どうしても理性回復剤が麻薬にしか思えなくて、そして医療用として大麻が存在する。となると、ねぇ?
※麻薬絶対ダメだかんね!
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時刻は深夜。既に日付は変わり、月も頂点から傾いた頃合。
そんな夜更けでDr.は執務室で精根尽き果てていた。
「...」
呻く事もままならない程疲労したDr.は、のろのろとした動きでデスクの引き出しからあるものを取り出した。
特殊な小さいパッケージに包まれたソレを、Dr.は開封し中に入っているアンプルを取り出した。
アンプルを折り、開封すると中身を一気に吸い込んだ。
「すぅ~~~~! ...あ゛あ゛あ゛ぁー....」
極々少量の粉末を肺一杯に吸い込んだDr.は、恍惚の表情を浮かべた。
エクスタシーを感じ、トリップしたDr.は暫しその余韻に浸る。
「もう一本...」
効果切れるや否や、Dr.は引き出しを漁り始めた。ただ、幾らDr.が中を探ろうと同じものは出てこなかった。
「遂に、無くなってしまった。理性回復剤ぃ...」
使用していたのは理性回復剤、それも上級と言われる高級品であった。だがそれもなくなり、Dr.は失意に沈んだ。
心ここにあらず、Dr.は天井を見つめながらふと思いついた。
「...作るか。理性回復剤」
果たしてそれは名案だったのだろうか、とりあえずDr.が先ほど使った上級理性回復剤は不良品だったことは間違いない。
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一眠りしたDr.が起きてから、その行動は早かった。爆速でその日の仕事を片付けると、理性回復剤について調べ始めた。
ただ寝たのに理性ゼロとか、いつもそれだけ早ければ回復剤はいらないんじゃないかとか、ツッコムべき所はあったはずなのだがその日に限って誰も気づけなかったのである。
そんなこんなで色々調べてみると、初級はほぼほぼ糖分補給用であり上級には
つまりほとんど分からなかったのである。それもそのはず、販売会社が飯の種であるレシピをご丁寧に全て明記しているはずもないのだから。
だがそこでふとDr.(理性0)は閃いてしまった。初級は糖分、上級は少量の芥子、であるならば主成分はトリップするほどのナニかだと。
今まで培ってきた医学、それも脳神経学の権威であるDr.(手遅れ)の脳はフル稼働した。
「...大麻か!」
思い当たったら直ぐ行動、とばかりに飛び出して行った。
近くには誰も居らず、そのため止めるものも居なかった。
数日後、アーミヤとケルシー、他数名の幹部が会議室内で今後の予定について話し合っている。その中にDr.の姿は無かった。
現状、記憶がないDr.にはオペレーターとの交流を図って貰うためにこの場に呼ばないことが決定されているためだ。もっとも時期を見て参加させることは決まっているのだが。
会議が終わり、緩急した空気が流れている。漸く終わったと片付けを始める者やゆっくり紅茶を楽しんでいる者などが居る中で、ふとアーミヤがとあることを思い出した。
「そういえば、最近ドクターを見てないような...」
呟いてから最近忙しかったことも思い出し、そんなこともあるだろうと思いなおすアーミヤ。勿論、この後会いに行くことは彼女の中で決定事項となったのだが。
ただ、そのぼそりと呟かれたそれを隣にいたケルシーの耳にも入っていた。
「アーミヤもか?」
「え、ケルシー先生もですか...?」
これは何かがおかしい、そう思い他の幹部にも話を聞いていくが。
「ドクター? いや見てないな。それよりもラップランドがうっとおしい」
「盟友とは最近会っていないな。ふむ、たまには故郷の物でも持っていってみるか」
「いや見てないな。教練も大詰めに入っていてそれどころではなかったからな」
「妾にそれを聞くか? 心配せずとも不用意な接触はしておらんとも、無論最近もな」
など他の幹部達も出会ってはいない様子であった。これはどうしたものかと、アーミヤは頭を捻るが幹部の一人であるクロージャが手を上げた。
「はいはーい、私最近会ったよ」
「クロージャさん! ドクターはどうでしたか!?」
「近い近い」
「あう...」
クロージャはアーミヤに詰め寄られ、一歩引く。近くで見ていたケルシーがアーミヤの襟元を掴み引き剥がしたことで事なきを得た。
「あー、それでドクターだっけ。別にいつもと変わらなかったよ」
「そうでしたか...」
ケルシーに襟元を掴まれ、ぷらんと宙吊りになったままのアーミヤはほっと息をついた。ただクロージャは気になることがあった様で、顎に手を当て考え込んでいた。
それに気づいたケルシーはクロージャに問うた。
「クロージャ、何か気になることでもあるのか?」
「あーちょっとね。ドクターが珍しいものを買っていったんだ」
「珍しいもの?」
「うん、腐葉土なんだけどね?」
「「腐葉土?」」
以外な物品にアーミヤとケルシーの声が重なった。Dr.が何故腐葉土を、と三人で首を捻った。
「すみませんパフューマーさん。ちょっとよろしいですか?」
