切島に頼まれてファットガムに渡りをつけることになったので、ちょうど用事あってちょうどいいと思った俺は切島が真剣な顔で見守る中ファットガムに連絡を入れることにした。スピーカーモードにしたスマホを卓上に置けファットガムへ電話をかける。ワンコール、ツーコール・・・繋がった。
『キンジ~~~!なんでお前ファットさんのところにインターン来ないんや~~~~~!!!!』
うるさっ!!!まさかの初手大音量で泣きが入ってくるとは思わなかった。俺の返事を待たずにファットガムはさらに続ける。
『さっきリューキュウから連絡が入ったんや~~~!!自慢げにキンジが自分とこにインターンくるってな~~!!ファットさんは悲しゅうて悲しゅうて・・・どうすんねんせっかく作ったこの歓迎の横断幕!!』
いやそれについては知らねえよ。フライングもいいとこだろ・・・?トクメンとらなきゃ確かにファットのとこに行ったのかもしれないけどな。
「いやそれはですね・・・昨日トクメンとりまして、マシンももう届いてるので一回範囲が広い事務所に行くべきだと考えました。ファットの所繁華街で尚且つ歩行者天国ばっかりでしょう?バイクなんか乗れませんよ危なっかしくて・・・必要もないですし」
『トクメンとったんか!おめでとさんやな!まあさっきまでのは軽いジョークや。謝る必要もあらへん。そーいうことならリューキュウのとこはぴったりやな!・・・で、お前さんから電話なんてなんかファットさんにお願いでもあるんか?言うてみい、クラスメイトでも紹介してくれるんやろ?ちょっと前に環から連絡あったわ』
なんだ天喰先輩ちゃんと切島のために動いてくれてたんじゃん。俺いらなくね?切島が驚いたように俺と目を合わせる。というかちょっと感動してるような顔してんな・・・天喰先輩・・・!みたいな感じ。ちょっと素直すぎておもしろいわ切島。
「ええ、お見通しですね。ご察しの通りクラスのやつから仲介を頼まれました。俺の個人的な考えですけど・・・絶対ファット気に入りますよ。根性あって男前で優しくて気配りできるクラスのムードメーカーってやつですからね。コンビ組むならってきかれたらすぐ名前上げるくらいには買ってるやつです。な、切島」
「あえ!?お、おう!切島鋭児郎です!よろしくお願いします!」
俺が切島を誉めながら話を振ると切島は俺にそこまで言われたのが意外だったのかちょっと嬉しそうにしながら自己紹介しをした。言っとくけど俺結構お前のこと買ってるんだぜ?頼りになるやつだってな。あと組んだとき異常にやりやすいからな・・・切島は合わせるのがうまいんだ。しかもどんな時でも腐らない個性だから防御任せて攻撃でも逆でもできる。切島と組んだ時みんな勝率上がってるからな、推して知るべしってやつだ。
『よろしゅうな!ファットガムや!キンジにそこまで言わせるなら気になるやんか~。おっしゃ!明日にでも面接にきい!場所は明日環出勤やから一緒にきいや!キンジもリューキュウのとこが合わんかったらいつでもきてええんやで?ほな、また今度な~」
「お疲れ様ですファットガム、ありがとうございました」
「うっす!ありがとうございました!」
『はいな!頑張りいや~』
そんな感じで電話を切ったファットガム。俺はスマホを自分のポケットの中に入れて一息つく。なんだよファットガム全然怒ってないじゃん。おちょくっては来たけどそんくらいなら普通だな。
「良かったな、切島。明日頑張ってこいよ」
「ああ!ありがとう遠山!あ、そういや環先輩に会った時かなでちゃんが一緒だったぜ?3年生の寮に泊まるってよ!」
「まじか、伝えてくれてありがとうな切島。じゃあ俺も風呂入って休むわ。また明日なー」
「おうよ!お互い頑張ろうぜ!」
俺は切島と別れてそのまま風呂に入ってすぐに布団に入って休むのだった。明日から忙しいぞ・・・
「えーそんなわけで、1年生のヒーローインターンは職員会議の結果・・・多くの先生が「やめとけ」という意見でした」
「ざまァ!!!」
翌日のホームルームにて相澤先生の口から昨日の俺がやったことを全否定する言葉が出てきた。ちょっと愕然としてると爆豪が追い打ちをかけてきたけどまだ続きがあるらしい。
「えー!」
「あんな説明までしておいてそりゃないっすよー!!」
「まあ待て。そんな話になったが、今の方針では強いヒーローは育たないという意見もあり「受け入れ実績の多い事務所に限り1年生のインターンを許可する」という風に決まりました」
「クソが!!!」
なんだよかったー・・・あれ?リューキュウのとこ大丈夫だよな?あと爆豪は謹慎あけでも元気だな。そんな連絡事項を残して相澤先生は帰っていって入れ替わりにセメントス先生が入ってくる。今日はちょっと楽しみなんだよな。なんたって納車されたバイクに乗れるからな。
