遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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第32弾

 俺、カナ、ジーサード、かなめに相対してるヴィラン連合の死柄木に奇術師野郎とツギハギ、トカゲ野郎、あと覆面と俺にナイフを折られた女子・・・遠くで気絶している黒霧とたらこ唇・・・そして少し先で睨みあうオールマイトとオールフォーワン・・・はっきり言うと俺たちは邪魔だ。現状オールフォーワン相手に対等に渡り合うことができるのはオールマイトだけだ。

 

 そして・・・俺のコンディションも非常に悪い。今俺は通常の約2倍の強度でヒステリアモードを利用しているうえに個性も全開だ。アドレナリンがドバドバ出ているせいかあまり気になっていないが両腕は確実に折れているし内臓も傷ついているだろう。それだけさっき万旗で受けたオールフォーワンの攻撃はすさまじかったのだ。個性使用の負担と現在も止まってない出血のせいで目がかすみ始めている。

 

 どうする・・・・!?正直言うと今この場で一番のウィークポイントは俺だ。いくら俺が今の遠山の中で一番防御技が得意だからと言ってゲームのように耐久が無限になるわけじゃない。オールフォーワンの野郎の攻撃はもう受けれない、命をかければ止められるだろうが最終手段だ。それ以前にもう走れるかどうかも怪しい・・・!

 

 「うん、これはもうだめだね・・・弔、今は逃げるといい」

 

 「貴様、何を・・・・!?」

 

 突如、オールフォーワンの爪が伸びたと思ったらたらこ唇と黒霧に突き刺さりやつらの個性が発動された・・・!そうか、個性の強制発動・・・!ヴィラン連合の女子がいの一番に吸い込まれ霧の中にたらこ唇と消えていったと思ったら他のやつらも同時に吸い込まれていった。カナやジーサードが確保に走っていくのがかすんでいく視界に見える。何かを叫ぶ死柄木も・・・

 

 「ダメだ・・・先生!あんたの今の体じゃ・・・!先生!」

 

 「君は続けるんだ。君の戦いを」

 

 さすがに距離があったせいで間に合うはずもなく、死柄木たちは黒霧の個性によってその場から去っていってしまった。クソッあんだけ苦労したのに取り逃がした・・・!

 

 

 

 

 「かといって僕も感情がないわけじゃない・・・溜飲の一つくらいは下げたいものだね」

 

 そう言ったオールフォーワンが突如消え失せたと思ったら確保に走ったカナたちと俺の間に姿を現した。狙いは・・・・俺だ!その体はもうすでに攻撃態勢に入っている。手に持ってるのはまるで骨から削り出したような先がとがった棒・・・体力も底をつき、意識を保つのがやっとの俺に―――――――――それを避ける体力は残っていなかった・・・・・

 

 

 「キンジ!」

 

 「兄貴!」

 

 「お兄ちゃん!」

 

 三人の声が聞こえる。た俺の視界を死に瀕したヒステリアモードがウルトラスローで腹に向けて迫る骨の槍を見せる。避けれない。もうこれはダメだ。絶対に刺さる。刺さるなら・・・!()()()()()()()()()()()()

 

 ぞぶり、と形容すべき音を立てて俺の腹を貫通した骨の槍、背中側に突き出た先端が俺の血でぬれていることは想像に難くない。ドバっと口から血が漏れ出る。痛みすらももう感じない。ただ、熱い。

 

 

 「遠山少年!!!貴様・・・・!!!」

 

 「素晴らしいなあオールマイト・・・生徒の一人も救えないなんて。君は一体何を守ろうとしてるんだい?大変だなあヒーロー?守るものが多くて「うるせえ!ごちゃごちゃ好き放題言いやがって!」」

 

 俺の腹に槍をさし、無理やり持ち上げて顔の前に持ってきたたままごちゃごちゃ言ってるオールフォーワンに対して俺は最後の力を振り絞り背筋の力を使って遠山家の奥の手、頭突きをお見舞いしてやった。刺されるなら、さされる前提でどうにかすればいい。ジーサードが前に話半分だけ言っていた技術、内臓を避けて弾丸を通す技術を今土壇場でやってやった。太い血管や内臓、骨は避けることができたがそれ以外はまあ・・・無事じゃすまなかったけどな。

 

 殺したと思っていた俺の予想外の反撃を受けたオールフォーワンの頭の機械が砕け、飛び込んできたオールマイトが俺を奪い、返す刀で鉄拳がその顔面をとらえ、吹き飛ばした。オールマイトが俺の顔を覗き込んで安否を確認してくる・・・がもう言葉にならない。喉からせりあがる血や、槍が刺さったまま体幹を動かして頭突きなんてしたせいでいろいろやっちまったらしい体の痛みが俺の意識を希薄にしていく。

