それはあくまでも彼女達が敵艦隊において旗艦――つまり単騎であったり、こちらが彼女達の砲撃を躱し切り、重巡や軽巡、駆逐艦が最も力を発揮する『夜戦』に持ち込む事が出来た場合だ。

 昼間から、これほどの数と質の戦艦クラスの敵と殴り合った経験など無い。

 それ故に動揺していた彼は、この時目の前に迫る敵のみを見ていた――だから、完全に直後に成された報告への対応が完全に遅れてしまった。

 

『――神通サマ、多摩サマの左舷2km付近ヨリ敵艦反応!! 駆逐艦ニ級elite2!!』

『雷跡接近!! 着弾まで10!! 目標、神通サマデス!!』

「なっ……あっ……!? よ、避けろ神通!!」

『えっ……?』

 

 神通が提督の声に気づき、注意を向けた時には、海中に潜んでいた駆逐艦ニ級が海原を割って姿を現したかと思うと、海蛇の如く畝りながら放たれた魚雷が、彼女の左舷に突き刺さっていた。

 

『ああっ!?』

 

 爆炎と共に神通の叫び声が上がる――見れば、着弾した場所からは黒煙が上がっており、どう考えても直撃だ。

 それを見た駆逐艦ニ級達は、喜色か、闘争の雄叫びか、ガチガチと歯を打ち鳴らした。

 

『神通お姉ちゃん!? こんのぉっ!!』

 

 それに対して睦月が怒りの声を上げながら、お返しとばかりに四連装魚雷を叩き込む。

 海面を切り裂いた魚雷は、二級のどてっ腹に命中し、辺りに黒い装甲と血かオイルかも定かでは無い気色の悪い液体が垂れ流される。

 しかし、止めを刺すには至らない――ニ級は苦鳴のような呻きを上げながら、口の中から伸ばした主砲を放つ。

 

――中破している以上、その威力は通常よりは半減しているものの、その狙いは同じく駆逐艦である睦月と如月……それらを無視出来るほどの装甲は持ち合わせていない。

 

『んっ……もうっ!! しつこい奴らだことっ!!』

 

 結果、如月も睦月は二級の対応に掛り切りにならざるを得ない。

 いくらelite級の戦艦といえども、駆逐艦の魚雷による至近弾を喰らえばひとたまりも無いが、それが使えないのでは無いのと同じ事だ。

 

 

 

 ここに至り、提督はつい十数分前の自らの判断を心の底から呪い、後悔していた。

 

 

 

……最初は、あくまでも沖ノ島周辺の航路の確保と、敵情の偵察に留める予定だった。

 しかし、進撃は予想以上にスムーズに進み、最奥部付近に到達するまで、重巡や軽巡達はおろか、駆逐艦達すらも殆ど損傷が無い、という絶好のコンディション――そこで、愚かにも彼は進撃の命令を艦隊に下してしまったのだ。

 

 

 

 結果はこれだ……飛び出して来たのは、今まで見たことが無いような強力な深海棲艦の艦隊と、猛烈な砲撃の雨だった。

 普段から、先達から耳にタコが出来る程に聞かされててばかりいたでは無いか――今日まで最も艦娘達を、提督達を沈めてきたのは、戦艦でも空母でも潜水艦でも無い。

 

 

 

――ただ、提督自身の油断と慢心に他ならない、と。

 

 

 

 普段から気を付けていた筈だった。だからこそ、あくまで目的を航路の確保に留めていたのだ。

 それでも、彼はその未熟さ故に、知らず知らずの内に嵌り込んでいたのだ……油断と慢心が生み出す戦場の死神が住まう渦潮の中へと。

 

 

 

 彼の全身を絶望が支配しそうになるが、しかし諦める訳には行かない。

 提督は『全身全霊を込めて祈りを捧げながら』、艦娘達に向かって叫んだ。

 

「那智、羽黒は艦体の維持とダメコンに集中!! 敵の攻撃を避ける事だけを考えろ!!

