遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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再・第十五弾

 「なるほどな。まあその意気込みはいいとして、だ。若頭にとっちゃその子供は計画の核のはずだ、ヒーロー二人に見られたならどうする?素直に本拠地に置くわけないよな。ナイトアイ、特定はすんでるのかよ?」

 

 一瞬の静寂を打ち破ったのは口が悪いながらも冷静なロックロックだ。彼の現実的な言葉に頭の冷えた俺が血がにじむほど握りしめていた拳をほどき、深く深呼吸をして向き直る。どっちにしろ今すぐどうこうできる話じゃない。それなら会議を円滑に進めて成功率の高い作戦を考えておくんだ。

 

 「問題はそこです。どこまで計画をし、何が起こってるかわからない以上チャンスは一度のみ。ですのでこちら、可能な限り洗い出した死穢八斎會の拠点のリストになります。皆さんには各自その場所を探ってもらい、拠点になりうる場所を探していただきたい」

 

 「待ちい。呼ばれた理由は分かったわ。だけど慎重すぎる。こうしている間にもそのエリちゃんいう子泣いてるかもしれへんのやぞ」

 

 唸るようにそう漏らしたファットガム。正直俺も同意見だ。本拠地を叩いてしらみつぶしした方がいいように思えるが・・・・

 

 「おっしゃりたいことは分かります。ですが失敗しましたでは話になりません!分析と予測を重ねて成功率を限りなく100%へ近づける!とにかく、よろしくお願いしたい」

 

 ファットガムは不承不承といった感じで座り込んだ。すこし強引かもしれないが理には適っている。今ここにいるのはほとんどがリストアップされた地域で活動してるヒーロー、土地勘がある者たちだ。それにしてもヤクザってすげえな。比較的小さい組織なはずなのにこんなにたくさん拠点を持ってるのか・・・恐ろしいな。

 

 「あの、ナイトアイ。あなたの個性の「予知」どんな性能かは知りませんが未来予知が出来るのなら俺たちを見ればいいじゃないですか。このままでは合理性に欠ける」

 

 挙手をしたのは相澤先生だ。へー、ナイトアイの個性は未来予知が出来るものなのか。いろんな個性があるもんだ。もしそれが失敗する可能性があるとしてもあらかじめ対策が取れるというのは心強い。どんなもんだろうか

 

 「・・・できない。少なくとも今の段階では。私の個性の性能は24時間に1回、1時間だけ対象の未来を見るというもの。見える光景は対象の第三者視点、わずかな周辺環境のみです」

 

 「いや、それでも十分なはずだ。できないとはどういうことです?」

 

 ナイトアイの切り替えしに納得いかない相澤先生が詰め寄るとナイトアイは顔を手で覆って下を向いてためらいがちに言葉を吐いた。

 

 「私の個性は見た時点で確定すると言っていいのです。現状見えた未来を回避できたことがない。つまり・・・今見て失敗する未来が見えたのなら失敗する。けど、恐らく・・・分岐はする。今の失敗濃厚なまま見ても失敗の未来が見えるだけ・・・それならば、可能性を出来る限りあげてから使うダメ押しとして使った方がいい。それに・・・例えば、見た人物の将来に死が・・・無慈悲な死が待ってるだけだったら・・・どうします」

 

 「・・・わかりました。俺からはもう特に。ほかの皆さんは?」

 

 誰も、何も言わない。ナイトアイの最後の言葉に実感がこもりすぎているからだ。つまり、何度か見てしまったのだろう。回避できない無慈悲な死というやつを。ナイトアイの個性、俺なりにたとえるならば・・・そうだな、宝くじ、がいいだろう。買ってない状態で予知をした場合、買う、買わないで50%、そこから当たる、当たらないでさらに50%で宝くじが当たっている可能性は低いのだが、もし買ってる場合で予知をした場合当たる当たらないの50%のみだ。つまり後者の方が当たってる未来を見れる確率が高い。ダメ押しとはそういうことだろう。

 

 だからナイトアイは失敗の可能性を出来る限り潰してから未来予知を行いたい、とこの場へ申し出た。プロ達もそれを理解したのかナイトアイにかみつくものはいない。場をとりなすようにリューキュウがまとめにかかった。

 

