ワイヤーで捕縛した覆面ヴィラン10人と運転席に転がしたリーダー格のヴィランをトレーラーの外に引っ張り出していると、警察車両のサイレンの音と次いで巨大な翼が羽ばたいてる音が聞こえてきた。リューキュウたちだ。ちょっと遅かったけどな・・・まあこっちは被害なしだし、何をするつもりだったかは知らんが何もさせずに終わることが出来た・・・
「ん?なんだこりゃ」
「エネイブルちゃん、どうしたのかしら?」
「ん、ああいや。この拳銃の銃弾な、見てみろよ。実弾じゃねえ、麻酔弾みたいな形してやがる」
俺が違和感を覚えたのはリーダー格が持ってた拳銃。落としたときに拾っておいたものだ。銃口撃ちでぶっ壊してはあるが念のためマガジン外してお片付けをしていたのだが、マガジンの銃弾が従来の物と全く違うおかしなものだった。弾頭に針が付き、薬液が充填されてるのが・・・3発。装弾数とあってない・・・中身の薬が何だか知らんが元から弾数がなかったのか・・・あるいは、何発か使った後だったのか・・・鑑識行きだなこりゃ。
それを梅雨に見せると梅雨もポーカーフェイスを若干ゆがめ・・・たように見えるがとにかく違和感を覚えたらしい。念のためザコが持ってた銃も見聞するが・・・こっちは実弾か。証拠品とするため鑑識用のポリ袋に拳銃と銃弾を分けて入れて外に出ると、ちょうどリューキュウたちが着地したところだった。交通整理してるパトカーもちらほら。
「エネイブル!フロッピー!怪我はないかしら!?よくやったわね・・・!」
「リューキュウ、すんません。個人の判断で動きました。一般人にけが人は出してないですがヴィランの方には・・・」
「ああ、そのくらいなら問題ないわ。一般人もヴィランも無傷なんて基本的に不可能よ。殺しでもしない限り何か問われることはないし・・・応急処置も完璧みたいだしね。フロッピーはどうだったかしら?」
「思ったより冷静に動けたわ・・・訓練通りね。すこし・・・鼻が高いわ」
「ふふ、私からしても高得点よ。ねじれが連れてきただけあるわね。さ、引き渡しよ・・・ファンサービスも忘れないようにね」
トレーラーの中から最後のヴィランを引っ張りつつ出てくると、高速道路の中にも関わらず、車の窓を開けた群衆が列をなして俺と梅雨に歓声を浴びせてきた。すげえな、一車線しかないから渋滞気味なのにみんな怒ってる様子もなく笑顔だ。
波動先輩も麗日も笑顔だ。あっとりあえず押収品をリューキュウに見せておかねえと。
「リューキュウ、ちょっと見てほしいものが・・・」
「何かしら・・・銃?それなら他のとまとめて・・・いえ、弾の方ね。これは・・・薬物?」
「おそらくは・・・残弾数が装填数とあってません。装填数分なかったか・・・使ったか・・・とにかく分けておくべきと判断しました」
「いい判断よ・・・これは別口で捜査ね・・・さ、貴方たちのファンにサービスしてあげなさい?」
そう言われた俺と梅雨が顔を見合わせどうしたもんかと考える。すると梅雨がピン!と来た顔をして手を大きく上にあげた。ああ、なるほど。俺も同じように手をあげて・・・
パァン!と俺と梅雨が頭上でハイタッチを交わすと同時にワァァァァァ!!!とその場が沸いた。車から降りようとした人が警察に注意されたりしたがとにかく大きな混乱もけが人もなく俺と梅雨の初仕事はひと段落着くのであった・・・これにて一件落着ってな。
「うえええ体験の時より書類が難しいよー!」
「お茶子ちゃん、そこの場所は報告よ、事件詳細はこっち」
「あとそこの押収品項目、銃の数間違ってんぞー。種類も違えし」
「銃の種類なんてわかるの遠山くんくらいやもん!」
「否定せんがプロの仕事なんだから俺に聞くくらいしろ」
というわけで帰ってきたリューキュウの事務所、俺たちは報告の書類をかいているのだが・・・慣れてるリューキュウと波動先輩はさっさと書き上げ、事件現場にいた俺と梅雨もそれに続いたのだが・・・事件に全くかかわっていない麗日が一番時間がかかってる。ヒーロースーツのままなのはこの後今度は徒歩でパトロールに出るからだ。
「なつかしー!私も報告書書くの時間かかったもん!ね、リューキュウ!難しかった!」
「そうねー貴方は特にじっとしてられないものだから困ったわ。今はもうきちんと書けるもの、立派になったわ」
「えへへー」
平和だなあリューキュウ事務所は・・・ファットガムのとこもこんな感じだったけど隙あらば食べ物が出てくるから体重コントロールに苦労するんだあそこ・・・勇気を出して断れば普通に引いてくれるのに気づくまで時間がかかったがな。
「うーんそろそろ時間ね。じゃあ徒歩のパトロール行きましょうか。まず私とフロッピー、ウラヴィティで東側。ネジレチャンとエネイブルで西側。南北はサイドキック達がやってくれるわ。2時間後に事務所に戻ってくること、不審なものがあったらすぐ通報、いいわね?」
