・タツヤ
彩渡商店街にある居酒屋の一人息子
ミサの幼馴染。ガンプラバトルをした事は無い
・ミサ
彩渡商店街にある模型店の一人娘
衰退していく商店街を救う為にガンプラチームを作るがいい結果を残せていない
愛機はアカツキをベースにカスタムしたアザレア
・カマセ
ミサとタツヤと幼馴染。彩渡商店街ガンプラチームに所属していたがある日突如として脱退した
2030年·····
宇宙と地球を繋ぐ架け橋、軌道エレベーターが遂に完成。
これにより、遥か先の夢だと思われた宇宙旅行が現実的な物となり、人々は人類の新たなる進歩に歓喜していた。
移りゆく時代の中で次々と変化していく人や物達。全てが便利になっていく中、時代に取り残される物がある事も否定できない。
彩渡商店街····· 巨大都市に存在するちっぽけな商店街はまさに時代に取り残されていた·····
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「外資企業タイムズユニバース、国内出店数40店突破か····· 全く、ここの経営する百貨店のせいでこっちは苦労してるってのに·····」
次々と流れてるニュースを流し見しながらポツリと呟く少年
彼の名はタツヤ。この彩渡商店街に存在する居酒屋の一人息子。
「あーあ、せめてこの地域からタイムズユニバースが撤退してくれれば彩渡商店街も前みたいに人が来るようになるのにな····· ま、不可能な話だな。」
持っていたスマホをベッドへ投げつけ、タツヤは床に寝そべりながらじっと天井を見つめる。
彩渡商店街····· 外資企業タイムズユニバースが国内に出店する百貨店の登場により役目を終えた商店街·····
かつていた客足は全て百貨店へと流れ、かつての活気ある商店街とは全く別の廃れた物へと変わってしまっていた。
あれだけあった商店街の店は、今や模型屋と肉屋と家の居酒屋のみ
まさしく彩渡商店街は今存亡の危機に立たされている。
『♪♪~』
ベッドに投げつけたスマホから通知音が鳴り、タツヤは起き上がってスマホを手に取る
·····。
ミサからだ
「えーと? 今すぐ模型屋に集合·····」
メッセージを確認したタツヤは早速服を着替え、家を出るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あ!きたきた!」
商店街の模型屋の扉を開けると、タツヤが来るのを今か今かと待っていた様に少女が迎え入れる。
彼女の名はミサ。自分と同じく彩渡商店街で育った幼馴染でこの模型屋の一人娘だ。
「それで?急に呼び出してどうした? てか、カマセの奴は?」
いつもならミサと一緒にカマセというミサとタツヤの幼馴染の少年がいるはずだが、模型屋を見渡してもその姿は何処にもない。
「それがね·····」
「は!?カマセがチームから抜けた!?」
「うん····· なんか別でいいチームを見つけたみたいでさ····· 私も引き留めたんだけど、もう意思は固いみたいで·····」
「それじゃあ····· 来週のタウンカップは·····」
「このままだと私一人·····かな!えへへ」
ミサ本人は笑っているが全く持って笑い事では無い
「それで·····お願いなんだけど····· タツヤ君!私と一緒にタウンカップ出て! お願い!一生のお願い!」
ミサはまるで神に祈るかのように手を擦り合わせタツヤを拝む
拝まれている側のタツヤは困った表情でミサを見つめた。
困るのには理由がある、なぜなら
「でも·····俺、ガンプラバトルした事ない所かガンプラすら持ってないんだけど····· 」
実は俺はガンプラバトルをやった事がない。
別に嫌いとかでは無いし全く興味が無い訳でもない。
むしろ少しやってみたい気持ちはあったが中々機会がなくやれずじまいだった
だからいい機会なのかもしれないが·····とはいえそんな素人の自分がいきなりタウンカップに出たところで経験者のミサの脚を引っ張る事は分かってる
「大丈夫!タウンカップ本番までに手取り足取り教えてあげるから!ガンプラも貸すよ! お願い!タツヤ君、商店街の為にも·····!」
「うぐぐ·····」
゙商店街の為にも゙ これを言われては断りずらい·····
そして幼馴染にここまで頭を下げられて断りづらい·····
