遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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再・第四弾

 クラスとしての目標である全員合格を逃してしまい、個人的には喜んでいいのか悔しがればいいのか複雑な感情なのだが、説明はまだ続くだろう。続く言葉を待っていると轟に夜嵐が近づいていた。すわもう一回戦くるか!?と戦々恐々としていると夜嵐は試験前のように地面に頭をぶつけるほど深く下げ、轟に謝ったのだ。思わず拍子抜けしてしまった俺がほっと息をつくと轟も夜嵐に真摯に謝りだした。良かったな。これでとりあえずは一件落着だ。

 

 しかし、疑問が残る。ここでの合格者はおよそ60人。40人くらい脱落している計算だ。そんなにも脱落者がいて尚且つ減点方式で挽回が出来ないのに不合格になった時点でなぜ退場させないのか。ほかの意図があったように思える。緑谷も同様の疑問を持ってるらしく俺と同じように考えてるようだ。

 

 『はい、全員ご確認いただけたと思います。続きまして採点結果のプリントを配ります。ボーダーラインは50点の減点方式、どの行動が何点引かれたかを下記にしてあります。しっかり目を通してください』

 

 公安委員会の黒服さんからみんなにプリントが配られる。俺も受け取り目を通すと・・・90点!?意外と高得点だな・・・えーとまず初期の応急処置でのミス・・・止血テープ張るのが荒かったぁ!?それが5回で1点づつ減って・・・残りの5点は最後ギャングオルカに放った天抛での大規模攻撃で減点か、なるほど納得できる結果だ。いちおう命に関連するミスは侵さなかったってことだから安心できる。

 

 「キーンジくん!見せて―!あたしのも見ていいから―!」

 

 「おう、いいぞ透・・・85点か、さすがだな」

 

 「えっへん。キンジ君が応急処置の授業の時一緒にやってくれたおかげだよー!だからミスが少なかったんだ!キンジ君は―・・・90点!?すごい!あ、でもヤオモモ94点だってー」

 

 「まじか。さすがは八百万だな。止血テープ張るのが荒かったってなんだよ・・・あれ強く押し付けないときちんとくっつかねえのに・・・」

 

 「んー・・・私はそれで引かれてないなー。やっぱり荒いんじゃない?」

 

 「そうかー・・・」

 

 透と点数の見せあいと反省会を行っているとまた目良さんが口を開いた。やべえ反省会に夢中で忘れてたわ。個性とヒステリアモードの使い過ぎで脳機能が低下してるなこりゃ。気ぃ抜いたら眠っちまいそうだ。

 

 『合格した皆さんはこれから緊急の場合のみヒーローとして活動できるようになります。すなわちヴィランとの遭遇、事件に救助を自己判断で行えるのです。しかしそれに伴い君たちには重い責任が生じるでしょう。平和の象徴が引退した今、犯罪抑止のブレーキはなくなりました。次はあなたたち若い世代が彼の思想を引き継ぎ、抑制できる存在にならなければなりません』

 

 耳に痛い話だ。神野の件にかかわってた身としちゃオールマイトの引退の一助になってしまったこと、それは俺の心に大きくのしかかるトラウマみたいなもんだ。あの人が安心して後を任せて平和に暮らせる社会になるように俺たちが支える必要がある。

 

 『そして、不合格になってしまった人!点数が足りないからとしょげている暇はありません。君たちには3か月の特別講座を受講ののち、再試験で結果を出せば仮免許を発行するつもりでいます!』

 

 どよっと周りがどよめいた。再試験、と言ったのだ。なるほどだから途中退場が無かったのか。最後まで足りないところを見極めるために。これは朗報だぞ!クラス全員が問題なく仮免を取得できるかもしれない!クラス中が顔を見合わせて笑顔になる。良かったな、轟に爆豪!

