ロープ、生い立ちが重いのに手癖は悪いけど捻くれてないとかいい子過ぎる。
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「ロープさん、ちょっといいですか?」
「アーミヤ社長じゃん。ボクに何かよう?」
「ええ、ちょっと協力してもらいたいことありまして」
「ふむふむ」
とある昼下がりのロドス基地内の会話。
「なぁアーミヤ」
「何でしょうドクター」
Dr.執務室内、いつものように作業に執りかかっていたDr.であったのだが、最近疑問に思っていたこと口にする。
「書類、少なくないか?」
デスクの上にちんまりと山にすらなっていない紙の束を眺めるDr.、自分の目がおかしくなったのかと目を揉み何度も確認するが紙束は変わらない。
「いいえ、そんなことありませんよ」
Dr.は確認を取るものの、アーミヤは良い顔で否定する。それはもうニッコニコと満面の笑みである。
「そうかそうか」
「はい、そうですよ。今日も頑張りましょう!」
ファイトー、と拳を突き上げて応援するアーミヤにDr.は後押しされ、書類を片付け始める。
そして全ての書類が片付いたその時間、なんと30分。仕事が終わり、ペンをそっとデスクに置いた。
「んな訳あるかー!!」
「ドクター!?」
短い、あまりにも短い仕事時間にDr.が吠える。普段ならこんな短時間では終わらず、就寝時間ギリギリまで処理していることが多いにも関わらずである。
これはどういうことか、とアーミヤに目を向ける。その時、ゾクリとDr.の背筋に悪寒が走った。Dr.を見る、アーミヤの視線が底冷えするほどに冷たかったのである。
「ドクターがイケナイんですよ?」
「アー、ミヤ...?」
「たしかに仕事は終わらせなければなりませんし、放り投げるなんてもってのほかです。ですがそれにも限度というものがあるでしょう?」
「うぐっ」
冷たく言い放たれた言葉にDr.は何も言い返せず呻くのみ。それもそのはず、このDr.自身の仕事以外にも他者の仕事も請け負っていたのである。
そのせいで積みあがる書類の山を、理性をガリガリ削りながらこなして来たのだが遂にアーミヤに見咎められてしまった次第である。
「だ、だがそうであったとしてもだな...!」
尚も食い下がろうとするDr.に、ニッコリ微笑みかけるアーミヤは指を一つ鳴らした。
「ロープさん、今です」
「アラホラサッサー!」
「ロープだt、うぉおおおお!?」
天井から現れたロープに、Dr.は抵抗する暇もなく鍵縄で簀巻きにされてしまった。床に転がるDr.にロープとアーミヤが囲む、最早逃げ場はない。
「ドクターが悪いんですからね...?」
「まぁ今回ばかりは自業自得だとボクは思うなぁ」
「ど、どうするつもりだ!」
「ではロープさん、お願いします」
「ふっふっふっ」
笑顔で見送るアーミヤを、お米様抱っこされたDr.はロープに連れて行かれた。
「や、やめろぉーー!?」
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太陽が頭上でサンサンと輝いている頃、ロドス移動基地屋上にて鍵縄で腰紐をつけられ逃げられない状態のDr.とバスケットを持ったロープが座っている。
「で、どういうことなんだ?」
久しぶりの日光と穏やかな風を体で感じリラックスするDr.。そして逃げることは諦めており、隣に座っているロープへ問いかけた。
「どうもこうも、ロドス内で話題になってたよ。ドクターは働きすぎだーって」
「...話題になるほどだったのか」
「うん。はい、ハーブティー」
「...ありがとう」
ロープはバスケットの中から取り出した魔法瓶から注いだハーブティーを渡した。続いてサンドイッチを出すとそれも手渡した。
「すまないな。うん、美味いな。ロープが作ったのか?」
「ボクなわけないでしょ。事情説明したらグムが用意してくれたんだ」
「そうか」
会話が途切れ、黙々と食べ進める二人。日光による程よい暖かさと時折吹いてくる風が心地よい。
ここまで穏やかなのはいつ振りか、普段は書類に追われ何かあれば作戦指揮を執る。当たり前であったが、やはりどこかで無理をしていたと実感するDr.であった。
バスケットの中を空にして、食後のハーブティーを楽しんでいる最中にロープがDr.を見つめながら問うた。
「ねぇ、ドクターは何でそこまで頑張るの?」
「何でって...」
不思議そうに頭を傾けるロープにDr.は咄嗟に答えられなかった。
「ロドスはさ、安全でお腹一杯食べれるじゃんそこまで無理する必要はないと思うんだよね。
もちろんドクター達が頑張ってくれてるから、そういう生活が送れてるのは分かるよ。
でもそれってドクター一人が背負う必要はないんじゃないかなって、ボクはそう思うしロドスの皆もそう思ってるよ」
「...焦ってたんだろうな俺は」
ロープの語り掛けに、記憶をなくし自身の立場に不安を覚えて我武者羅に頑張ってきた。それが周囲に心配されていることに自覚出来ないほどの視野教唆に陥ってたことを、ここにきて漸く理解する。
「だからさ、たまにはこうやってお日様の下に出て頭の中空っぽにして寝ちゃうのもいいと思うんだ!」
ごろんとロープは寝転がり、青空を見上げる。Dr.もそれに習うように寝転がり、広い広い青空と大地を照らす太陽を眺める。
「たまには、いいものだな」
「でしょ? こうしてるとロドスの日々が幸せだって、そう思うんだ」
「ロープ...」
親に捨てられスラム街で盗みをしながら転々として、漸くロドスという安寧の地を得られたロープにとってかけがえのないものとなっている。そんな日々をドクターにも知って貰いたい、そんな一身から今回のことに協力したのだろう。
「...寝ちゃおっか」
「そうだな」
悪戯顔で隣に寝転がるDr.を誘うと、Dr.もそれに乗った。
暖かい日差しに心地よい風が眠気を誘い、ひと時もせずに二人は寝入ってしまった。
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「ロープさん、バスケット回収しに来ましたよー」
屋上へやってきたのはロドスの食堂を任せられているグムであった。どうやらロープへ渡したバスケットを回収しにきたようだったが、返事がなく寝転がっている二人へと近づいた。
「あら、あらあら、あらあらあら。ロープさんとドクターったら」
そこにはドクターの腕を枕にして寝るロープの姿があった。気持ちよく寝る二人に、グムはそーと音を立てずにバスケットを回収した。
「グムは何も見てませんよ~」
そう言い残して、グムは二人をそっとそのままにして後にした。
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