と思ったら落としてなかった。そもそも持って行ってなかった。
良かった。ショックでモヒカンともどもエタるとこだった。いやマジで。
あ、本編始まります。
僕のヒーローアカデミア
僕の
僕の
僕の
価値観!
それは人それぞれに違うものであり、それゆえに人は争う。
わかりやすく言うと。きのこたけのこ。
目玉焼きには何をかけるのかですら、人は争うのだ。
旦那が学生時代からコツコツ集めたコレクションも、女房にとってはただの部屋を狭くするゴミだし。
ある人が趣味として熱中する何かも、興味が無い人から見れば、下らない何かになる。
何に価値を見出すか、重きを置くのか。それは本当に、人それぞれだ。
どう、生きるのかも。
ヒーローの道を行くのか、ヴィランへと落ちるのか。それともそれまでの人生の延長を生きるのか。
また、どこまでその生き方を貫くのか。
それを決めるのは、きっとその人の価値観次第なのだろう。
そして今、ヒーローとして。そのヒーローを生み出す側に生きて、死んだ者の葬儀が雄英の一角で行われていた。
新任ではあるが、知名度ゆえに教師の代表としてオールマイトが弔辞を読み上げる。
「お疲れ様でした、根津校長。安らかにお休み下さい。あなたがその短い生涯を全力で世のために。人ではないあなたが、それでも人のためにと尽くしてくれた事を。我々は決して忘れません」
亡くなったのは、根津。
何の種類の動物なのか、くわしくは誰もわかっていなかった謎のげっ歯類で、世界で唯一確認されていた個性を持った動物だった。
最初は実験動物として囚われていたが、彼の個性“ハイスペック”はその状況から彼を脱出させ、人間社会に立場を築かせ、雄英の校長にまで登りつめる事を可能とした。
だがやはり。この世界の個性なので。発現するのは六十歳だったわけで。
さすがにげっ歯類に六十年生きろと言うほど、世界も厳しくは無かったらしく。
人間で言うと六十歳相当、という老化具合で個性が発現したらしい。
なお。実験用のマウスの寿命は約三年である。
野生の状態で三十年は生きるハダカデネズミという例外はいるが。
一般的に、げっ歯類の寿命は短い。
心臓の鼓動を早くして代謝を上げ、危機に対処しやすく、運動能力を上げる。
そんな、どこぞの鬼狩りの集団のような呼吸をしているからだ。しかも常中だ。
寿命の前借りという生存戦略を、種族単位でやっているわけだな。
根津校長の寿命も、当然ながら長くは無かった。
わかってたはずだ。彼の個性なら、それはわかっていたはずなのだ。
自分に残された時間が、どれくらいなのか。計算するまでも無くわかってしまっていただろう。
その貴重な時間を、
そこに何を見ていたのか。何を思っていたのか。
それはもう、わからない。
ただその残された言葉と生き様を見て、残されたそれぞれが何かを汲み取るだけだ。
身は土に 心は空に されど志は人に帰す
そうやって何かが継がれていく。
それが人の、人という集団の生き方なのだろう。
そして、根津から継がれるものがまた一つ。
「では次に、故人を含めた生前の話し合いによって、次の校長に内定しておりますサー・ナイトアイからお話があるそうです」
さすがにいつものテンションはまずいと空気を読んだ、プレゼントマイクの自重したトーンの司会進行で葬儀が進み。
No.1 ヒーローの
「まずは、彼に祈りを ―――― 彼の目指したものを、残したものを、無駄にはしない。そう誓おう。そして聞いていただきたい」
2m近い身長の、やや額が広くなったのを髪型で隠している、役員クラスにまで出世したエリートサラリーマン。
見るからに自信に満ち溢れた、どこにも影の無い立ち姿の男が力のある声で語りだした。
この世界では原作とは違い、オールマイトがオール・フォー・ワン相手に大怪我をしなかった。
なので憧れのヒーローのサイドキックのまま、喧嘩別れしていない彼は、輝いていた。額も眼鏡も。
そんな彼があからさまに感情的に、身を乗り出して語りだした。
「生きるものはいつか死ぬ。当たり前の話だ。そう、当たり前なんだ。 ……聞いてくれ。私は予知の個性で知ってしまった……」
「オールマイトが! 十年以内に、死ぬんだ!!」
…………それ、寿命じゃね?
会場にいるみんなの心が一つになった。発言者のサー・ナイトアイは除いて。
だって今オールマイト、もう現役三十年目だし……
六十歳で個性が出て、それからと考えたらもう、九十代の年齢だし……
やっぱ、寿命じゃね?
会場のみんなの思考が、一応考えてみた後にやっぱり一致した。
「平和の象徴が! 消えてしまうんだよ!」
サー・ナイトアイが、一生懸命がんばって危機感を持ってくれと訴えてはいるが。いるのだが。
ぶっちゃけみんな、もうそろそろかなって覚悟はできていたわけで。
いや。今更そんな事を言われても……
そんな空気しか、作り出せないわけで。
(ヤッベ。どうフォロー入れよう……)
そんな空回りする、心配性なサイドキックを助けるため。
また良かれと思って。
オールマイトが「大丈夫! 私の後継者はすでにいる!」と緑谷さんをマスコミへの生け贄にしてしまうプランを思いつくまで、あと三分。
そしてなんだかんだで、全身のマッスルフォーム化を身につけて、緑谷さんがオールマイト2世を継ぐまで、あと三年。
オール・フォー・ワンは燃え尽き。死柄木は枯れ。ステインは立ち直り。エンデヴァーの家庭問題も(たぶん)マシになった。
体育祭はカットされ、林間学校はこの雄英にはたぶん元々無い。
死穢八斎会は、爆豪がフロント企業を作って合法で稼げるようにしてしまった。壊理ちゃん? 壊理ちゃんは爆豪の嫁でいいんじゃないかな。
異能開放戦線は、ただの第二の人生応援団体になってしまっている。
ジェントルは原作通りのユーチューバーだが、ラブラバがまだ個性を使えない年齢で、その分活動がショボいので問題ない。
Dr.だけは危険だが、たぶんハイエンド脳無を作ろうにも六十歳以上の身体がベースだと、完成するまで持たないから大丈夫だ。
つまり。
これにて全ての問題が解決してしまったので。
このお話は、これでお仕舞いになります。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
僕のヨーローアカデミア
<完>
もともとが一発ネタだったこともあり、ここまででございます。
もう一度お礼を。
最期までお付き合いいただき、ありがとうございました。