商店街の為····· 確かに自分も小さい時から育ってきたこの商店街を失いたくはない
2分の沈黙の果てにタツヤの答えは決まった。
「分かった。 やるよ、俺!」
「本当!?」
タツヤの返答を聞き、顔がパァっと明るくなるミサ
そうだ、やるしかない
「それじゃあ早速行こっか!」
「へ?」
ミサは着ていたエプロンを投げ捨てると、タツヤの服の袖を引っ張って店を出ようと進む
まさかこいつ····· 嫌な予感を感じとったタツヤは恐る恐るミサへと問う
「ミサ····· 店番は·····?」
「え?大丈夫!大丈夫!どうせお客さん来ないし、そんな事よりガンプラバトルに慣れないと!ほら!行くよ!」
「え!?ちょ!ミサああああ!!!」
想定通りの台詞が帰ってきて困惑するタツヤは為す術もないままミサに連れられていく
·····················································································
2人が向かったのは商店街に程近いイラトゲームパークというゲームセンターだ
俺自身もよくここへ来るし馴染みが深いが、ここへ来る人の主な理由はガンプラバトルシュミレーターだろう
初めてやるガンプラバトルシュミレーター·····一体どんなものなのか正直な所ワクワクしている。
「いらっしゃいませ ミサさん タツヤさん」
ゲームセンターに入った2人に挨拶をするのはこの店で働いているロボット インフォちゃんだ
「こんにちはインフォちゃん!」
「はいミサさん 今日もガンプラバトルシュミレーターですか?」
「うん!シュミレーターは空いてるかな?」
「稼働中の4つの内 1つは現在空いています」
「1つだけ····· うーん·····しょうがないか。ありがとうインフォちゃん! 行こ、タツヤ君!」
インフォちゃんへと礼を言うと2人はシュミレーターの置かれたゲームセンターの奥へと向かう
················································································
「それじゃあ!早速このシュミレーターに入ってみて!あ、後これガンプラね!」
ミサから手渡されたガンプラを受け取り、タツヤは目の前の球体のような形をしたシュミレーターの中へと入っていく。
「へぇー中は意外としっかりしてるんだな」
シュミレーター内部はコックピットを模した内装をしており、まるで自分がガンダムのパイロットになった気分で興奮する
「それじゃあ私は音声で指示するね まずシュミレーターに自分のデータを登録するの」
ミサの声と共に目の前の巨大なディスプレイが映りだし、登録画面になる
「ユーザーネームは····· タツヤ っと。で、こっから何すればいいの?」
「さっき渡したガンプラをディスプレイ下の台座に置いてみて」
「台座·····? これかな」
ディスプレイの下の台座にミサから渡されたガンプラを置くと赤いレーザーのような光がガンプラを照らし、目の前のディスプレイへと投影される
「すごい!本物のガンプラの通りだ!」
「例えば色変えたりしてもその通りのガンプラがシュミレーターで使えるようになるの!まぁ今回渡したエクシアは特に弄ってないんだけどね」
「エクシア!それがこいつの名前·····!」
「それじゃあ早速行ってみよう!」
エクシアはいつでも準備完了、あとは出撃さえすれば始まる
高まる期待を胸に タツヤは操縦桿を握る
「ガンダムエクシア!タツヤ、出るぜ!」
思いっきり操縦桿を前に出すと、それに連動するようにエクシアが動き出して射出された
·····················································································
「よっと····· すげー!まるで本当にガンダム操ってるみたいだ!」
何とか着地したエクシアから映し出される映像を見て感嘆の声を上げるタツヤ
「ぼーっとしてちゃダメだよ!敵が近づいてる!」
「そうだった!」
ミサの注意と共にエクシアへと次々とビームライフルによる光弾が放たれる
「タツヤ君とエクシアは一心同体!タツヤ君が思う様に動けばエクシアも同じように動いてくれるよ!」