 「とりあえずやりましょう。困ってる子がいるなら、助けるのが私たち。そうでしょ?」

 

 「対象の居場所の特定、保護。可能な限り確度を高め早期解決をしましょう。ご協力よろしくお願いします」

 

 ナイトアイがそう締めて、俺たちの初めての捜査会議はいったんの終了を告げたのだった。

 

 

 

 「・・・だから、僕たちが保護してれば今頃・・・」

 

 「デク君・・・」

 

 捜査会議を行った部屋とはまた別の部屋で雄英生だけで話している俺たち。相澤先生が話すことがあるからと帰るのを待たせられているので雄英生だけでの話し合い、というか反省会みたいなもんだ。緑谷と通形先輩の話を聞くに、パトロール中に偶然治崎の娘と遭遇、緑谷はその場で保護を通形先輩はいったん泳がせてあとのことを考えたらしいのだが失敗。まさか死穢八斎會が子供の体を切り刻んでるとは思わず自己嫌悪にさいなまれている、という話だ。

 

 もしこれがかなでならば・・・と思うと一概に否定も肯定もできない。俺も緑谷と同じ状態になるかもしくはなりふり構わずカチコミをかけてることは想像に難くない。いかんな、絆されすぎてるような気がする。もし対象に会えた場合でも冷静になれるように自制せねば。

 

 誰も、何も話さない。話せない。かかわった事件があまりにも凄惨すぎて。まるでそこだけ音が切りとられたような静寂が場を支配しているその静寂を破ったのは子細な会議を終えドアを開けた相澤先生だった。

 

 「通夜でもしてんのか。どいつも沈んだ表情して、ヒーローだろ?失敗したなら次に生かせ。少なくともお前らの手を治崎の娘は待ってるだろうよ」

 

 「相澤先生・・・」

 

 「学外ではイレイザーヘッドで通せ。にしても今日は君たちのインターン中止を提言するはずだったんだがなァ・・・」

 

 中止、ね。ヴィラン連合がかかわってる以上、そうするのが学校側としても適切な判断なはずだ。だがさっきの話を聞いた以上、少なくとも俺と緑谷に通形先輩は止まることはないだろう。何が何でもくっついてその子を助け出すって決めてるからな。誰が何と言おうとも、俺はそう覚悟を決めた。

 

 「今更なんで、って思うだろうがヴィラン連合がかかわってくるなら話は別だ。君たちも合宿のことに神野のことを忘れたわけじゃないだろ。けどなあ・・・緑谷に切島、お前らはまだ俺の信頼を取り戻せてないんだよ」

 

 「はい・・・」

 

 「うっす・・・」

 

 話を向けられたのは神野で飛び出していった緑谷に切島だ。二人は思うところがあるらしく特に反論をせず俯いて押し黙ってしまった。俺も、思うところはある。独断専行気味になってしまうのが俺の悪いところだ。特にこういう自分の頭に血が上っちまうような案件では。

 

 「けど、お前ら、特に緑谷。このままインターン中止しても絶対に飛び出していくと俺は残念なことに確信してしまった。だから、するなら正規の活躍をしよう。わかったか、インターン組」

 

 「「「「「はい!!!!」」」」」

 

 相澤先生からの実質的な許可が出た俺たちは威勢よく返事をする。ここからだ。失敗してつかみ損ねた小さな手を今度こそ掴みなおして引っ張り上げる。絶望を希望に塗り替えるんだ。俺だってもう、他人ごとじゃない。

 

 

 

 

 

 「インターン組動きキレてるねえ!」

 

 「てめぇら外で何掴みやがった!言えコラァ!」

 

 「わりぃ爆豪!言えねえんだ!」

 

 死穢八斎會の動きと保護対象であるエリという娘の場所が特定できるまでの間俺たちは待機となった。やる気に満ち溢れる俺たちインターン組の授業への取り組みは如実に表れているらしくインターンに行ってない他の連中にもわかるレベルだ。

 

 本日のヒーロー基礎学は災害地の断崖絶壁を上る登攀の授業、堀蜥蜴を使う俺やワンフォーオールで上る緑谷、腕をがけに突き刺す切島などインターン組が突出して早い。爆豪も何かをけどったようで俺たちに事情を聞き出そうとするが緘口令が敷かれた俺たちが答えるはずもなく爆豪もイラつきながらそれ以上踏み込むことはない。俺たちがそうして牙を研ぐこと数日後、授業を終えた夜のことだ。

