死なない少女の英雄志願   作:緑茶わいん

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AFO vs OFA (2)

「ラバちゃんそっちの裂きイカ取って」

「はいはい。こっちのチーズも美味しいわよ」

「じゃあそれももらおうかしら」

 

 活動休止中のヒーロー事務所。

 業務ができないためにスタッフの殆どが出勤しておらず、がらんとした空間では、古参スタッフによる酒盛りが行われていた。

 ビールに焼酎、ワインにウイスキー──各々が思い思いに用意したと多種多様な酒と、それに合うおつまみが用意され、『エタニティ』からの中継映像を見ながらえんえんだらだらとした時間が流れる。

 

 普段は格好いいセンスライも、普段はツンツンしてるラブラバも、可愛い顔して仕事に厳しい宮下も、仕事中でも優しい轟冷も、全員緩みきった表情。

 大学生アルバイトながら何故か参加している千花は何とも言えない表情を浮かべて、

 

「さすがにだらけすぎじゃないですか?」

「だって仕事できないし」

「何日もまとまった休暇なんて久しぶりなんだから飲み会くらいしないと」

「いや、もっと永遠さんを応援するとか!」

「してますよちゃんと」

 

 普段の宮下からは信じられない適当な返事!

 

「千花ちゃんも楽しみましょう? お酒は未成年だから駄目ですけど、おつまみはジュースと一緒でも美味しいですよ?」

「ありがとうございます。……最近は大学でもお酒に関してうるさいんですよね。ノリの軽いサークルに勧誘されてお酒飲まされてそのまま、っていうの期待してたのに、全然そういうの無くて」

「誰よこいつに酒飲ませたの」

「素面だから大丈夫よ」

 

 全然大丈夫ではないが、そういうことになった。

 ああもう、と息を吐いた千花は、

 

「永遠さんはここまでの流れを予想してたんでしょうか」

「さすがに全部は予想してなかったんじゃないかしら」

 

 独立宣言から数日が経った国内がどうなっているかというと「荒れているような荒れていないような?」といった感じだった。

 

 具体的に言えば、国会やヒーロー公安委員会は荒れに荒れている。

 十人ものヒーローが一斉に反旗を翻し、更に、お偉方の弱みや悪事をあれこれまとめてマスコミにぶちまけたからだ。

 汚れ仕事や面倒な仕事を引き受けていたホークス、永遠の存在が大きい。深い繋がりがあった分、内情も良く知っていた。汚職、慣れ合い、過剰接待、パワハラ、セクハラetc。百が先輩議員から受けた暴言なども含め、書類や音声での証拠もばっちり。

 結果、各種問題への対応、説明にお偉方は終始することになり、マスコミからも追われている。首相の辞任、党や公安の大幅な体質改善は間違いない見通しだ。

 

 治安の方はさほど悪化したわけではない。

 『エタニティ』側とエンデヴァー率いるチーム、合計すると(百一人の永遠を含め)かなりの人数減だが、その程度でスカスカになるほどヒーローは少なくない。むしろ有名ヒーローの居ぬ間に功績を上げようと躍起になっている者も多く、上手く穴埋めが行われている。

 

 そして一般市民が最も注目しているのが『エタニティ』vsヒーローチームの戦いだ。

 幾つものテレビ局が生中継している他、撮影した映像をまとめたネット配信も計画されている。ヒーロー同士の真っ向からのぶつかり合いに対しては「雄英体育祭のすごいやつ」といったイメージを持っている者が多いようで、どっちが勝つのか誰が活躍するのかと多くの人が注目している。

 永遠vsデク、という最終局面に移った今、人々の熱は最高潮に達していることだろう。

 

「ネット掲示板への書き込みもSNSのつぶやきも止まらないどころかどんどん加速してる。そりゃ、あんな爆弾投下すればそうなるでしょうけど」

 

 片手間にPCを操作しながらラブラバ。

 仕事というわけではないが、一応情報収集くらいはしているらしい。

 冷が減ってきた氷を追加で作成しながら呟く。

 

「世紀の大犯罪者と世紀のヒーローの後継者対決なのに、すごく正々堂々とした感じですよね」

「そこは所長と副所長の狙い通りだと思うわ」

 

 ロックのウイスキーを傾けながら、センスライ。

 

AFO(オール・フォー・ワン)を使ってるのがあの永遠ちゃんだもの。真っ向勝負をしている限り、凄惨なイメージになりようがない。最強の悪と最強の善の戦いは、どっちが勝っても恨みっこなしの清々しい真剣勝負になった、ってわけ」

「永遠さんが勝っても問題ない、ってことですか?」

「まあ、大きな問題はないんじゃないかしら」

 

 その場合、永遠と『エタニティ』組はヒールとして君臨することになるだろう。

 このままだと人工島が壊れそうなので米国にでも亡命して、『エタニティ』の修復をしながらデク達との再戦に備える。ひとまずは向こうの(ヴィラン)を倒しつつ本場のステーキでも堪能するに違いない。