多摩は神通の破損箇所をカバーしつつ砲撃を継続!! 神通は生き残った砲と魚雷で多摩と同じ艦を狙い続けろ!!」

『……承知っ!!』

『わ、わかり、ました……っ!!』

『わかったにゃ!!』

『は、はいっ!!』

 

 今までの動揺が嘘のような矢継ぎ早な、それでいて的確な指示――その一声で、バラバラになりかけていた艦娘達の動きが、再び『艦隊』としての動きに変わった。

 目の前に迫っていたル級達の砲弾の間を縫うように、ボロボロになった那智と羽黒が回避行動を取る。

 

『どうした――私はここだぞっ……!!』

『当たりま……せんっ!!』

 

 吹き上がる水柱と、衝撃に呻き声を上げながらも、熟練の重巡である二人は、懸命に、直撃コースの砲撃を予測し、避けていく。

 満身創痍の敵を仕留め切れない事にとうとう焦れたのか、彼女達を追いかけようとル級の内の一体が明らかに突出し始めた。

 

『今にゃっ!!』

『バカに……しないで下さいっ!!』

 

 その横腹に目掛けて、多摩がありたっけの砲弾と魚雷を叩き込み、神通も残った砲で援護する。

 次々と打ち込まれる砲弾の嵐に、堅牢なル級の装甲にも次第に無数の罅が入り、パラパラと黒い装甲の破片が落ち始めた。

 

 

 

 今までの苦戦が嘘のように、逆に敵を押し返す――それはまるで、提督自身の『思い』が彼女達に力を与えているかのようだ。

 

 

 

 いや……事実、彼の『祈り』の一念は、彼女達に力を分け与える。

 

 

 

――艦娘とは、かつて数多の人々の命、思い、感情を乗せて海原を往き、勇猛果敢に戦い、そして散っていった『御霊』の具現。

 

 

 

――母なる(なぎ)の海で荒ぶりを鎮めた、()ぎなる魂

 

 

 

――御国の為に命を捧げた男達を、時には恋人のように、母のように、家族のように包み込んでいた、女性の姿をした付喪神。

 

 

 

 

 

――即ち、『神娘(かんむす)』。

 

 

 

 

 

 そんな彼女達と語らい、触れ合い、思いを重ね、それらの力を引き出す、神とヒトとを結ぶ(かんなぎ)達を総称して、『提督』と呼ぶ。

 

 

 

 珠の汗を浮かべながら彼が紡いだ思いは叫びに乗り、渾身の力を彼女達へと注ぎこんでいく。

 

 

「未だ睦月!! 如月!! 雷撃戦用意っ!! あの弱った土手っ腹に魚雷をありったけ叩きこめっ!!」

『おっけー!! 任せてくださいですっ!!』

『りょうか~い♪ 後でご褒美、期待してるわよて・い・と・く♪」・

 

 やっとの思いで開けた蟻の一穴――ようやく二級達に止めを指した駆逐艦の2人へと、即座に指示を飛ばす。

 再び四連装酸素魚雷が放たれ、その全てが一気にル級の損傷箇所へと殺到し……爆散させた。

 一度船底に大穴を開けてしまえば、図体の大きな艦ほど復帰が難しい――ル級は断末魔のような呻き声を上げながら、見る見るうちに海の底へと沈んでいく。

 轟沈――ここまでやれば、恐らくは二度と浮かび上がってくる事はあるまい。

 残る2隻も近付いてきてはいるが、船足はこちらの方が圧倒的に上だ。

 軽量級を中心に編成した艦隊の長所がここに来て生きる――後は、直撃弾を警戒しながら今まで辿って来た安全な航路沿いに撤退するだけだ。

 

「良し!! 良くやった!! このまま反転して撤た――」

 

 

 

 しかし、そこまで言いかけてから、再び警報が鳴り響く。

 それは、見えかけた希望を打ち砕く、悪夢の始まりを告げる合図だった。

 

 

 

『――警告!! 警告ーっ!!』

『こちらの射程圏外からの砲撃来マス!! 弾着まで3,2,1……今っ!!』

 

 艦妖精達の叫びとほぼ同時に飛来した砲弾は、睦月と如月の艦橋近くを掠め、猛烈な水柱を上げる。

 

『あ、ぐぅっ……!!』

『か……はっ……!?』

 

 直撃では無い――しかし、それがもたらした結果は甚大なものだった。

 猛烈なエネルギーの込められた砲弾の一撃は、その衝撃波と着弾時の衝撃のみで、殿を務めようと動いていた睦月と如月の装甲ごと船体の一部を抉り取り、砲塔を吹き飛ばしていた。

