4月、桜も散り始めている頃新しい学び舎に悠里はいた。近代的な教室に、ハイテクを詰め込んだ机、窓の外には広い敷地とその先に大きく広がる海が見えた。そして貫くような視線の数々。頭を上げると見えるのは嬉しそうに視線を送ってくる男子と息を飲む女子生徒、そして何よりいつまで経っても後ろの席に誰も来ないということが気になっていた。
「(どうして僕がこんな目に)」
鹿島悠里は4月にデュエルアカデミアに入学するはずだった決闘者だったが織斑一夏がISを動かしたせいで行われた適正検査に引っかかりアカデミアへの入学取り消しになりここに来ることになった。
「(それにしても後ろの人いつまで来ないつもりなんだろう、入学式ももう終わってるのに)」
悠里がそんなことを考えていると緑髪の眼鏡の先生が入ってくるそして教卓についた。
「おはようございます!今日から皆さんの副担任になる山田 真耶ですっ、皆さんよろしくお願いしますね!」
元気よく山田先生が挨拶するが誰も返さない
「えっとじゃあ皆さんの自己紹介をしましょう、廊下側の一番前からお願いします」
あ行の人から自己紹介を済ませていく、そして1人目の男性操縦者である織斑一夏の番になる
「えっと、織斑 一夏です、・・・以上です」
すると突然織斑の頭がはたかれた。
「まともに自己紹介も出来んのかお前は」
織斑を叩いたのは織斑千冬その人だった。織斑千冬の登場に教室が一気にうるさくなる
私が織斑千冬だ、お前達には基礎知識を半年で覚えてもらう、その後は訓練だ!基礎動作は半月で覚えろ。いいな」
「(ここは軍隊かよ)」
「千冬様よ!本物の千冬様よ!」
「貴方の為なら死ねます!」
「貴方に憧れて北海道から来ました!」
「よく毎年ここれだけの馬鹿が集まるものだ、私のクラスに集中させているのか」
「もっと叱って!罵って」
「でも時には優しくして」
「そしてつけあがらないように躾をしてー!」
「あまり時間がない、鹿島お前も自己紹介をしろ気になっている奴も多いだろうからな」
織斑先生に言われ席をたち自己紹介を始める
「鹿島悠里です、元々は今年からデュエルアカデミアに通う予定でしたがよろしくお願いします」
「デュエルで鹿島って」
「もしかして美月様の弟!」
「凄い有名人の血縁者が2人も」
「(ここでも姉さんか)」
「織斑、自己紹介はこうやってやるんだ。それと皆が気にになってる鹿島の後ろの生徒だが今ここに来ている、入ってこい」
「はいはい」
「はいは1回でいい」
入ってきた生徒はIS学園との制服ではなく、茶色の制服を着ておりその制服には希望ヶ峰学園の校章が入っていた。予想外の人間の登場に皆目を見開いていた。ISを学ぶものなら誰でも知っている人間といえば開発者の篠ノ之束、ブリュンヒルデの織斑千冬の2人を上げるが去年からもう1人加わった、開発者以外の人間がISのコアを開発したと世間を騒がせた張本人が目の前にいた
「倉橋雫です。一応君達の1つ上だけどよろしく。知ってると思うけど希望ヶ峰学園77期生の超高校級の技術者です」
「倉橋はここに来ているが基本的には希望ヶ峰学園の生徒でもある。諸君も気になることがあれば聞いてみるといい」
織斑先生がそう言うと雫はものすごく嫌な顔をしたがすぐに治し空いている席についた。こうして鹿島悠里のIS学園での生活が始まった。
「(自己紹介はしたけどどうせすぐこの教室にも来なくなるんだよね、このクラスメイトと宜しくするつもりもないし。いや、2人の男性操縦者は一応見る期間が必要かな)」
ホームルームが終わるとすぐに悠里は授業の予習を始める、その光景を見ていた雫は軽く感心していた。
「(自分の立ち位置を理解してるってことか)」
そこに織斑がやってくる
「なぁ俺は織斑一夏よろしく」
「・・・ああ、よろしく」
「よろしく」
「俺の他にも同じ境遇がいて良かったよ」
「(こいつ、自分が何をしたのかわかってないのか)」
「(こんな奴のせいで僕は・・・。いや僕が動かせてしまったのも原因だし)」
「ちょっといいか?」
