遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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再・第九弾

 まさかの面接も何もなしの一発OKに面食らった俺をひとしきり笑い終わったリューキュウと波動先輩は顔を見合わせて口を開いた。

 

 「えーっとね!体育祭の後職場体験のスカウトいったでしょ!?その時からずーーーっとリューキュウ、遠山のこと狙ってたの!えっと理由はね・・・!」

 

 「はいねじれストップ。ごめんなさいね遠山君。多分ねじれが伝えてると思うけど「小回りが利く強い人材」が今のうちの事務所では不足してるのよ。私は個性が個性だし、ねじれもどっちかっていうと大規模攻撃向きね。サイドキック達も私と似通った個性が多いの。だから、体育祭を見てあなたにビビッと来た!てわけね」

 

 「確かに対人戦はそれなりに自信がありますけど・・・そこまで言われるレベルに達してるとは思いませんが・・・」

 

 「そうね、正確にはあなたの器用さに私は惹かれてるの。体育祭で何度も見せた対応力の広さ、大規模攻撃を相殺する手札の多さ、それに言うまでもなく戦闘力。どれもこれも磨き抜かれたものだわ。しかもファットから聞いたけどあなた武器まで使いこなせるっていうじゃない。私だけじゃないわよ?あなたを欲しがってる事務所は」

 

 えっまじで?あまりにべた誉めされるから混乱してたけど俺欲しがってる奇特な事務所って結構多いのか!?体育祭じゃ興味だけって聞いたからもうみんな別の方面に注目してるもんだと思ってたぞ・・・俺個性自体が派手じゃないから人気商売なヒーローに欲しがられる理由なんてそんなにないと思うんだけど・・・

 

 「わかってないって顔ね?あなたはまだ1年生だから自覚はないのかもしれないけど・・・あなたをサイドキックにしたいってヒーローは多いの。それはあなたがどんな状況でも生き残れる可能性があるから、よ」

 

 「生き残れる・・・ですか?」

 

 「そう。ヒーローは人気商売、もし地元のヒーローがサイドキックをヴィランによって失ったら世間はどう見るかしら?間違いなく人気は下がるわよね?一芸特化じゃヒーローは務まらないわ。いろんな戦闘に対応していく必要があって、失敗は許されない。その中で豊富な手札をもち、個人としての戦闘力も高く、円滑にチームアップして協力もできるとくれば欲しがる事務所は沢山あるの。それにあなたは・・・」

 

 「俺が・・・?」

 

 「気を悪くしないで頂戴ね・・・あなたは、神野の事件でも生き残った。ヴィランのボスに一矢報いるという結果を残して。いい意味でも悪い意味でもあなたは注目されるようになってるの。星の数ほどある事務所から私の事務所を選んでくれたことは嬉しく思うわ。まあそういうわけで、あなたに関しては来た時点で採用確定、というわけよ」

 

 ・・・なるほど。状況は理解した。どうやらプロの界隈では俺は結構な有名人になってしまってるらしい。そうするとなんで兄さんは俺に指名をくれなかったのだろうか・・・?まあいいや。とにかくリューキュウ事務所への採用が決定してくれた!インターンできるってことだよな・・・あーよかった・・・。

 

 拍子抜けした俺がふーっと息を吐きだすとリューキュウはじ~っと俺を上から下まで観察し始めた。あの何の御用でしょうか・・・?

 

 「そういえばさっきねじれに聞いたのだけど、通形君に一発攻撃を当てたのよね?彼、ナイトアイが手塩にかけて育ててるからよっぽどのことじゃないとダメージなんて負わないのにすごいものね。ふふ、これはナイトアイが悔しがる顔が浮かぶわね~」

 

 と口の端から綺麗な肉食獣っぽいギザ歯を見せながら笑うリューキュウ。勝手なイメージなんだがこの人孤高のクールビューティって感じなんだよなメディアだと。こんな親しみやすい性格してるなんて思わなかった。

 

 「にしても残念ね。本当だったらこの後訓練でもして実力を見せてもらおうと思ってたのだけど・・・さっき肩外れてたし今日はやめた方がいいわね。質問が無かったら今日はもう帰っても大丈夫よ?ねじれも今日はありがとうね」