 

 「遠山少年!意識をしっかり持つんだ!遠山少年!」

 

 もう言葉にはできそうにない。だけど・・・あの巨悪に今から立ち向かうヒーローに、ガラじゃないけどエールを。

 

 「勝って・・・くだ・・さい・・・オールマイト・・・」

 

 視界の端でカナたちが走ってくるのを確認しながら口パクでそう伝えて、ニィっと笑ってやる。うまくできてるかわからないけどオールマイトがいつも浮かべている勝ち気で、優しくて、包み込むような笑顔を。

 

 「!・・・ああ、任せなさい!」

 

 目を見開いたオールマイトが同じようにいつも浮かべている笑顔でそう返してくれた。これなら多分、大丈夫だろう。なんていったってナンバーワンヒーロー、俺たちの平和の象徴だ。あとは任せるしかない。そう思った瞬間急速に視界が暗くなっていく。ダメか、そうだよなあ・・・・夜の帳が降りるように、何もかもが真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 電子音が聞こえる。ピッ・・ピッ・・ピッ・・という規則正しい音が。瞼が重い、けど何とか開く。一瞬光でホワイトアウトした視界が徐々ににじむように鮮明になってきた。白い天井にわずかに匂う消毒液のにおい、体を起こそうとすると激痛が走った。諦めて首だけで左右を確認すると両腕にギプス、足首から何本かのチューブが伸びて輸液パックや輸血パックにつながっている・・・病院か・・・?助かったのか、俺は?

 

 「遠山さーん。失礼しますねー」

 

 引き戸が開き、白い制服を着たナースが入ってきた。優しそうな顔をしたナースは俺が首を動かしているのを確認すると顔を引き締め少し速足でこちらに近づき俺の顔を覗き込んだ。

 

 「遠山さん?意識はありますか?声は出さなくて結構ですので5回瞬きしてください」

 

 言われた通り5回瞬きする。ナースは枕元のナースコールを迷いなく押して心電図などの機械を弄りだした。ほどなくして扉が開き、何人かの医師と・・・リカバリーガールが部屋の中に入ってきた。

 

 「おやまあ、一週間は眠ると思ったのに3日なんて相変わらず頑丈で羨ましいさね。ああ、しゃべるんじゃないよ」

 

 正直しゃべる気力はなかったので何とか頷きつつリカバリーガールが話す俺が昏睡していた3日間のことを聞きつつ治癒を受けた。

 

 

 まず第一に、オールマイトが引退した。やはり弱体化した同士とはいえオールフォーワンとの戦闘はオールマイトの体に深刻な被害をもたらしたらしい。オールフォーワンをとらえた翌日に記者会見を開いて事の次第を説明し、オールマイトの平和の象徴としての活動はあっさりと終わってしまった。世間はもちろん大混乱。これに乗じたヴィラン犯罪の増加が懸念されてるとか。

 

 そして俺が一番心配だったかなでとついでに爆豪は逃げ延びた後ちゃんと警察に保護されたらしい。兄さんたちがついているとのことなのでとりあえずは安心だ。治癒を受けてどうにかこうにか動くようになった体を確認する。折れた腕は繋がったが腹に盛大に空いた穴はまだふさがってないので入院生活続行とのことらしい。まあとりあえず後遺症みたいなものはないそうだ。そこだけは奇跡だな。

 

 よくよく考えればいの一番に突撃してきそうなかなめやかなで、ついでにジーサードがいないのはなんでだ?と思ったら俺は面会謝絶だったらしい。ついでに言うとマスコミも俺や、ついでにかなでを追い回そうと病院の周りをハイエナのごとくうろついてるようで・・・もう一生入院してたいなあ。まあそういうことなら兄さんたちはかなでを守ることに専念しててほしい。俺は生きてるからまああとは何とかなるだろ。

 

 「とにかく、無事でよかったよ。しばらくは休んでな」

 

 そう言ってリカバリーガールとナース、医者は扉を開いて出ていった。大事になったもんだと他人事のように考えながらギプスが外れた腕を撫でつけてベッドわきに置いてあった俺のスマホを充電器から外して画面をつけると・・・・ひぇっ、かなめから10分おきにメッセージが来てる。こわい、俺は何も見なかった。あと兄さんとジーサード、それにじいちゃんに・・・緑谷たちクラスメイトからもメッセージが来てる。あいつらも無事なようでなによりだな。

 

