遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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再装填 漆挺目

 夕食は大盛況である。合宿でプッシーキャッツの料理を食べたときもそうだが訓練後の空きっ腹にこれでもかとボリューミーな中華料理はおいしそうに映るだろう。しかもどれもこれもが絶品だ。甘辛く味付けたされた回鍋肉に辛めの麻婆豆腐、蒸し海老餃子にニンニクのきいた焼き餃子、スープたっぷりの小籠包。これらをおかずに炒飯をかき込むのは至福のひと時だ。

 

 みるみるうちに料理がなくなるがそれを補填する速度も速い。鼻歌歌いながらとんでもない速度で料理を完成させていく猴、中国じゃ残すのがマナーらしいがそんなことやつらが知るはずもなく猴もどうでもいいようだ。それどころか綺麗に片付いていく料理たちをみて超ご機嫌である。時間のかかる点心を山と完成させてその小さな体でウェイターさながらのバランス感覚で大量の料理を食卓に届けると歓声が上がった。

 

 「あい、小籠包に蝦餃、鍋貼に水餃です。ご飯足りてますかー?ないんだったら作るです」

 

 「超うめー!すんません、これお替りください!」

 

 「ほんとにおいしいですわ・・・・」

 

 「こんなに食べて太らんかな・・・・」

 

 「その分動けばダイジョブっしょー!」

 

 「あい、青椒肉絲お替りですね。いい食べっぷりで猴は嬉しいです。お腹いっぱい食べるです」

 

 そう言って猴はあらかじめ刻んでおいたらしい肉にたけのこ、ピーマンを炒めてあっという間に青椒肉絲を作ってしまった。炒めてる時間くらいしか時間とってないぞ・・・・?まあいいか、考えるだけ無駄だ。麗日に世話を焼かれているかなでもおいしそうに食べているし、俺もたまにつまんでいるがどれもこれもうまい。正直言えば俺もドカ食いしたい気分だがさすがに猴を一人で料理させておくのは気が引けるので手伝いは続行である。

 

 

 

 

 

 

 「「「「「ごちそうさまでしたー!」」」」」

 

 皿の上の料理がきれいさっぱり空っぽになり猴が淹れた中国式のお茶を全員に配って着席である。みんな満足そうにお腹をさすったりしてる。あの爆豪ですら無言で食べまくってたからな。特に激辛の四川料理を。

 

 

 「もーだめ、入んない・・・」

 

 「腹一杯だぜ・・・」

 

 「あーこの後の自主練動けっかなー」

 

 「ちょっと休むかー?さすがに今動いたら吐きそ」

 

 「あ!猴さん片付け俺らがやるっすよ!遠山も手伝ったんだろ?休んどけよ!」

 

 「そうだ!こんなおいしいものを頂いたのに片付けまでさせては気が引ける!」

 

 「そうだね!じゃあ遠山君、僕らが片付けやるよ!」

 

 「謝謝、じゃあお言葉に甘えるです。んー・・・・あ!尾白、いましたね。こっちくるです!」

 

 ん~と伸びを入れた猴がお茶を飲んで一息ついていた尾白にそう呼びかける。尾白は急に呼び掛けられるとは思わなかったのかお茶をのどに詰まらせ盛大にむせた後咳をしながらこっちに来た。

 

 「大丈夫ですか?そんなあわてなくても大丈夫です。ちょっとテストしてもらうだけです」

 

 「・・・テスト・・・ですか?それってどういう・・・・」

 

 「(シィ)。尾白がどれだけ尻尾を自由に動かせるかどうかのテストです。折り紙、わかるですね?手で折るのは禁止で、抑えるのみ。猴がやって見せるので真似してみるです」

 

