徒然なる方舟のままに   作:玖神 米利

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 とある方のリクエストより、ペンギン急便の面子との日常より
 なんかエクシア・ソラの百合っぽくなった! 何故だ!? 


初めてのパイ (エクシア・ソラ)

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 某日日も上がらぬ時間帯、龍門都市内にあるビルの一室で複数人がなにやら準備をしていた。

 あるものは銃を、あるものは薄い剣を、あるものは大盾とハンマーと丁寧に整備された武器を準備していた。約一名、武器とは思えないマイクであったが。

 防具などは着けず、武器以外は簡単な戦闘用具などを纏め終えると最後の一人を待つことにする。

 

 五分ほど、思い思いの精神統一を計っていると目的の人物がやってきた。

 灰色のニット帽にサングラス、金のネックレスを幾つも身につけている。そして身長130cmと小柄な彼の名前は皇帝、ペンギン急便の社長のコウテイペンギンである。比喩でもなんでもなく、姿形がコウテイペンギンなのである。

 

 先ほどから準備していた彼女達はペンギン急便の社員であるテキサス達であった。本日は皇帝の号令により、カチコミをかけるために朝早くから集合していたのだ。

 皇帝が来たことにより、無言で全員立ち上がと皇帝は口を開いた。

 

「あ、今日のカチコミ止めるわ。じゃ」

 

 そう言うと皇帝は入ってきたドアから出て行った。

 

「...え?」

 

 部屋内にはなんとも言えない空気が流れた。

 

 

 

 

 

 

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 結局、早朝から行っていた準備は全て無駄になってしまった。しかも、本日の業務はカチコミだけにしていたため突然の休日となったのである。

 

「ほっっっんま社長さんのあの気まぐれなんやねん!」

 

「諦めろ、いつものことだ」

 

 うがーと吠え、机に突っ伏すクロワッサンに、テキサスは棒状のチョコ菓子をくわえる。口ぶりから、これが初めてでないことが伺える。

 クロワッサンは虚ろな目で、半開きの口から魂が抜ける様を幻視させる表情をしているが、彼女の特有のノリによってそう見せているだけだったりする。

 

「ゆーてもなぁ...ほんま勘弁してほしいわ」

 

「それは同感だ」

 

 特にやることもないと、二人はソファーに身を任せのんべんだらりとし始めた。

 すると二人の耳に、かちゃかちゃという器具がぶつかり合う音が聞こえてきた。

 

「エクシアとソラは?」

 

「キッチン」

 

 音の正体が気になりクロワッサン、テキサスが一単語という簡潔に伝える。クロワッサンが首だけを回して背後を見ると、エクシアとソラがキッチンでワイワイと何やら準備していた。

 

「何やっとんやあの二人は」

 

「カチコミ戦勝記念のパイを作るそうだ」

 

「はぃ? カチコミなんぞ始めてやないやろ、何で今回に限って...」

 

「アップルパイ食べる口実が欲しいだけだろう」

 

「ほんま好きやなぁ」

 

 エクシアのパイ好きに呆れる二人であった。

 

 

 

 

「只今からアップルパイを作ります!」

 

「いえ~い! パチパチ~」

 

 ドヤ顔でそう宣言するエクシアの前には、調理器具一式とパイ作りに必要な材料が全て揃っていた。側にいるソラもノリノリでエクシアに乗っかる。

 二人ともエプロンを着けているおり、エクシアが先生役でソラは助手として作っていくようであった。

 

「いつもはパイ生地から作るんだけど、今回は前に作り置きしておいたものを使うね」

 

「分かりました先生! パイ生地って作るの面倒なんですか?」

 

「いい質問です。ズバリ、面倒です。なので作るときは多目に作っておきましょ~」

 

「了解であります!」

 

 ソラが形だけのなんちゃって敬礼をし、エクシアは大仰に頷いてみせる。

 

「では早速始めていこー」

 

「おー」

 

