体育祭が終わり、振替休日をはさんで登校日になった朝。俺はセットしておいた目覚ましで目覚め、適当にメシを作る。
昨日は朝にかなでが戻ってきた後、ジーサードとかなめに相当ほめちぎられて、祝いにいろいろもらったな。お前ら予定があったってまさか俺に渡すプレゼントを選ぶためにかなでを連れてったのか?まあうれしいからいいけどさ。
兄さんやじいちゃん、ばあちゃんからも電話で祝いの言葉をもらった。「さすが俺の弟だ」って認めてくれた兄さんの言葉が今も胸に残ってる。
かなでを起こして朝メシ並べてテレビをつけると、ちょうどニュースがやってた。
『今年の雄英高校体育祭が一昨日開かれ、多くのヒーローの卵たちが鎬を削りました。中でも今年大注目の1年生は___』
のところでブチッとテレビをきる。いっつも思うがなんでニュースになってんだ?こっ恥ずかしくてしょうがねえぞ。
「お兄ちゃん様、新聞です」
「お、ありがとうな」
かなでに取ってきてもらった新聞を見るとでかでかと「雄英体育祭開催!今年の優勝者は・・・・!」という見出しでいろいろ書かれてた。うん、なんで死体撃ちしてくんだよふざけんな!
メシを流し込んで他のところを見ていると、「ヒーロー殺し」についての話題が1面を使って書かれていた。思想犯ってやつだな、まーやってることは殺人鬼だけど。
かなでとともに準備を済ませ雄英への道を歩いていくと、通勤途中のサラリーマンや、小学生、中高生、というか会う人間のほとんどから声をかけられた。
「遠山キンジ君だろ!?体育祭すごかったよ。強いヒーローになってね!」だの
「遠山キンジ君ですよね!?わぁ!ファンになったんです!握手してください!」とか
「なあ優勝したにーちゃん!俺も将来雄英に入りたいんだ!どうしたらいいの?」
みたいな感じでなかなかえぐかった。かなでも辟易してたみたいだし、とりあえず適当に答えてその場は抜け出した。最後のやつだけは「体鍛えて、たくさん勉強しろ」ってマジレスしといたけど。
やっとの思いで雄英にたどり着いてかなでを3年生のヒーロー科に預けると、先輩から声をかけられた。パックマンみたいな目をしたムキムキの男子、目が鋭い俺と似たような雰囲気の男子、あとロングヘア―のカールがかかった女子だ。
「ねえ!君だろ?かなでちゃんのお兄さんってさ。あと体育祭優勝したのも!」
「ええ、そうですが・・・あなたは?」
「ああ、ごめんごめん!俺は通形ミリオ、こっちは天喰環と波動ねじれね!今年の優勝者がいつもかなでちゃんを送っている子だって知ってさ、どうしても声をかけたくなったんだ!」
「ああ、そういう・・・いつもかなでが世話になってます」
「ううん、そんなことないよ。特に環なんて子供が苦手なもんだから接しやすいかなでちゃんのことは気に入ってるみたいでさ。「ねえねえ!」」
話の途中なのに波動先輩がねじ込んできた。その瞳は好奇心に輝いているうーんこのタイプは苦手だぞ・・・
「体育祭で使った技ってさ、どうやったの!?あと、個性って何!?あとあと・・・かなでちゃん頂戴!」
「とりあえず最後のはダメです」
「波動さん・・・遠山が困ってるから・・・・」
いさめてくれる天喰先輩はいい人だ。まるで幼稚園児みたいな人だな、波動先輩。
「ああ、ここで引き留めちゃいけないね!サーは君に1票入れたみたいだから、ぜひとも職場体験ではうちに来てほしいな!」
「サー?」
「サー・ナイトアイのことだよ!俺はサーの事務所にインターンしててね!こうやって声をかけたのも半分は職場体験でうちに引き込むためなのさ!環はファットガム、ねじれはリューキュウのところでインターンしてる。みんな君に1票入れたみたいだからみんなまとめてスカウトに来てるってことだね!」
「ファットガムは、武闘派を欲しがってるからぜひとも来てほしいって」
「リューキュウはね!小回りが利く強い人材がほしいからって!だからぜひとも来てほしいな!」
なるほどねえ・・・しかし職場体験?そんなのもあるのか・・・・
3年生のクラスを辞して、自分のクラスのドアをがらりとあけ、挨拶を交わす。
「お、優勝者の登場だ!なあ遠山、お前学校くるまでにめっちゃ声かけられただろ!?どうだった?」
「人だかりができたよ・・・疲れたわ」
「だーやっぱそうだよなぁ!俺も声かけられのはそうなんだけどドンマイコールだったんだよ・・・」
「あー・・・ドンマイ?」
「お前まで言うんじゃねえよ!」
なんて瀬呂と話しているとがらりと相澤先生が入ってた。瞬間ぴたっと喧騒が止み、みんな静かになった。
「おはよう。体育祭お疲れ様だったな。今日のことだが・・・・ヒーロー情報学、今日はちょっと特別だぞ」
特別だぁ?なんだなんだ?小テストでもやるのか?