 そう言うと猴はどこからか取り出した折り紙を尻尾を使って折りたたみ始めた。本当に手は紙を抑えるのみで山折りに谷折り、膨らませるに至るまでの作業を見事に尻尾で行っている。ものの5分もしないうちに白黒のパンダが猴の手の中に現れた。それを猴は尻尾で器用につまんで尾白の手に置く。尾白は結構厳しい表情だ。尾白の尻尾太いもんな・・・・

 

 「別にここまでしろとは言ってないです。今やったのは手と尻尾を同時に動かす、そして尻尾の器用さをあげる訓練の一例。これから毎日、練習するといいです。とりあえず鶴が折れるようになったら合格。紙も大きめの物を使うといいです」

 

 というわけでやってみるですね。なんて猴は言って荷物の中から中国版のビックサイズ折り紙を取り出して尾白に渡した。

 

 「ありがとうございます。早速やってみます!」

 

 「あい。これは部屋の中でもどこでもできる訓練です。明日の講座、尾白も来ると思うですがもし猴が帰る前にできるようになったら一つ技を伝授するです。頑張るですよ」

 

 尾白が頭を下げて早速尻尾を使って鶴を折り始めた、が結構きついものらしく力の調整をミスって1枚目が破れた。猴はふむふむと頷きながら尾白の動きを見ているようでゆらゆらと尻尾が揺れている。そしてその尻尾を目で追う芦戸の姿も。とりあえずその手を下ろせ。猴の尻尾は凶器なんだぞ。わしづかみにしてそのままぶん投げられたやつが結構いるんだからな。曹操のやつとかな。

 

 猴が熱心に尾白にアドバイスをするのを見ながら、俺は手元のお茶を一気飲みするだった・・・・熱っ!!!

 

 

 

 そうして翌日のこと。あの後結局1日目のトライでは失敗した尾白が猴からもらった折り紙を必死こいて折っていたが結局できなかった。消灯時間までやってたけどな・・・最後のころは結構いいセンいってたっぽいし、猴も「結構筋がいいです」って誉めてたから尾白が猴から技を伝授される日は近いだろう。

 

 寝る段になって猴の部屋のことでひと悶着あったが布団がなかったので結局俺の部屋でかなでの布団を使わせることになった。かなでは俺の布団で俺と寝たけどな。寝起きの猴はいつもよりぽやぽやしてて正直心配になるくらいだった。可愛いけど不安になるよ、あいつドジだもん。

 

 そんで今日の朝猴のヒーロースーツとかが中国から雄英に届いたそうなのでその確認のために猴は相澤先生に連れられて校舎の方に行っちまった。ついでと言わんばかりに白身魚の団子を入れた生姜粥をクラスの人数分こしらえてから。これ醤油ぶち込んで食うとすげえうまいんだよな。猴にカンフー教わってた時、朝食の定番だった。

 

 で、今日はA組が午前にTDLを使えるのでTDLに行くまえにサポート科によって昨日預けた銃と刀を平賀さんから受け取ってきた。ピッカピカになった拳銃とギンギンに研がれて、光を反射する流星刀を見ると、さすが平賀さんといった感じだ。ほかのやつらに遅れて体操服姿でTDLに入るともうすでにクラスのやつらはすでに始めていたので遅れたことをセメントス先生とエクトプラズム先生に謝ってから俺も技の練習に入る。

 

 せっかく刀が戻ってきたわけだし、じいちゃんから刀を受け取った時に見せてもらった技を試してみよう。抜刀した刀を脇構えへ、足の桜花でセメントス先生が作ってくれたコンクリの仮想敵の直上へ大ジャンプ、そのまま全身の筋骨を桜花と同様に連動させてその力を刃先に集約する。動き始めた流星刀の刃先が音速を突破して衝撃波の尾を引き始める。その衝撃波を刀を傾けながらコントロールして直下のコンクリへ向けて刀を振りぬき、直撃させる!

