走る、走る。現状向かうのはスタート位置までだ。そっからは施設までダッシュだ。きっとプロがいるところまで戻れば何とかなる。甘くヒスってた俺も、ヒスる感覚に身を任せ、ヒステリアモードに入り、個性をかけ、万全の状態にする。しばらく走っていると・・・
「っ!八百万、切島!それとB組の・・・!」
「遠山さん!葉隠さん!ご無事でしたのね!」
「遠山!葉隠!やっぱり無事だったか!」
「うん、キンジくんがガスが来る前に気づいてくれたの!ヤオモモちゃんも無事でよかった~!」
「で、そっちは・・・?」
「泡瀬洋雪だ!泡瀬でいい!体育祭1位と合流できたのは運がいいと思う。手伝ってくれないか?奥に残ってる他のB組の救助に行きたいんだ」
「残ってた中で俺が一番タフだったからな、俺がついてきた」
そっか、驚かせる役のやつらはまだ奥に残ってるのか・・・!とすればこのガスを吸い続けるのはまずい・・・
「ああ、俺はいい。けど透もつれてくぞ。一人にしたら危険だ。きてくれるか?」
「うん!わかった!どこまで行けばいいかな?」
「助かる。待機所はこっちだ。少し道から外れるがついてきてくれ」
(この場にいる雄英の生徒、教員へ連絡!ヴィランと思われる2名の襲撃を確認!戦闘は避けて施設への合流を!スタート位置まで戻らず真っすぐ待避しなさい!)
マンダレイだ!やっぱりヴィランの襲撃だったのか。絶対漏れないように万全を期したはずなのにどうして・・・・いや、今はいい。とにかくこの事態を収拾しないと!
「遠山さん!葉隠さん!こちらをお使いください!」
「助かる!」
八百万が差し出したのはガスマスクだ。全員分用意し、俺たちはそれぞれマスクを着用して反転し道を外れながら待機所を目指して走る。
「しかしまあ!どうやってここがわかったんだろうな!ヴィランのやつら!」
「それを考えるのは後だ切島。現状襲撃されてる以上どっかから漏れたんだろ。とりあえず救助して最短で施設まで・・っ!」
ドゴォォォン!と山の方向から轟音が響いた。これができるのは全力の緑谷か・・・あるいは緑谷並みのパワーを持ったヴィランが来たか・・・急がないと被害がどんどん大きくなる!
3分ほどまた走るとマンダレイのテレパスが響いた。
(A組B組総員に告ぐ!プロヒーロー、イレイザーヘッドの名において戦闘を許可する!繰り返す!戦闘を許可する!)
「おい!これ・・・」
「ああ、相当やばいってことだ。八百万!」
「はい!」
「投げナイフ作ってくれ、小さくていい。10本くらいありゃ十分だ」
俺がでっかいサバイバルナイフを腰元から引き抜きながら告げると八百万はダガー型の投げナイフを10本、ホルダーと一緒に作ってくれた。気が利くこって
(それと、生徒の「かっちゃん」!いい?「かっちゃん」は戦闘を避け、全速力で帰還すること!)
「かっちゃんって・・・爆豪か!?」
「爆豪くん・・・!?」
名指しってことはヴィランの誰かがゲロったのか!そんでこの言い方は緑谷か・・・ってことはさっきの轟音緑谷だったんだな!?やばいぞ、あいつ重傷を負ってなお動いてるんだ・・・!
「おい、急ぐぞ!たぶん緑谷のやつが骨折しながら動いてる!このまま・・・っ!?!?全員しゃがめぇ!」
俺の突然の号令に反応できたのは透、切島、八百万だ。泡瀬は経験不足か何なのか反応が遅れた、まずい!
「ネホヒャンッ!」
泡瀬の前に入り、振るわれた
「ぬぁぁぁぁ!!!!」
全力の桜花と秋水で無理やり跳ね上げ、そのまま土手っ腹に向かって秋水の蹴りでぶっ飛ばす。跳ね上げた衝撃でジーサードからもらったナイフは甲高い音を立て真っ二つに折れてしまった。何ちゅう威力をしてやがる・・・!
