遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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再・第七弾

 猴が帰ってしまってちょっと寂しくなった日常が過ぎ、ついに緑谷の謹慎が解け復帰できるそうだ。長いようで短かった謹慎が明けた緑谷は鼻息荒く教室に入ったとたん俺たちに謝った。

 

 「この度はご迷惑をおかけしました!」

 

 「デクくんオツトメご苦労様ー!」

 

 「いやオツトメって・・・どうしたのさそんなに鼻息荒くして?」

 

 「この3日間で着いた差を取り戻そうと思って!」

 

 「おお、そういうの好きだぜ俺!なあ遠山!」

 

 「ん?まあそうだな。追いついてくれると嬉しいぜ」

 

 「うん!ありがとう切島君!遠山君!」

 

 ふんすふんすと鼻息荒く緑谷はクラス全員に謝っていくのを見守る。見てると面白いけど引いてるやつも何人かいるのに気づけ緑谷。前のめりすぎだ。

 

 

 「お前ら席に着け」

 

 ぴたっと喧騒が止み騒がしかった緑谷も含め一瞬で席に着いた。俺もだけどどんだけ相澤先生の言うこと聞くんだろうな俺たちは。

 

 「はい、よろしい。じゃあ緑谷も戻ってきたところでゲストを交えてインターンのことを説明していきたいと思う」

 

 ゲスト・・・?体験先のヒーローとかか?相澤先生がドアに向かって「入っていいぞ」と声をかける。すると景気良くドアが開いて3人の雄英の制服に身を包んだ生徒が教室の中に闖入してきた。

 

 「現雄英生の中でもトップ中のトップに君臨する3年生3人・・・通称ビック3の皆だ」

 

 ってあれ通形先輩に天喰先輩、波動先輩じゃねえか!職場体験のスカウト受けて以降ちょくちょくかなでを迎えに行くときに話したりしてたけどそんなにすごい人たちだったんだな・・・道理で異様に強そうなわけだぜ。

 

 「ってことで手短に自己紹介しろ。天喰から」

 

 一歩前に出た天喰先輩がギンっと目を尖らせた。クラス中はびりびり来るその重圧におののいているようだが多少交流があってファットガムに話を聞いてた俺はわかる。あれ言葉が出なくて困ってるやつだ。天喰先輩はコミュニケーションが苦手なようでそこを通形先輩や波動先輩がフォローしてるからな。

 

 「ダメだ・・・ミリオ、波動さん・・・!後輩たちを空気だと思っても・・・やはり目の前に映るのは避けられない・・・!どうしたらいい・・・何を話せば・・・」

 

 フルフル振るえてボソボソとそう通形先輩に漏らした天喰先輩はまたも震えながら黒板の方、俺たちに背を向けぽつりと

 

 「帰りたい・・・・!」

 

 と漏らしなすった。さすがに別の意味で度肝を抜かれたクラス全員がおかしなものを見る目になった。そして接すればわかる中身は幼稚園児のフリーダムヒロイン、波動先輩が

 

 「あ、天喰君そういうのノミの心臓っていうんだってね!ね、人間なのにね!えーと、彼は「天喰環」それで私が波動ねじれ!今日はヒーローインターンについて相澤先生に説明してほしいって言われたの!よろしくね!」

 

 と、天喰先輩の分の自己紹介をまとめてやりなすった。ここまでだったらまあ気が利くいい人なんだなあで済ませるのだが・・・

 

 「ねえ障子くん?だっけ?そのマスク何?怪我?風邪?オシャレ?あら、あとあなた轟君だよね!?ね!なんでそんな目のところに火傷なんてしちゃったの!?芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくるの!?動いたりする?ね、蛙水さんはアマガエル?ヒキガエル?ウシガエルじゃないよね!?みんな気になるところ沢山で不思議!」

 

 これである。波動先輩は教壇を離れて俺たちの間を練り歩き気になるところを見つければ質問を飛ばし答えるまもなく別の質問をしている。興味があっちこっちに映って俺たちに答える暇がない質問攻めをする自由な波動先輩を見た相澤先生は

