あんまりキャラ把握してないからごめんなさい
pixiv方でこち亀のBGMと言われたのでご用意してからお読みください。
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とある移動都市のはずれ、大規模戦闘があったのか廃墟となった一角で前輪がドリル、後輪が履帯となっている特殊な装甲車両が爆走していた。
ドリルによる路面破壊の轟音を鳴り響かせながら、数台の装甲車を追い掛け回している。
「ね、ねぇリスカム」
装甲車を追い掛け回している車両の上で、BSW所属のフランカがパートナーに縋り付いていた。縋り付かれているパートナー、リスカムは憤怒の表情で頭にある角からバチバチと紫電が走っていた。
「ねぇってばぁ...」
半泣きのフランカは何度もリスカムを呼び、袖口を引っ張り続ける。そこに普段の悪戯好きの彼女は居なかった。
「リスカムぅ」
「うるさい!!!」
「ひぇ~」
フランカから情けない声が出る。しかしこれは仕方ないと言える、普段の厳粛で生真面目な彼女からは想像できないほどで、実際フランカがリスカムに怒鳴られたのはこれが初めてだからである。
敵装甲車から銃弾が飛び、瓦礫を吹き飛ばしながらフランカは何故こうなったのかを思い返す。
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「今回の依頼人は都市公安局から、廃墟街を拠点にしている武装勢力の偵察とのことだ。くれぐれも気をつけてくれ」
「「了解しました」」
BSW支部基地内の一室、そこで隊員のリスカムとフランカが新たに依頼を受領していた。
依頼内容はよくあるものだったため、二人は特に気にすることもなく承諾。準備に取り掛かった。
「はぁ、またフランカと組まされた」
「なぁにその言い草は、ほんとは嬉しいんでしょ~」
基本装備に着替えるため、更衣室内でリスカムがぼやく。耳聡く拾ったフランカは、リスカムの頬を指でグリグリと弄りながらからかい始める。
リスカムはグリグリと頬を歪まさせられるのを無視するが、一向に止める気配のないフランカに額に青筋が出来始め角からパリパリと音が鳴り始めた。流石のフランカもマズイと気づいたのか、弄りを止めいそいそと着替えを再開する。尚、リスカムは不機嫌なままである。
「ごめんってばー、機嫌直してよリスカムぅ」
「ふん」
リスカムは片手に中型の盾、ホルスターに拳銃という基本装備で通路を大股に歩いていく。追随するフランカも基本装備のエストックと、今回の依頼用に情報収集用の装備を一式背負っている。
さすがにやりすぎたかなぁと後悔するも一切の反省がないのがフランカクオリティ。
「ほらほら、これ依頼の内容。謝るから、ね?」
「はぁ...いい加減にしなさいよ、まったく」
リスカム本人もこのままでは依頼に支障が出ると思ったのか、差し出された資料を素直に受け取った。機嫌は治りきっていないとはいえ、一応の終着を見せたことによりフランカも胸を撫で下ろす。
「都市外周の廃墟街、そこを拠点にしているであろう武装勢力の偵察ね」
「この都市でドンパチして、人民解放、国家解放とか叫んでる奴ら?」
うんざりしたようにフランカが問うも、リスカムは資料を読み進め首を横に振った。
「どうやら違うみたいよ。やつらが掲げてるシンボルがないのと、使われてる武装の特徴が別地域の物みたい」
「ということは、火事場泥棒しに傭兵かPMCの線が濃いかな?」
「たぶんね」
めくっていく資料のうち、武装勢力の不鮮明な写真がありそこには装備が統一されあまつさえ装甲車も所有しているのが見て取れる。その事実に、最終確認のための偵察だということを認識する。
「そうなると、廃墟街までは車両に乗ってあとは徒歩かな」
「気づかれたら偵察の意味がない。集団行動も見つかる原因になる、か。戦闘行為は御法度よ」
「私もそこまで考え無しじゃないわよ。たぶん」
「そういうところよ、まったく...」