 

 「別に多少動いても大丈夫ですよ?家じゃ関節くらい自分で外したりはめたりできないとダメでしたし・・・外れた状態で組手するとかもざらでしたから」

 

 実際に心臓停めて死んだふりしたりする家だからな、遠山家は。関節一つ外れたくらいならさっさとはめろっていう空気だし。俺がそう言うとリューキュウはちょっと引いたような顔をして

 

 「そ、そうなの・・・・じゃあ、見せてもらいましょうか」

 

 そう言ってスツールから立ち上がったリューキュウの後をついて、俺と波動先輩は事務室を後にするのであった。

 

 

 

 「ここよ」

 

 そう言ってリューキュウが止まった一室はガラス張りになった部屋の中に無数の銃座が並んでいる・・・というか全自動じゃん、めっちゃ金かかってるな。

 

 「遠山君の素手の実力は言うに及ばす、ファットガムが伝えた話でも銃撃戦もこなせるって聞いてるわ。でも、仮免に合格して実弾に代わるでしょう?そうなると伝え聞いた話だと不安なの。ヒーロー社会においてフレンドリーファイアや誤射はとんでもない問題を引き起こす。実力を知らないで使用許可は出せないの」

 

 「おっしゃりたいことは分かります。それで俺はどうすれば?」

 

 「やってほしいことは単純よ。今からこの部屋の中の銃器をすべて起動させるわ。あなたはその脇と腰の銃を使って全ての銃を壊すか使用不能にしなさい?弾切れまでよけるのはなしよ。最速、最短で被害を限りなくゼロにするの」

 

 「・・・壊していいんですか?」

 

 「ええ、どうせ明後日に全部取り換えるもの。撃ちすぎて摩耗が激しくってね。どうせならあなたの実力試しに使ってみる方がただ取り換えるより有意義よ」

 

 ふーん、持ってる場所まで見抜かれてるのは兎も角、実に俺向きなテストだな。確認できる限り、銃は34丁ってところか・・・。いや、隠しがいくつか混じってんな・・・マガジンは最低限しかねえからばらまくわけにはいかねえ。でもヒーロー活動すんならそんな言い訳してちゃダメだからな。着の身着のままでも結果出さねえとダメなんだ。

 

 俺は脇のベレッタと腰のデザートイーグルのホルスターを入れかえながら調子を確認し、持っているマガジンの本数を数えながらリューキュウに返事をする。

 

 「わかりました。ほかに禁止事項はありますか?」

 

 「特にないわ。じゃあ、あなたが部屋の中に入ったら始めるわよ」

 

 「わ!やるの?でもリューキュウ、普段は全部一気に動かすなんてないよね?どうして?」

 

 「それはね、そのくらいの対応力がないとヒーローは銃器を使ってはいけないっていうのが今のスタンダードだからよ。だから今、銃を使うヒーローはみんなこれくらいは対応できるってこと。曲がりなりにも戦力としてインターンするのだから同じ水準を求めないとね」

 

 なんてリューキュウが波動先輩に解説するのをしり目にガラス張りの部屋の中に入り、中央まで歩いてく。ひぇー、見たことねェ形の銃だな・・・これ専用のためのオリジナルか?これ壊していいとか太っ腹もいいとこだぜ。完全自動だからかトリガーが見当たらねえな・・・マガジンも内部機構になってんのか・・・え?これ壊すって結構難易度高くね?全部銃口撃ちしろってこと?・・・やれるだけやってみるか。

 

 兄さんから習ったように足を肩幅に開いて手を下げる。「無形の構え」・・・今からやる兄さんの必殺技に必要な前段階の構えだ。どうせならアピールもかねてやってみよう。銃は使うが抜いてるところは見せない・・・兄さんが開発した究極の速撃ちだ。

 

 

 『準備よさそうね?・・・・じゃあ、はじめ!』

 

 リューキュウの合図とともに短いブザーが鳴り自動銃どもが動き出す。いち早く俺を見つけた正面の5丁が銃口を俺に向け―――――――

 

 

