遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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どうでもいい話がしばらく続くんじゃ


再装填 陸挺目

 そして翌日のこと。今日は午前中にB組がTDLを使うそうなので俺たちは自主練かヒーロースーツの改良に時間を当てることが出来ている。つっても俺の場合は完全にジーサード任せだけどな。大和と万旗は相変わらず完成が見えてこないが・・・割と進捗はいい感じなのでその内地球の重さで殴れる日も来るだろう・・・・自分で言ってて頭おかしいなこれ。そんで俺が今何してるかというと・・・

 

 「遠山、行くぞ。さっさと乗れ」

 

 「はい」

 

 相澤先生の車で空港に向かっているわけだ。猴を迎えに行く感じだな。ちなみにクラスのやつらもいきたーい!と言っていたのだが相澤先生のひと睨みで一瞬でおとなしくなった。いやまあそうなるだろうよ。おとなしく必殺技つくっとけ。俺はもうスーツをジーサードの方に送ったから個性伸ばしくらいしかいまできないしな。技の練習もできるんだけどあれガントレットなしでコンクリなんか殴ったりしたら拳の皮がえらいことになっちまう。

 

 そうそうコスチュームなんだがなんと昨日の夜消灯時間を過ぎたにもかかわらず発目と平賀さんが俺の部屋に突撃してきたのだ。なんでも俺のコスチュームの改良案を二人で考えたので是非とも採用してほしいと。その案を聞いていくとなるほどこれはと思ったので許可を出した。もしあの案が実現できれば俺の銃技の幅が2,3倍くらい広がるからな。是非とも頑張ってほしい。

 

 まあそれはさておき自分を無駄にいじめるのは趣味じゃないし、世の中には理解しがたいことに自分を痛めつけることに喜びを感じる人間がいるらしいのだが俺はそうじゃないので大人しく迎えに行くことにした。そんで個性伸ばししてる中で分かったのだが俺の個性、「神経強化」の倍率が著しく上昇していたのだ。その倍率何と30倍。夏休み前の2倍である。おそらく理由はオールフォーワン相手にやったかなでの個性強制ブーストだ。あれで上限のタガが外れたかリミッターがぶっ壊れたのかは知らないがとにかく倍率が上がったのはいいことだ。まあ30倍の状態で20分動くだけで死ぬほど頭痛くなってしんどくなるんだけどな。ヒスったほうが負担が軽いからしばらくは奥の手扱いだ。

 

 かなでも連れていこうかと思ったのだが3年生の救助訓練の要救助者役で貸してほしいと13号先生にお願いされたのでそっちに行ってる。なんでもかなではいうことをキチンと聞いてくれるので不慮の事故が起こりづらいということらしい。え?事故起こってるの?さすがに怪我したらもう貸さないぞ・・・

 

 そんなこんなで相澤先生の車に揺られるほど少し、空港手前の高速道路のジャンクションあたりで相澤先生が俺に話しかけてきた。

 

 「遠山、お前に頼める立場ではないのはわかってるんだが・・・心操のこと、覚えてるか」

 

 「ああ、覚えてますよ。ホントだったら夏休み中にもいろいろやる予定でしたよね。潰れましたけど」

 

 「・・・そうだな。あいつはあのことがあった後もヒーローを目指す気でいることは変わらないらしい。今は自主練させているがそろそろ再開させたい。できれば付き合ってやってもらえないか?」

 

 正直心操とやる訓練は俺にとっちゃ今んとこあまりうまみはない。まだ肉体の強度が低い心操に俺らヒーロー科と同じ訓練、いやそれ以上の訓練をさせることができないからだ。基礎トレとかもいつも俺がやってるものより数段低くなるし、組手だって手加減してやる必要がある。でもまあ・・・悪くはない。正直相澤先生とほぼマンツーマンで欠点を指摘されながらやる組手は身になるしそれを確認しつつやる心操との組手も嫌いじゃない。・・・それに同じ夢を追ってる者同士、協力してやるのが人情だろう。

