俺が相澤先生の前で退学願を破いてから3日たった。あの後不敵な笑み・・・というか俺たちを鍛え上げるときに見せる悪い笑みを浮かべた相澤先生は「聞きたいことは聞けた」とすぐさま帰っていってしまった。もうちょっとこうなんかないの?いや別に忙しいんだろうけどさあ?透も「新学期からまたよろしくね!」といつもの調子になってくれたからまあいっか。
面会謝絶が解けたここ数日はいろんな意味で大変だった。あの翌日かなでとかなめ、兄さんが連れだって見舞いにきたのだ。そんでまあ俺にあったとたんにかなでもかなめも大号泣、兄さんにもお小言をもらった。まあ俺が全面的に悪いので甘んじて受けることにしたよ。ホント、堪えたさ。
そしてその翌日、いきなり相澤先生が来たと思ったらいろいろ書類を渡して目を通しておくようになどどいってさっさと帰っていった。あの夜の熱血具合はどこに行ったのやら・・・まあそれはいいんだけど、その書類が問題だった。そこからまた一夜たち必要なことだからとじいちゃんに連絡を入れて今日、来てもらうことにした。
「・・・三者面談に全寮制導入ねえ・・・急遽そんなこときめるなんて相変わらず金あるなあ雄英は」
「ふん、国の金じゃ。いくらでも補填が効くわい。それにもう、お前の答えが決まっとるのにわしが必要なのか」
「さあね。でもまあけじめってやつだろ。言い方悪いけど雄英の中で一番被害受けたのは俺とかなでに爆豪だからなあ」
「謝罪はその日に校長からもらったわい。お前が気にしとらんならわしが怒るだけ無駄じゃ。遠山の男は死んでも生き返るようなもんばっかりじゃからの」
うわ、でたよじいちゃんの遠山家理論。それにじいちゃんはいい意味でも悪い意味でも奔放だ。確かに俺たちのことは大切にしてくれてはいるが生き方までどうこうつけるような人間じゃない。俺が好き勝手出来るのもじいちゃんのこういうところに助けてもらってるんだろな。
コンコン、とノックが響く。時間通りか・・・さすがは相澤先生、いつも通り合理的なことで。
「どうぞ」
「・・・失礼します。改めまして、1-A担任の相澤です。本日はご足労いただきありがとうございました」
「遠山鐵じゃ。孫が世話になっとるのう」
「いえ、先日は申し訳ありませんでした。雄英の不徳の致すところです。郵送の書類でご説明させていただいた通り・・・」
「全寮制の導入じゃな。わしからは何も言わんよ。学校なんぞ入れ物じゃ。通いたいなら通えばええ・・・じゃが、2度目は・・・無いぞ」
ビリィッッ!!!とじいちゃんを中心に冷たい圧迫感が部屋を駆け抜ける。じいちゃんの殺気だ。それも遠山の訓練じゃ見せたことないレベルの・・・相澤先生はそれを真正面から受けて全く気圧されず頭を下げる
「誓います。もう2度と生徒を危険には晒しません。必ず雄英で、守り育てます」
「・・・キンジはともかく、かなでは特殊じゃ。相澤先生よ、それをよく考えておくことじゃな・・・まあそこまで魅せられて、頷かないわけにはいかんなあ。孫たちのこと、よろしくお願いいたします」
そういてじいちゃんは殺気をおさめ、相沢先生に深く頭を下げてから部屋を出ていった。言いたいことはいったとかそんな感じかな?相澤先生は息を吐きだして冷や汗をぬぐって口を開いた。
「すごい人だな、お前の御祖父さん」
「自慢のじいちゃんですよ。生涯現役ですね」
冗談めかして、そう俺は返すのだった。
というわけであっという間に俺は退院した。今日が夏休み終了14日くらい前か。退院した俺は早速引っ越しの準備を終え、荷物を雄英に発送を済ませて部屋を引き払い・・・違約金とかは雄英もちらしい。金あって羨ましいなあ・・・夏休み前と一緒にかなでと手をつないで雄英に登校した。
なんでも雄英の敷地内に突貫工事で寮を立てたらしい。しかも三日で、全生徒分の。まじかよ・・・とドンびいていると立派な寮が俺たちの前に姿を現した。名前はハイツ・アライアンスというらしい。しゃれた名前だこって。もうすでに玄関前にクラスのやつらが集まってわいわいがやがややってる。見る限り・・・全員いるな、またこいつらとバカやれるのは少し、嬉しいもんだ。
「おはようさん、みんな揃ってるようで何よりだぜ」
「おはようございます!お久しぶりです!」
「「「「「遠山ぁ(君)!!!!かなでちゃん!!!!」」」」
帰ってきたのは大絶叫だった。目を白黒させてしまった俺とかなではあっという間にこっちに走ってきたクラスのやつらにもみくちゃにされた。なんだなんだ!?
