遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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 林間学校編スタートです。個人的には2番目に好きな話ですね。


第26弾

俺と心操が相澤先生にしごかれた同日、買い物に行っていた緑谷が死柄木に遭遇したことが全体チャットで送られてきた。幸い緑谷は無傷だったが精神的にかなりきてたみたいだ。というかそもそもよく無事ですんだと思う。

 

 「えー、お前らも知ってる通りそんなことがあった。なので例年使ってる合宿所をキャンセル、行先は当日まで明かさないことになった」

 

 まじか、どこに行くかとかかなでに教えちまったよ。かなでは夏休み期間中はじいちゃんのところに行く予定だからいいんだけどさ。クラスのやつらも突然の行先変更に戸惑っているようだ。

 

 「とりあえず日程も変わる。少しずれるがすまんが合わせてくれ。以上解散」

 

 ホームルームが終わり、もう明日からは夏休みだ。合宿は前倒しして明後日になる。俺も準備しとかねえとな。

 

 「キンジくーん!一緒に帰ろー!」

 

 「ん?ああ途中までな」

 

 「かなでちゃんはー?」

 

 「ああ、もう兄さんが迎えに来て東京に戻ったよ。俺がいないからしょうがないけどな」

 

 そう、俺はもう会ってないが兄さんからメールで連絡がありかなでとともに俺の実家まで行ってしまったのだ。どうやら兄さんが休みを取らな過ぎて労働法に引っかかったらしい。お上から怒られて3日ほど有休をとらざるを得なくなり、そのついでという形でかなでの面倒を見てくれるというのだ。

 

 「そうなんだー。キンジ君はさ、もう準備できてるの?」

 

 「いや、俺の場合ナイフとか銃とか危ないもんが多いからな。装備以外は別にできてるんだけど危ないもんは直前に詰めなきゃなんねえんだ。やるなら明日だな」

 

 「武器を持つってのも大変なんだねー。」

 

 「そりゃな」

 

 とりとめのない会話をはさみながら透と一緒に帰り、途中で別れた俺はスーパーで合宿に必要そうなものを買って帰ったのだった。

 

 翌日荷物をまとめていると、結構な大荷物になった。1週間分だからでかくなるのはそうなんだがなにせ使う弾薬とかが多すぎる。詰めすぎて誤爆でもしようもんなら大惨事不可避だ。というわけで相澤先生に連絡を入れてどういうことをするかだけ教えてほしいと質問し、弾薬を取捨選択しようとしたのだが

 

 『するのは個性の強化だ。武器はいらんというか持ってくるな。ナイフ程度でいい』

 

 とのことだったので思い切って銃は置いていくことにした。バタフライナイフと、念のためジーサード経由でもらった分厚いサバイバルナイフを持っていくことにした。ついでに仕込みワイヤーをいくつか。これで準備完了だ。明日からの合宿が楽しみだな。

 

 

 

 

 「え!?A組補習いるの!?あれあれあれぇ!?A組はB組よりずっと優秀なはずなのにおかしいな!?」

 

 うるせえ。翌日の林間学校当日に俺たちを待っていたのはB組の物間によるおかしな一人演説だった。こいつって頭の中どうなってるんだろうな、なんかこう嫉妬?羨望?みたいなものが透けて見える。

 

 「B組だってA組に負けてないんだ」っていう感情がオーバーフローしてるのかもな。クラス愛があるのは結構なんだが、俺たちだって好きでヴィランに襲われたわけじゃないしなんだったら被害者だっている。こいつ飯田の兄が被害にあったのを知ってて平気で煽ってくるから正直好かん。

 

 「はいはい、そこまでな。ごめんね」

 

 トン、と物間の意識を手刀で刈り取った拳藤が謝るが、その状態がいつもだったら正直よくないんじゃねえの?別に口がよく回るのは武器なんだが自制を覚えてほしいと思う。

 

 「体育祭じゃいろいろあったけど、よろしくなA組」

 

 「ん」

 

 

 

 B組の女子たちがそう言ってバスのほうに行っちまったので俺もバスに乗り込んで適当に席に座る。窓際なのは都合がいい。カーテン閉めてつくまで爆睡しようと考えていると

 

 「あら、遠山ちゃん。隣いいかしら?」

 

 「ん?ああ梅雨か。いいぞ」

 

 「ありがと。林間学校、楽しみね?」

 

 「そうだな。俺もいつもより体がかるくて楽だわ」

 

 「どういうことかしら?」

 

 「相澤先生に言われてな、銃とマガジンは置いてきたんだ。いつもより5キロくらいは軽いぞ」

 

 「そうだったの。私、お友達とこうやって学校行事でお泊りするなんて修学旅行くらいしか経験ないからこう見えてわくわくなのよ?」

 

 梅雨の顔をじっと見つめてみると、確かにいつものかわいいカエルっぽいポーカーフェイスが若干緩んで笑顔になってるな。そんなに楽しみなのか?と思っていると梅雨の顔に赤みがさした。

 

