遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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再装填 参挺目

 疲れて寝てしまったかなでを着替えさせて布団に移し、俺自身もそろそろ着替えようかとタンスをあさっていると控えめなノックが響いた。誰だ?と思ってドアを開けてみると麗日が所在なさげにドアの前にたたずんでいた。何の用なのだろうか?

 

 「麗日?かなでならまだ寝てるぞ?」

 

 「ううん、違うの。梅雨ちゃんがね、遠山君たちとお話したいって」

 

 「・・・わかった。カギ閉めてくるから待っててくれ」

 

 「うん」

 

 麗日の真剣な顔を見た俺はすぐさま踵を返して窓を閉め、カギをかける。かなでを一人にするのは不安だが一応は厳戒態勢の雄英の中、尚且つ人がわんさかいるから多少は大丈夫だろう。そそくさと準備を済ませもう一度ドアをあけ廊下に出る。エレベーターに乗り、ハイツ・アライアンスの玄関前へ。それまで麗日と俺の間には会話もなく、ただもの寂しい沈黙が俺たちを包んでいるのだった。

 

 まあ、大体察しはつく。神野のことだろう。相澤先生が昼に話した5人、そして拉致されて巻き込まれ、否応なくテレビカメラに映ってしまったらしい俺とかなで、そして爆豪。考えてみれば昼のあの話の時、一番ショックを受けた、あるいは愕然とした表情を浮かべたのは梅雨だった。いつもの柔らかいポーカーフェイスではなく、信じられないものを見てしまったという表情で5人を見ていた。

 

 わだかまりが出来たのだろう。自分の中で払拭できない、納得できない大きなしこりが。気になったことは何でも言ってしまうと常日頃から自分で口にしている彼女のことだ、なぜ俺とかなでがあの場にいたのかも聞かないとわだかまりが消えないと判断して俺を呼んだんだ。

 

 玄関前すぐそばにあるベンチの前に梅雨と・・・予想通りのあの日神野にいたメンツ、緑谷、切島、轟、飯田、八百万がいた。どうやらもうそっちの話はすんだようで、泣いてしまったのか瞳が赤くなってしまっている梅雨とおろおろと気まずそうにする5人が俺と麗日の登場に意識を向けたようだ。

 

 「・・・遠山、くん」

 

 「すまん、今麗日から聞いてな。このメンツなら大体察しはつくが・・・何が聞きたい?」

 

 唯一かなでの事情を知っている緑谷が俺の名前を呼び、神野にいた5人はひどく気まずそうな顔をして、梅雨は2,3度言葉を飲み込む様子を見せた後、意を決し言葉を選ぶように口を開いた。

 

 「・・・ねえ、遠山ちゃん。私、遠山ちゃんは緑谷ちゃん達が無茶をしようとしたら絶対に止める立場だって思ってたの・・・例え、力ずくでも。でも、テレビにいきなり遠山ちゃんとかなでちゃんが映って・・・お腹を貫かれて・・・胸が苦しくなったわ・・・でも、遠山ちゃんはかなでちゃんを連れて緑谷ちゃん達の行動に乗ったり、ましてやあんな危ないところに行くような人じゃないと思うの。教えてほしいわ・・・どうしてあなたたちが、あの夜あの場所にいたのか」

 

 「・・!梅雨ちゃん!それは・・・「いいよ、緑谷」・・・遠山くん・・・」

 

 緑谷が梅雨が何を聞こうとしてるかを察し声をあげるが途中で口をはさんで制す。ま、すべてを語るわけにはいかねーがある程度の事情っていうのは教えておいてもいいだろう。すぐさま逃げず立ち向かう行動をとった俺の責任でもある。たとえそれが不可避のものであったとしても。

 

 

 「そうだな・・・まず全部は言えねえ。言うべきじゃねえし言ったところでお前らにどうこうできるって話でもねえからな。まず梅雨の疑問だが、有体にいや拉致だ。ヴィラン連合の黒霧、ワープの個性を持ってるやつだ。あれが緑谷たちを神野に向かわせないように説得したあと、家で待ち伏せされてた。狙いはかなでの個性だ。まあ俺はおまけみたいなもんだな」

 

 

 「・・・かなでちゃんの個性ってなにかしら?」

 

 「あー・・・雄英付属小って何のために設立されたか知ってるか?」

 

 俺の突然の話題転換に目をぱちくりとさせた俺以外の7人は顔を見合わせて何を問われているのかわからないという顔をした。少しだけ沈黙があたりを支配しやがてそれを破るように轟が口を開いた。

 

 「確か、ヒーロー科のためだったはずだ。ファンサービスの対象である年少の子たちへの対応を学ぶため・・・じゃなかったか?」

 

 「ああ、その通りだ。()()()()()

 

 「表向き・・・?どういうことなんだ、遠山君」

 