そこに1人の女子がやってくる
「箒?」
「織斑を借りてもいいか」
「別にいいよ」
「僕も構わないよ」
織斑がどこかに行ったあと悠里が雫の方を向き言い放つ
「その観察するみたいな目は辞めてくれないかな、いい気分は誰もしないと思うから」
「へぇー気づいてたんだ、ごめんね。仕事柄人を観察することもかなりあるから」
「まぁ僕も人の観察はよくするからそういう視線には敏感なんだ」
そういい悠里は前を向いて予習に戻った。
「(成程。さすがはエリート決闘者の卵と言ったところだね、あの視線にも気づいてたのか。これは候補に入れて置いてもいいかもしれない)」
その数分後にこっちにまた女子がやってくる
「ちょっと宜しくて?」
「ん?」
「(この人確かイギリスの代表候補生の)なんでしょうオルコットさん」
「倉橋君、この人は?」
「デュエルしかしていなかったのなら私を知らなくても仕方ありませんわね、私はイギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ」
「よろしくお願いします、オルコットさん」
「よろしくですわ、そして倉橋さんに知っていただいていたなんて光栄ですわ」
「えぇBT適正の高い操縦者だからデータを見たことがあるんですよ、それで何か御用ですか」
「特に用はないですわ、強いていえば男性操縦者がどのような方々なのか見に来ただけですわ」
「なるほど、ではもうすぐチャイムがなるので席に戻ることをオススメしますよオルコットさん。」
「そうですわね、また来ますわミスタ倉橋、ミスタ鹿島」
チャイムがなり遅れて戻ってきた織斑と篠ノ之は織斑先生に叩かれていた。
「(まぁそうなるよね、でもこれからISの座学か寝てよ)」
そうして授業が進んでいく、織斑が顔を青くしているのが悠里からもみてとれた。
「織斑君、鹿島君わからない所はありますか」
「一応大丈夫です」
「ほとんど全部わかりません」
「え!?全部ですか?他にわからない人はいませんか?」
山田先生が聞くが誰も手を挙げない
「悠里も雫もわからないだろ、嘘ついてもいい事ないぞ」
「いえ僕は大丈夫です、着いてくのにやっとですが」
「・・・ん?なんか言った?」
織斑の言葉に反応して雫が起きる
「お前も授業ついてけないんだろ?だから寝てるんだろ?」
「いや別に、こんな教科書があれば簡単なことが理解できないのかが理解できない」
「は?」
「それにこんな初歩の初歩を僕が知らないなんてありえないでしょ」
「どうしてだよ!そんなに言う必要も無いだろ」
すると織斑先生が口を開く
「織斑、参考書はどうした」
「古い電話帳と間違えて捨てました」
織斑が言い終える前に叩かれる。
「後で再発行してやるから1週間で覚えろ」
「えっ1週間であの厚さはちょっと」
「やれと言っている」
「はい」
「鹿島、倉橋についてIS関連で騒がせたことを応えろ」
「はい、彼は超高校級の技術者であり去年の希望ヶ峰学園の期末テストでISコアの複製作り上げており、IS委員会とIS学園に10個づつコアを寄付しています。それと確か第三世代機の量産化に成功しています。」
「その機体の名はわかるか」
「いえ、そこまでは」
「まぁ春休みからISの勉強を始めたのなら知らなくても仕方がないか。だがこれだけ分かっていれば確かギリギリついていけそうだな。織斑今、鹿島が言ったとおり倉橋はIS開発者以外でISコアを作れる唯一の天才ということだ」
「そういうことだから僕がわからないなんてことはないってわけ」
「そういうことだ織斑、それと倉橋に教えてもらおうなんて考えるなよ」
「そんな」
このやり取りをしていると一限終了のチャムがなる
「もうこんな時間か倉橋、次の時間はクラス代表を決めるからちゃんと授業2出るように」
「・・・わかりました」
授業が終わると織斑がこちらにやってくる
「なぁ雫頼むよ!1週間であの量は無理だ」
「嫌だね、織斑先生にも言われたのもあるけど、君の勉強に付き合ってやるほど暇じゃない」