 

 「・・・合理性に欠くね?」

 

 ゆらぁ、と個性を発動させながらとんでもない眼光を飛ばしている。正直超怖い。波動先輩!尾白の尻尾触ってる場合じゃありませんて!教壇に戻って!ほらはやく!焦るのは俺たちだけではなくどうやら通形先輩も同じようで

 

 「大丈夫ですイレイザーヘッド!大トリは俺なんだよね!安心してください!」

 

 と大袈裟な身振り手振りを交えてあたふたやっている。そもまま大きく息を吸って─────

 

 「前途―――――!!?」

 

 しーーーーん

 

 「多難ーーーーー!!!つってね!よーし掴みは大失敗だ!・・・まあすべったことは置いておいて・・・いきなり必修でもないインターンの説明にわざわざ生徒なはずの3年生が来たことに対して何が何やらってなっちゃうのはしょうがないと思うんだよね」

 

 いや、通形先輩・・・クラスのやつらはあんたらのあまりのキャラの濃さに面食らってるだけで雄英特有の突拍子もないイベントにはすでに慣れ切ってるんだぞ多分。

 

 「うん、まあ口でごちゃごちゃ説明してもわかんないよね!だから君たちまとめて・・・僕と戦ってみようよ!いいですよねイレイザーヘッド!」

 

 「ま、いいだろう。好きにしろ」

 

 ええ・・・ずっと思ってたけどこんな感じでいいのか雄英って・・・・

 

 

 

 というわけでやってきたのは立体的な室内が特徴的な体育館γ。すでに体操服に着替えて準備万端な俺たちと通形先輩は柔軟体操をしながら一人で俺たち全員を相手にするという通形先輩と話しをしている。微妙に遠くまで離れた天喰先輩は

 

 「やめた方がいい・・・みんながみんな君のように上昇志向でいるわけじゃない。君と戦うことで折れる子が出てはいけない」

 

 と言っていた。さすがに言いすぎだろ・・・と思わなくもなかったが俺にとって経験があることは確か。苦い苦いオールフォーワンのクソ野郎だ。つまり天喰先輩は俺たちの通形先輩には天と地ほど・・・大人と赤ん坊と言っていいほどの実力差があるといっているんだ。俺もこの人がどんな風に戦うかを知らない以上全く気を抜けない。フルコンディションで挑むべきだろう。素手だけどな。

 

 「そうだね、ね!知ってる?昔挫折したヒーロー志望がヴィランになっちゃったって話!大変だよね通形!ちゃんと考えないとダメだよー」

 

 ある意味俺たちを見下してるともとれる発言にカチンときたやつが数名うちのクラスにいたらしい。俺も同じくくりで見られてるんだろうなあと思ったのでちょっとばかし本気で挑むことにした。個性の強化上限、いつもの15倍から30倍へ。そしてヒステリアモードも30倍へ跳ね上がった強化により無理やりβエンドルフィンをひねり出してヒステリア・ノルマーレと同じ30倍へ。あわせて60倍、使った後本気でつらくなるがどうせいつかは使い続けるんだ。早めに使って慣れておこう。

 

 「確かにあなた方に比べれば我々は弱いかもしれない・・・でもハンデアリとはいえプロと戦い、実戦も経験した」

 

 「そんな心配されるほど、俺らザコに見えますか・・・?」

 

 「それは戦ってみてのお楽しみってやつさ!さ、どこからでも来ていいよね!一番手は!?」

 

 「おれ「僕が行きます!」まさかの緑谷!?」

 

 へえ、緑谷が先陣か。いいんでねえの?俺は少しだけ様子見することにしよう。バチバチとワンフォーオールをまとった緑谷を筆頭に前衛がそれぞれ準備を始める。俺もポッケに突っ込んでた手を出して構える。近接組が囲うように円になって取り囲み、楽しそうな通形先輩はどこ吹く風だ。超余裕、って感じだな。