 

 

 そのあと2,3話をはさんで俺たちの激動の仮免試験は終了した。スーツを持って試験会場を後にする俺の手には今しがた発行されたばっかりの仮免カードが鈍く光を放っている。

 

 「お前ら!お疲れさんだ。よく頑張ったな」

 

 「「「「「相澤先生!!!」」」」

 

 「ああ。さ、寮に戻るぞ。今日の夕飯は豪華だからな」

 

 そう言って相澤先生が見せたスマホの画面では、かなでと猴が満面の笑みでテーブルいっぱいに中華料理とアメリカの料理を並べている写真だった。腹の減った俺たちは我先にとバスへ駆け込み、バスは緩やかに雄英へと帰るのであった。ちなみにB組はランチラッシュが祝いのご飯を作ってるとか。さすが、雄英。公平だな。

 

 

 

 「「お帰りなさーーーい!試験お疲れ様です!」」

 

 「「「「ただいまー!!!」」」」

 

 寮に帰ってくるとかなでと猴が元気いっぱいに出迎えてくれた。相澤先生は帰るつもりだったらしいがクラスのやつらからお願いされて一緒に夕食をとることになったみたいだ。さすがだぜ芦戸に切島、そういうのは大得意だな。湯気をあげる沢山の中華料理とかなでが作ったであろうアメリカのピザやステーキ、サラダ・・・手当たり次第に作りましたって感じのバイキングだ。たまらねえな。

 

 「お兄ちゃん様!」「遠山!合格おめでとうです!」

 

 「ただいま。かなで、猴。メールでも送ったがなんとか合格できたぜ。お前らのおかげだな」

 

 飛びついてきたエプロン姿のかなでと猴を受け止めて二人纏めて高い高い。疲れているがこんくらいならまだ余裕。お祝いの言葉を言ってくれる二人に礼をしてクラスのやつらと着席する。

 

 「「「「いただきまーす!!」」」」

 

 「「召し上がれ!」」

 

 挨拶もそこそこに俺たちは料理にかぶりつき、つかの間の至福を満喫する。ちょうど明日から後期開始だ。明後日に猴も帰っちまうし寂しくなるな。今のうちに英気を養っておこう・・・。しかしこのステーキと油淋鶏うまいな。

 

 大盛況の夕食を終えて、風呂を済ませた俺たちは会話もそこそこにそれぞれ自分の部屋に戻って眠りにつくことにした・・・消灯時間を過ぎるちょっと前、興奮するかなでと猴を寝かしつけて開けっ放しの窓を閉めようとすると玄関を出ていく緑谷と爆豪の姿が見えた。

 

 思わず目をぱちくりさせちまう。あの爆豪が緑谷とどこかへ行く・・・というかこの消灯時間間際の中どこへ行こうってんだ?きなくせえな・・・尾行しようと思ったがさすがにいなくなりゃ猴が気付く。そうなるとクラス中の知るところになるだろう。すぐに戻ることを願って、俺も寝る準備をしておこう。

 

 

 それからおおよそ30分、緑谷も爆豪も戻ってくることなく俺はやきもきしていた。今からでも追いかけるべきかこのまま相澤先生に連絡を入れるべきか・・・けどなあ、前までだったら相澤先生に連絡を入れてた。けど緑谷にはかなでを救って貰った恩がある。相澤先生をまた裏切っちまうことになるが見ないふりを・・・と悩んでいると唐突にスマホが着信を知らせた。あっぶねえミュートで助かった。廊下に出て電話に出ると・・・

 

 『もしもし、遠山少年かい?すまないね、夜分遅くに』

 

 「オールマイト?どうしたんですかこんな時間に」

 

 オールマイトだ。頭の中であたりをつける。多分爆豪と緑谷のことだ。あいつらが何かやったか爆豪がワンフォーオールのことに気づいたか・・・その中で俺とかなでの存在が出てきたんだ。オールマイトは多分話したくないんだろうけど、関係上どうしても話さなくてはならなくなった、とかそんな感じだろうか?