「おい、泡瀬。大丈夫か?」
「あ、ああ・・・なんだよあれ・・・」
「おい、遠山あれって・・・」
「ああ、USJで出た・・・脳無。たぶんアレのバリエーションだ。死柄木が改造人間だって言ってたしな」
「それってオールマイト先生が倒したっていう・・・」
「ネホヒャンッ!」
ゆっくりと姿を現したそれは、灰色の肉体に体中から生やしたチェーンソーを纏った異形だった。脳みそ丸出しのあの造形・・・多少身にまとってるものや体形に差異はあれど脳無だ、間違いない。
「逃がしてくれる雰囲気じゃねえな。おい切島、アレ受け止められるか?」
「だれに言ってんだよ。硬化の男だぜ?あんくらい止められなくてヒーローになれるかよ」
「そりゃ頼もしいな。透、八百万、下がってろ。泡瀬は二人守れ、男だろ。切島、手伝ってくれ」
「任された!」
「ああ・・・」
「キンジくん、怪我しないでね・・・」
「何もできないのは歯がゆいですが・・・遠山さん、これを」
八百万が渡してくれたのは2本の頑丈そうな鉈だった。これは助かるな・・・あの尋常じゃない数のチェーンソーにどこまで対抗できるかはわからないが、何とかするんだ。じゃないと全員お陀仏だぞ。
「助かる・・・じゃ、行くぞ切島。ビビんなよ?」
「お前もだぜ、遠山」
「ネホヒャンッ!!!」
脳無が突っ込んできてチェーンソーを二つ振り下ろしてくる。
「うらああああ!!」
切島が雄たけびと共に前に出て硬化した体で受け止める。削られる音が響くが俺が切島の肩を踏み台にして脳無の顔面に膝蹴りをお見舞いする。たたらを踏んで下がった脳無の顔に肩車の体勢になった俺が、頭を桜花で下に倒し、そのままバク宙の要領で1回転し脳無を地面にたたきつける。いわゆるフランケンシュタイナーってやつだな。前後は逆だが
「ネホ・・・」
すぐさま離れた俺がいた位置にチェーンソーが飛んでくる。またゆらりと立ち上がった脳無だが・・・たたきつけたときにできた擦り傷が再生していってる。ケッ、脳無に再生機能はお約束ってか?ふざけたもんつくってくれるよまったく。
「切島、持久戦だぜ。硬化はどんくらい持つ?」
「根性!っていいてえが・・・1回30秒だ。全身を力み続けるならどうしても息継ぎがいる」
「そんだけありゃ十分だ。もっかい受け止めてくれ」
「おうよ!」
またチェーンソーを振り回してくる脳無だが、切島がまた受け止める。俺は切島を飛び越えるように体をひねりながらジャンプ、そのまま鉈に鷹捲を打ち込み、振動を纏わせる。こいつは間宮の技の一つ「天鷹」武器から直接鷹捲を伝える技だ。
滞空攻撃のように別のチェーンソーを俺に向けてくる脳無だが、天鷹によって鉈に触れたチェーンソーから砕けていく、切島を超えるように着地する瞬間、両手の鉈を脳無の両肩に突き刺し、さらに鷹捲を直接脳無にぶち込む。
水風船が破裂するように脳無の両肘から先が爆散し、切島を襲っていたチェーンソーが明後日の方向に吹き飛ぶ。
「大和っ!」
ドォォォン!と脳無が30mほど吹っ飛んだが・・・ヒステリアモードの超視力が教えてくれた、まだ終わってねえ。
「おいおい勘弁してくれよ・・・・」
「グルガアアアアアアアアア!!!!」
こちらにダッシュで戻ってきた脳無はチェーンソーのハリネズミと化していた。そのまま俺たちを轢きつぶすつもりらしい。
「受け止める!遠山、前セメントス先生に使ったアレ!いけるんじゃねえか!?」
「跳鷹か!やるからきっちり受け止めろよ!」
「当然!お前もしくんなよ!」
「ネ”ボビャンッ!!!」
再生しかかってる両手を血を振り乱しながら突撃してくる脳無を全身を最大限硬化した切島が再度受け止める。ゴギャギャギャ!!!とチェーンソーと切島の我慢比べが始まる。が、俺はそこまで我慢強くない、切島に怪我させるわけにもいかんしな
「おらぁっ!!!」
切島の体に跳鷹を打ちこむ。前と同じように切島の体を伝導したパルスが、接触してるチェーンソーを破壊していく、衝撃に2歩、3歩と後退する脳無に向かって、クルッとそれぞれターンをするように切島と入れ替わった俺が脳無の脇を挟み込むように手のひらを当て、そのまま大和で圧縮するように無寸勁を打ち込む。
