と、いうわけで皇桜女学院の先輩方とトレーニングをするわけになったのだが・・・紗倉先輩は正直鍛えてる様子が全くないな・・・女性らしいよく言えばふくよかな、悪く言えばぽっちゃりとした体形をしている。それに比べて奏流院先輩と上原先輩は結構鍛えてる感じがする。特に上原先輩は階級制度がある競技特有の絞り方をしてるからなんとなくわかるが、ボクシングだな?
「さて、気を取り直して葉隠さん!おもりは何キロにするんだい?」
「60キロの20回を3セットでお願いしまーす!」
「でえええ60キロ!?私の3倍じゃん!しかも20回3セットって・・・胸か!?その胸に栄養が集まってるのか!?」
紗倉先輩は年下の透が60キロという人間一人分の重さでベンチプレスをすることに驚いたらしいなぜか葉隠の体のあちこちをペタペタ確認しつつ謎の着地点へ着地した。
「えっへん!私だってヒーロー科!きちんと鍛えてるのです!」
「すげえなヒーロー科。私も結構鍛えてるけどレベルがダンチだわ」
そうやってワイワイしている姦しい連中から離れ、おもりをもってきてバーにつける。女子は仲良くなるの速いなー・・・なんなんだよそのコミュ力は。俺にも少し分けてくれよ、ヒーローのコミュ力は必須だけど俺はそこらへんはよくわからん。
「おーい透、用意できたから始めるぞー」
「わかったよー!んっしょっと・・・」
台に寝転んだ透が60キロのバーを滑り止めつきの指ぬき手袋をした手でしっかりと握り、息を吸い込みながら綺麗なフォームで上げ下げし始めた。俺は万が一バーを落とすとろっ骨が折れたり頭骸骨陥没なんてことがありうるので手をバーに添えながら補助をかける。
「ふー、んっ!・・ふー・・」
薄いトレーニングウェアだからこそわかる透のボディラインが規則正しく上下する。吐息だけ聞いてるとなんか艶めかしいな、ついでに表情もわかんないからなんか余計にいかん想像が働く。ええいトレーニング中だ!ヒスりそうな材料はこの際捨て置くものとする!
「よし、20回だ。インターバル挟んでもう1セットな」
一定のリズムでうまいこと20回をこなした透がバーを掛け、体を起こしてインターバルに入る。街雄さんがこっちに先輩方を引き連れてやってきた。
「理想的なフォームだね。紗倉さんたちはベンチプレスでどこの筋肉が鍛えられるかはもう、わかってるよね?」
「えっとたしか・・・二の腕と肩、あと胸!バストアップできるんだよね!」
「そう!」
バリィ!の街雄さんの服がはじけ飛び、その中からまるで合成写真のようなゴリマッチョボディが現れた。・・・いや待て!どうやってあの細身からそんなゴリマッチョが出てくるんだ!?そんなの初めて・・・・いや、オールマイトがいたわ。よくよく考えればこの程度のことなんて・・・当たり前にあってたまるかぁ!
「「なんじゃそりゃあ!?」」
思わず透と声を合わせて突っ込んでしまう。しかもあの筋肉の付き方・・・個性じゃなく自前だ!ってことはあれか?一瞬で筋肉をパンプアップさせてゴリマッチョになったってか!?驚愕する俺たちをよそに紗倉先輩たちはこれがいつもの光景だとばかりにノーリアクションだ。
「あー、初めて見ると驚くよなあ・・・街雄さん、すごく着やせするタイプなんだよ」
「いやそれで片付けていいレベルじゃないけど!?顔と体が合ってないよ!?」
そうだ透!もっと言ってやれ!・・・いっそ個性だって言ってくれたら楽なんだけど・・・そうじゃないんだよなあ
「すげえよなあ街雄さんの体。あたし初めて見たときびっくりしてさあ」
「本当に眼福よね、大きい大胸筋、盛り上がる僧帽筋、鎧みたいな大腿四頭筋・・・どこを取ってもダイヤモンドより輝く至高のマッスルだわ。あぁ・・・たまらないわね・・・」
「まぁた始まったよこの筋肉フェチ・・・」
奏流院先輩は筋肉が好きなのか?街雄さん・・・というか街雄さんの大胸筋を見つめる瞳は熱っぽくうるんでる、息も荒くなってきてるし街雄さんはなぜかポージングを決めてるし・・・もう気にせずやればいいや、うちのクラスだって外から見たらきっとあんな感じだろ。気にするだけ無駄無駄。
「透―、もう気にせずにやっちまおう。2セット目な」
「あっうん!じゃあはじめるよー!」
その後も同じように透は20回を2セットこなした。なんだかんだ言って雄英のカリキュラムはとてつもなく実践的だ。総合的に身体能力が上がり、体力もついてくる。速筋遅筋満遍なく鍛えられてる証拠に透はこれだけやっても息一つあがってない。もう6セットくらいなら余裕でいける感じだな。
「はい次キンジくんね!何キロ?」
「おう、そうだな・・・120で頼むわ。30回3セットな」
「「「まじで!?」」」
「おお、流石雄英の体育祭優勝者。鍛え方も一流みたいだね。どうかな?ボディビルやってみない?ちなみにマックス何キロ持ち上げられるんだい?」