「「「はい!」」」
「は~い」
「それでね!その時通形が・・・・」
町へ繰り出した俺と波動先輩、町ゆく人は主に波動先輩の・・・俺の口では言えない部分に目が釘付けである、主に男。なるほど見られてるわけじゃないけどすごいな・・・美人って苦労しっぱなしなんだな。波動先輩は気付いているのかそうじゃないのか気にした様子を見せない。どころか俺の周りをくるくる回りながら持ち前のマシンガントークで話しかけてくるほどの余裕である。
話しながらも周囲の状況は把握し続けているらしく周りの人に手を振ったり愛想を振りまいたりと抜け目ない。すごいよな、女性ヒーローって強くあればいい男と違ってルックスも求められるから相手が自分にどう映るか、見えるかを徹底的に研究しないとやっていけないのだそうだ。カナが言ってた(男だけど)
計算なのか天然なのかは知らないが波動先輩はそこらへん受けがいい。どっから見てもカワイク映るのだ。俺はそんなことを考えながら波動先輩の後をついてパトロールをするのだった。
「・・・ね、エネイブル・・・前の8人、どう?」
コソッと小声になった波動先輩の声を受け俺は別方向を見ていた視線を前方に戻す。すると前の方に8人の集団がちらちらと俺らの方を確認しながら足早に路地裏に入っていくところだった。どう見ても怪しい・・・ついでによく見りゃ重心がおかしい。服の中になんか持ってるな?
「怪しい・・っすね。すごく。警戒されてるみたいですけど、どうします?」
「このまま通り過ぎよ。そのあと私が上から見るからエネイブルは待機ね・・・行くよ」
「うっす」
そのまま過ぎ去った俺らを確認するように集団の一人が路地裏から出て適当な店を冷やかしている。後ろをチラ見すると戻っていったので俺らは適当な曲がり角を曲がって波動先輩は浮きあがり、俺は波動先輩の手信号を見て歩き出す。
「どうっすか?」
『あやしい~、とっても怪しいよ。今路地裏で何人かの男が合流したの・・・懐から・・・マガジン、取り出したね。合流した男の方は・・・ジュラルミンケース。中には・・・札束・・・うん、確認しに行こうか。エネイブル、私はこのまま遠隔監視するから接触お願いね』
「了解です。じゃあ、行きます」
俺も裏路地に音と気配を消して入り、個性を使いながらおそらく違法取引であろう現場へ急ぐ・・・薄暗い裏路地にいかにもチャラいという風情の男たちが合わせて16人、8人と8人で合わせたのか知らないけど周りを警戒しながら話し合ってたところだった。俺は死角から彼らに近づき・・・
「どうも、ヒーローです。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「!!・・・いや、びっくりしました。いいですよ、ヒーローに協力するのは市民の義務です」
「ああ、申し訳ない。えーっとまずその手に持ってるやつ。銃検証と帯銃許可証、それと取引なら武器商ライセンス見せてくれ」
「はいはい・・・これと、これと、これですね・・・本物でしょう?」
死角から現れた俺を見た男たちは一気に警戒度を高めたようだ。その中から今マガジンを隠した男をチラ見した俺の視線を遮るように柔和な笑みをたたえた眼鏡の男が俺の対応をしている。やつが差し出した検査証明書を見ると・・・確かに本物だ。武器商のライセンスも同様・・・けど、さっきマガジンを隠したときにチラ見えしてたが、朝押収されたものと同様の銃弾が見えていた。
こっちも確認しないとな、というわけで通信機をコンコン、と2階指で頬をかくふりをして叩く。
「ん、確かに本物です。いやあ、すいませんでした。それじゃ最後に・・・其処の彼が今内ポケットに隠したマガジンをみせてもらいましょうか」
「・・・なんの、ことでしょう?」
「いやあ、朝ちょっと事件がありましてね・・・其処の彼がしまったマガジンの中身と同じものが押収されたんですよ・・・形状的に許可されてない銃弾だ。現行犯だぜ」
「お前ら逃げろ!」
「もうおそ~い!」
最初からばれていたことを悟った男たちはなりふり構わず俺と反対の道に向かって逃げ出したが、そこに上からスタっと降り立ち道をふさいだのは通報その他を終わらせた波動先輩だ。彼女はヒーローとしてヴィランに対しては実力行使の前に説得が義務付けられてるので話をし始めた。
「はーい!行き止まりだよ!逃げ出したってことはやましいことがあるってことだよね?へんなの!私たちは貴方たちに対して個性及び武器を行使する権限を有しています!大人しく捕まるのであればこちらも手荒な真似は・・・おっと!捕まる気ない?」
「当たり前だろ!お前らやるぞ!」
波動先輩の話が終わる前に着火したライターの火を操って火炎放射を行った男がそう叫ぶ、騒乱罪と個性の無断使用が追加、と。
「しょうがな~い!ちょっと痛いけど許してね!