 

 「わかりました。協力します。猴にも付き合ってもらえるよう頼んでみますね」

 

 「ああ、助かる。こんなこと頼んでおいてなんだが、お前自身の必殺技にコス変はどうなんだ?」

 

 「コスチュームの方は会社に要望出してますし武器も新しいのを仕入れました。今は申請に出してますから戻ってきたらそれを使った技を試してみる感じです」

 

 「・・・そうか、詰まったなら必ず相談しろ。力になってやる」

 

 「お願いします」

 

 いい人だ。相澤先生。ぶっきらぼうな言い方や合理的と判断すればこちらをだましてきたりするようなことはあるが必ずそこに俺たちへの優しさとかそう言ったものが見え隠れしている。まあ俺らのクラスは全員相澤先生が大好きなのだ。恥ずかしいが、俺も含めて。

 

 

 

 車に揺られること1時間、ようやく海辺の大きな空港が見えてきた。猴からもメールが届いていて時間ぴったりに間違えることなく乗ることができたようだ。日本では知名度が今一つとはいえ中国では大人気ヒーロー、エコノミーにしようと思ったら航空会社が無料でファーストにしたとかなんとか。いや初めからそうしろよ。飛行機内大混乱だろそんなことになったら・・・・

 

 でかい駐車場に車を停めて相澤先生と共に中国からの飛行機が止まる・・・23番ゲートだったか?の近くで待つ。特に遅れているわけでもないのでもうそろそろ来るだろう・・・というかもうすでに猴が乗ってる飛行機とタラップが接続されているのでまあすぐだろうな。

 

 特に雑談もなく(こういう沈黙は嫌いじゃない)待っているとゲートの方にちっさい人影が見えた。きたか?とゲートに近づいていくとキャスターバッグを引いた腰まである長いロングの髪をはねさせた猴がゲートを抜けてこっちに歩いているところだった。彼女は中国の民族服っぽいいわゆるチャイナ服に身を包んだ彼女は俺を見つけると瞳を輝かせて走り出し・・・・3歩進んだあたりで盛大にこけた。何もないところで。えー・・・・

 

 「猴、おい大丈夫か?逃げやしないからそんなあわてるなよ」

 

 「うゆ・・・だいじょぶです・・・それよりも你好(ニイハオ)、遠山。直接会うのは2年ぶりです。また会えて猴は嬉しいです」

 

 顔面からいったせいで赤くなった鼻を両手で抑えつつそう言ってくるので俺も「ああ、会えてうれしいぜ。またよろしくな」と返しておく。相澤先生の方を見るととりあえず再会するときはほっておいてくれたらしい。片手をあげながら近づいてくるところだった。

 

 「初めまして、電話口でも言いましたが相澤です。情勢的に今は不安定ですが、どうか生徒のことをよろしくお願いします」

 

 「感謝なら遠山にするです。猴は遠山が連絡してこなかったらここに来てないです。猴でよければ必ず生徒の子たちをレベルアップ、させるですよ」

 

 相澤先生と猴が・・・身長的に相澤先生がかがみながらだけど固く握手をした。猴も日本のヒーロー育成学校に行くのは初めてらしいしいい経験になるだろう。とくに緑谷みたいな近接組は絶対いい経験になる。なんてったって彼女、ほとんどの中国武術を網羅しているうえに師範、とか師父扱いなのだ。つまり教えるのも滅茶苦茶うまい。ヒーローを引退しても引く手あまたのスーパーヒロインなわけである。

 

 楽しそうに俺に抱き着いて尻尾をハート形にしてるこのちっさい少女が雄英の悪い雰囲気を吹き飛ばしてくれるといいんだけどな。彼女のヒーローネームの由来である孫悟空のように、痛快至極に。

 

 

 いざ帰ろうとすると周りでざわざわとさざめきが聞こえるのに気づいた。「あれって雄英の・・?」とか「あれ?中国のヒーローじゃね?」とかいう声も聞こえる。気づかれるのはやっ!相澤先生と顔を見合わせて俺が猴をお姫様抱っこ、相澤先生がでっかいキャリーケースを引っ張ってそそくさと車に退散して雄英にとんぼ返りした。猴は状況についていけてないのか目を回してたがな。抵抗なくて助かった!