 

 

 「おい!お前ら!きたか!?」

 

 「ええ、来たわ切島ちゃん」

 

 「デク君も?」

 

 「うん、遠山君も来たみたいだね」

 

 「ああ、作戦日時だ・・・ん?」

 

 俺たち全員の携帯に結構日を乗せたメールがきた。思わず廊下に集まった俺たちが携帯を見て話しあっていると・・・俺のメールだけ別の一文が追加されていた。明日にリューキュウ事務所に来てほしい・・・?どういうことだ

 

 「どうしたの遠山君?」

 

 「いや、これ見てくれ。なんか知らんが呼び出された」

 

 「ほんまや。遠山君だけ・・・?どうして?」

 

 「俺が知りてえよ。とりあえず明日行ってくるわ。作戦から外れろとかだったら嫌だな・・・」

 

 「お前ェに限ってそらねえと思うけどよ・・・話せるんだったら教えてくれよな」

 

 「ああ、とにかく。エリちゃんは絶対助けるぞ」

 

 「おう!」「ええ」「うん!」「わかってる!」

 

 覚悟を分け合った俺たちはそのまま解散し眠りにつくのだった・・・俺だけ呼び出し、何かきな臭いものを感じる。悪い知らせじゃないといいんだけど・・・。

 

 

 

 翌日のこと、授業を終えリューキュウ事務所に行こうとすると相澤先生に呼び止められた。何でも相澤先生もリューキュウ事務所に呼び出されたらしい。出発の準備をしようとしていたノックスを元に戻して相澤先生の車に乗ってリューキュウ事務所に向かう。同中、相澤先生になぜ俺が呼び出されたのか尋ねると

 

 「俺も知らされてない、がお前だけ呼び出すのはどうも不自然だ。本当なら俺は行く予定じゃなかったんだがな。いやな予感がするんでついていくことにした」

 

 「相澤先生も知らないんですね・・・次の作戦に関してでしょうか」

 

 「ああ、恐らくな。お前らの役割は薄い、と俺は思っているし実際危険な役割をさせるなら反対するつもりでいる。ともかく行ってみよう」

 

 「はい」

 

 ちょうどよくリューキュウ事務所についた俺と相澤先生が事務所内に入ると待ってましたと言わんばかりの事務員のお姉さんに案内されていつもリューキュウがいる事務室ではなく会議室に案内された。そしてその中に入ると・・・リューキュウとナイトアイが雁首揃えて椅子に座って佇んでいた。うっげー嫌な予感。

 

 「ごめんね遠山君、イレイザー、わざわざ来てもらって。ねえナイトアイ、やっぱりやめましょうよ。確かに有効なのはわかるけど彼まだ学生よ?私たちが守るべき子だわ」

 

 「私とてやらせたくない。がほかに手がないのも事実。それにもうセミプロだ。彼の意見を聞かないことには始まらない」

 

 「すいません。話が見えてこないんですが・・・遠山に何をさせる気ですか?雄英の教師としては彼を危険な目にあわすのならば反対させていただきますが」

 

 「すまない、説明をしよう。かけてくれ・・・・よし。イレイザーヘッドはもう知っていると思うが保護対象は未だ死穢八斎會の本部にいる。そして、作戦概要も話した通りだ。ここは関係ないので割愛させてもらう。端的に言えば一つ問題ができた」

 

 「その、問題とは?」

 

 作戦の重要な部分は当日に俺たちに知らされることになっているため省いたナイトアイが目つきを鋭くした相澤先生に向かい合う。問題が出来たというナイトアイ、その問題に恐らく俺がかかわってくるのだろうか?