 ガガガガガン!!!という音とともに銃口に銃弾を叩き込まれ銃座から銃が吹っ飛んだ。俺は傍目には何もしてないように見えてるだろう。手は無手のままだらんと垂れ下がりなにも動いてないように見える。唯一あったことといえばマズルフラッシュが5回閃いたことだけ。

 

 『あれ?リューキュウ、今何があったのか見えた?すごい!全然わからなかった!』

 

 『不可視の銃弾(インヴィジ・ヴィレ)ね・・・カナ以外にも使える人がいたなんて・・・』

 

 『インヴィジ・・・ヴィレ?』

 

 そう、こいつは兄さんが開発した拳銃による居合抜き、最速の銃技だ。ヒステリアモードの反射神経を利用して、抜き、狙い、撃つ、仕舞うの4工程を極限まで早くした、ただの速撃ち。あまりの速さゆえに銃本体は見えずに敵はマズルフラッシュしか確認できずそれを見たときにはもう相手の体に銃弾が着弾している・・・つっても兄さんに直接教えてもらったとはいえ兄さんが使ってるリボルバーじゃなく俺のはオートマチックだ。開発者の兄さんが放てば俺の1.5倍くらいは速度が出る。

 

 

 壊れた銃を踏み越えるように前へ出る。横方向に存在する7丁が銃弾を吐き出す前に不可視の銃弾で銃口撃ちを叩き込んでやり黙らせ、逆方向の隠し銃が発砲してくるのをデザートイーグルの不可視の銃弾で真正面から迎撃。運動量で勝るマグナム弾を受けた隠し銃の弾丸はひしゃげ、まっすぐに隠し銃の銃口へ入っていった。相手の弾をそのまま返す鏡撃ち(ミラー)だ。

 

 ベレッタのリロードを済ませ真後ろにある5丁を同じようにぶっ壊す。摩耗のせいかなんなのか知らねえけど思ったより反応速度が遅い、天井の隠し銃を迎撃し前進、流れで6丁を破壊したところで銃の動きが変わった。手加減解除ってか?

 

 ババババババ!!!とさっきとは段違いの速度で弾を吐き出す銃ども。俺は鉛玉の嵐を身をひねって避け、そのままベレッタの残りの弾を不可視の銃弾で全部吐き出す。銃弾撃ちで跳ね返った弾丸がほかの弾丸を巻き込みながら多段的に跳ね返り銃弾の嵐を形成し、10丁の銃を穴だらけにした。鉄風(テンペスト)の強化版、鉄嵐(ディザスター)ってな。

 

 ラストは隠しを入れて10丁、ちょっと距離あるけど問題ねえと思いきや軽く20mはあるにもかかわらず正確にこっちを狙撃してやがる。俺はバタフライナイフを取り出して右前当たりの自動銃に向かってヒステリアモードのロケットスタートを切る。当然迎撃の弾が飛んでくるがジグザグに避け、当たりそうなのはナイフで銃弾切りしたり弾いたり逸らしたりしながら誘導した弾で周りの銃をぶっ壊す。残り4丁。

 

 ナイフで1丁ぶっ壊して残り3丁、右壁と左壁の一部が開いて睨んでた通り銃が登場した・・・って今度はガトリングかよ!爆音で回りだしたガトリングから吐き出された銃弾が俺を挟撃する。身をひねって飛びあがりデザートイーグルで迎撃する。さすがに銃弾撃ちは不可能なのでガトリング砲ならついてるでおなじみバッテリーを狙い撃つ。

 

 着弾し電子系に不備が出たらしいガトリング2丁が沈黙するのを確認、ラストの銃へ歩みを進める。入るときにどこに何があるかは確認したからな。意図的に真ん中の銃だけ残した。キュルキュルと俺を探す銃の死角から真ん前に陣取る。すぐさまギュルン!と俺を見つけた銃が発砲するのと全く同時に俺もベレッタを発砲する。

 

 放たれた銃弾はお互いに掠りながらすれ違い、俺の銃弾は問題なく銃口へ。そして俺の方に迫る銃弾を俺は最近考え付いた技を試そうと掌を広げ、着弾地点に置く。

 