「ヒーロー名の考案・・・コードネーム決めだ」
お、いいなヒーローネーム。兄さんはカナ、キンイチの二つを使い分けてるが、俺も自分のやつ考えないとなと思ってたとこだ。
「はい静かに。これは先日話した「プロからのドラフト指名」に関係する。本格的になってくのは2年からだが、今回来た使命はお前らへの興味だ。卒業までに興味がなくなりゃ当然キャンセルされる」
当たり前だな。ヒーローだって仕事だ。使えない、あるいは自分のところに合わないやつをわざわざ雇用するわけがない。
「で、それを踏まえて今回来た指名はこうなってる。例年はもっとばらけるんだが・・・3人に注目が集まったな」
ふむ、俺は3000件で1番、轟、爆豪がおよそ2000ずつってとこか。ほかにもちょこちょこ別のやつに指名が入ってるな。
「だーーー白黒ついちまった!」
「見る目ないよねプロ!」
クラスのやつらが各々自分に入ったり入らなかったりした指名に一喜一憂する中相澤先生が
「これを踏まえ、指名のあるなし関係なくお前らには・・・・職場体験にいってもらう!」
朝通形先輩に説明されたやつか。こんな早くやるとは思わんかった。なるほどそれでヒーローネームね。
「お前らは先に体験したが、プロの活動を間近で見て、体験しより実りある訓練をしようって話だ。今日決めた名前はその職場でも呼ばれることになる。適当なもんつけりゃ・・・「地獄を見ちゃうよ!」」
「この時つけた名前がそのままヒーロ名になってるってヒーロー結構多いからね!」
ミッドナイト先生だ。何でこっち来たんだ?
「俺はそのあたりのセンスがないからミッドナイトさんに査定をしてもらう。将来自分がどうなるか「名は体を表す」ともいうがそれを考えてつけるように!以上」
といって相澤先生は寝袋に入って寝てしまった。せめて起きててくれ・・・・
「じゃ!このボードに考えたヒーロー名書いていってね!」
とボードが配られる。俺は・・・そうだな。きっとこれしかないって昔から決めてたやつがある。それでいこう。
と俺がさらさら書き、待つこと15分後・・・・・
「そろそろいいかしら?じゃあ、できた人から発表していってね!」
嘘だろ発表すんの!?いや、メディアに映るようになったら毎日言われるんだ。この程度のことで怖気づくんじゃない。
「じゃ、僕がいくよ☆」
トップバッターは青山だ。こいつとは話す機会がないからよくわからんが、どうなる!?
「輝きヒーロー・・・ I Can Not Stop Twinkling! 」
「「「短文!?」」」
やっべえこれは予想外だ。しょっぱなからとんでもねえ爆弾が飛び出したぞ!?
「うん、そこはIをとって省略形にしたほうが呼びやすいわね」
真面目に査定してるミッドナイトもそうだが・・・この空気は・・・!
「じゃ、次アタシね! エイリアンクイーン!」
「血が強酸性のアレを目指してるの!?やめときな!!」
やっぱり!完全に変なの2連チャンで大喜利っぽい空気になっちまった!これで発表するのは厳しいぞ。
「じゃあ次、私いいかしら?」
梅雨!!たのむ!空気を変えてくれ!