 報告を受けるまでも無い――大破……それも、殆ど虫の息というレベルの損傷だ。

 駆逐艦はスピードと小回りの良さ、強力な雷装を持つものの、その耐久力は非常に脆い――しかし、それを加味してもこの威力は異常だった。

 

「睦月!! 如月ぃっ!! 何だ!? ル級の砲撃か!?」

『ち、違いマス!! それとはまた別の――』

『新たな敵影確認!! 映像、出マス!!』

 

 混乱と恐怖の余り悲鳴に近い叫び声を上げる提督の前に、モニターからの映像が映し出される。

 そこには、戦艦級らしき艦影が見える――しかし、その艦体が纏うオーラの色に、提督は息を飲んだ。

 

 

 

 

「金……色……? ふ……フラグ……シッ……プ……?」

 

 

 

 

――神祇省時代の神祇官達や、軍学校時代に教官から聞いた事がある。

 深海棲艦の中には、elite級をも遥かに超える力を蓄えた個体が存在すると。

 それがflagship級……金色のオーラを纏い、幾多の艦娘とそれに乗り込んだ提督をも、水底へと沈めた、禍々しくも美しい荒御魂(あらみたま)

 

 

 

……ガチ、ガチ、ガチ。

 

 

 

 堅いモノが打ち合わされる音が、艦長室に響く。それに、随分と頭に響く音だ。

 それが無意識に自らが打ち合わせる歯の音とは、提督は気付かない……いや、気付けない程に、彼は完全に放心状態に陥っていた。

 モニターにはこちらへと波間を割って近づいてくるflagship級――その姿は、金色のオーラも相まってあまりに禍々しい……が、それとは裏腹に、目を離せない程に美しかった。

 

 

 

――そして彼女は、

 

 

 

「あ、あ……」

 

 

 

――モニター越しの筈なのに、

 

 

 

「あ、あああ……」

 

 

 

 

 

 

――彼に向かって、美しい唇を蠱惑的に吊り上げて、嗤った。

 

 

 

 

 

 

「う、うわあああああああああああああああっ!!」

 

 

 それを見た瞬間、提督は絶叫していた。

 彼女の何処までも美しく、何処までも無機質で、何処までも恐ろしい笑みを見た瞬間、彼の勇気も、意地も、尊厳も、信念も……彼を構成していた全てが、音を立てて崩れ落ちた。

 最早、そこには艦娘達を率いる新進気鋭の『提督』も、敬虔な『(かんなぎ)』も最早いない。

 

 

 

 ただそこには、年齢相応の、頬の青白い青年がいるだけだった。

 

 

 

「あああああああああっ!! ひ……あああああああああああああっ!!」

 

 そして、理性という盾を無くした未熟な精神は、目の前に迫る猛烈な『死』の気配に耐え切れず、崩壊寸前に陥っていた。

 

『……司令官!! 健次郎!! 落ち着――っ!?』

 

 那智はどうにかそんな彼を宥めようとするが、そのために一瞬、敵から注意を背けてしまい、船足が遅くなる。

 そこへ、運悪く至近弾が着弾し、那智の艦体が凄まじい衝撃が襲った。

 

『うっ……!?』

「がっ――!?」

 

 恐慌状態に陥っていた提督は、突如起こった揺れに耐えられず、猛烈な勢いで壁へと叩き付けられる。

 そこへ、衝撃で壊れた天井の構造物が振りかかった。

 提督は頭を打ち付けて朦朧としているのか、避ける事も出来ない。

 

 

 

――しかし、それが彼の体を傷つける事は無かった。

 

 

 

 何故ならその前に、彼へと覆いかぶさり、降り注ぐ破片から守る影が出現したから。

 

「――全く……最後の最後まで、世話の焼かせる……司令官だな、貴様は……」

 

 それは、紫を基調にした上着と、タイトなスカートを身につけ、黒髪をサイドポニーに纏めた凛々しく、美しい女性――この艦を制御する人間体であり、艦そのものでもある『那智』であった。

 しかし、今のその姿は、艦のダメージからのフィードバックを受けて、まるで人間体自身が戦火に巻き込まれたように全身はボロボロになり、身につけた艤装は外観に合わせるかのように砕け、ひしゃげている。

 

 

 

 

――しかし、その身に纏わせた誇り高き武人然とした佇まいは損なわれていない。

 

 

 

 