というわけで午後、今回のヒーロー基礎学は個性圧縮訓練の続き、必殺技強化の時間なのだが完成してるものは自主練みたいな感じだ。なので俺は相澤先生に許可とってサポート科に行くことにした。ちなみに切島は嬉しそうに天喰先輩にくっついて面接に行った。天喰先輩は切島のあまりの陽キャっぷりにまぶしそうな顔をしてたな。というか溶けそうな顔だった。大丈夫かよ・・・
「失礼しまーす。パワーローダー先生、発目と平賀さんいますかー?」
「いらっしゃい。発目!平賀!お待ちかねのお客さんだぞー!」
そうパワーローダー先生が声をかけるどドタンバタンガシャーンドカン!と音がして・・・今なんか爆発してなかった?・・・とにかくすごい音がして煤まみれの発目と平賀さんが姿を現した。おお、タンクトップかい・・・目のやり場に困るぞ二人とも・・・。
「やっと来ましたね遠山さん!見てください見てください!ジーサードリーグと文と私の合作ベイビーです!さあ乗りましょう今乗りましょう!」
「遠山くんやっと来たのだ―。しかしすごいもん注文してるのだ。I・アイランドで最近開発された
「よくわからんがそんなやばいもんなのか。ちょっと早いバイクでいいって言ってあると思うんだが」
「いやー・・・それがですね・・・」
「あややたち、ちょっと楽しくなっちゃって・・・それに向こうの会社さんがすごい乗り気だったのだ・・・それで・・・」
いやな予感。やめろよ運転できないもん押し付けてくんのは・・・
「「当初想定してたスペックの2倍くらいのものできました」できちゃったのだ」
「何やってんだよ・・・」
まさかのカタログスペック2倍に俺が恐れおののいていると・・・え?つまり最高速が何キロだ?当初の予定は300くらいだったよな?それに予備の弾帯とかも積み込めればいいくらいのノリだったんだが・・・
「まあとにかく見てみるといいのだ!じゃじゃーん!!」
と口で効果音を発した平賀さんが近くの布をバサッととると黒の車体に黄色のライン、バイクに特徴的なマフラーはなく代わりに車体後ろにかけて流線形のコンテナが2つくっついている。そして何よりも特徴的なのはシートの前、仮面ライダーが乗るみたいな前傾姿勢をとるバイクなのでちょうど俺の胸にくる当たりに蒼い光を放つ装置が組み込まれてる。一応サブシートもあるみたいだ。ジーサードだから派手派手なトリコロールカラーにでもしてくるかと思ったら俺の好みに合わせてくれたんだな。
「完全バッテリー駆動、通常使用の範囲ならフル充電で連続稼働時間は20時間!最高速は驚きの時速500㎞!とーやまくんのご所望通り予備の弾丸や医療キットなどを収めるコンテナが左右二つ付いてるのだ!タイヤはもちろん防弾!」
「そして目玉はI・アイランドで開発され、ジーサードリーグのマッシュ博士が小型化、私たちが調整を施した「慣性制御装置」!これがあれば急ブレーキの際一瞬で止まることも!直角に曲がることも!急発進でいきなり最高速に至ることも思いのまま!デメリットとして使用しながら走れば稼働時間は5時間まで落ちます」
「仕組みは端折るけど簡単に言うなら慣性をため込んで自由に使う装置なのだ。慣性の向きを変えて加速、減速に使ったり一時的に慣性を取り除いて制動に使うための装置なのだー!上限はあるけど加速に使ってれば問題ないはずなのだ。I・アイランドの研究者の人に感謝するのだ」
「というわけでいかがでしょう遠山さん!文と私の最高傑作だと自負しておりますが!」
「・・・乗ってみるまで分からんが、お前らが手伝ってジーサードが作ったんだ。これを乗りこなさなければヒーローなんてなれねえよな・・・そんで?このバイクはなんていうんだ?」
俺が気に入ったようなことを言って、このバイクの名を訪ねると嬉しそうに顔を見合わせた。俺も正直乗るのが楽しみでしょうがない。この後ためすけどな。
「ふっふっふ・・・よく聞いてくれたのだ!」
「なんとジーサードリーグから私たちがこのベイビーを名付けする権利を頂いたのです!その名も・・・」
「「ノックス!!」」
ノックス・・・いいな、いいセンスしてるじゃねえの。由来は何なのか知らないけど・・・
「じゃあ遠山君!フル充電してあるので乗ってくるのだ!」
「感想を楽しみにしてます!不具合があったらいつでもきてください!」
というわけで説明書を渡されてノックスを引いた俺がクラスのやつらが授業をしている運動場に戻る。ちょうど休憩してたしたやつらがバイク引いた俺のことを見つけて走り寄ってくる。一番は緑谷だ。
「遠山君!それもしかして頼んでいたっていうバイク!?」
「おう、かっこいいだろ?ちょっと試そうと思ってな」
「おわー!いいな遠山!ちょっと乗ってみてもいいか!?」