 「雄英付属小の実際の設立目的は危険、希少な個性を持ったまだ身を守れない子供たちをヴィランの手からプロヒーローによって守るためだ。毎年毎年雄英付属小の入学なんてニュースにならんだろ?普通なら希望がパンクしてもおかしくないのにな。まあつまりだ・・・お前らに明かすことができないくらいにかなでの希少性は高いんだよ。雄英の保護が必要なくらいな」

 

 「いつも見かけるとき、必ず先生がそばにいらっしゃると思ったら・・・そういうことでしたのね」

 

 「ま、そういうこったな。先生方だって全部知ってるのは相澤先生、オールマイト、リカバリーガールそして校長だけだ。わかるか?このでかい雄英の中でたった4人のプロしかかなでの秘密は知らねえんだ。申し訳ねえが知りたいからでおいそれと話すもんじゃねえ。わかってくれ」

 

 俺の真摯な願いに全員がこくりと頷いたので俺もうなづいてもう一度口を開く。

 

 「あの夜、お前らに言った言葉だが俺は撤回するつもりはねえ。お前らのおかげで状況が動きかなでと爆豪を逃がすことができたのは事実だ。けどもう、独断専行が何を起こすかっていうのはお前ら身に染みたみてーだしこれ以上は何も言わん。まああえて言うなら・・・もう一回俺にお前らを信用させてくれ。頼むぜ」

 

 最後にそう締めくくると直後に切島が涙ぐみながらすまねえ!と謝ってきて、それに続くように他のやつらが押し掛けてきた結果俺は押しつぶされるのだった。病み上がりにヘビーだぜ・・・・

 

 

 

 

 

 

 「まず当面の目標だが、ヒーロー仮免の取得だ。人命にかかわる責任重大な資格だから当然、試験難易度も高い。仮免と言えど合格率は例年5割を切る。そこで今日から君たちには一人最低2つ・・・」

 

 「「「必殺技を作ってもらう!!!」」」

 

 翌日、かなでを職員室に預け夏休みのはずなのに教室に集められた俺たちに告げられたのはプロヒーロ―4人によるそんな宣言だった。必殺技といういかにもヒーローっぽい単語にクラス中大興奮である。ちなみに俺は興奮もくそもないが。だって遠山の人間って誰もかれも技の発明家なんですよ?俺自身だってオリジナル技沢山あるし・・・今更2つ作りましょうって言われてもじゃあこれでどうですかってなるだけですよそりゃ。遠山家のリアル必殺技を改悪したりもしてるし・・・

 

 そして俺たちは着替えさせられて体育館γ、通称TDLへ集められた。その名前大丈夫なのか?いや別に何がとかは言わないけどさ。そして相澤先生とエクトプラズム先生、セメントス先生が代わる代わる説明してくれるのを要約するとヒーローの資質の中で最重要視される戦闘力、それの目安になるのが必殺技なのだそうだ。合宿の個性伸ばし訓練はこれの前座でありそれが中断された今残り10日間ほどで個性伸ばしを含めた必殺技習得までもってく圧縮訓練になるのだそうで。えげつないスケジュールだな。

 

 セメントス先生が地形を作りエクトプラズム先生が分身を作ってそれぞれクラスのやつらの前に出す・・・って俺の前にはいないんですけど?俺が疑問符を浮かべているとエクトプラズム先生本体がカツンカツンと義足を鳴らしてこちらに来た。まさかと思いますが・・・・。

 

 「君ガ作ル技ノ威力ニ私ノ分身ハ耐エラレナイダロウ・・・君ハ私ガ直接相手シヨウ」

 

 まじかあ・・・まさかのエクトプラズム先生直々の指導に頭が下がる思いだ。といっても俺は新しく技を開発するつもりは今んとこない。試したい技はごまんとあるけどな。けどどうしても完成させたい技が2つある、今回はそれを完成させるのに専念しよう。

 

 「サテ、ドウスル?」

 

 「完成させたい技が2つあります。是非ともアドバイスをいただければ嬉しいのですが・・・」

 

 まあ大和と万旗なんだけどな。いかんせんこの2つは遠山の技の中でも異様に難易度がたかいがその分帰ってくるリターンは強烈もいいところだ。この時間で是非と

 

も完成させておきたい。特に大和は兄さんが完成版を見せてくれたからたぶん行けると思う。あと万旗、100倍ヒステリアモードだったとはいえ相手がオールフォーワンじゃなけりゃ確実に成功してたはずだ。通常時でも使えるようにしなければ。

 

 遠山家のトンデモ理論をエクトプラズム先生に何とか説明しながら個性を使うとなんとなく違和感がある。上限までやるともう無理という感覚があるのだが今日は・・・まだまだいけるという感じだ。とりあえずこの違和感は後で確かめることにしてとりあえずはじめようか。

 

 

 途中オールマイトが来たりしてそれぞれアドバイスをくれながら回っていたが、まあ俺の方に関してはお手上げみたいだ。進捗もあんまり芳しくない。大和は重さを乗せきれねえし、無理に乗せようとすれば骨が折れそうになる。万旗は自励振動を準備するのはいいんだが微分して受けるときに必ずどっかでしくる始末だ。困ったもんだ。

