さて、今回俺がサポート科に来た理由はコスチュームの改良だけじゃない。いやまあ俺の銃の完全分解整備も目的ではあるんだけどさ。俺はごそごそと背中から一つの長いものを取り出した。それを見た緑谷や飯田、麗日が反応した。平賀さんは見慣れてるからか特に気にするわけもなく「ほへー」なんて言ってる。
「遠山君、それって・・・刀?」
「おう、家から引っ張ってきた。俺のじいちゃんが40年使いこんだ逸品だぜ」
俺が背中から取り出したのは寸詰まりの打刀だ。じいちゃんが活動者時代に使っていたもので、隠しやすいように寸詰まりで反りが少ない直刀のような刀だ。なんでも遠山家は元は源氏の流れをくむ侍の家で結構いい刀を持っていたそうだが廃刀令とか明治に入って軍に取られたりして質の悪い刀しか残ってなかったそうなのだが・・・じいちゃんが技の練習中に地面を割ってしまったとき偶然地面の中から見つけたのがこの刀なのだそうだ。
銘も何もなく、名もないこの刀、じいちゃんは擦り上げて今の形にしたらしいのだがただの無銘刀にしては異常な点が一つ・・・異様に頑丈なのだ。金属を切りつけても刃毀れ一つ起こさず、曲がりも折れもしない。効果が甚大なだけあって反動もでかい遠山の技にこの刀はぴったりで、じいちゃんは拳銃とこの刀で活動者として長い期間活動してたのだそうだ。もう義士としては引退してるじいちゃんにお願いしたらあっさり持っていけと許可をくれたのでありがたくもらうことにした。
「とーやまくん、これコス変の申請しておけばいいのだ?ついでに研いであげてもいいのだー」
「おう、頼むわ。あ、すげえ頑丈に出来てるから気ぃつけろよ。ついでに背中につけるから秘匿性高めで改造頼むわ」
「りょーかいなのだ!あややにお任せなのだ~・・・どれどれー?・・・とーやまくん、これ流星刀ですのだ?すごいもの持ってるのだ~」
平賀さんが少しだけ刀を抜いて鈍色の刀身を眺めた途端そう鋭く問うてきた。すげえな、見ただけで判断したのか。さすがは平賀さんだな・・・じいちゃんも鍛冶屋に見せた途端言い当てられて擦り上げるのを拒否されただの言ってたから見る人が見ればわかるのかもしれない。
「リューセイトウ・・・?」
「隕石から作られた刀のことだ、麗日君。学術的な価値が非常に高いものだったと記憶しているが、いいのか遠山君?」
「元から使われてたもんだ。俺が使ったっていいだろ?それにこいつは芸術的な美しさの太刀じゃねえ、バリバリの実戦刀だ。眺めるより使われた方がいいんだよ、多分な」
「でもどうして急に刀なんて・・・?」
緑谷が不思議そうにそう聞いてきた。まあいろいろあんだけどナイフや素手じゃちょっときついもんがあるかもしれないからな。爆豪の爆発とか轟の炎とか。だもんで思いっきり技を使って振り回せる長物が欲しかったんだよ。兄さんだって
「そうだな・・・まず攻撃手段の拡充、これが一つだ。俺はパワータイプじゃねえ。反射神経と技術で闘うテクニックタイプっていえばいいか?そうすると攻撃手段が多ければ多いほど手札が増えていろんな手を試せる。銃がだめならナイフ、ナイフもダメなら素手って感じにな。お前だってパンチがだめならキックとか投げ技ならどうだとか考えるだろ?そういうことだよ」
「・・・!・・既成概念にとらわれない・・・脚を冷やしたいなら腕で・・・・パンチがダメならキック・・・・」
「ん?おい緑谷、どうした?急にぶつぶつ言いだしたりして」