 

 「死穢八斎會は元指定暴力団、ヤクザだ。今はヤクをシノギにしてると言っても他のことにも手を出してた。それは・・・」

 

 「裏チャカ・・・ですね?」

 

 ピンときた俺がナイトアイに尋ねる。裏チャカ、すなわち銃検を通さず裏に流通してる銃のことだ。そしてその大本は基本的に元暴力団、ヤクザなのだ。個性が出る前からそんなことばっかりやってるからな。正解だったのか頷いたナイトアイが話を続ける。

 

 「そうだ、昨日の会議の終了後・・・センチピーダーから報告が上がった。死穢八斎會、表口ではなく裏門の土蔵は武器庫である・・・というな。協力してるヒーローが遠隔で監視している際、構成員が土蔵に入り銃を持って出てくるのを3回目撃したらしい。つまり、作戦開始と同時に鉛玉の雨が降ってくる可能性が出てきた」

 

 「・・・回りくどい、非合理的だ。つまり、コイツに何をさせたいと?」

 

 「・・・遠山キンジ・・・いや、エネイブル。作戦開始と同時に奇襲をかけ、単騎でこの土蔵を制圧、以後の構成員から守り切ってほしい」

 

 「ふざけるな!」

 

 俺が返事をする前に大声をあげたのは相澤先生だ。彼は椅子から立ち上がり、ナイトアイの所までつかつか速足で歩み寄りバン!と手を長机に叩きつけてまくしたてる。

 

 「何を言うかと思えば単騎での作戦行動だと!?わかってるのか!?コイツはまだ学生だ!しかも仮免許を取って一月もたってない!それはプロがやるべき仕事だ。最低でも通形クラスの人間にやらせるべきだ・・・コイツにやらせるべきじゃない」

 

 「・・・その、とおりだ。だがミリオの装備は防弾性じゃない、対武器への防御力は誰よりも低い。マシンガンなんかで絶え間なく弾幕でも張られたらいくらミリオでも分が悪いのは貴方もわかっているだろう。私が彼にやってほしいと頼んだ理由はリューキュウに彼の対武器テストを見せてもらったからだ・・・・ミリオに一撃あてたと聞いて、気になってな」

 

 「対武器のテスト・・・?遠山、やったのか?」

 

 「はい、ここに面接を受けに行った日・・・実弾を扱うなら錬度を見せてほしいと言われてやりました」

 

 舌を巻いた。多分リューキュウもこうなるとは思ってなかったんだろう。だから、見せた。俺が自動銃相手に無茶苦茶やってる動画を。

 

 「・・・イレイザー、対武器の対処なら遠山君は間違いなくトップクラスよ。40丁のマガジンやトリガーといった弱点部位をなくした銃相手に彼は銃本体を見せずにすべて破壊して見せた。限られた弾丸で、銃弾を銃弾で弾き、ナイフで銃弾を切り、銃口に正確に銃弾を入れ・・・あまつさえ向かってくる銃弾を素手で止めて見せるパフォーマンスまで行ったわ・・・悔しいけど、彼以上の適任は今のところ見つからないの」

 

 今まで黙っていたリューキュウが絞り出すような声でそう言った。そういえば兄さんもジーサードもかなめも今アメリカだ。たしかかなでを狙う動きがあるから潰してくると言ってた。間の悪いことにスナイプ先生は今別件で怪我して戦える状態じゃない・・・俺が、やるしかないんだ。

 

 「・・・想定される銃の種類とか、裏口で張ってる警備の数とか・・・わかりますか?」

 

 「遠山!お前何をするのかわかってるのか!?」

 

 「さすがにわかってます。けど俺がやるしかないならやります。ナイトアイ、そうすれば作戦の成功率が上がるんですね?」

 

 「・・・ああ。銃を持った増援が来ないだけで格段にやりやすくなるだろう。・・・頼んでおいておかしいかもしれないが・・・いいんだな?」

 

 「はい。ですが応援は出来るだけ早くくれると嬉しいですね。一人は骨ですから」

 

 「・・・はあー・・・認めよう。ナイトアイ、あくまでコイツは生徒だからな、忘れないでくれ」

 

 「勿論だ。出来る限り安全に遂行できるように尽力する」

 

 大きなため息をついた相澤先生が諦めたように許可を出し、ナイトアイが即答で答えた。俺も迂闊だなあ、不可視の銃弾に銃弾掴みまで調子に乗ってやるんじゃなかった・・・つっても必要とされてるなら答えねえと。大丈夫、遠山の男は天下無双なんだ。不可能を可能にする男(エネイブル)の名にふさわしい働きを見せてやる。

 

 死穢八斎會、散らせるものなら・・・散らせてみやがれ。




年内に間に合った・・・?多分
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