遠山桜は正義の味方である   作:カフェイン中毒

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再・第十七弾

 俺が裏庭にある土蔵周辺を制圧して無線を飛ばしてすぐに警察の機動部隊がでっかいバリスティックシールドを持って突入してきた。そして無傷の俺と倒れ伏す構成員を確認するとすぐに特殊合金製の手錠で持って拘束にかかる。俺はその間にリーダーの警察官に対して情報を共有した。

 

 「拘束お願いします!見てわかると思いますが既に銃器類は何丁か持ち出されてるのかもしれません。これから救出隊のほうに合流しますが何か情報との差異はありますでしょうか?」

 

 「お疲れ様です!地下通路の方ですが幹部の入中の個性により道の変更が起こっているようです!ルミリオンが先行していおり、突入したヒーロー部隊は現在分断されていると・・・」

 

 「・・・わかりました!とりあえず方向だけ確認しますので地図を見せてもらっても?」

 

 「ええ、こちらです!」

 

 俺はナイトアイが確認したエリちゃんへ続く最短距離のマップを現状の向きからおおよそで推測して頭に叩き込んだ。ヒステリアモードの今なら1秒もいらない。俺はノックスを遠隔で起動して邪魔にならない位置に置いて機動隊が道を開けてくれる中死穢八斎會の虎の巣に飛び込んだ。

 

 既に別のヒーローが制圧を終えており、拘束された構成員たちが喚き散らす中地下通路の入り口のなっている掛け軸の裏、開け放たれた穴に飛び込んだ。階段を勢いのまますべて飛び降り、地下通路にたどり着いた俺はすぐさま記憶した方向の道、ついでにうっすら見える先行していったナイトアイたちの足跡をヒステリアモードが見せる超視覚で判別して走り出す。

 

 「こいつは・・・!」

 

 すぐに違和感に気づいた。壁だ。まるで後付けで動かされたような壁。材質をそのままに質量だけ移動させて無理やり作ったような壁がいくつも破壊された跡がある。これが入中の個性ってやつか・・・そして、ようやく破壊されてない壁に続く道の一部から途切れたナイトアイたちの足跡と壁の先に続くルミリオンの足跡・・・!分断はここか!透過で通り抜けたルミリオンと、その場で落とし穴に落とされたようなほかの足跡・・・ここで追うべきは・・・ルミリオン!単独で行った彼の方が危ないかもしれない。幸いただのコンクリだ、ぶん殴れば穴くらい空く!

 

 すぐに俺はこぶしを壁にあて、やっとモノにした大和を使う。衝撃を貫通させるのではなく、猴がやったように内側からぶっ壊す打撃だ。あんな繊細な打撃はまだ俺には打てないが大和を使えば別、衝撃の大きさを大きくしていけば似たような結果は作れる。ガラガラとあっけなく崩れる壁を乗り越えて俺はルミリオンの足跡を頼りに壁をぶち壊し、一つの一本道にたどり着いた。

 

 そこにはルミリオンが倒したと思しきペストマスクの構成員・・・幹部格が二人、そしてすぐそばの戦闘音・・・!近いぞ、ここまで来たら足跡なんかいるか!音を頼りに場所を当てろ!ヒステリアモードならできないことなんてないんだから!

 

 「・・・ここか!」

 

 奥へ奥へと走り、行き止まり・・・!いや、音はこの中からだ!ぶっ壊す!俺は個性を全開にして倍率を最大まで上げるとすぐさま大和でぶん殴って壁に穴をあける。するとそこにあったのは・・・!

 

 エリちゃんと思しき少女に銃口を向けかけている男と治崎と思しき男、そして銃口からエリちゃんをかばいに横っ飛びするルミリオンだった。間に合うか!?いや、間に合わせるんだ!ここで新技を作れ!俺は右半身で桜花を、左半身で不可視の銃弾を同時に放つ。放たれる銃弾の種類がわからないから運動量で勝るマグナムであるデザートイーグル選択し、極度の集中の中、放たれた50AE弾の尻に向かって俺の右こぶしが同じ速度で接触する!ここから!