 「その、遠山ちゃん・・・そんな見つめられると恥ずかしいわ・・・」

 

 「ん、ああすまん。かわいい笑顔だなって思ってな」

 

 「ケロ・・・・」

 

 あ、なんかもっと赤くなっちまった。言葉選びミスったか?と思っていると

 

 「なんだよ遠山ばっかよぉ!ラブコメしてんじゃねえぞ!オイラにもわけろください!」

 

 「峰田ちゃん・・・」

 

 峰田が口をはさんだ瞬間スンッと梅雨の顔がいつものポーカーフェイスに戻ったっていうかなんか冷たくなっちまったぞ。やめてくれよ隣のやつの機嫌損ねるのは・・・・こっから何時間かずっと一緒なんだぞ?

 

 「お前ら、一旦聞け。こっから1時間後1回停車する。そのあとはしばらく・・・」

 

 「しりとりしよー!」「ポッキー頂戴!」「みんな!静粛にするんだ!」「音楽流そうぜ!夏っぽいやつ!」

 

 「まあ、いいか」

 

 よかねーよ相澤先生何言おうとしてたんだよ。この後の予定とかじゃないの?1回停車することしかわからなかったんだけど?がやがやとうるさいクラスのやつらを見て相澤先生は何か言おうとするのをやめてしまった。ひっじょーに嫌な予感がする。具体的にはこの後の日程について全く不明瞭になる点だ。

 

 なるようになるか?いや、うん。面倒くさいことじゃないことを祈ろう。

 

 

 そんなかんじでわいわいがやがやとし、俺が一睡もできないまま1時間が過ぎた。バスって結構寝やすいから眠っておきたかったんだけどなあ・・・・

 

 バスが泊まり、相澤先生が休憩宣言をしてクラスのやつらが降りる。俺もバスの近くで外の空気を吸うが・・・なんかおかしいな。B組のバスは?というか何の施設もない、パーキングなのかどうかすらも不明だぞ?

 

 「なんの目的もなく、では意味がないからな・・・ご無沙汰してます」

 

 相澤先生が頭を下げた先には、おそらくヒーローである猫っぽいスーツを着た女性2人と、小学校低学年くらいの男の子がいた。というかヒーローのほうは見覚えがある。たしか山岳救助専門のヒーロー、ワイルドワイルドプッジ―キャッツのメンバーのはずだ。

 

 「煌めく眼でロックオン!」「キュートにキャットにスティンガー!」

 

 「「ワイルドワイルド・プッシーキャッツ!」」

 

 ビシィ!と決めポーズと口上を述べた2人のヒーローにいち早く反応したのは、ヒーローオタクの緑谷だ。

 

 「連盟事務所を構える4名のヒーロー集団!山岳救助を得意とするキャリア12年のベテラ「心は18!」」

 

 年、気にしてたのか・・・と緑谷が顔面を猫の手でアイアンクローされてるのを横目に嫌な予感がフルスロットルだ。俺は少しづつ後ずさりしてバスの近くまで下がる。

 

 「今回の合宿でお世話になる」

 

 「で、合宿所はあそこねー。ここら一帯私らの私有地なんだけど・・・」

 

 さされたのは森の向こうの山のふもとだ。へー、あんなところに建物があるのか・・・なんで今それを紹介したんだ?

 

 「今は午前9時30分・・・順当にいけば12時前後かしらね?12時半までにたどり着けなかったキティはご飯抜きね」

 

 「やべえぞ!もどれ!」

 

 「わるいね諸君」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・と地面が鳴動し始めたと同時に俺はバスの中ではなくバスの下にもぐり車体に張り付く。兄さんに教わった「コバンザメ」だ。同時に土石流が起きてクラスのやつらが流されていっちまった!おいおい冗談だろ。さすがにこんなことするとは思わんかった。と一人冷や汗をかきながら横を見ると・・・車体の下を覗き込んだ相澤先生とばっちり目が合った。

 

 「遠山」

 

 「・・・はい」

 

 「蹴落とされたいか?自分で降りるか?選ばせてやる」

 

 「・・・自分で降ります」

 

 車体から出てきた俺を見たピクシーボブが

 

 「あら、避けたのねん。将来有望だわあ・・・みんなあっちよ。個性は使っていいから行ってらっしゃいな」

 

 「うっす」

 

 結局避けたのに崖ダイブをさせられる羽目になった俺がピクシーボブが着地用に作った柔らかい土の上にボスン!と着地すると土くれの塊が散乱してる中クラスのやつらが騒いでいた。

 

 「あ!遠山!お前どこにいたんだよ!」

 

 「落とされる前に避けたら自分で降りるハメになった」

 

 「避けてたんかい!ってことはこれ・・・」

 

 「ああ、これも合宿の一環だろ。方向はわかってるんだからさっさといくぞ」

 

 「「「「おう!(はい!)」」」」

 

 

 合宿所までの道のりは森の中だけあってなかなか厳しい。それに加えてピクシーボブの個性で作られた土の魔獣が襲ってくるもんだからめんどくさいことこの上ない、が

 