 

 「いいね、問題児くん!元気があるなあ!それじゃ、かかっておいで!」

 

 「それじゃあ先輩!ご指導のほど・・・・「「「「よろしくお願いします!!!」」」」

 

 

 俺たち全員が挨拶をしたところで真っ先に緑谷が躍りかかる。それを通形先輩は目の前にして動かない・・・と思いきやはらりと体操服が体をすり抜けていきなり全裸になった。女子勢の悲鳴が木霊する中通形先輩は「ごめんごめん!ちょっと調整がね・・・」とズボンをはきなおしてる。こりゃわざとだな、俺たちに個性のヒントをくれたんだ。たぶん、すり抜ける。これが重要だ。

 

 「隙・・・だらけ!!!」

 

 「おいおい、顔面かよ」

 

 遅れてとびかかかった緑谷の蹴りも顔面をすり抜けて無効化される。物理無効かぁ・・・困ったもんだ。俺は封じられたといってもいいぞ・・・其処から遠距離組の飽和攻撃が通形先輩を叩こうとするがどれもこれもすり抜けて無駄に終わる。むしろ地面を破壊し煙をあげてしまって見失う始末だが・・・ヒステリアモードの視力をなめてもらっちゃ困る。俺は飽和攻撃のさなか、地面の中に落ちる通形先輩を見た。遠距離攻撃ができるやつと多対一をする場合セオリーは・・・後衛の撃破!

 

 「後衛組後ろ気をつけろ!多分来るぞ!」

 

 「いい分析だかなでちゃんのお兄さん!その通り!まずは遠距離持ちからだよね!」

 

 まるで瞬間移動をするように後衛組の耳郎の後ろにまた全裸で現れた通形先輩は次々と後衛のやつらに腹パンを入れ、おおよそ5秒ほどで全員殴り倒してしまった。女子にも容赦なく腹パンを決めた通形先輩はいつの間にかズボンをはいて

 

 「POWERRRRRRRRRR!!!!」

 

 とキメ台詞を放っている。なんちゅう手際の良さだ。一朝一夕で見につくもんじゃないぞ。そしてそれを見ていた相澤先生が思い出したように

 

 「いい機会だからしっかりもんでもらえ。通形ミリオは俺が知る限りプロも含めて最も№1に近い男だぞ」

 

 ・・・!へえ。通形先輩が兄さんを抜いて最も№1に近いねえ・・・なるほど。本気で挑む気ではあったけど・・・もっとやる気が出てきたな。そういうことなら遠慮はしねえ。黒霧やオールフォーワンにさんざん煮え湯を飲まされたワープの対処を試しつつ通形先輩の個性を探ろう。

 

 「すり抜けにワープ・・・なんて強個性だ!無敵じゃないすか!?」

 

 「よせやい!」

 

 「いや、何かからくりがあると思うよ!すり抜けの応用でワープをしてるのか逆なのか・・・どちらにしろ全部直接攻撃、カウンター狙いならば触れられる隙もあるはず・・・!何されてるか仮設を立てて勝ち筋を探っていくんだ!」

 

 「おお!そうだな緑谷、謹慎あけすげー頼りになる!」

 

 「いいね!探ってみなよ!でもその前に───」

 

 来るぞ・・・狙いはおそらく・・・・

 

 「厄介な戦闘能力持ちからだよね!」

 

 俺だ!またその場で落ちるように消えた通形先輩が俺の背後に瞬時に現れ拳を握る。けど、俺は反応速度ならだれにも負けねえって自負してんだよ!しかもカウンターは俺の大得意分野だぜ先輩!俺は深く集中しパンチのモーションに入った通形先輩を注視する。ウルトラスローの視界の中、通形先輩をすり抜ける風を視覚化し分析を図る。腹に近づく通形先輩の拳が俺のどてっぱら5センチ前で風を通さなくなった!今!

