超高齢な勇者たち。
僕のヒーローアカデミア
僕の
僕の
僕の
ヒーローアカデミア!
それはヒーローを目指す者たちのための、職業訓練学校!
つまりはヒーローになるための登竜門であり、第一歩だ。
とはいえ。
ヒーローとは、そうやって得る称号ではない。それもまた事実ではある。
だが、ヒーローもまた社会の一員として、人々の中で生きていくためには、色々と学ぶべきことが多いのもまた事実。
それを教えるための場所は、必要なのだ。
本来ならば。職業訓練学校の名の通りに、未成年の少年少女らが通い、ヒーローへの就職を目指す。そういう学校であったのだろう。
だがこの世界では。
ヒーローとは、個性という超常の力を持って災害やヴィランと戦う者たちであり。
個性とは。
六十歳以上の者が目覚める、物理法則に寄らぬ未知の力であり。
そして六十歳以上とは。
ふつうは、すでに就職どころか、早いものでは退職すらしている年齢なのである。
それまでの人生経験や、身に付けた技能や能力もあるので、一律の教育課程を組む事などは不可能だ。
よって大学のように、科目を設定。生徒らが自分でそこから取捨選択していく。そういうシステムになっている。
六十歳以上なら、自分の人生のエキスパートであり、自分に必要な科目も把握できるだろう。
できないならば、ヒーローとしてやっていくのは、すでに年齢的に厳しいのでは? そういう意図もあるらしい。
だが。この世界のヒーローアカデミアには、別の通称が存在する。
なぜそう呼ばれるようになったのかを、今。緑谷出久さん(60)は言葉ではなく、心で理解していた。
六十歳になって個性が出たら。
その希望が打ち砕かれたものの、後継者候補として訓練を見てくれていたオールマイトに個性をもらって、受験しにきたのだ。
彼の目の前には、同じ試験へと臨むジジババの群れがあった。
「うわぁ…」
なんというか、もう。その言葉しか出てこなかった。
どう見ても八十どころか九十いってる、杖という別の意味でのサポートアイテムがなければ歩行が困難な老人がいた。
いや、サイドキックってそういうんじゃないから。と言いたくなる、
逆にオールマイトのフォロワーらしき、筋肉モリモリな老人もいて。
加齢臭やら、線香やら香水やら。大勢の集まった場所にありがちな、暴力的な臭いと相まって。
実に、カオスという言葉が似合う。そんな光景だった。
病院の待合室やらに
圧倒的多数の彼らと、少数のガチ勢。それと様々な事情で受験に来ている、その他諸々。
そんな集団の彼らが、これから受ける事になる、第一の足きり――――
――もとい。第一の足きりは、すでに、一応は、これでも、とりあえずは、済んでいる。
書類選考だ。
さすがに
いや、もっと厳しくしても良かったのでは?
緑谷さんはそう思ったが、それは過去の担当者らがすでに通った道だ。
ある年、実際にそうしたところ。書類選考で落とした者たちから、クレームが多数寄せられてしまって、かえって面倒が大きくなってしまったのだ。
俺を、私を、実際に見もしないで落とすとは何事だ。
これが十代の少年少女であったなら、その叫びはうぬぼれとも傲慢とも取られて、誰も相手にしなかっただろう。
しかし六十歳以上の老人であった場合、人によっては本当に面倒臭い事になる。なった。
○○社の会長(現役)であったり、元スポーツ選手だったり、無駄に広いコネがあったり、学校関係者の身内であったり。
それらに個別に対処していくのは、本当に大変だった。
長年ラジオのDJを勤め、ヒーローになった後も続けているプレゼントマイク山田さん(75)は同僚にそう語ったらしい。
面識のある、放送局のお偉いさん相手が、一番大変だったそうな。
そういうわけで、ここ、雄英学園の書類選考のレベルは低い。ゆるゆるもいいところ。
一応は受験させてあげれば、そういう うるさい方々も、大体は静かになる。そのための代償なのだ。
正直、受験してもらえると、学校側も受験料がいただけるわけであるし。Win-Winの関係と言えよう。
なお。最初の試験は、筆記である。
ヒーローに対する、制度や法律などから、一般常識。簡単な数学や国語、外国語など。
それはこれから学ぶのでは? というものから、老人には懐かしすぎてもう覚えていない物まで、若干厳しい内容となっている。
最初はゆるくした分、ここで厳しくしておこう。
なあに、厳しくした方が、あれなら落ちても納得だ。そうやって、静かになってくれるだろう。
そんな試験官たちの、下心が込められている。
高校卒業後、地元の信用金庫に就職してコツコツと実績を積み上げて、地味に昇進していた緑谷さんには、適切なレベルの試験だった。
ちなみに。彼の幼馴染も受験している。
「俺はビッグになる」と家を飛び出し、紆余曲折の末に死…何とか言うヤクザに入り。
だが本格的に
なんだかんだで黒字を出して、地元の顔。というくらいにはビッグになった、金髪の幼馴染が。
会社立ち上げの時に、資金集めを… と信用金庫へと訪れた際に、バッタリと再会。
反発やら、親に報告するぞやら、緑谷さんをカモと見た手下が幼馴染に粛清されたりとか。
まあ、色々とイベントがあったが。
未だに、彼の会社のメインバンクは、緑谷さんの勤めていた信用金庫だったりする。
筆記が最初に来るのは…… もしかして、体力の試験を先にやっちゃったら、大惨事が起きかねないからでは?
「ボクの輝きは、また来年って事みたいだね☆」
試験の最中に体調の不良を訴えて、そう言い残したあとに、念のためにと救急車で運ばれていく老人を見て、緑谷さんはいぶかしがった。
なお救急車は、毎年3台がヘリと一緒にスタンバっているらしい。
問い。今のヒーロー社会は、正しいと思いますか? またその理由も合わせて答えなさい。
この国語の試験の、最後の設問を前に。
多くの受験者が、自分の人生も含めて考えたという。
なお。試験官はその採点にすごく困ったらしい。誰だ、問題を考えたやつは。
ネタや疑問を感想で送ってくれても… いいんだぜ…?