何時も通りといえば何時も通りの二人は、車両置き場に到着するとそのうちの一台に乗り込み出発した。
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移動都市外周部の廃墟街、フランカとリスカムは廃墟と化したビルの屋上で監視を行っている。フランカが双眼鏡とカメラを持って眼下の広場を見下ろし、パートナーのリスカムは周囲の警戒をしつつ、インカムから流れてくる音声にも注意を払う。
リスカムのインカムから流れてくるのは、集音装置を積んだラジコンドローンを広場へと向かわせ設置したものである。比較的距離が近いためか、多少の雑音はあるものしっかりと音声は拾っている。
「装甲車が、五台に人数が十九人か、規模としては大きめかな。武装も少数だけど火器の携帯を確認。戦闘用ドローンも数台と」
カシャカシャと写真を撮りつつ、情報をメモに記載していく。声に出しているのは記載にミスがないかの確認に加えて、リスカムに伝えるためである。ここまではまだフランカとしても想像の範囲内であり、たんたんとしていたのだが、広場にある一際大きな物体を視界に納めると眉をひそめた。
「で、あれは何かしら」
「...シャゴホット」
「シャゴホット? それがアレの名前なの?」
「みたい、高い金払って買ったとか言ってる。...口ぶりから実戦は初じゃないかしら」
シャゴホットという名前であろうソレは、装甲車よりも二回り三回り大きい。それに加えて前輪部分がドリルに、後輪は履帯となっている。
「やっかいね。生半可なバリケードじゃあ足止めにもならないわ」
渋い顔で苦言を呈するフランカ。ドリルは大きく前に突き出ており突撃してバリケードなどを破壊するための兵器と思われるものだった。というのもドリル以外に目立った武装はなく、車両後方には兵員を乗せるためのカーゴがあるからである。
「でもこれで情報を得られた。どうやら無人操作、しかも無線式だからやりようはあるわ」
「それは朗報ね。車両外部にいる操縦手が見つかればだけど」
傍受した内容を伝えられ、メモしていくフランカ。見たところ全周囲に装甲があるため、もし有人だった場合には破壊する必要が出てくる。その点、無人なら操縦手を無力化すればよくなるためマシなはずである。しかしフランカは胸の内がざわついて仕方が無かった。
「どうしたのよ一体」
「ちょっとおかしいなーって」
「何が?」
「車両に比べて人数が少ないのよ。特にドローン」
これ以上得られる情報がないと判断したのか、双眼鏡やカメラを仕舞いこむ。胸のざわつきは収まることなく、むしろ大きくなる。
『ご明察どおりだBSWの諸君』
「なっ!」
そしてフランカの悪い予感は的中する。男の声が響くと同時に、四方から音も無く戦闘用ドローンが現れその銃口を二人に向けた。
武器を構え臨戦態勢に入る二人であったが、盾持ちが一人なため多方面からの攻撃から防ぐことができない。しかも屋上の出入り口は一つで距離もあり、飛び降りようにもここは地上十階、地上三十メートル以上負傷は免れない。
『さぁ手を上げてもらおうか』
武装集団に捕まったリスカムとフランカは、武器などの装備をとられ拘束された。二人の正面には武装集団のリーダーがシャゴホットに腰掛け、手で顎を擦っていた。
「さーて、BSWの鼠は捕まえたわけだが」
「さっさと殺してしまいましょう」
「まぁまて、ふーむ」
側近である人物が銃を手にかけ二人に銃口を向けるが、どうやらリーダーに何か考えるがあるのか側近の銃を掴み下げさせる。引き金から指を離しリーダーの言うことに従う側近、しかしながら拳銃は手に持ったままで警戒していることが分かる。
「さてお二人さん、依頼人は? BSWはどこまで知っている?」
「...」
「もう一度聞く、依頼人と得ている情報は?」
「...」
「やれやれ」
情報を得ようとリーダーが問いただすものの、だんまりを決め込む二人に肩をすくめる。またしても手で顎を擦り考え込む。