 エクシアは初めにリンゴを手に取ると、包丁を使い綺麗に皮を剥き始めた。ソラもそれに習うようにリンゴの皮を剥いていくが、皮に果肉を付けてしまいリンゴ本体も不恰好になってしまっている。

 悪戦苦闘するソラに、エクシアが心配そうに声をかけた。

 

「ソラは包丁持つの始めて?」

 

「はい...。アイドルだからって持たせて貰えなかったんです」

 

 ソラがなんとか一個向いている間に、エクシアは既に三個剥き終わっていた。シュンとするソラに、エクシアは苦笑しつつ励ます。

 

「それは仕方ないね~。でも今回はいいの?」

 

「エクシア先輩、黙ってれば犯罪じゃないんですよ?」

 

「ソラも大分染まってきたね~」

 

 ペンギン急便に来た頃と比べると、見違えるほどに逞しくなった後輩にエクシアは嬉しくなった。これらなら今回なくなったカチコミでも大丈夫だと思えるほどに。

 

「じゃあいい機会だから包丁の扱いを覚えちゃおうか」

 

「よろしくお願いします先生!」

 

 エクシアは包丁を置くと、ソラの後ろに回りこんで手を重ねた。

 

「包丁はこう持って、リンゴはこう」

 

 優しくソラの手を支えるようにして、指導していく。密着する二人だが、エクシアは指導にソラはリンゴを剥く事に集中している。

 

「ゆっくりでいいから、手を切らないようにね」

 

「分かりました...!」

 

 ゆっくり、ゆっくりと丁寧に剥いていく。先ほど自身が剥くよりも時間がかかっているが、エクシアの指導によりソラは綺麗に皮を剥くことに成功した。

 

「で、できました! エクシア先輩!!」

 

 綺麗に剥けたことに感動したのか、ソラは目を輝かせて後ろにいるエクシアへと振り向いた。

 

「良かったね。二度目にしては凄い上手だよ」

 

 無邪気なソラに、エクシアは優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 そんな二人を眺めていたクロワッサンは、変な顔をしていた。

 

「何しとるんやあの二人」

 

「パイ作りだろう」

 

「パイというか、タワー建てとるわ」

 

「...何を言ってるんだお前は?」

 

 

 

 

 

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「はーい、おまたせしました。出来立てほやほやのアップルパイだよ」

 

「私も頑張って作りました!」

 

 それから一時間もしないうちに、クロワッサンとテキサスの元にエクシアとソラがアップルパイをそれぞれ持って来た。

 エクシアが持っているパイはいつも通り形が整っているが、ソラが手にしているパイは少し形が崩れていた。

 

「えへへ、ちょっと失敗してしまいました...」

 

 申し訳なさそうにソラが謝る。クロワッサンとテキサスが顔を見合わせると、躊躇なくソラのアップルパイを所望した。

 二人の希望に驚くソラであったが、破顔するとパイを切り分け二人に差し出した。

 

「うん、美味いな」

 

「おいしーわー。ソラは料理の才能あるんとちゃう?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 美味い美味いと食べ進める二人に、ソラははにかんだ。エクシアも料理の弟子が褒められて嬉しそうである。だがすこし悪いことを思いついたのか、一切れパイを切り取り、手に持った。

 

「なんだよー二人して、私のパイはいらないの?」

 

 態とらしく拗ね始めた。クロワッサンはなんやこいつと胡乱な目を向け、テキサスは無視した。

 ただソラは気づいていないようで。

 

「私はエクシア先輩のパイ食べたいです!」

 

 慌てたようにエクシアが持っているパイに食いついた。

 

「あら」

 

「...」

 

「美味しいです!」

 

 ペロリと一口で、それこそエクシアの指ごと食べてしまった。驚くエクシアに、何も見ていないと無言を貫くテキサス、ソラは満面の笑みであった。

 

「ほんま、何しとんねん...」

 

 クロワッサンだけが、ジト目を向けているのであった。追加でパイを一口食べるが、クロワッサンにはさっきよりも甘く感じるのであった。

 

 

 

 

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