 日本の民衆から永遠討伐論が上がることはおそらくない。

 AFOを持つ『不老不死』は(てき)さえも守り、正々堂々、OFA継承者と戦ったのだから。

 

 ──国と敵対しても人と敵対する気はない、と、彼女『達』は身を持って示したのだ。

 

 千花は「でも」と小さく言って、

 

「わたしは永遠さんに帰ってきて欲しいです」

「なら、期待しましょう。この戦いが最高の結末を迎えることに」

 

 最高の結末。

 果たして、それは何処にあるのだろうか。

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

 私が次に選んだ手は背中に生やした翼だった。

 

「『剛翼』」

 

 攻撃に使える羽根を惜しげもなく全てつぎ込んだ波状攻撃を敢行。演算には『全知の魔(ラプラス)』を使う。無数の羽根がコンマのタイミングをずらし、あらゆる方向からデクくんを襲う。

 

「『黒鞭』!」

 

 持ち主の身体を包み込むような形を取った黒い触手が羽根を防ぎ、跳ねのけ、掴み取ってへし折る。

 あっさりと攻撃を防ぎきったデクくんは『黒鞭』を左右に展開して攻撃モードに移行するも──そこに、さっきと同じだけの羽根が再び襲う。

 当然、()()()()()()()()羽根だ。

 

「『不老不死』に『超再生』か!」

「そういうこと!」

 

 ホークスの翼は生え揃うのに数日かかる。

 でも、私の場合はそんなに待たなくていい。使った傍から新しいのが生えてくる。

 尽きることなく展開され飽きることなく襲い来る羽根をデクくんは『黒鞭』で迎撃しながら()()と踏み出した。

 そうこなくっちゃ!

 

「デトロイト──スマッシュ!!」

混沌の魔槍(ケイオススピア)

 

 かつてのオール・フォー・ワンの決め技と、オールマイト仕込みのスマッシュが激突。

 槍を半分まで目減りさせながらデクくんを押し返した私は腕の変形を解き、ダメージを再生させた上で、今度は左右両方の腕を槍に変形させようとして、

 

 ──私の視界を、ううん、辺り一帯を闇が包んだ。

 

 四つ目の“個性”!

 見渡せば、一キロ四方くらいの空間内が『夜』に変わっている。星空まで浮かんでいるところを見ると、結界的な性質があるんだろう。急に暗くなったせいで目が慣れない。一方、デクくんの方はバイザーを下ろして対策万全。暗視ゴーグルの機能もついているらしい。

 なら!

 私は予定通りに左右の腕を変形させるとデクくんに突撃。向かってくると思わなかったのかぎょっとされる。

 

「無謀だよ、永遠さん!」

「それはどうかな!?」

 

 私は『赤外線』その他の“個性”がある。

 左右の目が十分に機能しなくてもデクくんの位置は十分にわかる。一気に接近して右を振るう。と、衝撃と共に槍が弾かれた。『黒鞭』。熱量の無い“個性”の腕は察知できない。羽根をデクくん本体に向かわせれば牽制できると思ったけど、

 

「言ったよ、無謀だって!」

「……くっ!」

 

 100%スマッシュを左の槍で迎撃。

 受けきれずに潰される。そこへ黒鞭の打撃。たまらず吹き飛ばされる。すかさず追撃態勢に入るデクくん。

 私は吹き飛ばされながら、彼が踏み切るタイミングを狙って『雲』を起動。空中に生まれたそれに『弾性』を与え、逆方向への強い推進力を得て、

 

「な!?」

「これでも無謀だった!?」

 

 ()()()()()

 腕をクロスして防御するデクくん。彼の身体ごとぶっ飛ばし、建物に衝突させる。勢いはなおも止まらずに瓦礫をまき散らしながら次々、別の建物を巻き込んでいく。

 ここでようやく街灯に光が灯った。

 肉眼も慣れてきたので視認には支障がなさそうだけど、私は元に戻った腕に豪炎を宿し、デクくんの消えた方向へと投げ放つ。見様見真似の赫灼熱拳。爆炎が上がり、建物に火が付く。オレンジ色の輝きが闇を照らす灯りになる。

 

 と、瓦礫を吹き飛ばすようにして一つの影が跳び上がる。

 装備はあちこち剥げているものの、身体には大きな傷はない。

 

「おおおおおおぉぉっ!!」

 

 咆哮を上げたデクくんが高速で迫る。

 指弾の要領で放たれる空気弾を『空気を押し出す』個性で迎撃し──『蒼炎』を起動。

 全身から放たれた高熱は、エンデヴァーの必殺技をも上回っているかもしれない。名前を付けるならプロミネンスバーン・オルタナティブ、とかだろうか。

 

「さあ、これはどう──」

 

 SMASH!!

 

「はい!?」

 

 大技を拳圧だけでかき消された私はさすがに悲鳴を上げるしかなかった。

 

 でたらめか!? いや、でたらめなんだけど!!