 

 『ああ、爆豪少年と緑谷少年が・・・喧嘩をしてね。わだかまりを解消するために・・・話そうと思う。もし君が許してくれるのなら・・・かなで少女のことも。爆豪少年、彼が前に進むためにはもうこれしかないんだ』

 

 やっぱりか・・・爆豪は天才だ。いろんな意味でな。だから気づいちまったんだろう。オールマイトと緑谷の関係、そして緑谷と俺の関係にも・・・だから、かなでも関係しているとあたりをつけ、いや半ば確信して緑谷を問い詰めたんだ。緑谷がゲロったとは思わないが、幼馴染のことだ。爆豪は嫌でも察しがついたんだろう・・・俺にももう逃げ場はねえみたいだな。

 

 俺は深くため息をついてオールマイトに返事をする。もう規則云々なんて構ってられるか。

 

 「わかりました。でも俺が説明します。爆豪が誰彼構わずしゃべるとは思いませんが、念のため。許可をください」

 

 『・・・許可をしよう。ハァ、自分が情けなくてたまらないよ。君たちを守ると誓ったのに、こうして今君に守られようとしている』

 

 「もういいですよ。爆豪は気付きつつありました。時間の問題で、それが今来ただけです」

 

 『・・・グラウンドβにいる。待っているよ』

 

 そう言ってオールマイトは電話を切った。俺はそのまま階下に降りようと歩を進めるが後ろからあいたドアの音に足を止める。猴が扉を開けてこちらを見ていた。

 

 「・・・どこ行くですか」

 

 「オールマイトから呼び出しだ。めんどくさいことになったらしくてな・・・かなで関連のこと、だ。頼む」

 

 「是。わかりました。・・・遠山、一人で抱え込むじゃないです。猴も、頼ってください」

 

 「もう十分頼ってるつもりだけどな・・・・ありがとうよ」

 

 そう言って猴を置いたまま階下に降りる。玄関へ歩を進めようとしたところで管理人室から相澤先生が出てきた。その瞳は鋭くとがり、俺を貫いている。

 

 「遠山、消灯時間だ。どこへ行く」

 

 「オールマイトに呼ばれました。爆豪と緑谷のこと、そんでかなでのことです。オールマイトから許可は出てます」

 

 相澤先生はあきれたように頭を押さえてかぶりを振り、大きなため息をついた。

 

 「あの人は・・・わかった。許可は出してやる。遅くならないうちに戻ってこい・・・いいな」

 

 「了解しました・・・・ありがとうございます」

 

 相澤先生もわかっているのだろう。無言で管理人室に戻っていく。オールマイトに完全に任せる算段のようだ。俺は相澤先生に深く頭を下げてそのまま玄関を出てグラウンドβに走り出すのだった。

 

 グラウンドβに到着すると座り込んだ緑谷と爆豪、それにオールマイトが出迎えてくれた。バツの悪い顔をした緑谷と真剣な顔をした爆豪の二人は結構やりあったらしくボロボロだ。あーあ、個性ありでケンカしちゃってまあ・・・仮免とった日に何やってんだよ。

 

 「遠山少年、待っていたよ。爆豪少年、さっき話した通り私の個性の秘密を知っているのは生徒では緑谷少年と遠山少年、そしてかなで少女だけだ」

 

 「お待たせしました。爆豪、緑谷・・・派手にやったみてえだな・・・スッキリしたか」

 

 「遠山君・・・」

 

 「なんでこのクソネクラとそのチビがあんたのこと知ってんだ。それにこいつは話せねえっつってただろ」

 

 「ま、そう言ったわな。けどオールマイトの秘密をお前が知る以上、どうせかなでのこともばれる。オールマイトが全力を出せるように調整してたのはかなでだからな」

 

 「・・・どういうこった」

 

 爆豪がこっちを向いて真剣に問いかけてきたのできちんと説明してやる。かなでが米軍によって作られた人工天才の2世代目であること。オールフォーワンと同質、あるいはそれよりも個性への干渉度が高い個性であること。それゆえに自分の個性を補おうとしたオールフォーワンに狙われたこと。個性を渡したことにより戦闘可能時間が減りつつあるオールマイトへエネルギーを移し替え補強し続けていたこと。緑谷の個性への訓練を行っていたことをあらいざらいと。

