信念あるお姉さん、でもたまにはリラックスも必要
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カツカツとDr.は手ぶらで通路を歩く。通路にある窓からは夕日が差し込み、ロドス基地を茜色に染めていた。
本日のロドス内の業務時間は終わっており、オペレーターやスタッフとすれ違うことなく目的の場所へと着く。
「ありがとうございました~~!」
「おっと」
Dr.は目的地の部屋から勢いよく出てきた人物を避ける。見た目から恐らく重装オペレーターのカーディだったのだろう、すれ違う瞬間に見えた顔に大きなガーゼが当てられていたのを見て取れた。
「ドクターごめんなさーい!」
「気をつけろよ~」
「は~い」
元気のよい返事にDr.は苦笑をする。これではまたカーディは彼女の世話になるだろうと。
Dr.は気を取り直して、当初の目的地である第三医務室へと入っていった。勿論ノックしてからだが。
「今度は誰だ」
「失礼するよガヴィル」
「おお、ドクターじゃないか」
就業時間は過ぎているためか、部屋の主のガヴィルは荒々しく問うた。しかし入室したのがDr.であることを認識すると、一転して快く迎え入れた。
そのことにDr.は、いつもの事ながら勿体無いなと思う。彼女ガヴィルは医療の腕もよく患者にも親身に接することができる人格者である。だがそれも元来の口調の荒さによって誤解を招いてしまっているのだから。
Dr.も幾度か治してみたらと提案するも、当の本人が変える気が無いようなのだ。
「待ってろ、今茶を用意する」
「すまないな」
ガヴィルは席を立つと、給湯室へと向かう。恐らく彼女が好んでいるドクダミ茶を用意しているのだろう。癖があり人を選ぶお茶だが、Dr.はこれが嫌いではなかった。
「ほら、いつものだが」
「ありがとう」
ドクダミ茶を受け取ったDr.はちびちびと飲み進める。嫌いではないだけでがっつり飲めるほどでなかったりする。対するガヴィルは、一気飲みすると追加で茶飲に淹れていた。
「さっきまでカーディが居たようだが」
「ああ、また擦り傷作ってきやがってな。少しお説教もしてやった」
一息ついたあとにカーディに関して聞いてみると、少し嫌そうに答えた。これはカーディのことが嫌いとかそういうことではなく、怪我をしてくること事態に対してである。
その証拠に退室していったカーディに気負いがなかったことを裏付けている。もっとも、カーディは医務室の世話になる頻度が高いのが問題なのだが。
「ガヴィルは何だかんだ言って面倒見いいよな」
「何だ突然に」
「ふとそう思っただけだ」
「ふーん」
Dr.の呟きに、ガヴィルは怪訝な顔をする。Dr.も聞かせるつもりはなかったため、取り繕う発言をするが当のガヴィルは満更でもない様子であった。
素直ではないと口角を上げてお茶を啜る。
「だー! ドクター早速頼むぞ!」
「はいはい」
「はいは一回でいい!」
Dr.に悟られたガヴィルは顔を赤くしてDr.を促した。
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「あ~...そこ、いいぞドクター...」
「やはりまだ硬いな」
ガヴィルは医務室内のベットにうつ伏せに寝転がっている。そしてDr.はベット脇に立って、ガヴィルの背を触っていた。
「あ゛、あ゛あ゛~...」
枕に顔を押し付けてくぐもりながらも気持ち良さそうな声を出す。
「大分っ、上手くなっ、たんじゃないか? マッサージ」
「お陰様でな」
そうDr.の用事とはガヴィルにマッサージすることであったのだ。
ガヴィルは諸々の事情があり、戦士から医師へと転向した稀有な人物であった。医師になってからは誰であろうと何処であろうと治療しに回っていた。そう源石の採掘場であっても。
それによりガヴィルは鉱石病へと罹患、だがそうであっても治療を止めることはなかった。ロドスに来た時には全身を鉱石病に侵されていたのであった。
「まだ硬いとはいえ、最初よりか遥かにマシになったな」
「...なってもらわないと困る」
「確かにな。...強くするぞ」
「ああ、かなり強くしていいぞ。ドクターは非力だからな」
「戦士だったお前と一緒にしないでくれ」
Dr.を軽口でからかう彼女が重病者であるとは思えない。それもそのはず彼女の症状は表面上に現れない、内臓系であるのだから。
ベットにうつ伏せになっているガヴィルに、Dr.は筋肉は勿論のこと色々調べてきた内臓へと効果があるツボを押していく。
「...っ! ...たぁ、...くっ」
流石のガヴィルも効いているのか、気持ちよさそうな声から苦痛を感じている声に変わっていった。
Dr.も心配なのか、一度手を止めガヴィルに確認を取る。
「止めるか、ガヴィル」
「いや...っ、いい続けてくれ。...効くやつなんだろう?」
荒い息と共に、続けろというガヴィルの意思を尊重し再度マッサージを開始する。
「あ゛っ...つぅ...。はぁはぁ...ぅお!?」
艶やかなガヴィルと、上気した肌、そして耐えるようにシーツを掴む手と健全なマッサージなのにどこかいけないことをしている気がしてきてしまうDr.であった。
「...っ、...! ....おぅっ!?」
「うぉ!?」
マッサージを続けていくと余程効く場所があったのか、海老反りになる。数秒すると、ぱたりとベットに倒れこみピクピクと痙攣し始める。
「大丈夫か...?」
「...ぁう。...だ、大丈夫だ、かなり効いた、からもう一度頼む...」
「無理はするなよ?」
顔を横にして、Dr.に続けろというガヴィルの顔は痛みで引き攣っていた。
Dr.は止めるべきとは思うものの、ここで止めてしまえば頑固なガヴィルは不機嫌になることは明白。そのためDr.はマッサージを続けるしかなかった。
「......うっ。...ぁぅ...お゛っ!?」
「おっとと」
再開し、先ほどの反応があった箇所から離れたところをマッサージしていく。そして再度、例の場所へとマッサージすると、大きな声を出した。
最初と比べると体が大きく反応しただけであった、のだがガヴィルの尻尾がDr.の腰へと巻きついたのであった。
Dr.は驚き、ガヴィルを見るがガヴィルは枕に顔を押し付けており気づいていない様子。どうやら無意識の行動だったようだ。
Dr.は腰に巻きつた尻尾が、痛みに耐えるために親にしがみつく子供のようで、振り解くことはなかった。
「うう...、はぅ! ...あ゛ー....」
その後はマッサージを続けていき、背から足、そして肩や腕など全身をくまなく行った。
終わる頃には、ガヴィルは息絶え絶えであり、Dr.に巻きついていた尻尾ははらりと解けた。
「終わったぞ」
「......ありがとう。また頼む」
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