「なんだよ!困ってるんだから助けてくれてもいいじゃないか!」
「君の場合は自業自得だからね、それに基本的に僕は希望ヶ峰学園の生徒として扱われるから希望ヶ峰学園の期末試験用に研究成果を作らないといけない。だから君には教えない」
「なら悠里、教えてくれないか」
「僕も自分の事でいっぱいいっぱいだから」
「そんな友達なんだから助けてくれよ!」
「友達?誰と誰が?」
悠里が織斑に向かって言う
「俺とお前らだよ、同じ男性操縦者同士で同じ境遇の友達だろ」
「僕らまだ知り合って2時間程度の仲だけど、少し馴れ馴れしいよ」
「僕は君のことなんてどうでもいいよ、それにここに来るきっかけになった君に怒りすら覚えてるから即刻この場から立ち去ることをオススメする」
悠里の次に雫が言った言葉に唖然とするが直ぐにくってかかる
「なんでだよ!ここに来ることになったのはお前も動かしたからだろ!」
「あのさ、僕は結構前からISの開発なんかに関わってるんだよね、それで君よりも前に適性があることはわかってたんだよ」
「じゃあなんですぐ公表しなかったんだよ!」
「君ってホントに馬鹿だね、そんなことしたらここに送られるからに決まってるじゃん。それにその時はまだ超高校級の肩書きはなかったから研究所だったかもね」
雫が言い終えると良いタイミングでチャイムがなり織斑は渋々自分の席に戻っていった。そして織斑先生達が教室に入ってくる
「それでは授業を始める前にクラス代表を決める」
「先生クラス代表ってなんですか?」
「クラス委員の様なものだ。他にもクラス対抗戦などに出ることになる、自選他薦は問わない」
(研究の時間が減るからなる理由はないな)
「はい!織斑君がいいと思います」
女子生徒の1人が言うと次々と織斑を推薦していく
「えっ俺?俺はそんなのやらない」
「馬鹿者、自選他薦は問わないと言ったはずだ」
「なら俺は雫と悠里を推薦する」
織斑がそう言うとほかの女子達も推薦していく
(織斑君、巻き込んだな)
(面倒なことになりそうだ、オルコットさんが震えてるぞ)
「納得いきませんわ!」
ドンっと机を叩き立ち上がる
「男がクラス代表だなんて恥さらしも良いところです、私にそのそうな屈辱を味わえと言うのですか!いいですか?クラス代表は実力の高い人間、私や雪村さんのような代表候補生がなるべきなんです!私は後進的な極東の島国で茶番をする気なんて毛頭ありませんわ!」
(まぁ言ってることは間違ってないけど少し言い過ぎだ。周りは日本人ばっかだぞ)
「イギリスだって大したお国自慢ないだろ!世界一不味い飯で何年覇者だよ!」
「貴方!私の祖国を馬鹿にしますの!」
「先に侮辱したのはそっちだろ!」
2人のやり取りに雫と悠里はため息をつく
「日本がバカにされてんだぞ!2人ともなんか言ったらどうだ!」
「別にオルコットさんが言ってることも間違ってないよ、後半はちょっといきすぎてたけど」
「僕も鹿島君と同じ意見かな、それに僕は日本がバカにされてもどうとも思わないよ。それにこんな茶番に付き合ってる暇はない」
「茶番だと!」
「あと話は変わるけどオルコットさん、周りを見て発言した方がいい、いつか身を滅ぼすよ」
「決闘ですわ!私に恥をかかせたことを後悔させますわ!」
「「は?」」
「いいぜ四の五の言うよりわかりやすい」
「くだらな」
雫が呟く
「なんで僕まで巻き込まれなきゃ行けないんだ」
「あら逃げますの?」
「そうとらえてもいいよ、鹿島君は知らないけど僕はこれほど時間を無駄にすることは無いと思ってるから」
「僕もやりたくはないかな、初心者で動かし方もわからないから」
「お前ら揃って腰抜けかよ!男なら戦えよ!」
ようやく織斑先生が口を開く
「オルコットは自薦でいいんだな」
「はい、よろしくお願いします」
「なら一週間後にクラス代表戦を行う、オルコット、織斑、鹿島、倉橋は準備しておくように。」
「いやだから僕達はやらないって」
「他薦されたんだ拒否権はない」
こうしてクラス代表戦が行われることが決まった。