宇宙人ジョーンズと氷河探検
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この惑星の探検家という存在は、自分の意思で危険地帯へと赴いていく。
「えー!!アスちゃんが人雇ったの!?」
「んだよ、アタシが人雇っちゃわりーか」
「だってアスちゃん、ほとんど一人で探検してるじゃん」
「...今回は特別なんだよ。例の極北にある渓谷を抜けていく」
「本気なの?」
「じゃなきゃ人なんざ誰が雇うか」
「...分かった。あたしも一緒にいく!」
「はぁっ!?」
何をそんなに彼等彼女等を駆り立てるのか。
「わぁ~ジョーンズさんすごい力持ち」
「話には聞いてたが、実際に見てみるとヤベーな」
「あたし二人分ぐらいあるかな?」
「物資によゆーがあるのはいいが...。ルートは厳選しねーと踏み抜くぞ」
「ああ...クレバス...」
そして、この惑星の辺境は―――
「いいか、ゆっくりゆっくりだぞ」
「大声も出しちゃダメだからね」
とても過酷だ。
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極北と呼ばれる北の辺境。一年を通して氷に閉ざされたこの地で、アスベストスを先頭にジョーンズとマゼランの三人が渓谷にある人一人分しかない崖の中腹を進んでいた。
渓谷の中のため、正面から強い風がぶつかってくる。雪は入り込みづらいのだが、上を見上げればホワイトアウトしており真っ白になっていた。
「クッソ...これだから極北はッ...!」
「ここまで荒れるのも珍しいけどね...」
アスベストスは悪態をつきながらも、足元を確認しながらハーケンを打ち込み一歩ずつ確実に進んでいく。
ジョーンズはハーケンに通された命綱を伝い、後に続き最後尾にいるマゼランがハーケンを回収していった。ふと、ジョーンズが下を覗く、脅威的な視力で渓谷の中に幾つか遺体があるのを発見してしまう。
「大丈夫?ジョーンズさん」
「ダイジョブデス」
ジョーンズの様子が僅かに変わったのを受けて、マゼランが声を掛けた。ただジョーンズは顔色も表情も変えずに答えていた。カタコトなのは相変わらずだが。
暫く無言で進んでいくと、渓谷の終わりが見え始めた。
「出口、見えてきたぞ」
「あと少しだね」
渓谷を抜けられるという事実に、三人は安堵のため息をついた。が、そこに突如として地鳴りが響いた。
「地震!?」
「こんな時にじょーだんじゃねーぞっ!」
アスベストスとマゼランは命綱を、あらん限りの力を持って握りしめる。対するジョーンズは咄嗟のことで、片腕を氷の崖へと突き刺してしまった。
時間にして六秒ほど揺れは続いた。上からは大量の雪とも氷とも言えるものが降り注ぎ、渓谷へと落ちていった。
「...治まった、か?」
「死ぬかと思ったぁ」
揺れが止まった後、三分程時間をおいてから自身と背負っている荷物、そして命綱とハーケンを確認しした。
「異常なし」
「異常ないよ」
「イジョウ、ナシ」
何も異常がないことを全員で確認して、そこでようやく一息ついた。全身に冷や汗をかいて少々寒く感じる。
「少し、先急ぐぞ」
予想外のことが起きる、長年の経験からそんな予感を感じたアスベストスは新たにハーケンを取り出した。
が、再度地鳴りが響いた。ただ先ほどの地鳴りとは異なり、渓谷は揺れなかった。アスベストスを除いて。
「なッ!?」
「アスちゃん!!」
アスベストスがいる地点の、渓谷の崖が崩れ始めたのである。
命綱がある、とは言えない状況であった。固定しているハーケンごと落下し始めたため、最悪他の二人も道連れとなる可能性があった。
そのことに瞬時に気づいたジョーンズは、なんと片腕を崩れている崖に突き刺し支えてしまったのである。
「えええええッ!?」
「な、え...は...!?」
普通であれば、腕が持っていかれる(というか氷に腕を突き刺すことはできないのだが)はずが、ジョーンズは顔色一つ変えず支えているのである。
この事態に、ポカーンと口を開けて呆けてしまうアスベストスとマゼラン。
「ダイジョウブ、デスカ」
「お、おう。大丈夫、だぞ」
「すっ、ご~い...」
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探検家というのは不測の事態に巻き込まれやすい。
「ジョーンズ、コーヒー淹れたぞ。ほれ」
「アスちゃん、あたしのも~」
「ほらよ」
先ほどまで談笑していた者が次の瞬間には遠いところにいってしまうかもしれない。
「天候不順に地震、今回は酷かったねぇ」
「滅多にないからな。その分スリル満点で、アタシとしちゃあ満足だがな」
「あたしは寿命縮んだよ...。でも、こんな綺麗な星空見えるなら許しちゃうかな」
「単純だな。...だがまぁ、同意するぜ」
ただ、この星空の絶景を見れるのは探検家だけだろう。
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やっぱり続いた。めっちゃ書きやすいんですよ。前回が50分、今回は1時間30分ぐらいで書けた。
後ほど、シリーズとして章タイトルつけておきます。