ちょっと日常成分薄いしカーディがちょっと大人っぽいけど、こういうのもいいよね
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「おりゃーーー!!」
「カーディ! 前に出すぎです!」
「あらら、カーディちゃんのダメな癖が出ちゃいましたね」
「アドナキエル、口動かしてないで援護しなよ!」
「メランサ、押し通ります...!」
レオユニオンとの戦闘を行っている行動予備隊A4だが、いつものごとくドタバタとしている。
突出するカーディにそれを諌めるアンセル、肩を竦めるアドナキエルと手を動かすようにいうスチュワード、そして目の前のことしか見えてないメランサはカーディが引き付けている敵に肉薄する。
「あいつらは...!」
「まぁまぁ落ち着いてくれドーベルマン教官」
後方で指揮を執るDr.の隣で青筋を立てているのは行動予備隊に教鞭を執っているドーベルマン、そして隣にいるDr.はそれを諌めている。
「しかしだな」
「たしかにカーディの突出はあまりよろしくない、今後直すべきところだろう。だが現状それを補佐するのが俺の役目だ」
やはり教鞭を執る立場としては思うところがあるのか、ドーベルマンは渋るが、Dr.は気にせずに指示を出していく。
「メランサとアドナキエルは軽装の敵から潰して行け。スチュワードは敵重装兵を、カーディが抑えている方を中心に叩け。アンセルはメランサを優先に対処を」
「「「「「了解!」」」」」
指示を出すとA4全員から元気に了承の言葉が飛んでくる。そして通信機の周波数を変え、別の人物へと指示を出していく。
「クルース、メテオ、そちらはほぼ終わっているだろう。予備隊A4の援護を頼む」
「は~い。狙って~行くよ~!」
「了解よドクター。遠距離支援は任せて」
「こんなものだろう」
「...本来であればA4だけで済んだはずなのだがな」
「さすがに厳し過ぎやしないか?」
指示を出し終わり、一息つくとドーベルマンから厳しい声が出てきた。聞いていたDr.は苦笑する、確かに普段の予備隊A4であればギリギリ対処できただろう。しかしそれは、戦場という特殊な環境下においては心理的状況が変わってくるのである。
そのため、ドーベルマンの言は厳しすぎると言わざるを得ない。
「だが...っ! いや、そうかもしれないな...」
「本隊がほぼ機能不全となって久しい。焦る気持ちも分かるがそれを彼女達にぶつけても、な」
「ああ...。すまないな」
チェルノボーグからの脱出時に、多くのベテランオペレーターが命を落とした。二度とそのようなことを起こさないように、厳しい言葉飛ぶのはドーベルマンの優しさから来るものなのだろう。
「それに彼女達も成長しているんだ」
そういうとDr.は予備隊A4へと視線を向けるようにドーベルマンを促した。
「うぎぎぎ」
「死ねぇ! ロドスの犬!」
三人のレユニオン戦闘員から罵声と共に三人の巧みな攻撃を繰り返される。カーディはその全てを盾で防ぎきっている。だが防ぐことで手一杯なのか反撃に移れないでいた。
「俺達の邪魔をするなぁあああ!」
「邪魔なのは、そっちでしょ!」
痺れを切らしたレユニオン戦闘員の攻撃が単調になり、そして僅かな隙が出来た。そしてカーディはその隙を見逃さずに、的確に反撃を加えた。
「ぐっ! だがこれしきのこと!」
しかし手傷を負ったレユニオンは怯みこそしたがそのまま戦闘を続行した。
「まだ戦うの!?」
「行き場のない俺達が止まるわけないだろ...!」
驚愕するカーディであるものの、後が無いレユニオンは既に死兵と化しているだから止まるわけがない。
反撃はできた、だができただけで状況を打開することはなくむしろレユニオンの士気を高め攻撃が激しくなる結果に終わった。
「どけ、どけっ、どいてくれ!」
「俺達を先に行かせてくれ!」
「できるわけないじゃんか...!」
レユニオンの猛攻を防ぎるカーディは、今このときほど教官たるドーベルマンに感謝したことはなかった。
あの日、チェルノボーグから撤退したあの日から厳しくなった訓練をこなしていなければ、ここまで防ぎることができていなかったからである。ましてやこうして。
「そこぉ!」
「ぬわっ!?」
「悪足掻きを!」
「ぐっ...」
絶え間ない攻撃であってもシールドバッシュで敵をよろけさせて、隙を作ることなどできなかったのだから。そして。
「斬らせていただきます!」
「いつの間に、ぎゃっ!?」
「おい、大丈夫か!」
「余所見してていいの、かな!」
仲間の援護によって乱れた敵の連携を突き崩すことなどできなかったはずなのだから。
メランサが一人、カーディがもう一人、そして最後の一人はアドナキエルが仕留めていた。
「全てドクターの計算通りでしたね」
これでカーディが相対していたレユニオンは崩れた。他の近場も助けに入る前のメランサとスチュワードが仕留めており、近場に敵影はいなくなっていた。
「こ、殺せ...」
「俺、俺達...」
「終わりだ、何もかも」
命までは奪われず、負傷し地面で転がるレユニオン戦闘員は口々に死を望む。それを聞いたカーディは、固く口を結ぶと。
「殺さないし死なせない!」
「バカが、俺達はレユニオンだぞ...」
胸を張って宣言した。それを聞いたレユニオンは、息を呑み驚愕するものの愚かしいと口にした。それを聞いてもなお、カーディは胸を張り続ける。
「私達はロドスだ! 製薬会社だ! 医療機関だ!