 

 雄英に帰る道すがら猴に中国の話を聞いていくとやっぱりオールマイト引退はニュースになってたらしい。あと俺のことはニュース映像で知ったらしいのだが猴と曹操4姉妹はそれを見て大慌て、香港藍幇をひっくり返すような大騒ぎを展開した挙句諸葛という香港藍幇のブレーン役に拳骨で全員沈められたらしい。心配してくれるのは嬉しいが限度があるだろ。

 

 「ああ、そうだ。猴さん、これを。雄英の入校許可証です。持ってれば基本的にどこにでも行けますが、できれば遠山かほかの先生でもいいので誰かと行動を共にしてください。なにせ雄英は広いので」

 

 「謝謝(シェシェ)、相澤。そういえば猴、ホテルとるの忘れてたです。近くにいいところあるですか」

 

 「ああ、それなら・・・遠山、お前の部屋で面倒見て差し上げろ。2部屋あるしちょうどいいだろ」

 

 「いいわけないですよ先生。何がどうしたら中国のトップヒーローを学生寮に押し込もうとするんですか」

 

 「あ、それでいいです。猴、学生寮なんて初めてなので楽しみです。遠山のクラスメイトと寝泊まりできるです」

 

 「お前がいいならもういいよ・・・・」

 

 相澤先生猴のこと幼女か何かだと思ってない?彼女18歳、立派な大人・・・いや未成年だけど社会人よ?確かにドジで抜けてるところあるけどさー・・・男女7つにして同衾せずともいうじゃない?まあ猴が鼻歌歌うくらい楽しそうだからいいけどね。

 

 そう、俺は猴の案内ついでに今日は丸々フリーにされちまってるんだが・・・訓練してえ。猴に頼んで組手やってもらおうかな・・・と猴の尻尾が俺の手にくるんと巻き付いてるのを眺めつつどうしたもんかしてるとハイツ・アライアンスに到着した。俺と猴を下ろした相澤先生は授業に合流するといって帰っていった。

 

 「へー・・・ここが雄英の寮ですか・・・おお、いいキッチンなのです!よし、遠山!みな帰ってくるまで時間あるです?」

 

 共用のリビングルームに入った猴がまず何よりもキッチンをみてそう感想を述べた。ああ、そりゃ全部業務用の大人数調理ができるキッチンだからな。そういや趣味が料理だったか?医食同源の発信元である中国のヒーローたちはみな必ず料理ができる。それは人口の多い国ならではの問題で救助に行ったとき材料はあるが炊き出しが出来ない、あるいは人数が足りないという問題のある意味解決策なのだ。日本にもその考えは浸透していてランチラッシュを筆頭にヒーローが料理上手なのは今のご時世珍しくない。こんな過密スケジュールの雄英ですら家庭科の授業があることからそれの重要度は推して知るべしだ。

 

 「んー今からだと全員帰ってくるまで4時間くらいか?自主練するやつもいったん飯の時間には帰ってくるからな。なんか作るのか?」

 

 「あい。せっかくなので満漢全席、作ろう思うです。3時間あれば十分なので買い物行くです。遠山、善は急げと日本は言うです!市場に案内するですよ!」

 

 「豪華なことだな。中国6位の手料理か。じゃあ近くのスーパー行くぜ。」

 