「最大は150ですかね?余裕もって持ち上げられるのは130です。今回は付加強めで行こうかと」
「うんうん、自分の持てる重量を把握してるのはグッドだよ。じゃあ葉隠さんには重そうだから僕が補助入ろうか」
「お願いします。ちなみにいつ服着なおしたんですか?」
「予備はたくさんあるのさ」
「へー」
そんなことを話しつつ姿勢を正して肩甲骨を寄せ台に寝転がる。両手で正しくバーを握ってずしりとした重さを意識しつつ腹圧をかけて上下をゆっくり始める。2回、3回とやっていると透と先輩方が何やら話し始めたようだ。
「うっわ本当に上がってるよ・・・もしかして街雄さんと同じタイプなのか?」
「いやー一緒に学校に行ってるけどそんな風には見えないかなあ?でも上半身とか見てないからわかんないや!」
「そうなると・・・見てみたくないか?」
「ええ、気になるわね・・・どんなマッスルが秘められてるのかしら・・・」
「「「「見たい!!!」」」」
別にフツーだっつーの! なんなんだその筋肉への興味は!?別に鍛えてるから割とがっちりしてるだろうけど常人の範疇をでてねえよ。ええい気にするだけ無駄だ!とりあえずワンセット終わらせるぞ!とペースを少し上げてベンチプレスを続ける。
「よし!1セット目終わりだよ!続けて2セット目いくかい?」
「うす!休憩なしで2セット続けます」
「ヴぇえええ!?まじで!?体力お化けかよ・・・」
何いってんだ。USJ襲撃の件もそうだけど全力以上で20分は動けないと死んじまうかもしれんだろ。驚く紗倉先輩をよそにさらにペースアップして続けていく。さすがに連続ではきついな・・・額に汗が浮かび腕がつらくなってくるがここは根性だ。
「ろく・・じゅう!・・ふー・・・おわったか」
「ナイスフォーム!もし次やるならもっと胸を意識するといいね!」
腕と胸ががガチガチになってしまった。いくら恥ずかしかったからとはいえ無理なペースで連続してやるもんじゃねえな。反省反省と汗をタオルで拭っていると透と先輩方の視線が俺に集中してるのに気づいた。えーあの、特に面白いものはなかったと思うんですが・・・?
「ねえ!キンジくん!」
「なんだ?」
「上、脱いで!全部!」
「・・・は?」
何をおっしゃっているのかこの透明娘は。上着だけならまだしも上を全て脱ぎ捨てろと来たか。さっきの話の流れからこういった風になることはわかってたがさすがに予想外だぞ?ご先祖様みたいに露出してヒスるとは思えんが万が一ということもあるし、やんわりと妥協点を見出して断らねば。
「脱がねーよ。街雄さんなら喜んで破り捨ててくれるんじゃねえの?」
「そういうことじゃないのー!いいじゃん減るものじゃないしー!気になるの!いいでしょ?」
「現時点でお前の羞恥心やら倫理観がごりごり減ってると思うんだが?・・・上着だけならいいぞ、そんで我慢しろ」
「えーケチー!ぶーぶー!」
「うっせえ。遠山憲章4条、羞恥心忘れるべからずだ。・・・・ほれ、満足か?」
仕方なくウェアの上を脱ぎ捨てタンクトップになる。ベンチプレスをしたから上半身に血液が集まって筋肉がパンプアップしてるおかげで自分でも筋肉の形がはっきり見える。ちなみに俺は身軽に動けないと困るので速筋を中心に鍛えてるが、太くなりすぎても困るので対比は7:3くらいだ。なので細くガチガチに硬い筋肉がついてる感じだな。ちなみに腹筋も薄い脂肪の下で綺麗に割れてる。
「ほぇー・・・細マッチョだねー!かっこいいね!」
「おう、ありがとよ。もうい「素晴らしいわ!!」・・・は?」
服を着ようとした俺に待ったをかけたのはやっぱり奏流院先輩だ。彼女は鼻息荒く俺の周囲をぐるぐる回って俺の筋肉を目に焼き付けている。人は見かけによらないっていうけどこの人はもしかしたらその最たるものの一人なのかもしれない。
「ボディービルダーの魅せる筋肉とは全く逆方向の実用一辺倒な必要なところに必要なだけ搭載された絞られた肉体・・・!しかも無駄な鍛え方が一切ないわ!しなやかで、硬く、力にあふれていて街雄さんがダイヤモンドなら遠山君は玉鋼!打ち付けられて鍛えられた鋼よ!・・・・ああ、こっちも眼福だわ・・・・!」
・・・褒め、られ、てる・・・のか?確かにうちの修行で散々打ちのめされたのは確かなんだが・・・。とりあえず服きちまおう。言われてる俺が恥ずかしくなってきたわ。ボディビルやってる人はこんな気分で掛け声をかけられてるのだろうか・・・・俺には理解できない世界かもしれない。
「とりあえず、トレーニングを再開するか・・・・」
一人ヒートアップしている奏流院先輩を置いて俺たちはそそくさとトレーニングを再開するのであった。
そこから3時間ほどトレーニングに没頭し、いい時間になったので透にスパーリングやるかと提案してみる。せっかく格闘技クラスがあるらしいしリング使わせてもらおうかな?
