遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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あれー?ちょっとしかアンケ取ってないけどもしかしてファットガムって予想外に人気なのかしらん?

vsヒーロー殺しより人気だとは思わなかった。


第19弾

 ファットガムと一緒に街をめぐる。いわゆるパトロールと呼ばれるこの行為だが、警察がやるそれとは少しだけ性質が違う。警察は基本的に個性による攻撃ができないのに対し、ヒーローは攻撃ができるのだ。それはつまり、単純戦闘能力でも大きな差があるということだ。

 

 車で例えるなら、警察は一般自動車、ヒーローは武装した装甲車とかそんな感じだ。字面にすると世紀末この上ないが、犯罪抑止には間違いなく一役買っているといえるだろう。ちなみに一般人はチャリンコだ。

 

 

 「よっしゃ。エネイブル!犯罪が起きた場合、ヴィランのやることってのはなんやと思う?」

 

 「ざっくりとですが・・・目的のために、殺害、人質、周辺家屋の破壊、ですかね?」

 

 「大方正解やな。まーヴィランの目的は幅広い。そして、ワイらヒーローが犯罪が起きたときにするベストはと聞かれたら一つなんや。わかるか?」

 

 「そうですね・・・被害0での取り押さえ、でしょうか?」

 

 「正解や!ワイらは被害を出したらあかん。大体1年前におきたヘドロヴィランの事件あったやろ?あんなんは最悪のパターンやな。結局オールマイトが何とかしてくれた。けどな、それにばっかり頼るのはあかんねん。本当なら事件は未然に防ぐ、起きてしまったら最善手をその場その場で打つんや。理想論やけどな」

 

 そう語るファットガムの瞳には覚悟の炎が揺らめいている。やはり上位に入るヒーロー、おそらくすさまじいまでの経験がその思考に行きつかせたのだろう。

 

 

 「ほんでな「・・・助けてー!」エネイブル、聞こえたか?」

 

 「はい、北西大体400m先ってとこでしょうか。女性です」

 

 「増強系やのに器用やのお!お手柄や、急ぐで!」

 

 パトロール中常に個性をオンにしてたおかげである程度の聴音はできる。今回はそれが功をそうしたな。

 

 

 走ってその場所に向かうと首にナイフを突きつけられた女性が人質になっていた。経緯はわからないけどおそらく異形系であろうトカゲっぽい男ががなり立てている。

 

 

 「こいつ・・・ふざけやがって・・・!俺と付き合えるっていうのに断るとか頭沸いてんじゃねえのか!?」

 

 告白して断られたから逆上したのか。しかも割とめんどくさいタイプっぽいぞ。

 

 

 「そこまでや。自分、冷静になって考えてみい。今何しとるんや?」

 

 「はっ、ヒーローのおデブちゃんが何言ってんだ。こいつとの話の邪魔すんじゃねえよ!民事不介入ってやつだ!すっこんでろ!」

 

 「アホやないか自分?ワイがみとるだけでも改正銃刀法違反、脅迫、傷害のトリプルコンボやで?そんで公妨もほしいんか?今すぐその女の子はなしいや。そしたら情状酌量はあるで?」

 

 「うるせえ!それ以上近づくんじゃねえぞ!コイツの首が真っ赤に染まるぜ!?」

 

 

 明らかに興奮状態にある男はさらにナイフを首に近づける。反射的に抜銃してしまいそうになるが、ファットガムの許可が出てないので抑える。どうするんだ・・・?

 

 

 「やってみい。」

 

 「は?」

 

 「やってみい言うとるんや。耳ついてるんか?」

 

 「てめえヒーローなんだろ!そんな簡単に人質捨てるのかよ!」

 

 「なぁに言っとるんや。どうせお前はできへん。突発的にそういって逆上したのはええけど人を傷つける覚悟がない。さっきからナイフが震えてんのがその証拠や」

 

 すごいな、ナイフ、足の震え、目の動き、言葉の震え方まで全部分析して結果を予測したのか。犯人の目の動きが完全に逃げ道をなくしたそれだ。

 

 

 「くっ・・・うおおおおおお!!!」

 

 破れかぶれになったのか男が人質放り出してファットガムに突撃してきた。ファットガムが俺に目を向け、次に人質の女性に目を向けたので俺は放り出された人質の確保に走る。

 

 「ええか!エネイブル!ヴィラン退治はな!いかに敵を早く戦意喪失させるかや!まず一つ覚えて帰りぃ!」

 

 と俺に言ったファットガムの腹部に男が着弾し、ずぶずぶと沈んでいく。ファットガムの個性「脂肪吸着」だ。衝撃だろうが何だろうが脂肪に吸着させて沈めてしまう、防御に極めて有効な個性だ。しばらくじたばたしてた男が、シーンと酸欠でダランと伸びたところでファットガムが腹から引き出し、手首を縛って警察の到着を待つ。

 

 

 「すまんかったな、お嬢さん。怖かったやろ、飴ちゃんたべるか?」

 

 「もう大丈夫ですよ。すごいですね、ファットガム」

 

 