 そういうわけで猴を近くの業務用スーパーに案内してやると。猴はメニューをすでに決めているのかいろいろな材料をかごに突っ込み始めた。豚肉、鶏肉、野菜の数々、卵に海老、特に大事なスパイスをどっさりと。両手いっぱいに材料を抱えた俺たちがハイツ・アライアンスに戻るとすぐさまかけてあったエプロンをつけた猴が使い慣れていないであろう包丁にもかかわらずとんでもない速度で皮むきや出汁とりなど下ごしらえを始めた。いくつもあるコンロを同時に操る姿はもはや料理人だ。

 

 俺もクラスのSNSグループに時間あるから俺が作ることを書いておいて猴を手伝いに行く。素の俺じゃ絶対に追いつけないので個性を発動させながら・・・こんなところで地力の差を感じることになるとは・・・とほほ。

 

 クラスのやつらが戻ってくる時間も迫ってくると猴の言う通り次々と料理が完成していく、さまざまな種類の餃子に点心、回鍋肉、酢豚、棒棒鶏、北京ダックに麻婆豆腐、そんでもって大皿に盛ったパラパラ炒飯。日本の中華だがエビチリにエビマヨなんてものもある。しかもデザートまで作ってある至れり尽くせりだ。手際の良さもあるが所作に無駄がないからいろんな作業が素早いんだな。

 

 

 

 

 「ただいまー!あー!腹減ったー!」

 

 「お腹すいたよー!わー!いいにおいする―!」

 

 お、帰ってきたな。あの声は切島に芦戸か。クラスのムードメーカー2人組だな。やつらを筆頭にクラスの面々が帰ってきて口々に挨拶を言ってる。多分みんなお行儀がいいことに手を洗ってからこっちに来るのだろう。すぐさま共用リビングの扉が開いて机の上の料理を見たやつから歓声が飛ぶ。

 

 「わー!中華!すごーい!」

 

 「すきっ腹にこれは効くなあ!遠山、代わってくれてさんきゅな!」

 

 「ケロ、これはすごいわね。遠山ちゃん、大変だったでしょ」

 

 「満漢全席ですわね・・・遠山さん、素晴らしいですわ!」

 

 「あーいや、俺は手伝っただけだからな・・・ほとんど作ったのはコイツ」

 

 そう言って俺はキッチンに入り嬉しそうにぴょんぴょんはねながら料理の跡片付けをやっている猴のわきに手を入れて抱き上げて空輸する。尻尾が?マークになってる猴をよそにクラスのやつらの前に戻り、コイツが作ったんだぜと突き出す。猴はいきなりこんなことされるとは思わなかったらしく「ひゃわぁぁあぁぁわわわ・・・・」と慌ててるが昨日一応顔合わせはすんでるので

 

 「猴ちゃんだ!これ作ったってホント!?美味しそう!」

 

 「まじで!?中国6位の料理!?遠山、俺お前と同じクラスでよかったわー」

 

 これで喜ばれるとすっげえ複雑なんだけど上鳴さんよ。猴を地面に下ろして上鳴をジト目で睨んでいると「ワリ」と軽く謝ってきたので水に流してやることにする。猴がこほんと咳払いをして自己紹介を始めた。

 

 

 「晚上好(ウェンシャンハオ)!猴、いうです!中国じゃ孫で通ってるですよ!遠山の紹介で武術の講座を開くことになったです!この料理はお近づきの印なので、遠慮せずたくさん食べて明日の訓練に備えるですよー!」

 

 「昨日話した通り俺の知り合いの猴だ。ヒーロネームは孫。まあ見ての通りお前らと仲良くしたいみたいだからたくさん食べて、よく話しかけてやってくれ」

 

 「じゃ、召し上がれ、です!」

 

 

 「「「「「いただきまーす!」」」」」

 

 クラスの欠食児童どもが我先にと肉を確保しに走るのを猴がニコニコ笑いながら足りない分を作りにキッチンに戻るのを見て、あんま心配いらんかったかなと気を抜いた俺は、切島に肩を組まれて礼を言われつつこの時を楽しむことにしたのだった。

 

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