急に緑谷が珍しいことにカッと目を見開いて小声でぶつぶつ言いだした。だんだん顔が明るくなっていき、俺がとりあえずベレッタとデザートイーグルを平賀さんに差し出して平賀さんが受け取っていったん部屋の中に入ってそれらの荷物を置いて戻ってくる。「まだやってるのだー」という平賀さんの声を合図にしたようにばっと緑谷が顔をあげる。平賀さんの「んにゃ!?」という可愛らしい悲鳴を遮るように緑谷が大声をあげた。
「遠山君!飯田君!ちょっと教えてもらいたいことがあるんだけどいいかな!?」
「落ち着け緑谷君、まだ君のコスチュームの件は解決してないぞ。何を教えればいいのかわからないがとりあえず来た目的を果たそう」
「え!?ああそうだった!えっと・・・平賀、さん?だよね?今思いついたんだけど・・・」
と緑谷がすらすらと説明をしてくれたのだが、腕に爆弾を抱えたという緑谷がパンチに代わる攻撃手段として蹴りはどうかということを思いついたらしく、腕を保護できるものと足の装甲兼破壊力増加を狙えるものをコスチュームに入れてほしいのだそうだ。平賀さんはうんうんと話を聞いていたのだが
「それはあややに頼むよりはつめんに頼んだ方がいいのだ。あややでもご注文通りの物は作れるけどそういう1から作るものはあややよりはつめんの方がいいものができるのだ~。はつめん~ちょっとこっちに来るのだ―。はつめんの好きそうな依頼なのだ!」
平賀さんが何やら弄っている発目に呼びかけるとぐりんという擬音が鳴りそうな勢いで振り向いた発目すさまじい勢いでこっちに距離を詰めてきた。こわっ!
「話は聞かせてもらいました!腕が不安だから足に切り替える!そういう発想は好きですよ!私がドッカワイイフットパーツベイビーを作ってあげましょう!」
「平賀は銃、刀剣のライセンス持ちだからまだいいが発目、お前はまだ未取得なんだから俺を通せよ・・・良ければ採用だ・・・・」
「もちろんです!さあ忙しくなりますよ緑谷君!早速始めていきましょう!」
そう言って発目が緑谷を引っ張っていったので俺も平賀さんに挨拶をしてサポート科を辞した。平賀さんの「今後ともごひいきにーですのだ!」といういつもの挨拶にひらりと手を振って一応ラジエーターの件で発目の案を聞くつもりの飯田と、酔いの軽減を目指したい麗日を残して俺は自主練をしに戻るのだった。
とりあえずもろもろあった訓練が終わり夜、ハイツ・アライアンスに帰ってひとっ風呂浴びた後共用リビングでかなでや緑谷たちとくつろいでいると相澤先生がハイツ・アライアンスの中に入ってきた。たぶん猴のことだろうなとあたりをつけた俺が立ち上がって小走りでそちらに向かう。
「ああ、悪いね諸君。休んでるところに。遠山、校長から許可が下りた。こっちからも向こうに連絡したがお前の方からも入れておけ。明日、来るそうだから俺とお前で迎えに行くぞ。連絡事項はそれだけだ。全員遅くならないうちに寝ろ。邪魔したね」
「了解です」
「「「「はい!」」」」
明日ね。思いったったが吉日・・・いや、働きづめな猴を休ませたい藍幇の思惑といった感じか。とりあえず許可は下りたな。尾白は今風呂だから出たら教えてやろう。きっと驚くぞー・・・なんて考えてると一緒にだべってた切島が何のことだかわからないという様子で俺に尋ねてきた。
「なあ遠山、許可ってなんだ?誰か来るのか?」
「ああ、知り合いのヒーローにちょっと講師してくれって頼んだんだ。俺と尾白にな。そしたら話が広がっちまって講座になっちまった。参加自由だからまあスタイルが定まったやつらは来る必要ないだろな」