バキバキバキィ!と脳無の肋骨を残らず粉砕し、脳無が前のめりに倒れたのを確認して俺は力を抜く。この技は「雷鳴響」。相手の胴を挟み込むように打撃を撃つことで肋骨を粉砕し、肺に突き刺すという通常の人間なら即死不可避の技だ。粉砕された肋骨がかなでる音が雷が響くようだから名付けられた。
こんだけやればさすがに再生に時間がかかるだろう。USJのアイツほど再生能力は高くないみたいだしな。とっととずらかって安全を確保せねば。
「おい、とりあえず再生される前に逃げるぞ!幸いガスも晴れてきた。このまま逃げんぞ!」
「わかりましたわ!泡瀬さん、念のためこれを脳無の体に!発信機ですわ!」
「わかった!・・・よし!これでいい、いこう!」
無限に付き合ってられるほど俺たちの体力も時間もあるわけじゃない。捕まえておけないのは悔しいが一計を案じてくれた八百万のおかげである程度は楽になった。
「ねえ!あれ!緑谷くんたちじゃない!?」
「んだと!?ほんとだ!轟と障子もいるじゃねえか!」
「飛んでるってことは麗日もいるな・・・あの舌は梅雨か!着地点までいくぞ、合流しよう!」
透が指さす先にはおそらく麗日の個性で浮かぶ緑谷、轟、障子を梅雨の舌が巻き取って投げ飛ばすところだった。着地点を概算し、全速力でそこまで向かうが緑谷たちの着地のほうが早い。
俺たちがつくと既に黒霧のものと思われるワープゲートが展開しその中にヴィランが入っていくところだった。んなろっ!!!
「マジックの基本はね・・・物を見せびらかす時ってのは、トリックがあるときなんだぜ?」
「そりゃ勉強になったよ、くそったれ!」
奇術師のような見た目をしたヴィランが口の中から玉を2つ見せびらかしたのを見て、同じものが障子の手に握られてるのを確認した俺はそれが何なのかはともかく重要なもんだと判断した、ので
パパパパパァァァン!!!と超音速の桜花で投げナイフをすべて投げつける。こいつは「
「誰か掴めっ!!!」
両手が衝撃波で自損した俺が叫ぶ。轟と障子が飛び込み、玉を掴もうとするが・・・
「残念だな、悲しいなあ・・・轟、焦凍」
体中を縫った焦げた肌をした男に一つ玉を奪われてしまった。そのまま黒霧がワープを開始していく
「一応確認だ。コンプレス、解除」
「ってぇな・・・俺のショウが台無しだぜ。」
パチン!と指を鳴らしたヴィランに合わせ俺たちのほうの玉が常闇に、もう一つのほうが爆豪に変わった。そういうことかよ!くっそどうしたらいい!彼我の距離がありすぎる!
それでも全力で走って距離を詰めようとする俺だが、無情にも黒霧のワープは完了していく
「問題、なし」
「爆豪!」「かっちゃん!」
「くんな、デク」
爆豪はそう言い残し、ヴィランに拉致されてしまった。
「うわあああああああああああああああああ!!!!」
緑谷の慟哭がこだまする中、遅れてやってきた透、切島、八百万、泡瀬がこの惨状をみて察したのだろう。力なく座り込んだ俺たちに無言で応急処置を施し始めた。
「ねえ、キンジくん・・・どうして、こんなことになっちゃったのかな」
八百万が作ってくれた包帯を俺の手に巻きながら、涙声で透が聞いてくる。
「やられた・・・としか言えん。想定が甘かったんだ、雄英の。USJで襲撃された時点できっとどっかでこうなるってわかってなきゃいけなかったんだよ・・・クソッ」
「うぅ、ぐすっ・・・どうして・・・どうして・・・」
泣き出してしまった透に対して俺はろくな慰めの言葉すらかけてやることが出来ない。気休めに頭を撫でてやりながら、俺はヴィラン連合に対してフツフツと怒りがわいてくるのを感じた。運が悪かった?確かにそうなのかもしれない。雄英が間抜けだった?事実かもしれない・・・けど悪いのは俺たちじゃない。ヴィランのやつらだ。
「・・・次あった時ただですむと思うなよ、ヴィラン連合」
俺がつぶやいた言葉におおかれすくなかれ思うところはあったのだろう。全員何か決意したような目をしていた。
次からちょっとオリジナル展開…原作の大筋は変わりませんが、少しだけ作者の考えた展開に入らせてもらいます。
これからもよろしくお願いします。