 

 そんでいまは休憩中、というかB組のやつらに交代して自主訓練なりなんなりしろという時間だ。コスチュームの改良もそうだしどうするかねえと考えていると珍しいことに尾白が俺に話しかけてきた。どうしたんだろうな。

 

 「遠山、今大丈夫か?ちょっと相談があるんだけどさ」

 

 「ああ、構わなねえよ。俺が役に立つんならな」

 

 「何言ってるんだよ・・・えっとな、遠山って俺と一緒で格闘術メインで戦ってるんだと思うんだけど、今日必殺技作ろうって時に「動きが安直」だってエクトプラズム先生から言われたんだ。尻尾があるならこう動くだろうなって予想できるってさ。遠山ならどう考えるか気になってさ、アドバイスが欲しいんだ」

 

 「ああ、なるほどねえ・・・・」

 

 尻尾ありの格闘術かぁ・・・俺自身に尻尾なんてないから適当なことを言えないのがつらいところだな・・・うーんと俺が悩んでいると察した尾白が人のいいことに「困らせちゃってごめんな」なんて去っていこうとするのをとりあえず止めてまた考える・・・どっかで体験したことがあるんだけどなあ、尻尾ありの格闘術・・・・あっ。

 

 「尾白、ちょい待ってろ」

 

 「え?う、うん」

 

 時間的にも向こうは昼ちょうどくらいのはずだ。俺がスマホを取り出して国際電話をかける。ワンコール、ツーコールしてつながった。電話をした先は香港のとあるヒーロー事務所だ。こういったコネはジーサードさまさまだな。

 

 『はぁいこちら藍幇(ランパン)ヒーロー事務所アル!キンチ、久しぶりネ』

 

 「ああ、曹操(ココ)・・・というか猛妹(メイメイ)か。悪いな急に電話かけて。猴いるか?ちょっと借りたいんだが」

 

 『なんで一目で分かるネ。ジーサードもなんで私たちを見抜けるか不思議で仕方ないヨ。猴ネ、いるヨ。呼んでくるから少し待つアル』

 

 そう言ってテレビ電話の画面から姿を消したのは、中国最大手ヒーロー事務所、藍幇の香港支部に在籍する四人姉妹のヒーロー、黒髪のツインテールがよく似合うソックリ4姉妹の3女、猛妹である。一卵性の彼女らを見分けるのはほかの人間には至難の業らしいのだが、なんとなく俺たち遠山家はわかってしまうので文句を言われても困るのだ。そして俺が用があるのは曹操じゃなくて猴、俺にカンフーを教えた中国内でもトップクラスに位置するヒーローだ。彼女を呼んでもらった理由は単純、彼女には尾白と同じように尻尾があるのだ。しかも戦闘で利用してるから、俺に聞くより彼女に聞いたほうがいいだろう。

 

 しばらくしてとたとたと可愛らしい足音が聞こえて画面が揺れる。ややあって画面に映ったのは長い黒髪に垂れ目の緋色の瞳、少しおどおどしたような表情をした小さな女の子である。彼女が猴だ。またの名をモンキーヒーロー孫。彼女は俺を見るとパァっと顔を輝かせて口を開いた。

 

 『遠山!久しぶりです!今日はどうしたですか?』

 

 「おう、久しぶり。悪いな急に。実は相談があってだな・・・・」

 

 というわけで猴がふんふん頷く中尾白の相談事を猴に伝えていく。うんうん頷く彼女のうしろでにょろんと尻尾が?マークになったりふりふり揺れていたりする。ややあって話し終えると猴が変わってほしいというので尾白にスマホを放る。わとわたしながら受け取ったスマホを覗き込んだ尾白はびっくり仰天、といった感じだ。

 

 「と、遠山・・・?彼女ってまさか・・・?」

 

 「あ?知ってたのか?日本じゃ知名度そんなにねえのに。まあ知っての通り香港藍幇の筆頭、孫だよ。こいつならお前の悩みに答えられるんじゃねえの?少なくとも俺にゃ無理だしな。適材適所ってやつだ」

 

 『尾白、こんにちは、初めましてです。私は猴、ヒーローネームは孫です。遠山から話は聞いたです。尻尾の扱いに悩んでる、でいいですか?』

 

 「は、はい。どうしてもうまくいかなくて・・・・」

 

 というわけで尾白と猴が話し終わるのをボケーっと待ってるとややあって尾白がスマホを返してくれた。あとなぜか組手の相手をしてほしいとも。なんでも猴が動きを見たいのだそうなので仮想敵やってくれないかということらしい。まあ一度乗り掛かった舟なのでやってやるか。俺は適当な壁にスマホを立てかけてカメラで見えるように調整した後尾白の前に立ったのだった。

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