「あっ!素手の格闘見てくれるって言ってたね!やろやろー!」
「お前ら・・・なんでそんなに体力有り余ってるんだよ・・・こっちはもうへとへとだっつーの・・・」
「さすがはヒーロー科ね。トレーニングの強度も私たちより高いのに・・・」
「テレビのヒーロー見てると納得しちゃうけどなあ。格闘技クラスに行くんだよな?気になるしついていっていいか?」
「そりゃ構いませんけど・・・見てて楽しくはないですよ?同じことはできないですし」
「わかってるよ。うち実家がボクシングジムやってるんだ。なんか新しいトレーニングのヒントになるんじゃねーかなって」
「わかりました。じゃ、いきましょう」
そうして俺たちはトレーニングルームを後にした。どうやら街雄さんは他のトレーニングの予約がつまってるらしくついてこないそうだ。透と先輩方を引き連れて格闘技クラスの部屋のに入ると思ったより大きいリングとサンドバック、木人、グローブ等の商品が並んでいた。へぇー、結構本格的じゃんか。
「お、割と本格的だな。じゃ、早速やるか」
「うんうん!よろしくお願いしまーす!」
「ヒーロー科、それも雄英の組手が見られるとは思わなかったなあ」
「映画みたいなのだと面白いな!」
「ちょっとひびき、そんなことやったら怪我しちゃうわ」
なんかえらい好き勝手言われたしそれなりに期待もされてるようなので透に目配せすると、ぐっとサムズアップして答えてくれた。俺が言うのもなんだけどお前もたいがいエンターテイナーだよな。ロープを越えて二人で向き合い、どちらからともなく格闘戦に入る。
まず透はロープの反動でジャンプ、ほぼ水平に飛んできて俺の腕を掴んで勢いを利用して投げてくるので、そのまま返したりしたら外からの力がありゃ関節を自在に外せる俺はともかく透がえらいことになってしまうのでおとなしく投げられ、受け身をとる。投げた透は俺を通り過ぎるようにして着地し、転がってる俺に対してストンプを繰り出してくる。
俺はそれを転がって回避しネックスプングで跳び起き、起きた瞬間透が打ってくるワンツーのパンチをそれぞれ捌く。パァン!という快音が響いて透の腕を掴んだ俺が小手返しを仕掛ける。透は学校で習った通りに自分から投げられに行き受け身をとって自分の腕をひねって俺の腕を外して転がって距離をとった。
「いやーキンジくんさすがだねー。かなう気がしないや」
「いや、思ったよりお前できるじゃねえか。きちんと拳の打ち方もわかってるみたいだし、もうちょっと本気出してもよさそうか?」
「それは勘弁!」
いうが早いが透がこちらに接近し、蹴りを主体に攻めてくる。なるほど、パンチだとさっきみたいに掴まれると踏んだんだな?足の力は手の力の3倍、捕まれても無理やり外せるってことか。前蹴り、足への踏みつけ、回し蹴り、多彩な蹴り技だが・・・近づかれるとやりにくいんだよな、それ。
俺は透が蹴りを繰り出し終わった瞬間、サッと透にギリギリ触れるくらいまで近づいてやる。急に俺がドアップになったことに驚いた透が「ぴぇっ!?」と珍妙な声を上げ一瞬フリーズした隙に、透の体に俺の体の胸からほぼ0距離でぶつけに行った。中国拳法の寸勁、それの体当たりバージョンだ。
俺の体重のほとんどの撃力を受けた透は足が滑り、ドターン!と両足を上に挙げて漫画みたいにこけた。それでもきちんと受け身とって頭を守ってるあたり透も抜け目ないな。
「うっきゅ~、痛いよー」
「そりゃ悪かったな、で今のスパーリングだけど・・・」
そうやって俺と透が反省会してると、俺たちのスパーリングをあんぐりと口を開けてみてた先輩方が先輩同士で話し出した。
「す、すっげ~!あれでヒーローの卵ってやっぱり雄英ってやばいんだな!ほんとに映画みたいだったじゃん!」
「そうだなー!アクションの殺陣みたいだったよな!しかもパンチとか打つときすっごい音するし!」
「ええ、そうね!そしてあの動きをするには相当の筋肉が必要よ!やっぱり遠山君の筋肉も相手した葉隠さんの筋肉も素晴らしいものだったんだわ!私たちも負けないくらい鍛えましょう!」
「「「おー!」」」
ということがあったのが体育祭終了後すぐの休みの日だ。ちなみにトレーニングを終えたあと先輩方と食事をしたんだが、紗倉先輩がすさまじい勢いでメシを吸い込んでいて俺と透がドン引きしてたと記しておくことにする。そりゃ痩せないわけだぜ先輩。
次もよろしくお願いしまーす