「なら!」
エクシアは次々と飛んでくるビームライフルの弾を躱しながら高く飛び上がり、GNソードで無数に現れるジムを切り裂く
撃破され爆発したジムの爆風の中から現れたエクシアはその後も続けてジム2機を斬り裂いた。
「タツヤ君後ろ!」
背後から迫るRX-78ガンダムのビームサーベルを間髪シールドで防ぐエクシア
「あぶねー····· 」
シールドでガンダムのビームサーベルを弾き返し、そのままガンダムを踏み台にして高く飛び上がると、真上からGNソードでガンダムを真っ二つ
敵を撃破していく楽しさにタツヤの操縦桿を握る手についつい力が篭もる。
「このエリアは片付いたね、先に進んで」
ミサに促されるまま、エクシアは先に進む
ゴールをめざし進むエクシアの前に今度はザクが3機姿を現すとザクマシンガンを放ってきた
「タツヤ君!GNソードにはライフルモードがあるよ!」
「こうか!」
GNソードの剣先を折り畳み、ライフルモードへと切り替えてザク目掛けライフルを放つ
弾道は逸れる事無くザク一機へ命中、その後も残りの2機を難なく撃ち抜いた
「良い調子!そのままいけばクリアだけど····· もしかしたら アイツ いるかなぁ·····」
ミサの不安を他所に突き進むエクシアとタツヤ
3機のザクを越え待っていたのは先程のザクとは色が違う機体だ
「こいつがまさかシャアザク·····!?」
GNソードの剣先を再度展開させ構えるエクシアは向かってくるザクへ向けてGNソードで切りかかるが容易く避けられてしまい、エクシアの背後へとシャアザクによる蹴りを叩き込まれ、地面へとエクシアは叩きつけられる
その衝撃はシュミレーターにも伝わり、シュミレーター内部は凄い音と共に揺れ出した
「くぅー… さっきまでの機体とは一味違うなあ」
エクシアは何とか立ち上がりGNソードを再び握る
「だけど····· 所詮はNPC·····!」
再び向かってくるザクにエクシアは腰から2本のGNダガーを抜き取ると、ザクへ向けて投げつける
2本のGNダガーはタツヤの狙い通り、ザクに突き刺さり機体の動きは止まった
「今だ!」
スラスター全開で突き進むエクシアはGNソードですれ違い様にザクを切り刻み、遂に打ち破る
「よっしゃあ!」
ザクを打ち破り歓喜するタツヤ
その喜びを妨げる様にシュミレーター内にアラートが鳴り響く。
「あちゃー·····やっぱりアイツかー·····」
「なんだ·····!?」
何者かの反応を感じとったエクシアは背後を振り返ると、巨大な剣が機体へと命中し後ろへと大きく吹き飛ばされる
「いってぇ·····! いきなり攻撃してくるとか反則だろ·····!」
「見ねえ顔だが····· ここら辺でガンプラバトルシュミレーターするならこのタイガ様に挨拶するんだな!」
「てめえ····· タイガ·····!」
「お?見覚えのある名前の初心者マークのユーザーが居ると思えばタツヤじゃねえか!」
タイガ····· こいつは俺と同じ彩渡高校に通う生徒
ガンプラバトルシュミレーターをしているのは知っていたがまさかこのようにして出会うとは
「ちょっと! あんたまだ初心者狩りしてんの!」
タイガとタツヤの会話に割って入るミサ
どうやらミサの発言を聞くにタイガは初心者狩りの常習らしい
「う、うるせえ!俺がシュミレーターで何して遊ぼうが勝手だろ!」
「それなら私が相手してあげるって言ってるでしょ!」
「黙れ!俺は女とは戦わない主義なんだよ! 俺より強い女とはな!」
「はぁー·····呆れる····· タツヤ君、こいつそこまで強くないから倒しちゃってー」
「なにぃ!?あったま来た····· おいタツヤ!例え同級だろうが、加減はしねぇ····· お前のエクシア、バラバラにしてやるよォ!」
「来る·····!」
タイガの機体はガーベラテトラをベースにカスタムされた機体····· タイガの名に恥じぬ虎柄のペイントが成されている。
あの機体が持っている巨大な剣····· 不意打ちとはいえ凄まじい力がある
喰らい続ければGAMEOVERへ一直線だ
「オラオラァ!」
しかし攻撃は止む様子はなく、タイガの機体から放たれる大剣の重撃をエクシアはただひたすらにGNシールドで受け応えるしかなかった
隙は必ずある····· 今は防戦一方でも·····!
