って作家の誰かが言ってた。
大切なのはリアルなのではなく、リアリティなのだよ。
ってエヴァンゲリオンの二次創作でゲンドウさんが言ってた。
さて、説得力を持った虚構を築けるのか。やってみました。
雲ひとつ無い、青い空。まさに快晴の、春先の空気の中。
その空気を大いに震わせる、特大の号砲が 人力で 打ち上げられていた。
マスターズリーグの試合では、ドーム球場は好まれない。
ただでさえ、セパ両リーグでドーム球場のスケジュールが詰まっていて。
そこに新たなリーグが同時期に開催してしまったから、という 大人の事情 もあるが、それだけではない。
試合開始前。オープニングセレモニーとして、個性による花火が打ち上げられるのだ。
それぞれのチームの選手で、派手で放出可能な個性の持ち主らが可能な限り参加してのそれは、たまに専門の騒音条例を作られそうになるほど。
――なお、元所属していたチームに遠慮して、地方球場を回る事の多いマスターズリーグが、そのせいで来なくなっては嫌だ、と毎回否決されている――
打ち上げられる個性たちは、ヒーローで言うところの必殺技になる。
威力が強すぎたり、範囲が広すぎて試合では使用できない技を、何の遠慮も無くファンの前でぶっ放せる。
このためだけに、技を創り上げる選手も多い。
始球式のようなものなのだろうか。たまにゲストも呼ばれて、参加している。
空気を読まずにか、もしくはこの上なく読んでか。
拳一つで、選手らの放った全てを押しのけて、空を割って。
観客の歓声を独り占めして帰っていった
まあ、彼は置いておいてだ。
そうして打ち上げられた花火の後に、試合が始まる。
主審によるプレイボールの掛け声からなのは、普通の試合と同じ。伝統は大事だ。(バッターボックスに入る前には)おじぎをするのだ。
ベンチから声が飛ぶ。コーチやベンチ入りした選手の、個性の乗せられた本当に力の出る声援だ。
プロ野球選手としての最低限の身体能力はすでにないし、試合向きの個性も目覚めなかったが、そういう個性に目覚めた。
そういった選手もいるのだ。
当初は、指揮系の個性に目覚めた☆ノ1001さん(当時チーム無所属)が応援席から、後輩のために個性を使っていたのだが。
その有用性に気付いた、とあるチームがそういう個性持ちを元野球選手かなどとは関係なく集めて応援団を作って、試合を有利に進めてしまい。
他のチームも、それに後れを取るなと応援合戦に。そしてそういう個性持ちの数もそういないので、仁義無き引き抜き合戦に……
となるのが目に見えていたため、応援団が登場してから2日。速攻で個性による応援は禁止された。
だが試合の要素が増えるのは歓迎だった運営により、ベンチからならOKという裁定がなされ。
選手だけではなく、監督やコーチにいたるまで、個性が求められるようになったのだ。
まあ、そうして個性でバフかけないと、体力が持たないとか腰や肩が痛いってお爺ちゃんも選手にいる事はいるし……
さて。
今日の試合の先発はクワ○。個性の電気をまとわせた、デッドボールになるとちょっと大変なことになるサンダーボールが決め技。
なお、個性の使用は無制限ではなく、ポケモンのように技としての登録制になっている。
その方がカードやゲームにしやすいという、 大人の事情 もあるが。
勝手に、こんな技を思いついた! と危険な技を使われても皆が困るので。まあ、その辺は仕方が無いのだ。
たまに試合中にプルトラってしまって、新たな力や技に目覚めるケースもあるが。
それは1選手に付き、1シーズンに1回だけ認められている。
誰も彼も六十歳以上なので、そうぽんぽん覚醒したり成長はしないのだ。ただしオールマイトは除く。
イ○ローですら、六十歳になったらマスターズリーグに参加だと、5年もかけて丹念にトレーニングを積んで。
現役を引退した歳の頃よりも、ちょっと上くらいに仕上げて楽しみに誕生日を待っていたのに、個性に覚醒しなかったのだ。
色んな人が落胆した。あのイ○ローならどんな個性が? と予想されて、英国では賭けられてもいた、結果無個性でブックメーカー大勝利。
それでも彼ならばと期待して、もしくは鍛えられた彼の能力や、知名度による観客動員を見込んで。
ドラフトで彼を指名しなかったチームは、存在しなかった。
そうして入団した彼は、無個性でどこまで戦えるのかと、心配されたりもした。
のだが。
彼は、スズキイ○ローであった。
「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています」
彼自身が発したこの言葉の通り。積み重ねてきた男だったのだ。
彼は、打った。
帯電していて、不規則に光って捉えにくい上に、バットが木なので大丈夫だけど感電が怖くて思い切って打ちに行きにくい、○ワタのサンダーボールを。
伸びる手で、ありえないほどの角度で斜めから、上から、横から、悪い時には前に伸ばされて近くから投げ込まれる、カト○のピッチャー○トリ(技名)を。
本当に火の玉ストレートを投げられるようになった、でも球速はさすがに衰えたままのフジ○ワキュウジを。
覚醒前でも球速が高齢にしてはオカしかったのに、クマの異形系になったら現役を超えた○ラタ……には苦戦したが。
彼は、走った。
さすがに車輪が生えた、かつてスーパーカーやF1と呼ばれた方々や、ルールで回数が限定されているとはいえ、ワープする一部の人には敵わなかったが。
それでも異形系の中に食い込むくらいには、走れていた。
彼は、投げた。
さすがにキャッチャーまでは無理だが、セカンドまでならノーバウンドで、それも狙ったとおりに投げ込めるレーザービームは健在だった。
そもそも、走り回れる体力と、遠投可能な肩が求められる外野手が務まるのは。
普通よりの身体の持ち主の中では、彼以外にはほとんどいなかった。
それら全て、とまでは言わないが。大部分はトレーニングの賜物だった。
個性が持てはやされる世の中で、無個性の彼がそうやって輝くのだ。
弱い個性や、使いづらい個性。あるいは無個性。
六十歳になっても、そうなってしまった人々の目に、彼は眩しかった。
人間としての、力の象徴。
彼は今も、ひょっとすると現役の頃よりも、人々の希望であり、ヒーローだ。
職業として、ヒーローにならずとも。
個性が無かろうとも。
人は、ヒーローになれる。
イ○ローは、それを目指していたわけでは無いと思うが。
これは彼の生き様の結果、証明された事で。
ヒーローとは何か。という問いへの、答えの一つだ。
無論、たやすい道ではない。ないが。
それでも。無個性でも、ヒーローとして資格を取り、活動しなくとも。
人々の希望となる生き方を出来たのならば。
その人は、きっとヒーローだ。
<イ○ロー伝説 完>
あれ?私は何を書いてたんだっけ…?