プロファイルからの情報とストーリーでフロストリーフとアーミヤの仲が良さそうだったので
.
「どうしてだケルシー」
ロドス基地内、執務室で一人の少女がケルシーに詰め寄っていた。無表情であり分かり辛いものの、雰囲気から不満であることが分かる。
少女に詰め寄られたケルシーは、胡乱な目で少女を見つめ返した。
「何度も言っているはずだフロストリーフ。今のお前に必要なのは任務じゃない、療養だ」
「うっ...」
ケルシーが厳しい声でそう伝えると、フロストリーフは言葉に詰まった。
彼女がロドスに来たのはほんの最近のことである、所属していた部隊の壊滅そして傭兵として放浪していたおりにロドスへと雇われたのである。もっともロドス側としては治療させるために雇ったのであるが。
フロストリーフはその後の検査により、重度の鉱石病であることを始めて知った。彼女も分かってはいるのだろう、療養しなければ遠からず死んでしまうことを。
「しかし...」
尚も食い下がるフロストリーフ、死んでしまうことは分かってはいる。だが戦い以外を知らない彼女はどうすれば良いのかが分からないのである。
俯き、スカートを両手で握り締めるフロストリーフ。彼女の生い立ちを知っているケルシーは、一つ息を吐いてから告げた。
「フロストリーフ、今の生活に困惑しているのは分かる。ただ今は休め、いや休んでもいいんだ」
「あっ...」
そっとフロストリーフの頭に手を当て、優しく撫でる。
いきなり撫でられたことに驚き、困惑するフロストリーフだがその手を振り払うことはなかった。どこか暖かく、恥ずかしいはずのに。
「それに、任務に関しても今与えられないだけだ。お前の経験は貴重だからな」
「分かった」
一頻り撫で終えると、ケルシーは考え込んだ。何も知らないフロストリーフを、このまま行かせていいのかと。
今のロドスは忙しく、手漉きになっている者は少ない。そのため、フロストリーフと一緒に遊んでもらう人員は居ない。それに加えて、フロストリーフ自身が素直に遊ぶとも思えない。
時間を使いかつ彼女自身も積極的に取り組めるもの、そういったものがないかを考え一つ閃いた。
「そうだフロストリーフ、読み書きを覚えてみないか?」
「読み書き? 確かに私はできないけど、読書をしたいとは思えない」
ケルシーの提案に、にべもなく断った。フロストリーフの即断に、苦笑い。
「読書以外にも必要だぞ。今後任務に就くなら報告書を書かねばならない」
「うへぇ...」
「それに指南書や戦術書などを読めるようになる。今までの経験と知識、それらを合わせれば新しいモノに気づけるかもしれない」
「おぉ!」
最初は嫌そうにしながらも、次に出されたものには食いついた。これにケルシーは苦笑いが出そうになるが、笑い事ではないことに気づく。そしてフロストリーフの意識改革は骨が折れることを確信する。
「読み書き、やってみるか?」
「やってみる...!」
最終確認として問いかけると、フロストリーフは両の手を胸の前で握りこぶしを作り頷いた。
「よし、教師はこっちで用意するから、暫く待っていてくれ」
「分かった」
-----
「ここがこうなって」
「ふむふむ」
「こうなるんです」
「なるほど」
現在フロストリーフは、図書室内にある一室で読み書きの勉強をしている。既に数時間経過しているが、フロストリーフの集中は切れずに続けられている。
そして教師役はなんとアーミヤである。本来多忙なはずなのだが、ケルシーが仕事を肩代わりして時間を捻出、そして歳が比較的近いということで選ばれた。二人が友になる可能性も考えて。
「...こうか!」
「そうです! フロストリーフさんは飲み込みが早いですね」
「アーミヤの指導が上手いからだ」
一区切りついたのか、フロストリーフは出来上がったノートを持ち上げて誇る。教師役となっていたアーミヤも、我ことのように喜んだ。
フロストリーフは長時間の慣れない作業に疲れたのか、首を回し肩を回し、深くイスに腰掛ける。今日の勉強は終わりなのか、アーミヤが教材や筆記具などを片付けていく。
「勉強は疲れる。でも新鮮だった」
「お疲れ様です、フロストリーフさん」
図書室内では飲食禁止なのだが、併設されているこの部屋ならばそれが許可されている。そのためアーミヤはコーヒーを淹れ、差し出した。
「ありがとう」
「どういたしまして」
部屋に緩やかな空気と時間が流れ始めた。カチカチという時計の音と共に静寂が訪れる。
今まで戦場に居り、こういった安心ができる静けさというのを体験したことがないフロストリーフだったが、こういうのも悪くないとそう思い始める。
「これで指南書が読める...」
「指南書、ですか?」
「うん、槍術のやつ。調べて見つけて気になってた」
「そう、ですか」
目を輝かせながら意気揚々と答えるフロストリーフに、アーミヤは顔を曇らせた。彼女は本当に戦闘のことにしか興味がないのかと。
顔を俯かせたアーミヤに、フロストリーフは首を傾げる。
「どうかした? アーミヤ」
「いえ...。フロストリーフさんは他に興味があるものはないんでしょうか」
アーミヤの問いに目が点になるフロストリーフ。暫し考え込むが。
「特にない」
思いつかなかったようで、両手でコーヒーを啜りながらそう答えた。
やはり思っていた通りだと、気落ちするアーミヤは何か彼女が興味を持つのものはないかと考え込む。
「そうですか...」
「でも、それは知らないだけかもしれない」
思考の海に潜り込みかけたアーミヤは、フロストリーフの一言で戻された。当のフロストリーフはどこか遠くを眺めるような目をしている。
「ケルシーに言われて、始めて図書室に入った。文字は何一つ読めなかったけど、いくつか手に取った本の表紙にちょっと惹かれたんだ」
「フロストリーフさん」
「知らないだけだったんだ、本当に...」
フロストリーフは今までの生活を振り返る、戦いに次ぐ戦い、心休まる日はなく戦い続けてきた。知識を得る機会もなく過ごしてきた、それがロドスに来て一変した。
そんな呆けたようなフロストリーフに、アーミヤは詰め寄った。
「これから知っていきましょう! フロストリーフさん!」
「あ、アーミヤ?」
アーミヤはフロストリーフの両手を包み込み暖めるように、陰鬱な空気を吹き飛ばすように声を張り上げて。
「フロストリーフさんは今は療養中なんです。時間はたくさんあります、だからこれから一杯楽しいこと面白いこと、知っていきましょう」
「アーミヤ、ありがとう...」
鼻息を荒くしてそう告げるアーミヤに、フロストリーフは少し気圧されるものの胸に暖かさを感じる。
「では早速行きましょう」
「えっ!?」
ささっと机にあったものを片付けると、アーミヤはフロストリーフの手を取った。
突然の行動に驚くが、されるがままになる。
「アーミヤ、一体何処に!?」
「まずはお買い物です! フロストリーフさんも女の子なんですからオシャレしましょう!」
「今すぐじゃなくても」
「思い立ったら直ぐ行動、です!」
「アーミヤぁ~~!!」
フロストリーフの悲鳴のような声がロドス内に木霊する。すれ違うスタッフも何事かと振り向くが、誰も止めようとはしなかった。何故なら二人の顔には笑顔が浮かんでいたのだから。
その後、クロージャの購買でフロストリーフは着せ替え人形にされましたとさ。
「も、もういいんだが...」
「ダメです! フロストリーフさんは素材がいいんですから。あ、これ可愛い」
「勘弁してくれぇ~...」
.
評価、お気に入りありがとうございます