 「・・・うぅ・・ぐすっ・・ありがとうございます。あの人ストーカーだったんです。警察にも相談してたのに動いてくれなくて・・・」

 

 「なんやそれ!?はー警察もホンマしっかりせなあかんわ。ワイも言っておくさかいもう安心してええで」

 

 なるほどなー個性があろうがなかろうがこういうことはよくあるが、やっぱり個性ありきの人を傷つけることができるっていう意識の低下がこんな凶行が増える原因だろうな。

 

 

 サイレンの音が鳴り響き、何台かのパトカーが入ってきた。誰かが通報してたんだな。降りてきた警察の人たちはファットガムに向かって敬礼し、犯人に手錠をかけて連行しようとしてる。

 

 「お疲れ様です!ファットガム!事情聴取、よろしいですか?」

 

 「ええで。現着したときにはもう、この子が人質に取られとった。まあ痴情のもつれやな。うまいこと確保できたから怪我はないと思うけど精神的に相当きとる。ケアを徹底せえや。ええな?」

 

 「ええ、ありがとうございます。それとそっちの子は・・・?」

 

 「ん?ああ、今職場体験にきとる雄英の子や。まあそれはええ。ガイ者は警察にストーカーの相談してたけど動かんかったっていうとったで?調べて担当したやつシメろや。今回みたいなことが起こることがまずあかんのやからな」

 

 「本当ですか?わかりました。記録を洗います。ご協力、ありがとうございました」

 

 「ああ、次も頼むわー」

 

 

 再び敬礼を返して、被害者と犯人を乗せたパトカーが去っていき、俺とファットガムが残る。はー2日目なのにこんな事件にあうとかこの世も末だな。

 

 パトカーを見送ったファットガムがこっちを見ておもむろに手を伸ばして、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

 

 「いやーよく耐えたな!エネイブル!」

 

 「へ?いやどういうことですか?」

 

 「ん?ああ。ワイのところに来た職場体験の子たちはな、ああいう場面でワイがちょいダーディーなことをすると騒いだりして場が悪化することがあるんよ。やっぱ経験が足りんのと正義感だけ先走ってるんやな。その点お前さんはワイの指示が出るまでじっと耐えてワイの目線の指示だけで動いた。これはもうえらいことやで!」

 

 「あーそういう・・・あそこで騒いでもどうにかなるわけじゃなかったですしね」

 

 「それがわからない子もおるんや。経験不足やししゃーないんやけど、それで救えない命がでたらその子は折れてまう。こんなめんどい事件前にして、ちょい心配やったんだけど自分なら大丈夫やな!」

 

 「まあ、1回本物のやばいやつに遭遇してますからね・・・うちのクラスメイトだったらたぶん誰でも俺と同じことをしますよ」

 

 「そーだったな、自分ら経験があるんやったな。でもまあ今のができるってことは即席の連携もある程度できるって証明や。つぎからは確保もやってもらうかもしれん。気ぃ引き締めや!」

 

 

 

 

 

 

 ファットガムとまた人が多い密集地を歩く、今は給与体系の話を聞いてる。

 

 「さっき確保した犯人のこともそうなんやけど、ヒーローは公務員であり、歩合制や。さっきみたいな事件の確保、貢献度をお上に報告して、それに合ったおカネがお上からもらえるわけやな」

 

 なるほど、一定額ではなく完全歩合ってことはそれで生活できないヒーローもいるんじゃ・・・?・・・あ!

 

 「なるほど、それで副業もありになってるんですね?」

 

 「そーゆーことやな!テレビやコラボ商品、グッズ販売なんてのが主や。ワイも色々やってるで」

 

 「あーファットガムのたこ焼きソースとか見たことありますね。さすが大人気「ひったくりー!」」

 

 またかよ!ちょっと治安悪すぎじゃないか?声のした方を見ると原付に乗った男らしきフルフェイスメットがこっちに猛スピードで突っ込んでくる。

 

 

 「エネイブル。失敗しても何とかしたる。一回確保してみい!」

 

 「了解です!」

 

 

 密集地なので銃やナイフはダメだ。素手で何とかするぞ

 

 

 「どけ!邪魔だ!轢き飛ばすぞ!」

 

 「やれるもんならやってみやがれ」

 

 俺はヒスって原付の前で仁王立ちし、絶閂の構えをとる。原付との接触の瞬間、絶閂でインパクトの衝撃を全部地面に流し、一旦、原付を止め、男の手の上から片手でアクセルを緩め、ブレーキを握り推力を0にしてやる。焦った男がバイクから降りようとするのをアクセルを握っている腕でつかみ阻止、そのまま回り込み、キーをひねって抜いて安全確保する。

 

 そこから片腕のワイヤーで男の腕を縛り、後ろ手に回して両手とも縛ってやる。ついでに井筒捕りで盗ったものを確保し、男を地面に押さえつけ、確保完了だ。横でエンジンが切れた原付がガチャンと倒れ、シンとしていたその場がワアアアアアアと沸いた。

 

 

 「おおおおおすっげえ!誰だあのヒーロー!?」

 