ガーベラテトラカスタムの動きを捉えながら反撃のチャンスを今か今かと待ち構える
そしてここでタツヤはある事に気づく
大剣から放たれる攻撃の威力は確かに凄まじい
しかし同時に巨大な剣を振るう影響により動きが著しく遅くなるタイミングが数秒あり、なおかつその瞬間は足元がガラ空きになる
「残りHPは僅か····· 僅かな可能性だろうが俺は賭けてやる!」
「何をほざいてやがる·····! 死ねぇぇえ!!!!」
タイガの機体が大剣を振りかぶったその瞬間───
「下がガラ空きだああああ!!」
エクシアは身体を大きく回転させてGNソードでタイガのガーベラテトラの脚部を切り裂く
脚を失い、身体の重心が一気に前にかかったことによりタイガの機体は前部に倒れ込む
「俺様のガンプラがぁ!?」
「いっけえええ!!!」
GNソードはガーベラテトラを縦に真っ二つに切り裂き、遂に耐えきれず機体は大破した。
「勝った·····!」
こうして初心者狩りのタイガを破ったタツヤの初ガンプラバトルは白星で幕を閉じた
·····················································································
初勝利で終えたガンプラバトルから帰路に着くミサとタツヤ
勝利記念にミサから貰ったHGガンダムエクシアを見つめ先程の戦いを思い出す
こんなに心からワクワクしたのは何時ぶりだろうか·····
こんなに心から勝利を喜んだのは何時ぶりだろう·····
「なんかすっかりガンプラバトルにのめり込んじゃったね!」
タイガを破った後、その後も何回かミサと共にシュミレーターを楽しんだタツヤは完全にガンプラバトルの虜となっていた。
「ガンダムバトル楽しい! 俺、もっと強くなりたい!」
「それじゃあこの調子でタウンカップ優勝を目指そう!」
「その為にもエクシアを弄らないと!」
「ならついでに家の店でパーツを·····」
店に戻ったミサとタツヤを待っていたのはあからさまに怒っているミサの父 ユウイチだ。
普段温厚なユウイチが見たこともないような形相で店にいる
「あ、俺用事思い出したわじゃあなミs·····」
逃げようとするタツヤをミサは逃がさない
タツヤの肩をガシッと掴み、その手は震えている
「タツヤ君····· 一緒に怒られて☆」
「あは、アハハハ····· ハハ·····」
1秒でも早くこの場から逃げたいな 今日の晩御飯なんだろうな なんて事を考えて気を紛らわせるしかない
「ミサああああああ!!!!」
「ごめんなさああああああい!!!!」
静まり返った商店街にユウイチの怒号が木霊するのだった。
タウンカップへ向けて特訓を重ねるタツヤは誰もクリアできない裏ステージの存在を知る。
ガンプラバトルを通じて仲良くなった同級生ユウトと共に裏ステージへと潜入すると待っていたのは有り得ない挙動のガンプラ達で·····?
次回、「赤きエクシア」