 那智は常人ならば潰されてもおかしくはない程に巨大な破片を片手で振り払うと、足元に倒れた提督を抱き起こす。

 頭から出血しているが、幸い命に別状は無いようだ――ほっ、と息を吐きながら、那智は手を掲げる。

 そこから弱々しい、しかし暖かな光が漏れ、傷口に零れ落ちると、溢れだしていた血が止まる。

 

「…………貴様は、生きろ。貴様を、待っている者達が沢山いるんだ。

『再び』沈むのは、この武骨な艦娘一人で十分だ」

 

 そして、彼の頬を愛おしげに撫でると、その唇と自身の唇を触れ合わせる。

 それはほんの一瞬……けれど、それが永遠であるかのように熱く、情熱的に。

 

 

 

 

「――ありがとう司令官……いや、健次郎……。

こんな私を、兵器に過ぎん私を、今まで人間のように扱ってくれて……感謝しても、し切れん」

 

 

 

 

 そう言って微笑むと、自分に付き従う艦娘達へと通信を繋げる。

 

『睦月!! 如月!! 動けるか!? 動けるならばスモーク散布!! 全弾ありったけ使え!!』

『り、了解……です……』

『ひ、人使いが……荒いんだから……ぁ……』

 

 その言葉に、ようやく朦朧状態から目覚めたのか、息絶え絶えになりながらも、煙幕弾を打ち上げる。

 乳白色の濃密な白い闇が辺りを包み、その場にいた艦娘達をル級達から隠す。

 あくまで気休め程度ではあるが、敵の電探の索敵を狂わすチャフも混ざっているため、少しの時間稼ぎにはなる。

 その間こちら側もあちらの索敵が行えず、攻撃が出来ないという欠点はあるが、そもそも現時点でまともに砲雷撃戦を行えるのは多摩しかいないため、この際は無視出来る。

 その僅かな猶予を使って、那智は全員に自らの命令を伝えた。

 

『貴様ら――戦闘形態を解き、提督を連れてこの海域を離脱しろ』

『にゃっ!?』

 

 多摩が驚愕と共に悲鳴のような声を上げる。

 敵艦と相まみえている状態で、戦闘形態を解く……それは謂わば敵前逃亡であり、艦娘達にとって敵に白旗を上げるに等しい、屈辱的な行為であった。

 

『そ、そんな……っ……ま、まだまだ……睦月達は……やれますよっ……』

『そ、そうよっ……この、程度で甘く見てもらったら――』

『却下する――貴様らも私も、このままでは帰る事すら出来ずに轟沈するのがオチだ。

艦隊を率いる旗艦として、容認する事など出来ん』

『う……』

 

 睦月と如月が抗議の声を挙げるが、那智はすぐさま否定する。

 事実、睦月と如月の損傷は激しく、戦闘形態を維持するのがやっとの状態な上に、艦の駆動系も軒並み異常を来している――このまま戦闘機動を続けては、敵に沈められる前に自沈するのが関の山だ。

 それを一番分かっているのは、彼女達自身……2人は二の句も告げず、黙りこむ事しか出来なかった。

 

『人間体ならば、如何にル級の電探と云えども感知は出来まい。被弾する確立は格段に減る筈だ』

『で、でも那智さんっ……戦闘形態を解除している間に、煙幕が晴れてしまいますっ!!』

 

 今度は神通が異議を唱える。

 確かに彼女の言う通り、艦娘の艤装の戦闘形態を戻すには、それ相応の時間がかかる。

 通常航行時ならば大した手間では無いものの、戦闘中は別だ――もし仮に戦闘形態が解かれている間に砲撃を受けようものなら、一撃で轟沈するだろう。

 

 

 

『安心しろ神通――手は、既に考えてあるさ』

 

 

 

 そう言って柔らかに微笑む那智の顔を見た瞬間、彼女の姉妹艦である羽黒は、彼女の考えを瞬時に悟ったのか、顔を真っ青にして叫んだ。

 

『だ、駄目……那智姉さんっ……!! それだけは駄目っ!!』

 

 しかし、那智は妹の叫びを頭を振って黙殺すると、皆に向かって簡潔に伝える。

 

 

 

 

『――私が囮になる』

『――――!?』

 

 

 

 あまりに単純で、あまりに重い一言に、全員が絶句した。

 彼女は言っているのだ――自分を犠牲にして、生き残れと。

 

『駄目……っ……駄目駄目駄目にゃっ!! そんなの駄目にゃっ!!』

 