 橘花で銃弾と同じ速度で手を引き、銃弾が手に着弾する瞬間秋水を逆技にして運動エネルギーを受け取って足元へ流す。それと同時に銃弾を同じ方向に手をひねってやると・・・パシッという軽い音とともに銃弾が俺の手の中に納まった。やりゃできるもんだな。素手で銃弾をキャッチする・・・そうだな銃弾掴み(ゼロ)とでも名付けようか。

 

 ってあっつ!そういや素手でつかんだった!バカなことしたもんだぜ・・・投げ捨てるように銃弾を不法投棄した俺がすたすたと出口に向かって歩くとリューキュウからアナウンスが入った。

 

 『・・・終了よ。正直今すぐうちに就職してほしい気分だわ。書類が出来たらすぐに持ってきなさいね?』

 

 「ありがとうございます」

 

 そんな感じで若干ドン引きしたような顔をしているリューキュウの元を去り、瞳がキラキラ輝く波動先輩に引っ張られ(今度はだいぶゆっくりだった)電車に乗り雄英に帰った。その中でも質問攻めにあったが不可視の銃弾のことについてはカナの技であるといったところ「カナ先輩の弟さんだったの!?」とお言葉を頂いた。あ、はい。女装してるけどカナの弟なんです。カナのこと言ったら兄さんは俺のこと4分の3殺しにしてくるので言わないけど。

 

 

 

 「じゃあ遠山!インターンの許可がでたら一緒に頑張ろうね!ね!楽しみにしてるからやめちゃいやだよ!じゃあまた今度ねー!」

 

 と雄英についた途端波動先輩は自分の寮の方へ、空に浮かんで帰っていった。あの、下着見えそうなんでやめてください・・・!というかあの人の個性なんだ?浮遊?よくわかんねえとヒス的な血流を鎮めつつハイツアライアンスに帰り、玄関から共用リビングへ入ると風呂上りらしい切島が珍しく髪を下ろして一人でいた。あいつが一人なんて珍しいこともあるもんだ。たいてい爆豪とかと一緒なのに。

 

 

 「お!遠山帰ってきたな!おかえり!ちょっと頼みたいことがあるんだけどいいか!?」

 

 「ああ、ただいま。お前が俺に頼み込むなんて珍しいな。爆豪とかじゃダメなのか?」

 

 「おう!お前じゃなきゃダメなんだ。えーっとだな・・・ファットガムを、紹介してほしい。職場体験行ってただろ?俺も立ち止まってられねえんだ・・・ファットガムのところにインターンに行きてえ」

 

 切島が・・・ファットガムとねえ・・・めっちゃ目に浮かぶな。相性抜群の組み合わせじゃね?断る理由もないしどうせ俺も連絡するつもりだしちょうどいいか。なんで天喰先輩じゃダメだったのだろうか・・・。

 

 「俺の紹介じゃ聞いてくれるかどうかわかんねえぞ。俺は今回ファットガムのところにはインターン行かねえからな。不義理するのに友達お願いしますなんて虫のいい話が受け入れ・・・あの人なら怒らねえとは思うが・・・まあとりあえず分かった。相澤先生の許可は?」

 

 「もちろんとってきたぜ!天喰先輩にもお願いしたんだけどな・・・通形先輩の後ろに隠れちまって俺と目も合わせてくれねえんだ。だから、お前に頼む!このとーり!」

 

 「よせよせ切島、頭なんか簡単に下げるな。まあ理由は分かった。とにかく今から電話するからよ」

 

 俺はソファに座り込み、スマホを取り出してファットガムに電話番号に連絡をかける。さて、どー謝ったもんかな・・・・。

 

 

 




 よく考えたらリューキュウ事務所超大所帯になりますね。ねじれちゃん、ウラヴィティ、フロッピーの美少女3人衆にクールビューティ―な外見に親しみやすさを備えたリューキュウ・・・そしてその中に放り込まれるキンちゃん・・・あらやだハーレム?

 インターンに上限人数が無かったらいいんですけど・・・一応3人までは確認してるからそんくらいなのかしら。とかく次からオリジナルゥ!
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