 『剛翼』の羽根を殺到させて『黒鞭』を手一杯にさせ、足元の地面を蹴りつけて大きなコンクリ塊を作り出す。蹴っ飛ばして向かわせれば、慌てず騒がず、これも殴り砕かれる。

 

 ──ここで、穿天氷壁!

 

 視界を塞がれていたデクくんは為す術もなく凍り付く。

 ほっと息を吐いた私は後ろに向かって跳躍し、直後、氷が砕けてデクくんが飛び出してきた。凍らせても小さなダメージを入れて時間稼ぎが精一杯っていう悲しさ。

 

「そろそろネタ切れかな、永遠さん!?」

「あはは、まさかっ!」

 

 『転送』。

 

「!?」

「油断大敵!」

 

 呼び寄せたデクくんを瞬時にぶん殴ってぶっ飛ばす。

 巻き込まれた建物が次々倒壊していく。

 かと思えば殆ど間を置かず、爆音と共に()()突っ込む形で復帰してくるデクくん。しつこい! 私は『二倍』で分身を作り出すと全員で羽根を展開し、更に空気塊を連打。

 

「無駄だ!」

 

 立て続けに放たれる空気塊を『黒鞭』が叩き、相打ちになって消滅していく。

 無数の羽根は──なんと、避けようともしなかった。理由は簡単。デクくんの身体へ瞬時にプロテクターが形成されたからだ。

 第五の“個性”!?

 ナックルガードにフットガード、その他、身体の重要部位をガードするシンプルかつ機能的なフォルム。見た感じ素材的にも軽いっぽい。っていうか、一本で人を持ち上げられるホークスの羽根が弾かれてるし。何その防具チートすぎない?

 

「そっちが、そこまでするならっ!!」

 

 温存していた『巨大化』を起動。

 

「う、わ!?」

「ジャイアント永遠ちゃん参上!」

「小さいのに大きいとかよくわからないよ!?」

 

 ちなみに黒の魔法少女コスチュームは私の髪の毛なんかを素材に使っているので、レディさんのコスチュームと同じく『巨大化』に対応している。

 一瞬で13倍に変身した私は無造作に手のひらを振って『空気を押し出す』。

 尋常じゃない風がデクくんの小さな身体(当社比)を襲うのがちょっと優越感──とか言ってる場合じゃなくて。

 襲われた彼は全身を使って風を跳ねのけ、地面を蹴ってくる。

 

「なんて力だ、永遠さん!」

「もう一回力比べしてみる、デクくん!?」

 

 殺到してくる『黒鞭』を跳ねのけ、私はデクくんのスマッシュに左拳を合わせた。

 『衝撃反転』は要らない。

 瞬間連撃の威力をもあっさりと打ち破った。玩具のように吹き飛ぶデクくん。咄嗟に『浮遊』を起動した彼は拳風を放って牽制を行いながら私から距離を取る。私は風を振り払って後を追った。

 歩くだけで地面に衝撃。『エタニティ』の土台がダメージを受けていくのがわかる。さんざんどっかんどっかんやってるんだから廃棄する前提ではあるけど、ちょっと申し訳ない。

 

「まだ、まだぁっ!!」

 

 数百メートルを移動したところでデクくんは反転。

 巨大化怪人と化した私へと挑みかかってくる。パワーの差を補うためか、両手を組んでハンマーのように振りかぶり、全ての黒鞭と共に同時攻撃。

 腕十本分以上に及ぶ打撃は、巨大化した私の拳と拮抗した。

 

「凄い!」

 

 感激しながら、私は()()()()()()()()()()()

 私にとってはただの攻撃。でも、さっきのが渾身だったデクくんはもう一撃を放てない。彼は目を見開き──にっ、と笑った。

 

「え?」

 

 直後に取ったのは意外すぎる行動。

 迎撃ではない。

 『浮遊』したまま私の拳をギリギリでかわすと、私の腕に()()()()()()()。もちろん、今の私の腕なら、全力で締めあげられても耐えられる。もし千切り落とすことができても再生するんだから大した意味がないのは明らか。

 さすがにそれは、油断しすぎじゃ?

 もう一方の手でデクくんを掴む。ここまでは使ってなかったけど、こうも露骨に接触できてしまった以上は使うしかない。

 

 私は接触型の“個性”を起動して──。

 

「──え?」

 

 起動、しない。

 どころか、彼に触れている部分から『巨大化』が解けていく。元の姿に戻った私は戦慄を覚えながら、OFA(ワン・フォー・オール)最後の“個性”を理解した。

 

「触れた“個性”を無効化する“個性”」

「そう」

 

 ほのかに輝く右手を握って、デクくんは告げる。

 

「これが僕の切り札だ」




幻想殺し? 知らない子ですね。

悪堕ちルートを投稿するとしたら?

  • 同作品内で注意事項明記
  • 別作品として投稿
  • 要らない
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