 そんな那智の言葉に、多摩が瞳からボロボロと涙を零しながら絶叫した。

 

『第一、那智は旗艦にゃっ!! 旗艦が沈んじゃったら、艦隊とは、言えないにゃ……!!』

 

 顔をグシャグシャにしながら、多摩は叫ぶ。

――那智を引き留めようと必死に……けれど、何処かできっと無理だと確信してしまっている――そんな表情を浮かべながら。

 

『そうだな……済まないと思っている……』

『だったら――!!』

 

 しかし、その言葉にも那智は首を振った――全て悟りきった笑顔で。

 

 

 

 

 

『しかし……もう私には時間が無いんだ……』

 

 

 

 

 

『那智姉さん……ま、まさか……!?』

『先程のflagship級の砲撃で、な……ダメコンが、間に合わん』

 

 羽黒の叫びに、那智は自嘲めいた笑みを浮かべた。

 見れば、那智の船体の半ばほど――海面すれすれの部分に、巨大な穴が空いていた。

 そして、その穴の開いている方向に、那智の船体が少しずつ、しかし確実に傾斜しているのが分かる。

 

 

 

 

 

――艦娘達は、それこそが致命的な予兆である事を、『身を以て』知っていた。

 

 

 

 

 

 羽黒も、神通も、多摩も、睦月や如月も、そして那智も……この場にいる誰もが、かつて意思を持つ前の戦場で、そうして海底に沈んだのだから。

 

 

 

 

……だからそれ以上、誰も声を掛けられない。誰も、那智の覚悟を止める事は出来なかった。

 

 

 

 そして何より、状況がそれを許さなかった――煙幕が晴れ始め、再びル級達による砲撃が始まったのだ。

 再び轟音と水柱と共に、海面が大きく揺れる。

 それを確認すると、那智は船体から、艦妖精が張る結界にに守られた気絶したままの提督が浮かび上がり羽黒の船体へと吸い込まれていく。

 

 

 

 同時に、那智は反転し、迫り来る敵戦艦群の只中へと吶喊を開始した。

 

 

 

 砲弾が、機銃が、次々と彼女の体を蹂躙していくが、その足は決して止まらない。

 諸共に沈めとばかりに、生き残った機銃を打ち尽くさんばかりに撒き散らしながら、那智は逝く。

 

 

 

 それを見届けると、残る艦娘達は戦闘形態を解除する――巨大な船体が解けるように光に溶けて行き、残るのは海上を滑るように行く、艤装を纏った少女たちだけ。

 

 

 

 彼女達もまた、決して振り返りはしなかった。

 

 

 

 何故なら、その瞬間、彼女と共に行こうとしてしまうだろうから。

 

 

 

 彼女を止めようとしてしまうだろうから。

 

 

 

……それこそが、彼女に対する最大の侮辱であると知っていたから。

 

 

 

 聞こえるのは、爆音と、軋む船体の音と、那智の声だけだ。

 

『羽黒――司令官を……健次郎を頼むぞ』

「はい……はい……っ……!!」

 

 羽黒は提督を――受け取った彼女の想い人である彼を強く、強く抱きしめながら嗚咽を漏らす。

 

『神通――爾後の指揮はお前が執れ……どうか皆を、無事に送り届けて欲しい』

「了解しました……どうか、ご武運を」

 

 神通は泣き崩れそうになる己をどうにか支えながら敬礼した――かつての自分のように、身を呈して仲間達を助け、散ろうとする友を見送るために。

 

『多摩――お前とはもう少しだけ、鎮守府の屋根の上で日向ぼっこをしたかったよ』

「那智は馬鹿にゃ……大馬鹿にゃっ……!!」

『睦月に如月よ……お前達は、提督を元気づけてやってくれ。

……きっと、物凄く、寂しがるだろうからな』

「うん……分かった……約束する……」

『――ただし、あまりはしゃぎ過ぎたりしないようにな。きっとあいつは、途方に暮れてしまうだろうからな』

「――うふふ、でも、きっとベタベタし過ぎてしまうわ……だって……私達だって……寂しいもの……」

『……済まんな』

 

 

 

 次第に、通信機越しの音はノイズが酷くなり、殆どが支離滅裂な雑音に変わっていく。

 

 

 

 

『――さ……後に、司れ……け……jろ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして最後に紡がれた声は、艦娘達には聞き分けられない程の激しいノイズの中に消え、

