ボクたちが2週間掛けて手に入った金額は銀貨100枚だった。
「はぁ……」
「どーしたのナオフミ?」
「攻撃力が足りない。」
「お困りのご様子ですな?」
「ん?」
奇妙なおじさんが話かけてきた。
「一人では魔物に勝てない」
「そんなアナタにお話が」
「仲間の斡旋なら間に合ってるぞ?カービィもいるしな。」
「仲間? いえいえ、私が提供するのはそんな不便な代物ではありませんよ」
「ほう……じゃあ何だよ?」
「お気になります?」
「近寄るな気持ち悪い」
「ふふふ、あなたは私の好きな目をしていますね。良いでしょう。お教えします!」
「奴隷ですよ」
「奴隷?」
「ええ、奴隷です」
「どれい?」
「裏切らない人のことですよ。」
「なんで俺が奴隷を欲していると?」
「裏切らない人材」
ナオフミはどれいが欲しいみたいだ。
「奴隷には重度の呪いを施せるのですよ。主に逆らったら、それこそ命を代価にするような強力な呪いをね」
「ほう……」
「どうです?」
「話を聞こうじゃないか」
「こちらですよ勇者様」
「へいへい」
「さて、ここで一応尋ねておくが、もしも騙したら……」
「巷で有名なバルーン解放でしょうね。そのドサクサに逃げるおつもりでしょう?それにお隣のピンクボールからただならぬオーラを感じます。もしものときはピンクボールに攻撃させるつもりでしょう?」
「ボクはカービィって言う名前かまあるよ!」
「それはすみません。勇者を奴隷として欲しいと言うお客様はおりましたし、私も可能性の一つとして勇者様にお近付きしましたが、考えを改めましたよ。はい」
「ん?」
「あなたは良いお客になる資質をお持ちだ。良い意味でも悪い意味でも」
「どういう意味だ?」
「さてね。どういう意味でしょう」
「ほう……」
「さて、こちらが当店でオススメの奴隷です」
「グウウウウ……ガア!」
「人間じゃないぞ?」
中には狼人間がいた。
「獣人ですよ。一応、人の分類に入ります」
「獣人ね」
「俺は勇者で、この世界に疎いんでね。詳しく教えてくれないか」
「メルロマルク王国は人間種至上主義ですからな。亜人や獣人には住みづらい場所でしてね」
「ふーん……」
「で、その亜人と獣人とは何なんだ?」
「亜人とは人間に似た外見であるが、人とは異なる部位を持つ人種の総称。獣人とは亜人の獣度合いが強いものの呼び名です。はい」
「なるほど、カテゴリーでは同じという訳か」
「ええ、そして亜人種は魔物に近いと思われている故にこの国では生活が困難、故に奴隷として扱われているのです」
「そしてですね。奴隷には」
「ガアアア! キャインキャイン!」
「だいじょーぶ!?」
「心配ありませんよカービィさん、……と、このように指示一つで罰を与えることが可能なのですよ」
「中々便利な魔法のようだな」
「俺も使えるのか?」
「ええ、何も指を鳴らさなくても条件を色々と設定できますよ。ステータス魔法に組み込むことも可能です」
「ふむ……」
「一応、奴隷に刻む文様にお客様の生体情報を覚えさせる儀式が必要でございますがね」
「奴隷の飼い主同士の命令の混濁が無いために、か?」
「物分りが良くて何よりです」
「まあ、良いだろう。コイツは幾らだ?」
「何分、戦闘において有能な分類ですからね……」
「金貨15枚でどうでしょう」
「相場が良く分からないが……相当オマケしているのだろうな?」
「もちろんでございます」
「買えないのを分かっていて一番高いのを見せているな?」
「はい。アナタはいずれお得意様になるお方、目を養っていただかねばこちらも困ります。下手な奴隷商に粗悪品を売られかねません」
「参考までにこの奴隷のステータスはコレでございますよ」