「はあ!?またおめーそんなやべーことを軽く言いやがって・・・だれだ?また兄弟か?」
「遠山って知り合い多くね?プロの知り合いなんてそうそうできるもんじゃないだろ?なあ瀬呂」
「そうだぜ。なんかずっこいよなー」
「そこらへんは全部うちの兄弟のせいだ。それにプロヒーローが身内にいると仲良くなれるかはともかく顔見知り程度にはなれんだろ?なあ飯田」
「ああ、僕・・・俺も何人かプロの人たちに知り合いがいるし訓練もつけてもらったこともある」
「なるほどなーお前ら羨ましいぜ・・・・で、呼んだの誰なんだ?」
上鳴が納得したように頷いてくるやつが気になったらしくそう聞いてきた。ちょうどよくドアが開いて尾白にヒーローオタクの緑谷が風呂を終えたらしくリビングに入ってきたので伝えるついでに解説も投げちまえ。俺よりよっぽど詳しく説明してくれんだろ。
「尾白―さっき相澤先生が来たぜ。許可出たってよ。良かったな」
「ほんと!?ありがとう遠山!一歩進めた気がするよ!」
「え?何の話?許可って?」
「ああ、明日俺の伝手で雄英にヒーローを呼ぶことになってな。まあ尾白のためにお願いしたら参加自由の講座ってことでオッケー出たんだよ。今その話してたんだ」
「そうなの!?誰が来るんだろう・・・・?雄英出身のヒーロー?それともアメリカ?ああああ予想がつかない・・・・・!」
「いつも通りだな。お前なら知ってると思うけど中国のヒーローだ。孫っていうんだけど知ってるか?」
俺が猴のヒーローネームを告げると尾白以外はあんまり知らないらしく首をひねったが緑谷だけは違った。ガタン!と音がするくらいに立ち上がった緑谷は大興奮で超早口でしゃべりだした。
「孫!?孫ってあの香港藍幇の筆頭ヒーロー!?中国ビルボードチャートは現在第6位、中国拳法の達人で個性は「闘戦勝仏」!得意な分野は対都市の凶悪犯罪からテロリスト鎮圧までの対人、対犯罪!ヒーロー歴は現在3年にもかかわらずトップクラスの速さでランキングに食い込み中国ヒーロー界を震撼させた大物ヒーローじゃないか!?そんな大物と遠山君が知り合いだったなんて・・・・」
「解説ありがとよ。まあそういうこった。明日相澤先生と一緒に迎えに行くから楽しみに待ってろよ。あ、今から連絡入れるんだったわ」
「えええええ待って心の準備が・・・・!」
んなこた知るかよ。お前が話すわけじゃないのに。緑谷の解説を聞いたクラスのやつらはビルボードチャートの下りで大興奮だ。つまりあんだけ広い中国から上から6番目のヒーローがわざわざやってきてくれるというのだからおおかれすくなかれヒーローが大好きなうちの連中はそりゃ盛り上がるってわけだわな。とりあえずスマホ出して国際電話かけってっと・・・俺が電話かけた瞬間シンと静まり返るあたり育ちがいいのか気が利くのかはたまた相澤先生の教育が行き届いているのか・・・・どうでもいいけどな。お、繋がった。
『
「
電話に出たのは曹操4姉妹の長女、遠距離狙撃のプロの狙姉だ。彼女は用件はわかってるみたいで『キンチは引っかからなくてつまらないヨー』と言って猴を呼びに行ってしまった。悪かったなつまらん男で。曹操が行って少しするとトタトタと足音がして猴が顔を見せた。風呂上りなのか頬は上気してほんのり赤く染まり綺麗で長い黒髪も少し湿っている。あっちゃータイミング悪かったか?