 

 

 

 

 

 

 

 

 横須賀鎮守府所属、御剣 健次郎少佐麾下の第二艦隊「那智戦隊」旗艦、重巡洋艦『那智』は、再び海の底へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「――――く……」

 

 

 

 

 

「――て――く――」

 

 

 

 

 

 まるでテレビの砂嵐のような朦朧とした思考の向こうで、誰かが呼んでいる。

 

 

 

 

 

「――いと――!!」

 

 

 

 

 

「――提督っ!!」

 

 

 

 

 

「う……あ……」

 

 

 

 

 

 必死さが伝わってくる呼びかけに、石のように重たい瞼をどうにか開けると、ぼやけた視線の向こうに、質素な着物を纏い、梓弓を携えた妙齢の女性がいた。

 

「ほう……しょう……さん……?」

「提督……!! ああ、良かった……!!」

 

 自分が呼びかけに応えた事に安心したのだろう、その女性――軽空母『鳳翔』が、目尻に溜めた涙を零しながら、優しく抱きしめてくれた。

 

 

――温かい。

 

 

 彼女の人柄を現すかのような温もりが、まるで氷のように冷えきった体に染み渡っていく。

 そこでようやく、パズルのピースのようにバラバラだった思考が纏まり始めた。

 

「ここ……は……? ぼく……は……」

「――鎮守府近海です。提督は、数日前に救難信号を捉えた鎮守府の救助隊に助けられたんです。

食料や水も無しに漂流していたせいで体力の消耗が激しいですが、すぐに良くなりますよ」

 

 思考と同じく重たくなってしまった舌は、か細い途切れ途切れの声しか出してくれなかったが、鳳翔はそれだけでこちらの意図を察し、ゆっくりと分かり易く説明してくれた。

 

「そうだ……みん、な……は……?」

「――――はい、無事ですよ」

 

 ちらり、と鳳翔が目を遣った方を見れば、そこにはブランケットを被せられ、救助隊の人間や整備員に付き添われるように救助艇に乗り込み、あるいは担架で運ばれていく艦娘達がいる。

 それを見てほっと息を吐こうとした時……彼は気付いてしまった。

 

 

 

 

 自分が今回率いた艦隊を構成していたのは六人――一人、足りない。

 

 

 

 

 あの、厳しくて、無愛想で、けれどとても優しい彼女が……何処にも、いない。

 

 

 

 

「――ほうしょうさん……な、ちは……?」

「…………」

「こたえてください……なちは……なちは……何処に……?」

「それ、は…………」

 

 

 

 

 悲痛な表情で目を背ける鳳翔の姿に全てを悟るけれども、彼は那智を呼び続ける。

 

 

 

 

「なち……那、ち……那……智……那智……那智……!!」

 

 

 

 まるで迷子になった幼子のように、母に縋りつくかのように、何度も、何度も、何度も。

 

 

 

 

――貴様が司令官か。私は那智。よろしくお願いする。

 

 

 

 

――貴様!! それでも司令官かこの軟弱者!!

 

 

 

 

――勝利に喜んでばかりもいられないな。勝って兜のなんとやら、だ。

ただ、今夜ばかりは飲ませてもらおう!

 

 

 

 こんな時に限って、思い出すのは彼女の顔。

 溢れだして、溢れだして止まらない――その行為をしてしまえば、残酷な現実認めてしまうから嫌なのに、それでも止まらない。

 

 

 

 

 だからこそ認めざるを得なかった……自分にとっての重巡洋艦『那智』は、もういないのだと。

 

 

 

 

「あ、あぁ……ああああああ……」

「提督……泣いて下さい……少しでも多く、長く……それで、少しでも楽になるなら……」

 

 か細い呻きは嗚咽になり、嗚咽が慟哭に変わっていく。 

 鳳翔が、強く、強く抱きしめてくれる――もう我慢など出来なかった。

 

 

 

 

 

「うわあああああああああああっ!! うああああああああああああっ!!」

 

 

 

 

 

 まるで堤防が決壊しかたのように涙が溢れて止まらず、嗚咽はやがて叫びに変わる。

 鼻水が詰まり、咳き込んでも、絶叫するあまり喉が裂け、血を吐いても、それでも彼は泣き続けた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「――――く。提督……」

 

 

 

 

「ん……」

 