 面会謝絶と言ってもたって歩けるわけだし売店くらい行くのはいいだろと靴をつっかけて貴重品入れにおいてあった財布を取って部屋を出る。ひきつった腹がいたかったがまあ耐えられないわけでもないし必要なものだからとエレベーターに向かうとぎょっとした顔のナースが止めてきたので売店に行くだけだと伝えると必要なものは用意するから動くなと厳命されてしまった。えー・・・まあ文句言ってもしょうがないので買いに行こうと思ってたものをお願いして部屋に戻る。頼んだものが意外だったのか怪訝な顔されたけど。

 

 部屋に戻ってしゃーなしスマホを使って片っ端から連絡を取る。メッセージでだけどな。正直さっきナースと話してわかったがものすごくしゃべるのがつらいので電話は出来ないと注釈を入れてくれたメッセージに片っ端から連絡を取る。かなめとかなでからすごい勢いで俺が返信するまもなくメッセージが飛んできたのは戦慄を覚えたがとりあえずは元気そうでよかった。それに、緑谷たちもきちんと返信をくれたし元気そうだ。そうしていると日も暮れてくる。ナースから受け取ったものにまあごちゃごちゃと書き加えていく。

 

 

 

 

 まず便箋につらつらとあらかじめ考えておいた文章を書いていき、それを封筒にしまって張り付け、封筒にも文字を書く――――退学願、と。

 

 まあ、こうなるかもしれないと予想していたことが現実になると笑えてくるもんだ。今回の件、俺が怪我したくらいだったらさすがの俺もせっかく合格した雄英を退学したいだなんて思わん。けど、あの一件、かなでが絡んでいる。しかもメディアが思いっきりカメラにかなでを映してしまった。そうするとどうなる?少なくともオールフォーワンに関係する何かがかなでにあるとメディアも、ヴィランも躍起になってかなでのことを探すだろう・・・今は静観してるとはいえロスアラモスもだ。そうなるともう雄英ではかなでを守ることは無理だろう。

 

 汚い話かなでを守ってくれるだろうとオールマイトに手を貸していたわけだがそれが思ったよりも早くおじゃんになってしまった。それについてはまあ文句はないし感謝もしているが、現状何度も襲撃を許している雄英に対して俺は兎も角これから本格的に狙われ始めるであろうかなでを守る力があるかと問われれば俺は首をかしげるしかないのだ。言ってしまえば個人としては全員信用できることは間違いない、が組織としての信用が俺の中では全くない。そんな中でかなでを預けておけるかと言えばノーだ。それに人工天才のことがヴィラン連合にもれている以上、今後も雄英は戦場になることは間違いない。

 

 はーーーーとクソデカいため息をついて封筒を引き出しに突っ込むと同時にドアがノックされた。こんな時間に誰だ?医者か・・・・?と考えながらもとりあえずどうぞと声を絞り出す。

 

 

 「遠山少年!目が覚めたと聞いた!大丈夫かい?」

 

 「・・・災難だったな。遠山、大事ないか?」

 

 「オールマイト・・・相澤先生・・・面会謝絶では?」

 

 「世間は今しっちゃかめっちゃかだ。普通の面会時間では俺もオールマイトさんも病院になんてこれやしない。まあ特別措置というやつだ。合理的にな」

 

 そうですか。と何とか返事を返して二人にどうぞと椅子をすすめる。トゥルーフォームのオールマイトと珍しくこざっぱりした相澤先生が椅子につくのと同時に二人して頭を下げるもんだから目を白黒させてしまう。なんだなんだ?

 

 「まず・・・すまなかった。襲撃のあとにさらに襲撃を重ねてくるなんて想定が足りなかった。だが・・・助かった。お前が入れてくれた電話のおかげで被害位置の探知が早く済んで避難の早期開始ができた。だが・・・教師としては失格もいいところだ」

 

 「私も、守ってやることが出来ず申し訳ない・・・!私がもっと早くヤツを捕まえていればキミは生死の境をさまようなんてことはなかっただろう・・・!」

 

 思わず面食らってしまう。オールマイトと相澤先生、二人のプロからの真摯な謝罪に言葉が詰まった俺は2,3深呼吸して何とか言葉をひねりだす。

 

 「・・・頭をあげてください。俺は今こうして生きていますし失ったものもありません。言いたいことがないわけではありませんが俺は確かに守られました。今俺が生きていて、かなでが無事なのはお二人のおかげです・・・けどもう俺は、雄英でヒーローを目指すわけにはいかなくなりました」

 

 最後の言葉に顔をあげた二人がそろって目を丸くする。俺はちょうどさっきしまった引き出しの中から封筒を取り出し、二人の前に差し出す。退学願とかかれたそれに瞠目している二人に畳みかけるように決定的な言葉を紡ぐ。

 

 

 

 「――――遠山キンジ、一身上の都合により退学させていただきたく思います」

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