『遠山!電話待ってたです!明日、いくですよ!行くからには猴がしっかり功夫を積ませてあげるのです!』
「ああ、頼むぜ。俺も迎えに行くから空港で会おう。尾白も楽しみにしてるってよ、な?」
画面を尾白に向けてやるとやる気満々で「よろしくお願いします!」って頭を下げた。猴も「請け負ったのです。ビシビシいくです!覚悟しておくといいです!」とニコニコしてる。ついでに緑谷に画面を向けると面白いくらいきょどってる。お前そんなんでいいのか。
「緑谷、足技練習すんだろ?中国拳法はそこらへんも多彩だから今のうちに媚び売っとけ。ちなみにコレはバナナが好物だ」
「贈賄前提!?えっと、緑谷出久です・・・!その・・・会えたらサインください!」
ええー頼むのそれなの?ちなみに猴はあんまりファンサが得意ではないらしく握手会みたいなことはしないことで有名だ。そうするとサインとかはものすごく貴重なのかもしれないな。ほかのクラスのやつらも俺のスマホを覗き込んで口々に挨拶をしていくので猴は目を回してあっぷあっぷしているが楽しそうだ。こんなんでも俺より年上なんだよな・・・身長は平賀さんより小さいのに。個性のせいで成長も老化も遅いそうだ。
だが彼女は強い。中国拳法という多彩な技の数々、しかも彼女は人を殺すことに特化した裏技まで精通し「闘戦勝仏」という個性の通り超常的な術まで使えると来たもんだ。さらにあんな小柄な体ながらパワー、スピードも優れている。中国であっという間に上へ行き詰められるのもわかるってもんだぜ。
『えっと、えっと・・・猴は明日の朝の便で日本へいくです。つくのは昼でMr.相澤と遠山が迎えに来てくれる言うですからちゃんと雄英まで行ける思うです。だから、日本で遠山のクラスメイトに会うの楽しみにしてるです。猴の講座、来てください』
という感じで締めくくった猴にクラス中がいくー!みたいな感じだ。絶対これ大変な奴じゃん。おれカンフーそんな得意じゃねえんだよ。運営側に回れってことは教えろってことだろ?相澤先生に八極拳見せたのは失敗だったなこりゃ・・・。まあなるようになるか。
「じゃ、また明日会おうぜ。お前ドジなんだから便間違えて乗るんじゃねえぞ。じゃあな」
『あい。曹操が送ってくれるいうですからだいじょぶです。キンジ、
最後だけ俺を名前で呼んで猴は電話を切った。さって明日も早いから寝るか―といつの間にか夢の世界へ行ってたかなでを抱き上げて部屋に戻ろうとすると服をつまんで引き止められた。この手は・・・芦戸?何の用だ?と顔を見てみるとにやーっと嫌らしい笑みを浮かべていた。というか女子全員が似たような顔だ。唯一透だけ普通・・・というか若干不機嫌だ。なんだなんだ?
「いやー葉隠ちゃんというものがありながらやりますねえ遠山君!ねえ彼女恋人?もしくは婚約者!?」
「んだそれ。透が何だってんだ?あと猴と俺はそんな関係じゃねえ。変な邪推すんな」
「えー!だって遠山君を見る猴ちゃんの瞳は恋する乙女だよー!絶対だって!」
「あのなあ・・・貴重な時間使って雄英に来てくれるヒーローに変なこと考えるなよ。なあ透?」
「むぅ・・・キンジ君のばか」
・・・ひどくね?なんで否定して同意を求めてバカにされてんだ俺は。あとなんでそんなに声が小さいんだ透らしくない。なおそれでも納得できないらしい芦戸がさらに騒ぎ立てている。
「とりあえず俺は明日いろいろあるからもう寝る。猴とはなんもないからな。明日来た時そんなこと言ったら講座からたたき出してやる」
「えー!やだ聞きたい!何でもない話をちょっと強引に恋バナに仕立て上げたいーーーー!!」
という自分本位100%の芦戸の叫びを無視して俺は部屋に帰ってかなでに布団をかけてやるのだった。
キンちゃん&近接組強化フラグ、ついでのキンちゃんの武装強化フラグ。
刀に関しての知識はあやふやですゆるして