 

 

 

 聞き慣れた声に目を開けると、そこは質素な飾りつけがされた鎮守府の執務室だった。

 どうやら、椅子に座って休憩している内に、居眠りをしてしまったらしい。

 傍らに目を遣ると、そこにはすっかりと見慣れた、相も変わらず美しく、たおやかな妙齢の女性……鳳翔がいる。

 

「そろそろ、定例会議のお時間です――用意をされないと、遅刻してしまいますよ?」

「――ああ、そうだったな……済まないな『鳳翔』」

「いえ、秘書艦の勤めですから」

 

 いつしか硬さが取れ、敬称を付けなくなった彼女の名前を呼んでから立ち上がり、部屋の端に設けられた姿見を使って、乱れた服装を直す。

 

 

 

――そこには、日に焼けて浅黒くなった肌と、白い物が混じり始めた丁寧に切りそろえられ、オールバックに纏められた髪を持つ、精悍な男の姿があった。

 額に残った醜い傷跡が、彼の雰囲気を更に鋭くしている……きっと子供が見たなら、泣き出しそうな程だ。

 純白の軍服の肩には『少将』を示す階級章、胸には一等神祇官を示す玉串を意匠化した徽章。

 

 

 

 

 これが、今の御剣 健次郎の姿。

 

 

 

 

 十年前の『あの頃』のような、頬の青白いままの青年の面影は、もう無い。

 

 

 

 

 傷跡を隠すように制帽を被ると、鳳翔がそっと差し出したアタッシュケースを手に取り、部屋を出る。

 

「……そう言えば、夢を見たよ」

「え……?」

 

 暫し黙ったまま鳳翔を連れて歩いていた彼だったが、不意に口を開いた。

 

「――十年前のあの時の、夢だ」

「そうですか…………思い、出せましたか?」

「いや、相変わらずだ。

かつての私の未熟さと慢心ぶりをまざまざと見せつけられるだけだったよ」

「……そうですか」

 

 そう言ったきり、健次郎は押し黙り、鳳翔もまたそれ以上踏み込まずにただ黙してその後を付いていく。

 

 

 

 

――十年前の悲しみと屈辱の記憶。それは幾度も、幾度も夢枕に現れた。

 もう、その場にあった物、起こった事を(そら)んじられる程に、何度も。

 

 

 

 

 しかし、一つだけ……どうしても思い出せないものがある。

 

 

 

 

「那智……君は、最後に私に何と言ったんだ?」

 

 

 

 

『――――』

 

 

 

 

 朦朧の狭間で聞こえた、ノイズ混じりの囁くように紡がれた彼女の声が、どうしても思い出せない。

 それを思いだすまで、きっと自分は夢を見続けるだろう。

 

 

 

 

「どうしても思い出せない……それでも、これだけははっきりしている」

 

 

 

 

 

 思いを馳せるのは、数多の新人提督や艦娘達が眠るあの島……沖ノ島。

 

 

 

 

 

「――沖ノ島にいる君の仇共を、一匹たりとも残さず討ち滅ぼす。

……それが、私に出来る唯一の君への弔いだ」

 

 

 

 

 

 その言の葉は、憎しみに醜く歪んでいた。

 

 

――一瞬だけ、思い出の中の那智が悲しそうな表情を浮かべた気がした。

 

 

 間違っているのは分かっている……意味のない行為だと頭では理解している。

 それでも彼は止まる事も、退く事も出来ず、この10年間女々しくもあの海域に固執し続けてきた。

 沖ノ島を常に巡回し続け、深海棲艦がいれば見敵必殺し、沈みそうな友軍の艦娘達を見つければ、これを助けながら敵を撃滅する。

 その様は、あの魔の海域に挑まんとする新人提督や、経験の浅い艦娘達から見れば、時に救世主のように、時に容赦なく敵を滅ぼす修羅にも見えた。

 

 

 

 そして、彼はいつしか数多の提督達からこう呼ばれるようになった。

 

 

 

――沖ノ島の鬼神、と。

 

 

 

 これは過去に囚われた一人の提督と、そんな彼らの周りに集った艦娘達の、戦いと交流、出会いと別れを描いた物語である。




沖ノ島で重巡軽巡駆逐の構成でボスに挑む……轟沈こそしませんでしたが、実際にやらかしました。
ガチで震えが来たのはあれが最初だったと思います。
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