例えそれが敵であっても、レユニオンであったとしても!
救うのが私達だ!!」
殺し殺されあった、だがそれでもとカーディはレユニオンに宣言した。
呆気にとられるレユニオン、数刻で正気に戻るがそこには悲壮感はなくなっていた。
「好きにしろ」
ただそう言い残すだけであった。
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「いつつっ」
「じっとしていてくださいカーディ。まったく無茶するんですから」
「えへへ、ありがとうアンセル君」
レユニオンとの戦闘が終わり、カーディ達予備隊A4がいるのは野戦テントの中であった。ロドスオペレーターの死者はいないもの、軽傷者は出ておりさらにレユニオンの一部も治療を受けていた。そのため基地内部の医療施設では重傷者を優先し、軽傷者は基地外の野戦テントで治療されていた。
特に今回の戦闘では、大人しく治療を受けるレユニオンが多くそのような処置になっている。
「まぁまぁ、カーディちゃんのお陰でレユニオンが大人しくなったんですから」
「大人しく治療を受けて、だろう?」
「あれ、そう言わなかったっけ」
「言って、ないです、よ...?」
首を傾げるアドアキエルにやっぱり何を考えてるのか分からないとスチュワードは頭を抑える。メランサはいつもどおりおどおどとしていた。
隊のいつも通りのやり取りにアンセルは無視しつつ、大人しく治療を受けるカーディに問いかけた。
「カーディ、味方も敵も救いたいのは分かります。ですが度が過ぎると」
「Aceさん達みたいになる、かな?」
テント内が静まり返った。
やはりAceを筆頭にベテランのオペレーターの急報というのは、予備隊であった彼等の心に大きな影を落としていた。良き先輩であり、学ぶことが多く常日頃から世話になっていたベテランというものは精神的支柱であったのだ。
誰も何も言わない、いや口を開けなかった。ただ一人、彼女を除いて。
「大丈夫だよ、アンセル君」
「カーディ...」
柔らかく、落ち着かせるような笑みを浮かべるカーディは言った。
「私は、私達はまだまだ弱い! だからAceさん達みたいに皆を護るってことはできない」
カーディ自身も、思わないとこがあるはずがない。だがそうであったとしても、とも思う。
「でもね、救える人を救わないのはAceさん達先輩の顔に泥を塗るんだって、そう思うんだ」
ニカリと頬にガーゼを貼り付けたカーディは笑う。あの日、あの時の悲しい出来事があったとしても、その心を失ってはいけないんだと。
「カーディ...。あなたには叶いませんね」
飽きられた様に、救われたように笑みを溢すアンセル。他の予備隊A4も感銘を受けたのか、カーディに近づき抱きしめ始めた。
「僕も負けてはいられませんねこれは!」
「カーディちゃんはいいこですね」
「カーディ...!」
「うわっ! ちょ、皆やめてよぉ~!」
もみくちゃにされながらも、その顔には笑顔が浮かんでいた。
「これは入っていける雰囲気じゃないなドーベルマン」
「何、この後でなら時間はいくらでもある」
「しかし、これなら予備隊呼びは失礼じゃないか?」
「いいや、まだまださ」
「手厳しいことで」
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