 

 パァン!バァン!と続けて空気を割く音が2回した。1回目は俺が右手の肩、肘、手首の3つの関節で放った桜花が先輩の実体化した手を払った音、そして2度目はパンチを放つため両足で踏ん張り立ってる以上足は実体化してるのだろうとふんではなった腰、股関節、膝、足首の音速一歩手前の桜花が先輩の右足踵側面に当たり払った音だ。さすがに防がれカウンターを入れられたのは驚いたらしく倒れるまま地面に消えた先輩はややあって少し離れた場所に現れた。

 

 「当然、カウンターを入れてくる・・・それを刈る訓練もしてきたけど・・・一杯食わされたよね!ねえかなでちゃんのお兄さん!今見てから動いたでしょ!?」

 

 「キンジでいいっすよ。ややこしいんで。ええ、今の俺なら音速だろうが瞬間移動だろうが見てから動けます。ワープにはいやというほど煮え湯を飲まされたんで・・・ちょっと対策を組んでまして」

 

 「へぇ・・・!なるほど君はめんどくさいね!それならじゃあ・・・動きを停めた子たちからかな!」

 

 そう言ってまたワープをして緑谷の背後に現れる先輩。緑谷は今までのパターンから後ろに現れることを予期して後ろ蹴りを現れた瞬間にはなっていた。だがそれを軽くすり抜けた先輩にまた腹パンを受けて終わる。俺も扇貫で援護をしようと構えるが・・・通形先輩のが上手だった。どれもこれもクラスのやつらを間にはさんで現れるため俺は遠距離用の衝撃波技を封じられている。あっという間に全員のされて立っているのは俺だけになってしまった。ちっ!やりづれえ・・・

 

 「さっ!厄介なのは多対一じゃなくて一対一だよね!これでもとらえられるならとらえてみなよ!」

 

 また落ちる通形先輩、そして予想通り背後へ・・・と思いきやまるで分身するかのように俺の前後左右に現れ始めた。よくよく観察してみると足首がどっちか必ず地面に埋まっている。こりゃすり抜ける方が個性で確定だな?つまり何らかの手段でモノに弾かれてるから今のワープみたいな動きができるのか。じゃあすり抜けるの前提で防御をとってみよう。

 

 右後ろに現れた通形先輩の左拳に振り向いた俺がわざと合わせるように自分の防御の手を重ねる。もしモノが弾かれるというのなら、実体化して殴る以上これをやられるとどっちも弾かれるはずだ。俺は重ねた手を通形先輩が殴るのと同速度で動かし、拳が当たると同時に顔面にぴったりつける。思った通り通形先輩はそれをフェイントに変えることにしたようだ。そのまま俺の手と顔面をすり抜けた拳をエサに右拳を左を引き切ると同時に当たるように調整して放ってくる。当然俺だって何もしないわけじゃない。顔面を突き抜けている手をそのままに桜花で首を横に振って片目だけ視界を確保、両手で重ねにかかる・・・ところでズキッと頭痛が来て集中が切れた。しまった集中しすぎて個性を酷使しすぎたか────!!!

 

 「おっと!隙ありだよね!」

 

 「しまっ・・・!」

 

 当然その隙を見逃さなかった通形先輩の容赦ない腹パンが俺に突き刺さった。咄嗟に絶で全身を固めて衝撃に備え何とか最小限のダメージでことを済ませたがもうこれ以上脳みそ酷使は出来ねえな・・・俺は両手をあげて降参の意を示す。

 

 「・・・参りました。俺の負けです」

 

 「うん!了解だよね!びっくりしたよ、初見でここまで防がれるなんてね!」

 

 なるほどこれが雄英の最強、経験を積んだ本物の姿か・・・!相澤先生が手放しに誉めるのも納得できる強さ、そして忘れがちだがヒーローに必要な親しみやすさ・・・それにかなでからある程度話を聞いているが優しさまで兼ね備える傑物らしい通形先輩。インターンでここまで変わるというなら・・・是が非でも行きてえな。

 

 

 

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