「あらアーミヤ社長。構いませんよ」
所変わってここはパフューマーが管理している療養庭院にアーミヤは来ていた。パフューマーは庭で花の水遣りをしていた所に声を掛けられ、作業の手を止めた。
「あの、最近ここへドクターが来ませんでしたか?」
おずおずと用件を伝えるアーミヤ。あの会議室の後、アーミヤはケルシーに言われてドクターの捜索を行っていた。そして腐葉土を購入したということで、一番怪しいパフューマーの元へと赴いたのであった。
「ドクター君なら来ましたよ。といっても二、三日前だけどね」
「来たんですね! ドクターが!?」
「え、ええ。そうよ?」
突如興奮しだしたアーミヤに引き気味になるパフューマー、これで本日二度目である。
ただアーミヤも学習したのか、直ぐに冷静に戻った。
「ごほん、すみません突然に。それでドクターは何故ここに?」
「それがポピーが欲しいって」
「ポピー、ですか...?」
「ええ、それも新鮮な実を」
「んん?」
Dr.が何故花、それもポピーの実を欲しがるのか首を傾げる。
「あと、医療用大麻の生育具合も聞いてきたかな。実験で使うから余剰分が欲しいって」
「実、験...? まって、そんな話聞いてませんけど」
「え? でも上には許可貰ってるってドクター君が...」
ここで漸く気がつく。ポピーの別名は芥子であり、その実は阿片と呼ばれる麻薬を作れる素材となることを。そして無認可の実験に使われる少なくない量の医療用大麻。
二人は、嫌な汗が流れるのを感じた。
「これは、ヤバイのでは」
「ヤバイかもしれないわね」
アーミヤは直ぐにケルシー以下、全てのロドス幹部に連絡を取った。
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ロドス内が俄かに騒がしくなる中、Dr.(バカ)は使われていない研究室の一つで何やら調合を行っていた。
「乾燥した大麻...芥子からとった阿片を少々...そして、たぶん頭が
ぶつぶつ呟きながら何かを作り出していた。
部屋には異臭がたちこめており、暗い室内に、アルコールランプの炎が淡く照らし出すDr.の姿はどこかの悪の科学者そのものであった。
よく分からないモノを火で炒っていき、水分を飛ばす。完全に水分がなくなったところで火を止め、出来上がった固形物を磨り潰していく。
「ふ、ふふ、ふはははは」
気持ち悪い笑い声を上げるDr.(悪役)には、最早理性ゼロどころマイナスにまで振り切れていた。何が彼をここまで掻き立てるのか、常人では理解できない。
「でぇきたぁ~」
遂に作り上げてしまったそれを、Dr.(理性-)は掲げる。
完成の余韻に一頻り浸ったあと、完成したナニカを数グラム薬包紙へと移し、パイプを手にした。
いざ逝かん理性の彼方へ!
吸い込み上げようとした次の瞬間。
「ロドス懲罰委員だ! お縄につけドクター!」
「!? 誰だ!」
ドアを蹴破ってきたのはロドス重装オペレーターのニアールであった。そしてニアールの後ろからぞくぞくと部屋に入ってきた。
「ドクター、逃げ場はありませんよ」
部屋の中で半包囲されたDr.の目の前にアーミヤがやってきた。アーミヤは机にある様々な物を視界にいれると、瞳から光を消した。
最早逃げることはできない、だがDr.(正気度0)は諦めが悪かった。
「俺には、俺にはやらなければならないんだー!」
「ちょっと、頭冷やしましょう」
「あべし!?」
アーミヤに突撃をかますも、威力を極限まで下げたアーツ攻撃を額に受けて渾沌した。
これにて漸く、お騒がせな理性マイナスDr.の事件は幕を下ろしたのであった。
後日、目を覚まし理性が戻ったDr.は自身のしでかしたことに対して記憶しており各地に謝罪しにいった。勿論、その後にお説教を食らったのだが。
あともう一つ付け加えると、今回の騒動の原因の仕事量。どうやら情報の伝達の行き違いがあり想定量を遥かに超える仕事が割り振られていたことが発覚する。
むろん、直ちに是正されDr.の負担は軽くなった。
「これはもういらないな」
「いいのですか?」
Dr.は適量になった仕事に、理性がなくなることはないと理性回復剤を棚へとしまう。
またあのような凶行に及ぶのはごめんだと、Dr.は肩を竦める。
「ああでも、成分は気になるな」
「止めてくださいね、ドクター」
研究者としての性質が出てしまったDr.に、アーミヤの目のハイライトがなくなる。背筋に冷や汗を流しながら、否定した。
「...冗談だ」
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麻薬ダメ絶対!
評価、お気に入り、感想ありがとうございます!
そしてついに、日間総合ランキング入りしました。
始めての日間総合でとても嬉しい限りです。ありがとうございます!
「しっかりものアンセル」の誤字報告ありがとうございます!
意図的じゃないです、素の誤字です...。いやほんと報告ありがとうございます。
...日間で出そうとするとどうしても誤字脱字が出てきてしまいがちに、よろしければご協力よろしくお願いします。