 

 俺は銃弾と同じ方向で腕を動かしながら追うように全身でありったけの桜花を放つ。とっさに作れたマッハ2の桜花で銃弾を押して2段階ブースターのごとく加速させる!もちろんジャイロ効果を消失させないように銃弾と同じ回転軸で腕をひねりながらだ。狙い通りに加速に成功した50AE弾は横っ飛びするルミリオンの真下で跳弾してアッパー気味の弾道へに、そして、今まさに引き金を引いたペスト野郎の銃を斜めの弾道で()()()()()。おおよそマッハ3の銃弾が、銃口の中にあった撃鉄で叩かれ加速を開始し始めた銃弾ごと、銃身をもぎ取って行ったのだ。

 

 「は・・・え・・・?」

 

 「何・・・?」

 

 「・・・・?」

 

 ペスト野郎がもぎ取られた銃身を見て何が何だかわからないといった様子で呆然と呟き、侮蔑の表情を浮かべていた治崎もそれを見て疑問の声を上げる。エリちゃんをかばったルミリオンは何も起こってないことを確認してすぐさまエリちゃんを抱きかかえて距離を取る。俺はルミリオンに向かって声をかける。

 

 「間一髪でしたね・・・!間に合いました?」

 

 「・・・エネイブル!?」

 

 「はい、エネイブル・・・土蔵制圧を終えて合流しました。その子が保護対象ですか?」

 

 「ああ、それにあっちが・・・治崎だ。危なかったよエネイブル、ありがとう・・・ちなみに何やったの?」

 

 「それは後ってことで。・・・君がエリちゃんか。俺はエネイブル、そっちの人と同じ、ヒーローだ。君を、助けに来た」

 

 瞳に涙をためながら、俺とルミリオンを交互に見つめている。情報通り・・・だけど俺の予想よりもひどいな。手足の包帯も、痩せ気味な体も、希望を見いだせないでいるその瞳も。ふつふつと冷静でいようとする俺に湧き上がる怒りに殺気が漏れそうになる。

 

 「現代病か・・・お前もまた!ヒーローだの、個性だの・・・お前らのようなやつを治してやろうというのに・・・」

 

 「誰も頼んでねーよそんなこと・・・あんま俺を怒らせるな・・・加減が効かんくなるだろ」

 

 「ふざけてんじゃねえぞこのクソガ・・・ッ・・・カッ・・ハ・・・!?」

 

 「黙ってろクソ野郎」

 

 「音本・・・」

 

 治崎と俺の煽りあいに口をはさんできた男にデザートイーグルで2発、弾をぶち込んだ。但し、撃ち方を工夫して・・・天井に向かって発砲した俺の2発の弾は、天井、地面と2回跳弾して音本というらしい男の胸に着弾した。威力の強いマグナム弾をわざと2回跳弾させて減速させ、片肺の真上に着弾、減速した銃弾は防弾服らしい装束からちょうどいい衝撃を与える・・・劣化版羅刹と同じくらいの、という注釈がつくが。やりゃあできるもんだな、遠隔羅刹。俺は見せつけるようにデザートイーグルを袖口から仕舞う。

 

 「御覧の通り俺はあんたらがよく使ってるこの玩具で遊ぶのが大得意でね・・・次はお前だぞ。投降しろ」

 

 「確かにお前は俺よりそいつの扱いはうまい。だが、今この距離なら、俺のほうが早い!」

 

 「っ!!エネイブル!その場から離れろ!!」

 

 治崎が片手を地面につけて何かをしようとする。それを察したルミリオンが警告を入れ、俺はその警告が入る前・・・治崎がモーションを開始した瞬間の筋肉の動作をヒステリアモードの反射神経でとらえていた俺はすでに対処を終わらせていた。地面に両足で秋草を打ち込んで、体を射出、亜音速でかっとんだ俺は地面を這うような潜林の動きで地面につけようとした治崎の二の腕を掬い上げるように掴みその勢いのままに壁にたたきつける。つかんだ瞬間に余りの勢いの反動で治崎の左腕の肩関節が外れたが、まだこの技は完成してない。たたきつける瞬間に秋水で治崎の二の腕を壁と俺の掌でサンドイッチにしてやった。

 

 ぐしゃり、と俺の手の中で治崎の腕がペシャンコになる。よかったな・・・腕で。この技・・・秋花を本当の形で受けたらお前は今頃お陀仏だったぞ。壁が蜘蛛の巣状に陥没していき、状況をやっととらえた治崎の苦悶の声が響く。

 

 「ぐおおおおおおおおおおおおおお!?!?」

 

 「動くな、もう一度言うぞ・・・投降しろ」

 

 「舐めるなぁっ!!!!」

 

 瞬間、俺の足元が一瞬崩れ、再構成される。飛び出してきたのはコンクリの棘、棘、棘・・・剣山のような物量に俺も逃げざるを得なくなった。飛びのく瞬間、治崎が無事な右手を壁に押し当てており、そこを起点に再構成が起こっているのが見えた。あれが治崎の個性、オーバーホール・・・!片手を潰したくらいで使用不能にはならなかったか・・・!

