徒然なる方舟のままに   作:玖神 米利

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宇宙人ジョーンズが同郷(宇宙規模)と会話するお話
宇宙には様々な勢力がいるという捏造。なお現在は平和な模様。
ディピカ、配役として丁度よかった。少々クトゥルフ神話関連出てきますけど知らなくても問題ないです。いあ、いあ。



宇宙人の帰還 (宇宙人ジョーンズ・ディピカ)

.

 

 

 

 ジョーンズは龍門市街のワンルームを活動拠点にしている。拠点といっても本来の業務である調査のために、居ることさえ稀になっている。そのため家具などの調度品も必要最低限であり、使われた形跡もほとんどないため無機質なものとなっていた。その中でコーヒーに関するものだけやたらと充実しており、片隅には様々な種類の缶コーヒーが山となって積まれていた。

 そんな自室において、ジョーンズは来客を迎える準備をしていた。ジョーンズの家に来客が来ることは珍しい。仕事先で出会った人物達は基本的に龍門外なため、やってくるのは手紙ばかりであり唯一龍門にいるペンギン急便だが互いに居ないことが多いのを知っているため訪れることをしない。

 ジョーンズが歓待の準備(といっても茶菓子を用意してコーヒーを淹れるのに心血を注いでいるだけ)をしていると、玄関のチャイムが鳴った。

 

 

「こんにちは、ジョーンズさん」

「イラッシャイマセ、ディピカサン」

 

 

 ジョーンズは訪問者であるディピカを招き入れると、室内へと案内する。

 飾り気のない机とイスを勧め、ジョーンズはお茶菓子と共に淹れたてのコーヒーを目の前に置いた。目の前に置かれたものに、ディピカは目を丸くした。

 

 

「ジョーンズさんが嗜好品を嗜んでる…」

 

 

 ディピカはジョーンズに惑星テラへと来る前の質実剛健、質素倹約のイメージがあるため、嗜好品たるコーヒーにのめり込んでいることに驚いていた。

 ジョーンズ自身も、自身の変化に気づいているのか表情等変えることはなかった。

 

 

「ドウゾ」

「頂きます。…美味しい」

 

 

 ディピカの綻んだ顔に、ジョーンズは満足げにうなずいた。

 その後、互いの近状や母星に関して話が弾む。一時間ほど経って話題がなくなると、ディピカが今日訪ねた理由を話し始めた。

 

 

「それでねジョーンズさんの所にも来てると思うけど」

 

 

 そう言ってディピカは、封筒から一枚の紙を取り出した。それは母星からの帰還辞令書であった。

 ジョーンズも分かっていたのか、懐から似たような紙を取り出した。

 

 

「アタシは結構この星気に入ってて、調査以外にも落とし子討伐とかもあって下手な人員に交代すると星が荒れちゃうから残るつもりだけど…。魔術を(おおやけ)に使える星も早々ないし」

 

 

 ディピカが所属するアザトース・クトゥルフ派が、というよりアザトース系列は被害が尋常じゃないことになる。そのためジョーンズとしても、穏便にことを進めるディピカが残ってくれるのはありがたいのか安心したような顔を見せた。

 

 

「遺物討伐にしても、現地住民のハンター達がいるから衝突すると厄介なんだよね…。意味わかんないぐらい強いから返り討ちにされて全面戦争…、お仕事増えるから残ったほうがお得なんだよね」

「!」

「落とし子ぶっ飛ばしてたよ」

「ソウデスカ」

 

 

 落とし子、様々な種があるがどれも成人サイズからその三倍近くなるものでいるが、その大きさを吹き飛ばすことができる存在がいる。そのことにディピカとジョーンズは遠くを見つめる。

 二人は話を変えるために、コーヒーを口につけた。

 

 

「それでジョーンズさんはどうするの?」

 

 

 ディピカは自身のことは終わりとばかりに、ジョーンズに水を向けてきた。

 ジョーンズは手に持ったマグカップのコーヒーを見つめる。思い返すのは惑星テラに来てからの日々であった。

 鉱石病と戦いつつ、日々を生きる人々。未知への探究心があり、生活においても妥協することなく質を高める意欲もある。

 ただ光あるところに闇もある。戦争は止まるところを知らず、鉱石病の有無による差別もある。大地の荒廃も激しく支配者層の腐敗も酷い。だからこそなのだろうか、闇が大きいほど光を眩しく感じる。

 

 

「残リマス」

 

 

 ジョーンズは残ることを決めた。テラに来たばかりの頃であったなら、一も二もなく受諾していただろう。だがテラに住む者達と出会いと別れを繰り返し、様々なものを見聞きした。ジョーンズはもっと見てみたいと、そう思うほどにはテラに惹かれていた。

 

 

「そっか」

 

 

 変われば変わるものだと、ディピカは微笑んだ。

 

 

「それじゃ私の方から連絡しておこうか?」

「オ願イシマス」

 

 

 軽く頭を下げるジョーンズに、ディピカは名状しがたい声音を呟いた。星間すら跨ぐことができるクトゥルフ系列の呪文である。

 ジョーンズ自身も、後で上奏しておく必要があるとコーヒーに口をつけた。

 

 

 

 

「そうそう、ジョーンズさん。私、フリーの絵師を辞めて就職することにしたんだ。

 次の就職先は、ロドス・アイランドっていう製薬会社。世界中を周ってるから丁度いいと思ってね。

 未確認情報だと、遺物討伐してる現地住民の幾人かが所属してるみたいだし。

 ジョーンズさんも興味あったら連絡頂戴、紹介ぐらいならできると思うし」

 

 

 

 

 

 

 

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 この惑星の人々は実に興味深い。

 

 戦争、病、差別など争いに暇がない。

 

 こんな世界だというのに絶望しきっているわけでもない。

 

 日々の日常から、未知の探求から、暮らしの復興から、様々なところで希望を見出している。

 

 だからこそ、私はこの世界を見続けたいと思う。

 

 

 このろくでもない素晴らしい世界を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 評価、感想、お気に入り、ここ好き、誤字脱字報告ありがとうございます。

 最終回っぽいけどまだ続くんじゃよ。




 ここ最近、メンタルズタボロでした。回復するのはいつになるか...。
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