「梅雨入りヒーローフロッピー!昔から考えてたの」
「かわいい!いいじゃないの!」
完璧だ・・・!空気が完全に変わったぞ!ありがとうフロッピー!フォーエバーフロッピー!と半ばテンションがおかしくなった俺をよそに他のやつらもどんどん発表していく。
イヤホン=ジャック、テンタコル、セロファン、クリエティなどクラスのやつらの個性的な名前を聞きながら俺も手を上げ発表に移る。
「昔からこれにしようって決めてたんだ。
ボードに書かれたEnableという文字に対してミッドナイトは
「可能にするという意味ね!いい名前だわ!たくさんの技がある遠山君にピッタリね!」
と俺のヒーローネーム発表はそれで終わり、そのあと発表した爆豪が
「爆殺王」
と発表し、空気が死んだ挙句やり直しを食らい、ブチ切れる一幕があったがいつものことなので割愛する。
最後の緑谷が「デク」というヒーローネームを発表し、ざわついたが緑谷なりの理由があったらしく、全員納得したようだ。
「爆殺卿!!!」
・・・・爆豪はしばらくかかりそうだけど。
結局爆豪は苗字で落ち着き、それぞれ行く事務所について話していると・・・
「わわわ私が独特の体勢できたぁ!」
お、オールマイトだ。ちょうどいいな。
「緑谷少年、ちょっとおいで」
「あーオールマイト。ちょっといいですか?」
「ん?遠山少年か。かまわないよ。緑谷少年と一緒においで」
「うっす。かなでもつれてきたいので談話室の番号教えてください」
「ああ、いいとも。4番にいるからね」
と、言われたのでかなでを拾って談話室に入ると・・・・すさまじく震えているオールマイトとこれまたえらい表情をしている緑谷がいた。どうしたんだよ。
「ややややあ、かなで少女、遠山少年。い今私の要件は終わったところさ。何か用なのかい」
「あー職場体験のことなんですけどね。俺が2週間職場体験に行ってしまうとかなでの保護者がいなくなるんですよ。なのでかなでの事情を知っているあなたに知恵を貸してほしくて・・・」
「なるほど。休ませると公欠にはならず、かといって登校させても問題が生じてしまうと。ん~~ならいっそ雄英で預かろうか?」
「俺としては嬉しいのですが・・・大丈夫なのですか?」
「とりあえず今から校長先生のところに行って聞いてみようか。緑谷少年、話は以上だ。気をつけて帰りたまえ」
「えっと終わる前に出久お兄さん、それとオールマイト先生。2回目のエネルギーの譲渡を近いうちに行いたいのであとで空いてる時間を教えてください」
「おお、いいのかいかなで少女。あとで連絡をいれるよ」
「うん、ありがとうねかなでちゃん。僕もそうするよ」
緑谷と別れてオールマイトとかなでと一緒に校長室に向かう。そういや校長先生と直接話すのは初めてだな。どんな人なんだろうか。ネズミだけど。
校長室の豪華な扉をノックし、「いいよ」という声とともにドアを開け、入室する。
「やあ!遠山キンジ君!遠山かなでちゃん!初めまして、雄英高校の校長だよ!」
・・・軽いな!もっと重々しい人だと思ってたわ!でも一目見ただけで俺とかなでの名前を言い当てたし、すごい人なのは間違いなさそうだ。
「校長。遠山キンジ少年の職場体験に際し、かなで少女の保護者が不在になってしまうそうで・・・雄英で預かれないでしょうか?」
「ふむ、遠山君。かなでちゃんの事情はオールマイトには話したんだったね?もし雄英で預かるのであれば最低でもリカバリガールには事情を明かすことになる。構わないかい?」
リカバリガールか・・・かなでの学校での健康面考えると知っておいてもらったほうがよさそうだ。かなでを見ると頷いてるのでおれも
「構わないです。それと・・・かなでのことについてもう一つ知っておいてもらいたいことがあります」
「うん。なんだい?」
「かなで・・・正確には人工天才には反逆防止のためにとあるシステムが組み込まれています。それが・・・
「穏やかじゃない名前だね。詳細を聞いてもいいかい?」
「はい。このシステムはロスアラモスに定められたそれぞれ違う何らかの化合物を一定時間摂取しないと体調不良に始まり、最悪命を落とします。もしかなでに咳や喀血等の症状が出た場合、マシュマロを摂取させてください。マシュマロに含まれる化合物が、かなでに設定されたものです。」
「・・・うん。了解したよ。かなでちゃんは君が職場体験に行ってる間、雄英で責任もって預かるってことさ!」
「・・・ありがとうございます。本当なら俺が休めば済む話だというのに・・・」
「気にする必要はないさ!かなでちゃんの事情は私も知っているんだ。生徒の選択肢が狭まるようなことをさせないのが僕の役目なのさ!だから、安心していってくるといい!」
「重ね重ね、感謝します。それでは、失礼します」
いい人に恵まれたな、俺もかなでも。なら是が非でもしっかり学んでこないとな。
雄英から帰る傍らに、もらった指名表を眺める。聞いたことないヒーローから大物ヒーローまでずらりと名前が並ぶ中確かに朝先輩方にスカウトされたサーナイトアイ、ファットガム、リューキュウの名前を見つけた。
明後日までに行く場所決めないといけないし、どんなところがいいかしっかり考えないとな。かなでと手をつなぎながら俺はその小さな手の感触を確かめるようにぎゅっと握るのだった。
職場体験編突入です。ちなみに行くヒーロー事務所は次回わかりますのでお楽しみに!
これからもよろしくお願いします。