僅かながら時間を得られた二人は、目配せしながら状況を打開しよう動く。周囲に武装集団が囲っているため大きな動きはできない、しかし武装集団のチェックが甘く袖口から取り出したフォールディングナイフを使い、器用に縄を切っていく。
「そうだこうしよう」
考え込んでいたリーダーが閃いたのか、弾かれた様に立ち上がった。縄切りに集中していた二人は、肩を僅かに跳ねさせた。
「BSWの~、そうヴィーヴィルのお前」
「...何」
「なぁ早く言ったほうがいいぞ。でないとこのヴァルポがどうなることやら」
「何が言いたいわけ」
ニヤついた笑顔を貼り付けて、リスカムと同じ目線で語りかけ始めた。
「いやーなに、ただ情報が欲しいだけなんだがなぁ。痛めつけるのも勿体ないなと思ってなぁ」
「...っ!」
「うちは男所帯だし、働く前に一つ慰安があってもいいよなぁ」
「貴様っ!」
「落ち着きなさいリスカム!」
「おお怖い怖い」
リーダーの挑発に激昂し、歯をむき出しに角から紫電は迸る。今にも噛み付きそうなリスカムに、フランカが止めようと声を張り上げながら焦り始める。
当のリーダーは嗤いながら口角を吊り上げる。そして言葉を続ける。
「はっはっはっ見た目は良いからいい慰安になるなぁ!」
「...ろす!」
「まぁ? 勿論一番手は俺がいただくがなぁ」
「殺す!」
「リスカム!」
「いい声で鳴いてくrグァッ!?」
「リスカム!?」
怒りが有頂天に達したリスカムの拳が火を噴いた。縄を切り終える前に、持ち前の馬鹿力で引き千切ったのである。
予期していなかった出来事に、もろに顔面に拳を受ける。リスカムはパートナーの突然の強行に面食らうが、縄を切り終えるとリーダーの側近へと近づき銃を奪う。側近も突然の出来事で対応できず、フランカに簡単に奪われる。
「死に晒せ!」
「や、やめ、やめろっ」
リスカムはリーダーに馬乗りになると何度も何度も顔面を殴り、頭を地面にバウンドさせる。周囲の武装集団は鬼気迫るリスカムに手が出せないでいる。
「ちょっとリスカム!? これからどうするの!」
「死ね! 死ね!!」
側近の腕を捻り上げながら人質にとったフランカがリスカムに問いかけるものの、反応がない。すでにリーダーからのうめき声が聞こえなくなり、殴られ続けたことにより顔の原型がなくなってしまっている。
痙攣していたリーダーの反応が完全になくなってから、漸く殴るのを止めるもののリスカムの怒りは収まっていなかった。リーダーの腰についていたロッドを手に取ると、シャゴホットの車体へ飛び乗り始めた。
「ちょっ、リスカム!? 何をしようとしてるの!?」
先ほどからのリスカムの行動に振り回されっぱなしのフランカ、何がなにか分からず混乱している。
シャゴホットの上の前方で仁王立ちしすると、ロッドを逆手両手持ちシャゴホットへ突き刺した。金属同士が擦れる嫌な音をさせながら、シャゴホットの装甲の繋ぎ目を貫通した。
「「「「「えええええぇぇぇぇ!?!?」」」」」
シャゴホットの仕様を知っている武装集団から驚きの声が上がり、その異常性をよく表している。
リスカムはそのまま突き刺したロッドを横倒しにし、めくれ上がった装甲を無理やり引き剥がした。
「「「「「はぁぁああああああ!?!?」」」」」
「何をしようと、まさか...!」
またしても驚愕の大合唱、側近も思わず声を出した。そして何かに気づいたフランカは、人質の側近を放すと近くにあった自身とリスカムの装備を拾い上げてからシャゴホットへ乗り込んだ。
リスカムは剥がした装甲を放り投げると、フランカが乗り込んだことも確認せずむき出しになった内部へ拳を振り下ろした。嫌な音を立てつつ手首まで突っ込むと、様々な配線を握り締めた。
「動けぇぇええ!!」
バチバチとリスカムから放電され、配線を通してシャゴホットへと流れ込んだ。
「...リスカム?」
「...う、動くわけねぇだろ!?」
「は、はやく武器持って来、い...?」
周囲から疑問の声が上がり、武装集団が混乱から立ち直ろうとした瞬間。
-ブルォォオオン!