「・・・だめだ峰田。お前はトクメンとってからな」
「ぎゃああああ相澤先生ーーー!?」
峰田が車体によじ登ろうとするのを猫掴みした相澤先生がいつの間にか俺の近くに立っていた。すっげえびっくりした。ほかのクラスのやつらも熱心にノックスを見つめている。特に八百万、知識欲旺盛な彼女は超技術で構成されたスーパーマシンがお気に召したようだ。
「あの、遠山さん・・・こちらのバイクはどちらの会社で・・・?」
「ん?ああ、ジーサードのとこと発目と平賀さん、技術はI・アイランド製らしい。気に入ったのか?」
「ええ!とても気に入りましたわ。やはりトクメン、取った方がよろしいのでしょうか・・・」
「ま、あとで跨るくらいならやってもいんじゃね?キーは抜くけどな・・・とりあえず一回走らせてくれよ。俺もまだ乗ってねえんだ」
「そうだったのか!みんな一回離れよう!遠山君が動かすそうだ!」
飯田がみんなを放してくれたので俺も有り難く動かしてみることにしる。普通のバイクよりもハンドルについてる機構が多いが問題なし、キーを差し込んで回す。ちなみにこのキーも先端科学でできていて、持ってる人物の指先の静脈パターンを読み取ってくれるのだそうだ。今は俺のしか登録してないけどな。ちなみにガントレッドをつけたままでも問題ないそうだ。なんだその技術?つまり物理キーと生体認証の2段構えというわけだな。あ、ちなみに緊急時はキー無しでもいけるらしい。じゃあなんで付けたと聞いたところ「様式美」と帰ってきた。なんじゃそりゃ・・・
問題なく起動したノックス、普通のバイクのメーター部分に取り付けられたタッチパネルが起動してステータスを表示する。まず慣性制御はなし、通常走行で行ってみよう。アクセルをひねると試験で使ったバイクのような爆音がなることもなく、非常に静かなモーター音が鳴り、音もなく車体が発進した。うわっ!めっちゃ運転しやすい!
加速力も期待以上でグリップもめっちゃ効く。あっという間に時速100kmを突破した俺がグラウンドを一周する。バランスもめっちゃ取りやすいな、最高じゃんこれ。クラスのやつらもめっちゃはやし立ててる。200㎞を突破しても揺れどころかカーブですら理想通りに動いてくれる。ふぅん、なるほどなるほど・・・いいな、これ。
じゃあ次はお待ちかねのトンデモ技術だ。タッチパネルを操作してリミッターを解除、慣性制御をオンにする。すると車体の黄色のラインが蒼に代わり、体にかかってたGが一気になくなった。すっげえ、どんどん加速してんのに俺に負担が全く無いぞ・・・そうか、俺にかかる負荷すら加速力に回してるんだな?試験車で出した時速250㎞を超えあっという間に時速300㎞へ。もはや黒い風になったといってもいい俺がグラウンドを何周もする。ついでにもう一つ機能を試してみよう。
俺はハンドルについてるボタンを弄り、その場でバイクを反転させる。普通の車両なら絶対に不可能な動きを速度を落とさず出来ることに使われてる技術のすごさを感じるな。そしてそのまま両輪駆動のタイヤが二つとも逆回転を始め、バック走行を始める。これも後ろ前反対という操作の違いはあれど運転感は全然変わらない。さすが移動手段に特化させただけはある。まあ頑丈にするようにもお願いしたんだけどな。全身防弾でいざというときの遮蔽物にしたりもしたかったから。
結構無茶苦茶なことを頼んだはずなのに期待以上に仕上げてくれたジーサードと発目、平賀さんには感謝しかないな。バック走行をやめてクラスのやつらが待ってる場所まで一瞬で到達してブレーキ、キュッという音とともに瞬時に停止したノックスをコンコンと誉めてやって、電源を落とす。一度蒼のラインが光った後、黄色に戻ってタッチパネルの電源も切れた。いいバイクをもらったもんだぜ。
「遠山君!すごいバイクだね!最後の方とか目に追えなかったや!」
「ロックじゃん!途中色変わったりとかさ!いいなーやっぱ私もトクメンとりたい!」
「お前ばっかモテ要素そろえやがってよー!うらやましいぜコンチクショウ!」
「わりいな待たせて。あっさっき言った跨るくらいならいいからやりたかったら言えよ」
俺がそう言うとクラスの大多数の手が上がった。おお、めっちゃいるじゃん。というか授業中だけどいいのか相澤先生?と相澤先生の方を見ると好きにしろといった感じで寝袋に入るところだった。いいんかそれで・・・まあ相澤先生がいいというならいいか。と俺はクラスのやつらに「順番な」といいながら輪の中に入るのだった。
バイクのイメージは仮面ライダー555のサイドバッシャーからサイドカー外して全体的にごつくすれば大体合ってます。
これでキンちゃんの強化は終了ですね。もうこれ以上はどうにかするつもりは今のところないです。