周りのやつらもナイフやらドスやらを抜いて半分ずつ俺らにかかってくる。こんな狭い路地裏じゃ武器使用は悪手だ、素手で何とかするぞ。
「死に晒せボケナスゥ!んがっ!?」
ドスを持っていの一番に襲い掛かってきた俺は振るわれるドスを指の間で刀身を挟み込んで止めてやる。指でやる真剣白刃取り、
波動先輩の方を見ると既に4人昏倒させた後だった。彼女は手足にねじれたような衝撃波を纏っておりパンチやキックのたびにそれが炸裂して威力を何倍にも上げている。まるで新体操のような柔らかく柔軟な動きで鞭のようなハイキックを繰り出しさらに一人をぶっ飛ばした波動先輩に続くように俺も残りの5人を迎え撃つ。
拳銃を向けてくる男に井筒取りで拳銃を取り上げ前蹴りをみぞおちにいれて意識を奪い、タックルをかましてくる男に踵落としからのストンピング、地面にキスをさせて終了、前歯くらいは折れたかもな。続いてマガジンを持ってる男だ。すでに制圧されかけてるからか顔色がとても悪い。マガジンを入れている内ポケとはまた別の所から・・・ガス式の注射器だと!?変なもの持ちやがって!
「おっと、お薬の時間は早いぜ」
目をぎゅっと閉じて首筋にそれを打とうとした男の手をひねって注射器を取り上げて顔面、胸、みぞおちの三段突きを叩き込んで壁に貼り付けてやる。気絶した男はずるずると落ちて座り込むような体制で沈黙。俺はついでにすったマガジンと注射器をポッケにしまって波動先輩の方に向き直る。
波動先輩はすでに制圧を終えており俺の方の残り2人に対して挟み撃ちする形になった。負けを悟りかけてる残りのやつはうろうろと右往左往してるが・・・
「くそっ!どうせ死ぬなら・・・!」
「!まずい!エネイブル!合せてね!チャージ5、出力5!
「えっちょっ!?・・・炸覇ァ!!!」
一人が完全に負けを認め、忠誠心なのか口封じのためなのか口に銃を突っ込み自殺を図ろうとするのでそれに気づいた波動先輩が男を止めるために個性でねじくれた衝撃波を打った。俺は反対側の方に被害を出さないようにするために炸覇を放つ。辛うじて男の口に銃を突っ込ませる前に波動先輩の衝撃波が2人とも巻き込んで炸裂し俺の方へ吹っ飛んでくる。俺が数瞬遅れてはなった炸覇がそれを何とか相殺し、衝撃波にはさまれる形となった男たちは綺麗に全員が気絶。とにかくこの場は何とかなった。
するとサイレンの音が路地裏に響いた。もう来たのか、通報からそんなに時間がたってないのにな・・・ワイヤーでまとめて男たちを縛り上げると同じく手際よく拘束を終えた波動先輩がとてててと近寄ってくるところだった。
「終わったね!すごいよ!私の必殺技にきちんと合わせられるなんて!ね!ね!接触の時もちゃんとしてたしやっぱエネイブルは優秀だね!」
「いや割とギリギリでしたよ・・・間に合わなかったらどうするつもりだったんすか・・・」
「んー通形の移動を見てさばけるなら咄嗟でもなんとかできるかなって!実際できたもん!誉めてあげちゃう!よしよし!」
「ちょっ、俺の頭をなでる前に仕事しましょ!?ほら運びますよ!」
「わっそうだった!よ~しいくよ~!んっしょっと・・・」
波動先輩が誉めるためなのかなんなのか浮き上がって俺の頭を撫でまわすのを何とかやめさせる。波動先輩のクリっとした瞳にのぞき込まれた年上に弱い俺が動揺しまくりであったが、とりあえず波動先輩の注意をそらすことに成功し俺もまとめたやつらをずりずり引きずりながら路地裏から出る。警察に引き渡しと押収品のアレのことがあるからな・・・
そして路地裏から出る前に俺に振り返った波動先輩は
「やっぱり、リューキュウに紹介してよかったよ!すっごくやりやすかったの!だから・・・これからもよろしくね!エネイブル!」
と今までの幼げな笑顔とは一転して花が開くような、大人っぽく優し気な笑みを浮かべて俺にそう告げてくるのであった。
オリジナルって難しい・・・2つも考えるなんて宣言するんじゃなかった(小並感)