シャゴホットのエンジンが起動したのである。リスカムの角からも、先ほど放電したよりも強く電流が走る。どうやらシャゴホットからの電力が供給されているようで衰える気配を見せない。
「よっしゃ!」
「「「「「えええええええ!?」」」」」
「うっそ~...」
唸り声を上げるシャゴホットが、ぎこちなく片腕を振り上げ。
「...何が、起こって...エ?」
起きたばかりのリーダーの真横に振り下ろされた。起きたばかりのリーダーには刺激が強すぎたのか、白目を向いて気絶した。そして気絶したリーダーは側近に担がれ、避難した。
「う、動いたぞ!?」
「のののの乗れ乗れ乗れ! 逃げろぉ!」
「逃げるんだよぉ!」
「ぶっ潰れろ!」
リスカムが操るシャゴホットが装甲車の一台を押しつぶす。それを見た残りの武装集団は装甲車に雪崩れ込むように乗車、そのまま広場から次々逃走し始めた。
「逃がすかぁ!」
「ひぇ~」
そして冒頭に戻り、廃墟街で装甲車とシャゴホットのカーチェイスが開催されているのである。
既に武装集団の装甲車は残り二台になっておりドローンを全てシャゴホットに潰されている。数少ない火器による攻撃は、フランカが手に持っているリスカムの盾で防がれてしまっている。
「もっと速度を上げろ! 追いつかれるぞ!?」
「これが限界だバカ、瓦礫が邪魔すぎる...!」
「く、くるなぁああああ!?」
そしてもう一台シャゴホットに追突され、瓦礫の山へと突っ込んだ。
「あと一台ぃ」
「あー、もうめちゃくちゃだよ」
順調に怒りが発散されて、当初のテンションが落ちているものの顔には釣り上がった口が張り付いていた。フランカは既に止めることを諦めており、サポートに周っている。もっともこの後の始末書に頭を痛ませているが。
「逃げろ逃げろ逃げろぉ!」
「ちくしょー!!!」
そして最後の一台も、末路は決まった。
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「はぁ~....」
「「すみませんでした」」
BSW支部基地の一室で、リスカムとフランカが深々と頭を下げている。下げられている二人の上司は頭を抱えながら、搾り出すような声で話し始めた。
「事の顛末は分かった、二人の処分としては階級下げと数ヶ月の減給処分になる」
「...」
二人は分かりきってたことだったが、顔を青くする。特に主犯であるリスカムは青を通り越して白くなっている。
しかし続けられた歯切れの悪い、苦虫を噛み潰したような顔をした上司に首を傾げる。
「なるはずだったんだが...」
「もしかしてもっと重い処分が...」
おかしな雰囲気にフランカは何かがおかしいと気づくが、リスカムは白くなった顔に加えて体が震えだしている。
「逆だ」
「「「逆?」」
「ああ、依頼主の公安に報告したところ、むしろ褒められた」
「「...はい?」」
深く大きなため息をつく上司に、わけが分からないといった表情の二人。上司は頭痛を和らげようと、眉間を指でもみながら詳細を説明する。
「あのシャゴホットだったか? 公安によるとどうやらあれが稼動状態だった場合、止める術がなかったそうだ。それと本来公安から出された依頼は武装集団の排除だったのも合わさり、早期に壊滅させたことで褒められた、という訳だ」
「は、はぁ...」
「怪我の功名と言えるの、かな?」
今一どういったことか掴めないリスカムは生返事に、フランカは結果オーライだったのかと首を傾げる。
「怪我の功名だ。故になぁ...、BSWとしては落第点だが依頼としては満点なんだ」
「つまり?」
「お咎めなしだ。ただ今回のことは査定から外れることになる、事が事だからな」
「や、やったー!」
「ただし! 今後このようなことがないように始末書は書いてもらうぞ」
「分かりました!」
結果としてプラスマイナスゼロ評価となったものの、お咎めがなかったため喜ぶリスカム。巻き添えを食らったフランカとしては、骨折り損であったがそれはそれとして胸を撫で下ろした。
上司から詳しいことは追って沙汰をくだすとのことで、退室を促された二人は室内をあとにする。
室内に残った上司は深く深く息を吐き、背もたれに全体重を掛けながら最初から同室していた人物に話しかけた。
「ジェシカ君、あの二人が君の上司になる」
「え...え...」
ジェシカと呼ばれた少女は見るからにうろたえており、目元には涙も滲んでいる。その姿に上司は無理もないと苦笑い。
「普段はあんなことしないんだがなぁ」
「本当に私の上司に...?」
「ああ、そうだ」
「そんなぁ~」
ジェシカの情けない声が室内に響いた。
「で、何でなの?」
「何が?」
「リスカムがあんなに怒ることなんて始めてだったじゃない。だから何でかなーって」
「当たり前よ、フランカにあんな...」
「あんな?」
「...言うわけないでしょバカ!」
「もう、素直じゃないんだから」
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発想元はヴォルギン
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