「無事だったんならもうちょっと連絡の一つくらいよこしやがれ!テレビ見て血の気が引くなんて初めての経験だったわ!」
「いや連絡しただろ?ちゃんと生きてるって・・・したよな?」
「確かに連絡はいただきましたわ!けどそれ以降音沙汰ないんですもの!心配してましたわ!」
「うわあかなでちゃん!心配しとったんよー!無事でよかったあ!」
「むぎゅ、お茶子お姉さん・・・・」
どうやら結構心配をかけてしまったらしい。女子に代わる代わる抱きしめられるかなでに爆豪以外の男子連中にはつぎつぎ小突かれるでいろんな意味でぐちゃぐちゃだ。おのれオールフォーワン、お前がめんどくさいことしなきゃ俺はこんな目に合わなかったんだぞ。せいぜい豚箱で反省してやがれ。
「そりゃ心配かけて悪かったよ。まあこの通り無事なわけだしこれからもよろしく頼むわ」
もみくちゃにされながらも、そう言った俺にクラスのやつらも輝くような笑顔で返事をしてくれるのだった。
「とりあえず1-A、全員集まれて何よりだ。これから寮について説明していく・・・が、その前に」
時間ぴったりにやってきた相澤先生が寮についての説明をする前に何やら話があるらしい。まあ十中八九神野の話だろう。俺も含めた、その場にいたやつらのだ。相澤先生は順番にクラス全員を睥睨すると話の続きを口にした。
「轟、切島、緑谷に飯田、それに八百万・・・この5人はあの晩あの場所に爆豪を救出に赴いた」
ザワッ…とクラスの全体に動揺が走った。初めて知ったが他のやつらも行くかもしれないってことは知ってたってわけか止めたかどうかは知らんが・・・まあ無駄だったのだろう。かといってやつらに助けられちまった俺が自分のことを棚上げしてあーだこーだいうわけにはいかねえ。静かに続きを待とう。
「お前らのその反応を見る限り、行くかもしれないってことはみんな把握していたわけか。いろいろ棚上げして言わせてもらうと今回の件、オールマイトが引退しなかったら爆豪、耳郎以外は全員除籍処分にしただろうな」
まあ妥当だろうな・・・「命令無視」・・・これはヒーローとしての資質を大きく疑わざるをを得ない行動だ。把握しつつも止められなかったやつは未必の故意でやらかしたやつらの幇助をしたことになる。相澤先生はやるといったらやる、間違いなくそう思ってこの重い処分を口にしたのだ。
「今、雄英から人を出すわけにはいかなくなった。彼の引退による混乱や動きの読めないヴィラン連合のやつらも・・・ごたごたが山と残っているからな。だが今名前をあげた5人はもちろん、止められなかった13人も俺たちの信頼、信用を裏切ったことには変わらない。・・・だから、しっかり反省してこれからを過ごしてくれるとありがたい。話は以上!中に入るぞ、元気についてこい」
((((いや待って無理です・・・・))))
お前ら仲いいな、みんながみんな同じ感想を抱いてる顔してる。よくわからない顔をしているかなでを抱き上げて一足先に相澤先生についていこうとすると・・・なにか放電したような音が響いたのでとっさに振りかえった。するとその先には両手をサムズアップにした上鳴がアホずら晒して元気になってた。え?どゆこと?ついでに耳郎はツボだったのか大笑いしてる。爆豪が切島に何かを渡してるが・・・あいつなりの礼みたいなもんか?この沈んだ空気をどうにかするための。
俺とかなでは顔を見合わせて奇妙な踊りを踊る上鳴を思いっきり笑ってやるのだった。
ハイツ・アライアンスの中に全員で入るのを確認した相澤先生がすらすらと説明を始める
「1棟1クラス、男女別で左右に分かれている。1階は共有スペース、男女別だが風呂と洗濯機は共有だ。食事は当番なり担当を決めるなりして自炊しろ。峰田、変な気は起こすなよ」
「なんでオイラは名指しなんだよ!?」
「広い!ソファーだ!きれーい!」
「ごうていやないかい・・・・」
「麗日君!?」
峰田は日ごろの行いだろ。相澤先生が2重にくぎを刺すのを眺めつつ説明を聞く。部屋は2階から、一人一部屋与えられて尚且つエアコンにトイレ、クローゼット付きの超いい部屋だ。ベランダもあるから洗濯物にも困らねえな。
「遠山と遠山妹は隣部屋にしたが、まあできるだけ一緒にいろ。じゃ、各自部屋を確認して荷物あけて部屋を作ってこい!細かい動きは明日説明する、解散!」
「「「「はい!」」」」
さー部屋を作るぞ!俺は確か五階、最上階だ。かなでの部屋ももらえるとか金あるなー・・・ま、二人分の荷物をパパッと開けて明日以降に備えようかね。
「いくか、かなで。寝室別にするか?」
「一緒がいいですお兄ちゃん様!」
了解しましたよっと。わちゃわちゃほかのやつらと話しながら、エレベーターにかなでを抱いたまま乗り込んで俺たちは部屋に向かうのだった。