 

 すべてを話し終えた俺が爆豪を見ると少しうつむき黙ってしまった爆豪が緑谷に向き直った。

 

 「っとに・・・クソデク、てめえ・・・一番強ぇ人に引き上げてもらって、レール敷いてもらって、入学したばっかで赤の他人に教えてもらって・・・10にもならねえチビにあぶねえ橋渡らせて・・・そこまでしてもらっておいて・・・敗けてんじゃねえよ・・・ハァ・・・」

 

 絞り出すように緑谷にそう漏らした爆豪、緑谷は俯いて「・・・うん」と返事をした。かなでの個性を使用したのは俺たちの選択だからそこ別にいいんだけどな。察されてたら世話ねえが。爆豪は大きく息を吐いて俺の方に向き直った。

 

 「オールマイトのことも、てめえの妹のことも・・・誰にも言わねえ、察させねえ。隠し通す。絶対にだ。今日の・・・ここだけの、秘密だ・・・気が向いたら、気にはしておいてやる」

 

 そう言った爆豪のどこかスッキリした顔を見た俺は、なんとなしにこいつなら大丈夫だろうということが直感的にわかっちまった。オールマイトや緑谷、相澤先生にすらばらしたときにはある種の不安が胸にあったのだが今はそんなことは全くない。こいつなら、多分誰にも言わないだろう。来て、よかったな。

 

 

 

 

 「試験のあったその日、その晩にケンカとは元気が有り余ってるようで大変よろしい」

 

 よくはなかった。今のところ俺へ被害は来てないが管理人室にオールマイトと俺たちが入ったとたん飛んできた捕縛布が爆豪と緑谷をグルグル巻きにして拘束し手早く治療を済ませた相澤先生が捕縛布をギリギリと音が鳴るくらいに締め上げて爆豪と緑谷の二人を説教している。超こえぇ・・・

 

 「相澤くん待って。ストップストップ」

 

 オールマイトが相澤先生を止めて耳元でこしょこしょやってる。というか俺寝ていい?もう俺いらないよね?なんとなしについてきたけどこれ以上いてもしょうがなくない?どでかいため息をついた相澤先生がぎろりと二人とついでに俺をにらんだ。なんで?

 

 「先に手を出したのは?」

 

 「俺」

 

 「僕もけっこう・・・だしました」

 

 「爆豪は四日、緑谷は三日の寮内謹慎!その間寮の共有スペースを朝晩掃除して反省文を提出!怪我についてはばあさんの個性に頼らなければ保健室へ行くのは許可してやる!勝手な怪我は自分で治せ!以上!わざわざ説明のためにそっちに行った遠山に謝ってから寝ろ!」

 

 そう言って管理人室をつまみ出された俺と緑谷に爆豪、3人で顔を見合わせてどこからともなく緑谷と爆豪が頭を下げた。

 

 「ごめん、遠山君。かなでちゃんのことは隠さなきゃならなかったのに・・・それに、来てくれてありがとう」

 

 「・・・・悪かった」

 

 殊勝に謝ってくる二人に最初からこんなことするなと思わんこともないが・・・まあ今回のことはしょうがない。俺も怒ってるわけじゃねえしな・・・ま、けじめはけじめだ。俺は両手をデコピンの形にして2人の額にビシィ!!!と一発入れてやった。

 

 「いっだぁ!?」

 

 「っ痛ぅ・・・てめえ!なにしやが・・・」

 

 「これでチャラにしてやる。十分懲りただろ。ま、明日から掃除よろしくな」

 

 そう言って俺は二人より先に足早に階段を上って自分の部屋に戻るのだった。猴は見事に俺の布団で寝てやがるな・・・しゃあねえ、今日はソファーだな。とほほ・・・

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