「コロシアムで戦っていた奴隷なのでしたがね。足と腕を悪くしてしまいまして、処分された者を拾い上げたのですよ」
「ふむ……」
「さて、一番の商品は見てもらいました。お客様はどのような奴隷がお好みで?」
「安い奴でまだ壊れていないのが良いな」
「となると戦闘向きや肉体労働向きではなくなりますが? 噂では……」
「俺はやっていない!」
「そーだよっ!ボクたちは何もしてないよ!」
「ふふふ、私としてはどちらでも良いのです、ではどのような奴隷がお好みです?」
「変に家庭向きも困る。性奴隷なんて持っての他だ」
「ふむ……噂とは異なる様子ですね勇者様」
「……俺はやってない」
「性別は?」
「出来れば男が良いが問わない」
「ふむ……」
「些か愛玩用にも劣りますがよろしいので?」
「見た目を気にしてどうする」
「Lvも低いですよ?」
「戦力が欲しいなら育てる」
「……面白い返答ですな。人を信じておりませんのに」
「奴隷は人じゃないんだろ? 物を育てるなら盾と変わらない。裏切らないのなら育てるさ」
「これはしてやられましたな」
「ではこちらです」
「ここが勇者様に提供できる最低ラインの奴隷ですな」
「左から遺伝病のラビット種、パニックと病を患ったラクーン種、雑種のリザードマンです」
「どれも問題を抱えている奴ばかりだな」
「ご指名のボーダーを満たせる範囲だと、ここが限界ですな。これより低くなると、正直……」
「ちなみに値段は?」
「左から銀貨25枚、30枚、40枚となっております」
「ふむ、Lvは?」
「5、1、8ですね」
「そういえば、ここの奴隷はみんな静かだな」
「騒いだら罰を与えます故」
「なるほど」
「この真ん中のはなんで安いんだ?」
「ラクーン種と言う見た目が些か悪い種族ゆえ、これがフォクス種なら問題ありでも高値で取引されるのですが」
「ほう……」
「顔も基準以下でしかも夜間にパニックを起します故、手を拱いているのです」
「在庫処分の中でまともな方がコレか?」
「いやはや、痛いところを突きますな」
「じゃあ真ん中の奴隷を買うとしよう」
「男じゃなくていいの?」
「あぁ。」
「なんとも邪悪な笑みに私も大満足でございますよ」
「ヒィ!?」
「さあ勇者様、少量の血をお分けください。そうすれば奴隷登録は終了し、この奴隷は勇者様の物です」
「なるほどね」
俺は作業用のナイフを自分の指に軽く突き立てる。
誰かに刃物を突きつけられると盾は反応するが自分の攻撃には意味が無いらしい。
そして戦闘での使用では無い場合。盾は反応しない。
血が滲むのを待ち、小皿にあるインクに数滴落とす。
奴隷商はインクを筆で吸い取り、女の子が羽織っていた布を部下に引き剥がさせて、胸に刻まれている奴隷の文様に塗りたくる。
「キャ、キャアアアアアアアアア……!」
「これでこの奴隷は勇者様の物です。では料金を」
「ああ」
ナオフミは奇妙なおじさんに銀貨31枚渡す。
「1枚、多いですよ?」
「この手続きに対する手数料だ。搾り取るつもりだったんだろう?」
「……よくお分かりで」
「まあ、良いでしょう。こちらも不良在庫の処分が出来ました故」
「ちなみに、あの手続きはどれくらいなんだ?」
「ふふ、込みでの料金ですよ」
「どうだかな」
「本当に食えないお方だ。ぞくぞくしてきましたよ」
「どうとでも言え」
「では、またのご来店を楽しみにしております」
「ああ」
「さて、お前の名前を聞いておこうか」
「……コホ……」
「ぐ、ぐう……」
「ほら、名前を言え」
「ラ、ラフタリア……コホ、コホ!」
「よろしくね。らふたりあ!」
「そうか、ラフタリアか、行くぞ」
「……」