そしてあっという間に夜・・・食事は各自で用意するようにと言われていたのでかなでと一緒に弁当を食べた後普通に部屋を完成させた、と言っても俺もかなでも荷物自体はそんなに多くない。だからかかなでは「みなさんに配るんです!」と家から持ってきた材料であっという間にオーブンでクッキーを作ってラッピングしてしまった。
俺は特にやることもないのでそれを眺めつつ拳銃の分解整備を始めた。なんだかんだあの夜撃ちまくったのに結局やれてなかったからな。銃は女である、なんてきざなセリフがあるけど肝心なところでへそを曲げられちゃ困るんでな、丹念に射撃後のゴミを拭きとって油を塗布していく。ついでにマガジンから弾全部抜いてスプリングがしっかり機能してるか確かめたりしながらあーだこーだやってるとくわ、とちいさな口で大きなあくびをしたかなでが眠そうにこちらにふらふらとやってきた。
「疲れたか?布団行くか?」
「みゅう・・・お兄ちゃん様・・・お膝貸してください・・・」
ストレートに甘えてくる可愛い妹に対して俺は「いいぜ、ほら」と胡坐を開けてやる。するとかなでは俺の胡坐のなかでころんと丸くなりすぐにすやすやと寝息を立て始めた。ぽんぽんと頭を2,3度撫ぜてやってから拳銃の整備に戻る。ベレッタの整備を終えて空撃ちして精度を確かめていると俺のスマホがSNSの着信を知らせた。相手は・・・透だ。なになに「お部屋披露大会やってるんだけどキンジ君の部屋行ってもいい?」だと?別に面白いものもないけどまあ構わんか。
俺は透に「今手が離せないから見たいなら勝手に入ってきてくれ、カギはあけてある」と返す。するとすぐさま「おっけー!」と帰ってきた。しかしクラス全員そんなことやってるのか?いや、やらなそうなやつに心当たりはあるけどさ。まあ来たら適当に構えばいいか、と次はごつくてでっかいデザートイーグルの整備に入る。がちゃがちゃと弄っていると部屋の前が騒がしくなり、ドアがドン!と開いた。
「「「「お邪魔しまーす!」」」」
「いらっしゃい」
背を向けて座ったまま挨拶をするとみんなが騒がしく感想を言いながら部屋の中に闖入してきた。というか透に緑谷たちは見たことあるだろ俺の部屋、そんなに気になるもんか?と顔だけ振り返るとみんながきょろきょろと俺の部屋を見渡して声をそろえてこう言った。
「「「「おもったより普通・・・」」」」
「期待に沿えなくて悪かったな・・・・」
「なあ、それ何してんだ?」
上鳴が俺の手元でバラバラになって整備されているデザートイーグルを指さして聞いてくるので「拳銃の整備だ。こういうのはこまめにやらねーといざというとき困るからな」と答えておく。得心顔の上鳴とこういうものが好きなのか目が釘付けになっている常闇が淀みなく動く俺の手元を見つめている。
「んー?」
「麗日さん、どうかなさいましたの?」
「遠山君、かなでちゃんどこ行ったん?隣の部屋?」
なんか何かを探してきょろきょろしてると思ったらかなでを探してたのか。そうか、俺の背中とちゃぶ台が邪魔で見えてないんだな?俺は苦笑いしながらデザートイーグルを手早く組み立てて、ちゃぶ台を前に押しやり、胡坐の中を指さしてやる。
クラスのやつらが疑問顔で俺の前に来ると全員納得したような顔で微笑ましいものを見る目をしてやがる。
「かわいい!」
「癒されますわね」
「お兄ちゃん大好きなんやねー」
「かわいいじゃん、いいなあ妹」
「かっわいー!このこのお!」
女子連中がかなでの寝顔をみて好き放題言ってるのを面白くなさそうに見つめる一部の男子・・・・というか上鳴と峰田だ。やつらはぶつぶつと何かを言いながら俺を怨嗟の瞳で見つめている。ひとしきり騒いではっとした麗日が「かなでちゃん起こしたらかわいそうだよ」という一声で俺の部屋見分は終わりを告げたらしい。口々にお礼を言って去っていこうとするやつらにクッキーのことを思い出した俺は
「かなでがクッキー焼いたみたいだから持って行ってくれ。そこの戸棚の中に入ってるラッピングされた奴。クラス全員分あるから来てないやつにも渡しといてくれると助かる。礼は明日かなでが起きてるときに本人に言ってあげてくれ」
「わあ!ほんまや!いただいていきます!」
麗日の言葉を皮切りに全員がクッキーを手に取り、礼を言って帰っていった。騒がしいやつらだなまったく・・・これが毎日か、ちょっと楽しくなってきたな。
あの後寝ぼけ眼で起きたかなでをパジャマに着替えさせて布団に入れてやってるとまたスマホが着信を知らせた。みるとさっきの部屋披露大会の結果が透から来てるな・・・なになに1位は・・・・俺の部屋?なんでだ?理由は・・・かなでが可愛かったしクッキーが美味しかったから?・・・・・・部屋の話はどこに行ったんだ?