 

 2度、3度と襲い来る剣山をよけてルミリオンのところまで戻る。チッ、速攻は失敗か。次、俺が近寄れる状況を作れるか・・・?離れてしまった以上、もう治崎は俺を近づけるとは思えん。また秋花で近寄るというのも考えたが直線移動しかできない秋草での跳躍はただの的だ。コンクリ程度なら粉砕できるが対処が間に合うとも思えん。

 

 「すいません、ルミリオン。失敗しました」

 

 「いや、そうでもないよ。これなら、いける・・・!エネイブル!僕を、信じてくれないかい!?」

 

 「・・・ええ、信じてます。初めから!」

 

 ルミリオンが俺の横に並び立ちそのマントに包んだエリちゃんを優しく俺に渡してくる。チームアップ、しかもこんな土壇場で・・・そしてエリちゃんを俺に託したのは自分がメインで動くという意思表示であり、俺なら援護しつつエリちゃんを守り切れると判断したから。俺は治崎の腕を潰した右手ではなく左手でエリちゃんをそっと抱きかかえる。彼女は震えながら俺の顔を見て首を振る。

 

 「ダメ、逃げて・・・あの人に・・・殺されちゃう・・・!」

 

 「大丈夫だ。なんせ、俺とルミリオンは・・・」

 

 「治崎!お前より!強い!」

 

 「その名は捨てた!俺は・・・オーバーホールだ!!!!」

 

 そう言い放った治崎からバン!という破裂音がする。俺たちの視界をふさいでいた剣山が消え、俺たちの先には・・・五体満足、いやそれよりも質が悪い、4本腕の化け物のような姿になった治崎がいた。周りを見ると・・・呼吸困難に陥って気を失っていた音本と呼ばれていた男がいない・・・?まさか・・・!?

 

 「音本・・・お前なら、俺のために死ねるだろう・・・!死穢八斎會の・・・礎になれ!」

 

 やはり、自分と部下を分解して再構成させたのか!両手を地面につけて地面を分解する治崎・・・いや、オーバーホール!それを経験で見抜いたルミリオンとほぼ反射で動いた俺は同時にジャンプする。俺は桜花で、ルミリオンは地面に一瞬だけ透過、それを解除したことによる反発力で。高く飛んだ俺たちを追うようにもう一度分解からの再構成が入る。両側から挟み込むように棘の山が迫る。

 

 「エネイブル!手を!」

 

 「っ!!はい!!!」

 

 俺とルミリオンは手を取り合い、互いの位置を調整する。オーバーホール側にルミリオン、その後ろに俺になるように。そして、ルミリオンは手を透過させて瞬時にそれを解除する。バァン!!と俺の手とルミリオンの手が弾かれ合い、俺は後方へ、ルミリオンはオーバーホールのいる前方へ一瞬で到達する。遅れてグシャァ!と何もない空間を挟んだ剣山が爆音を奏でた。

 

 「お前は確かに強いよ治崎!でもね!いくらお前が壊して、治したところで!俺はすべてをすり抜ける!もうお前に勝ち目はないんだ!」

 

 「一度壊理を見捨てておいて今更ヒーロー面か。そのくだらない夢を、薄汚い個性を・・・全てひっくり返せる!壊理を返してもらおう」

 

 「もうお前の手は届かない!100万を救う男(ルミリオン)がお前を止め、不可能を可能にする男(エネイブル)が守るから!POWERRRRRRRRRRR!!!!!」

 

 天井で、個性によるワープ移動を利用してオーバーホールに迫るルミリオン、俺はエリちゃんを保持したまま空中で姿勢を安定させてルミリオンの個性の反動の勢いのまま壁に両足をつける。一瞬、姿勢が完璧に安定したタイミングで右袖からベレッタを出して斉射する。跳弾なんかさせず、まっすぐオーバーホールを狙って。

 

 当然反応したオーバーホール、距離的にも拳銃の交戦距離を超えているため対処が間に合ってしまう。だが、それでいい。半球状のドーム、材料はコンクリ、目隠しには上出来だ。当然、ルミリオンも俺の狙いに気づいて大きく息を吸い込む。

 

 「必殺・・・・!」

 

 ドームの中へ姿を消したルミリオン。そして遅れて俺たちの狙いに気づいたであろうオーバーホール、だがもう遅い!連続する打撃音が鳴り響く。ルミリオンが個性を高速で使用しながら攻撃してる音だ。オーバーホールが作ってしまった半球状のドームの中、自分で逃げ場をなくしたオーバーホールに降り注ぐ100万の鉄拳だ。ピシ、ピシと威力に耐え切れずドームにひびが入る。そしてとうとう・・・・

 

 「ファントム・メナス!!!」

 

 ボゴォン!!!と遂に威力に負けたコンクリが粉々に砕け散り、ボコボコに殴られたオーバーホールが吹き飛び、壁にたたきつけられた。ルミリオンは、当然健在だ

 

 「投降しろ治崎!もう、お前の好きにはさせない!」

 

 100万を救う男(ルミリオン)は高らかに、そう宣言するのだった。

 

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