 「らあ!」

 「死ねぇ!」

 「くっ!」

 「っ!」

 「おらっ!」

 

 俺、緑谷、爆豪、飯田、轟を筆頭とした戦闘力の高いメンツが躊躇なく土魔獣を砕いていく、俺は鷹捲を中心にした打撃技、ほかはそれぞれの個性だ。弱いけど数が多いんだよなあ。無双ゲーやってる気分になってくる。

 

 というかこれやるってわかってたから相澤先生は俺に銃を置いてこさせたんだな?俺から遠距離攻撃を取り去ることで強制的に弱点がある状態を作りやがった。

 

 

 「こっち!7体くる!」

 

 「僕がいく!遠山君手伝って!」

 

 「おう!」

 

 耳郎がイヤホンジャックで聴音した結果をまわりに周知する。反応した緑谷が空中から、俺が地上から同時に攻める。緑谷が踵落としで1体目を葬り、俺が跳鷹で2体同時に砕く、穴を埋めるように耳郎のイヤホンジャック、瀬呂のテープ、峰田のもぎもぎが飛んできて他をあっという間に行動不能にする。

 

 周りも見てみるとみんな善戦してるな。対人間じゃないから躊躇がないのもあるかもしれない。この様子なら普通に言われた時間につくんじゃねえか?

 

 

 

 

 「・・・やっと・・・ついた・・・・」

 

 全然そんなことなかった。宿泊施設まで近づくにつれ魔獣の襲撃は多く、強くなっていった。それに比べ疲労を蓄積した俺たちは相対的に弱くなっていく。まず許容上限のあったやつらがダウン、それを守るように陣形を組みなおしたせいで一人当たりの分量が増えたことによる疲労の増加がダメ押しとなってついた俺たちは完全にグロッキー、指一本で倒せる状態になってしまった。

 

 「おー、やっと来たね。お昼は抜くまでもなかったねえ」

 

 「何が・・・3時間・・・ハァ・・・ですか・・・」

 

 「ごめんね。あれは私たちならって意味。でも正直もっとかかるって思ってた。いいね君ら・・・特にそこの5人!初動が早かったわ!迷いのなさは経験値によるものかしらね?」

 

 どうでもいいから休ませてくれ・・・と俺が半ば脳みその使い過ぎで意識を飛ばしていると唾かけれらたり、緑谷がマンダレイの従甥に金的入れられたりしたがそれ以外特に何も起こることはなくバスから荷物を降ろして部屋まで運び、そのまま食堂に集まることができた。あぁ・・・腹減った。

 

 夕食は大盛況だ。ヒーローってのは料理上手なのもステータスなのか?と思うほどプッシーキャッツの手料理は旨かった。特に切島と上鳴、腹が減りすぎてテンションがぶっ飛んでたな。ピクシーボブがガン引きだ。俺も腹が減って眠気もマックスなので詰め込めるだけ詰め込む。ヒステリアモードも個性も脳機能をフルで使うから使いすぎると体からブドウ糖といったエネルギー源が奪われていく。今チャージしておかないと明日までもたん。

 

 

 夕食の後はそろって風呂だ。もちろん男女別のため事故は起こりえないだろう。と一応風呂好きを自負してる俺は土まみれの体を入念に洗い、頭を洗ってでかい露天風呂のお湯につかる。ああ・・・たまんねえ

 

 「おいおい・・・今日日男女の入浴時間ずらさないとか・・・なら今から起こるのは事故・・・事故なんすよ」

 

 「峰田君、一人で何言ってるの?」

 

 「ほら・・・この壁の向こう・・・いるんすよ・・・」

 

 「峰田君やめたまえ!君がやろうとしてることは自分も女性陣も貶める行為だぞ!」

 

 峰田は元気だなあ・・・とぼんやり考えていると、サーッとやろうとしてることに思い当たって思考が一気に冴えた。げっ!位置的にめちゃめちゃ遠いじゃねえか!今から走ってまにあうか!?

 

 

 「壁とは越えるためにある! plus ultra!」

 

 校訓をそんな最低行為の免罪符にするんじゃねえ!てかはやっ!まにあわん!と俺が今から起こる性犯罪を前に顔を青ざめさせると、峰田が上り切った先にマンダレイの従甥があらわれ、峰田を落とした。ナイス!

 

 が、お礼を言われて振り返ってしまったのが行かんかった。驚いて落ちたのを緑谷がキャッチ、気絶したのをマンダレイに見せに行ってしまった。峰田は飯田がケツから顔面キャッチといういかにも嫌な感じだったが流石にクラスの男子全員のにらみは効いたのだろう。そそくさと出ていった。

 

 結局俺たちは全員で(爆豪は鼻で笑っていた)ため息をついて露天風呂を堪能するのであった。

 




 土魔獣編は原作でも描写はそんなになかったのであっさり風味。さーてこっからどうしよっかなー

 これからもよろしくお願いします。
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