 

 「天抛(てんほう)っ!!!」

 

 ズドォン!とコンクリが押しつぶされるように衝撃波の餌食となった。天抛、これは遠山家の古い技で人間は真上からの攻撃に対処しにくいという特性がありそれを逆手にとって開発された技だ。最初は敵の頭上から刀を投げて行っていたらしいこの技だがとある代のご先祖様が衝撃波を放つ技に改良、じいちゃんに受け継がれそして今俺が使ったわけである。もうちょい威力上げれそうだな。それに振りぬくとき微妙にぶれたけどまあおいおい直していこう。今はマッハ1で剣先を振ったがスーツが戻ってくればマッハ3くらいまでならいけそうだな。素手で振ったら手が音速超えた時点で自損確定だ。

 

 「おお!遠山今のなんだ!?つーかそれ刀か!?家にあるって言ってた戦国時代のやつ!?」

 

 「おう切島、俺の新技だぜ。まあ未完成なんだけどな。刀についてはまあそんなとこだな。ご先祖様が地面に埋めてじいちゃんが掘り起こして使ってた刀だ」

 

 切島もやはり刀とかそういうものは好きらしく抜身の俺の刀をキラキラとした瞳で見つめている。そして何か考えた切島が思いついたようにとんでもないことを言い出した。

 

 「なあ遠山、さっきのやつ俺に撃ってみてくれねえか?」

 

 「正気か?威力見ただろ」

 

 「必殺技がよ、もう少しで完成しそうなんだ。けど生半可な技にはしたくねえ。お前が撃った未完成の技に負けるようじゃ最初から作り直した方がいいと思うわけよ。俺のためと思ってやってくれねえか」

 

 「・・・しょうがねえな。そう言われちゃ協力しないわけにはいかねえだろうよ」

 

 「恩に着るぜ!じゃあ見ててくれよ!俺の新技!」

 

 

 切島が俺から少し離れ、全身に力を籠める。そうすると切島の体がみるみるうちに硬くなっていき、いつもの硬化した姿以上に刺々しい姿に代わっていく。体を動かすたびにきしむ音や火花が飛び散り触れるだけで切れそうな印象すらある。なるほどこれは試したくなる気持ちもわかるな。いいぜ切島、一発ぶち込んでやる!

 

 「よぉし!こい!」

 

 「ああ、負けんじゃねえぞ!」

 

 そうやり取りをした後ガードポジションを固めた切島の頭上に俺が飛び、先ほどと同じように・・・いや、さっきよりも衝撃波の収束率を土壇場で扇貫の術理を応用してあげ威力を高めた天抛を切島に向かって話つ。扇貫が衝撃波のレーザーなら天抛は衝撃波の大砲。その威力は段違いだ。超超超硬化した切島でも耐えられるかどうかはわからん。

 

 着弾と同時に爆音と土煙が濛々と立ち込める中、着地した俺の耳に硬いものが擦れ合う音が届いた・・・・やりやがったな切島。土煙の中から多少傷ついてはいるものの五体満足で元気いっぱいの切島が出てきた。切島は大きく息を吐いて硬化を解除すると俺の方ににやっとした笑みを浮かべてVサインをした。

 

 「やるじゃねえか切島。今回は俺の負けだぜ。次は絶対負けんからな」

 

 「いーや!次も絶対俺が勝ってやるよ!次も俺の勝ちだぜ!」

 

 「言いやがったな?じゃあこれ完成させたらまた撃ち込んでやるよ。まあそんなことより、技の名前どうすんだ?」

 

 「おう、決めてあるぜ!その名も烈怒頼雄斗(レッドライオット)安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)】!漢らしいいい名前だろ!」

 

 「たしかにな。言いやすそうでかっこいいじゃねえの。残りはそいつの精度高める感じで行くのか?」

 

 「おう!お前のおかげで自信ついたぜ!さんきゅな!」

 

 そう言って切島は俺から離れてエクトプラズム先生の分身の元へ帰っていった。クラスのやつら全員すげえ速度で成長してるな。こりゃ俺もうかうかしてられねえぞ・・・・

 