 「ファットガムのサイドキック!?」

 

 「あれって雄英の子じゃない!?ってことは職場体験!?」

 

 「まだ学生かよ!いい場面にでくわしたなあ・・・」

 

 

 めちゃくちゃ好き勝手言うじゃねえか。確保した男はもう逃げられないと悟ったのかうなだれている。すまんが、運がなかったな。

 

 

 「やるやないかエネイブル!ホンマ自分に指名入れてよかったで!」

 

 「光栄っす。思ったよりも難しいっすね。銃もナイフも使えないのは戦闘の幅が狭まります」

 

 「すんませーん。それ、うちのもんなんです!よかったあ・・・ありがとうございます。」

 

 「ああ、はいどうぞ。怪我はしてませんか?もうすぐ警察の方が来ますので指示に従ってくださいね」

 

 「ええ、もちろんです。あの・・・ヒーロー名、お聞きしてもいいですか?」

 

 どうしよう、俺は免許持った正規のヒーローじゃない。ファットガムの許可があったとはいえ、ここで名乗ってもいいものだろうか?と困ってる俺を見たファットガムが

 

 「この子は雄英の子でまだヒーローの卵やねん。やから、仮のヒーロー名ですまへんけど・・・エネイブル!それがこの子の今の名前や!絶対将来強いヒーローになるさかい、覚えたってや!」

 

 「・・・エネイブル・・・覚えました!絶対ファンになるから、頑張ってヒーローになってね!今日はありがとう!」

 

 そう言って到着したパトカーに歩いて行ったおそらく同年代であろう女の子を見送って、俺は初めてのヒーロー活動になにか感慨深いものを感じてた。

 

 

 

 「・・・うれしいやろ?守ったからってお礼を言われるのが当然やない、けどな、ああやって純粋な感謝を伝えてくれるひとだってぎょうさんおる。ワイはそれが好きでヒーローやってるんや」

 

 「ええ、なんとなくですけどわかります。俺はきっと、今日を絶対に忘れない」

 

 「それでええ!よし、じゃあ次いくで!どんどんいろんな経験を積ましたるさかい、ついてきいや!」

 

 「はい!」

 

 

 その後は特に目立った事件もなく、ファットガム事務所に帰ることができた。なんでも今日みたいに事件が連続して起こるのはなかなか珍しいらしい。ほんとならほとんどファンサービスで終わるもんやったとファットガムがファーと笑いながら教えてくれた。

 

 

 事務所で今日やったことを記録していると、ファットガムが

 

 「お、今日のこともうニュースやっとるで!お前さんのことは流石に隠してるけどな!」

 

 とテレビ画面を指してきた。そこには確かに今日の人質事件とひったくりのニュースがやっててファットガムが解決したことになってた。まー資格未取得者が解決しましたなんて大っぴらに言えないよなあ。まああの場にいた人間からすりゃ公然の秘密ってやつになるのか。

 

 「まだテレビインタビューとか受けれる気がしないんでこの感じなのは助かりますね・・・よし、終わりました!」

 

 「お、そうか!じゃあメシいこか!今度は別の店やで?」

 

 「昨日もそうだったのに、いいんですか?」

 

 「ええ!今日のお手柄のご褒美や!明日は訓練にあてるさかい、英気を養っておけってことやな!」

 

 「そうですか、ではありがたくごちそうになります!」

 

 「それでええ!素直が一番やぞ!」

 

 

 

 事務所をサイドキックの皆さんに見送られながら出発し、またしてもファットガムおすすめのお店まで歩いていく。やはり人気なのはそうだが・・・俺にも声をかける人がいる。なぜだ?と思ったら携帯の画面を見せてくれて 「ファットガム事務所期待の新星!?雄英からの職場体験!」という名目でまとめサイトがあることを教えてもらった。

 

 な、なるほど・・・しかもファットガムのスレッドにまで話題が出てるらしくこの周知具合は頷けるな。すごい恥ずかしいからおやめになって?

 

 

 「よかったなキンジ!人気者やで!今のうちになれとけや!」

 

 「将来そうなるかもですけど今なるのは予想外でした・・・・」

 

 といいつつファットガムが入った店は・・・ラーメン屋だ。同じように「いつもの」を注文したファットガムに対し俺はチャーシュー麺をたのんだ。今度は何がでてくるんだ・・・?

 

 

 「お待たせしました!当店特性、超壺麺!ファットガム特性スペシャルになります!こちらチャーシュー麺ですね!」

 

 ・・・壺だ。しかもテーブルの半分くらいのサイズがあるでっかい壺。フードファイターもびっくりだな。かるく俺のサイズの数十倍はあるラーメンをファットガムが吸い込んでいくのを横目に、俺は明日の訓練に思いをはせるのであった。 

 

 

 

 

 




はっ!?まさかこれは読者からの「いっそユー珍道中とヒーロー殺し両方書くんだよあくしろよ」という謎のプレッシャーなのでは・・・?(混乱)



やろうと思えばできるけど作業量がやばいのでやりたくないなぁ(できないとは言ってない)


これからもよろしくお願いします。
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