 

 

 

 そうして訓練してB組のやつらにTDLを明け渡して数時間、自主練に精を出したんだが、そういえばそろそろ猴の講座の時間だったか。場所はおなじくTDLだったはず。運営を任された以上早めに行っておかないとということでTDLへ行き、扉を開けると既に真っ白のカンフーパンツの上にノースリーブのチャイナドレスを重ね着したようなヒーロースーツの猴が獲物の鳳凰の意匠が施された身の丈以上の偃月刀を振り回して華麗に演舞しているところだった。観客は相澤先生にセメントス先生だ。猴は最後の一振りを振り終えて完璧に静止し、偃月刀を背負って拳礼をして締めた。そうして扉を開けた俺のところまで駆け寄ってくる。

 

 「遠山!待ってたですよ!猴の講座、結構申し込みが多かったです!腕が鳴るです。遠山、一緒に頑張るです!」

 

 「ああ、わかってるよ。相澤先生にセメントス先生、待たせてしまったみたいですいません」

 

 「いや、問題ない。むしろ感謝してるくらいだ」

 

 「うん、いいものを見せてもらったよ。さすがは中国トップクラスのヒーローだね。演舞なのに参考にすべきことがたくさんあったよ」

 

 「いえいえ、お目汚しになってないのならよかったです。偃月刀の調子を見るためにちょっと振ってみただけですから・・・」

 

 言外に褒める相澤先生とストレートに褒めるセメントス先生にテレテレと恥ずかしそうにもじもじする猴。お前こういうのに弱いよな。面と向かって褒められるのがあまり得意じゃない猴はちらっと時計を見て尻尾を俺の手に巻き付けて相澤先生たちの方まで引っ張っていく。いや自分で歩けるから・・・

 

 そんなこんなで10分ほどたつと続々とTDLの中に参加希望者が集まってきた。A組からは飯田に緑谷、麗日、尾白、切島、常闇、障子だ。ほかのメンツはスタイルが定まったか個性伸ばしの関係上伸び悩んでてプラスアルファのこの講座に割いてる時間がないと大変嘆いていた。そんでB組からは拳藤、徹鐵、泡瀬に確か庄田二連撃、宍田十郎太、取蔭切奈ってやつだ。遅れてB組担任のブラドキング先生が入ってきて扉を閉めた。ざわざわしているやつらを相澤先生がパンパンと拍手をして静かにさせつつ口を開いた。

 

 「はい、注目。今回遠山の伝手のおかげで中国トップクラスのヒーローを招いて近接格闘の講座を開いてもらうことができた。必殺技の取得に個性伸ばしと忙しいと思うが参加する以上自分の血肉にしてもらいたい。外部のヒーローに教えてもらうということをしっかり理解し、失礼のないようにな・・・・それじゃ、お願いします」

 

 相澤先生がそう締めくくって猴に続きを促すと、猴はみんなの前に行こうとして・・・すってーん!とどっかの空港で見せた見事なコケ芸を披露なすった。それはもうさっきの見事な演武を披露してたとは思えないほどの勢いで両手を上にあげて顔面から地面に突っ込んだのである。これにはさすがのみんなも度肝を抜かれたようで痛いほどの沈黙が場を支配している。

 

 思わずいたたまれなくなってしまった俺が咳払いで注目を集めた隙に猴は立ち上がって赤くなった鼻をさすりながら鼻にかかったなんともマヌケな声で自己紹介を始めた。

 

 「いたた・・・えー、你好。香港藍幇所属ヒーローの孫、いうです。遠山の紹介でみんなの格闘術の訓練をさせてもらうことになったです。 很高兴见到你(よろしくです)

 

 なんとも微妙な拍手が場を支配するが、まあこいつのことをなめてかかれるのはここまでだ。訓練が始まったらびっくりするくらいちゃんとするから安心して大丈夫・・・だと思う。締らねえなあ・・・・

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