徒然なる方舟のままに   作:玖神 米利

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 アンジェリーナ再挑戦、イチャイチャもの
 クロスタータ:イタリアの伝統お菓子、シラクーザという都市がイタリアに実際にあるそうなのでそこからとりました


恋は無重力のハリケーン (アンジェリーナ)

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 ロドスアイランドに所属しているDr.には最近新しい悩み事ができた。

 別にレユニオンの新兵器だとかロドス内の問題児達がやらかしたとかそういう問題事ではなく、極々個人的なことであった。

 ただ、Dr.は悩み事を思い返すと始まりは最近などではなく、数ヶ月も前からであった。

 執務室で頭を抱えていると、ドアがノックされた。

 

「ドクター失礼します。今お時間ありますか?」

 

「ああ構わないよ」

 

 入室を促すと入ってきたのはアンジェリーナであった。

 

「どうした?」

 

「んふふ、ドクターに食べて欲しくて故郷のお菓子を作ってみたの」

 

 アンジェリーナはスキップしながらDr.に近づき、手持ったお盆を差し出した。お盆の上には大きなお皿に何やらタルトのようなものと小皿に食器、そして湯気を立たせているコーヒーが乗っていた。

 

「時間もちょうどいいし、貰おうかな」

 

「どうぞ召し上がれ!」

 

 時刻は十五時過ぎと、一息入れるのに丁度良い時間。そのためDr.はありがたく頂くことにした。

 アンジェリーナはお盆を奥と、持ってきていたナイフでさくりさくりとタルトを切り分けていった。切り口からは加熱されてトロリと溶け出したチョコレートが垂れ、香ばしいアーモンドの香りと共にDr.の鼻腔をくすぐった。

 

「これはなんていうタルトなんだい?」

 

「これはねクロスタータっていうお菓子なの。私の故郷のシラクーザだとおふくろの味って呼ばれてるんだ」

 

「そうか。チョコにコーヒーとはうってつけだな」

 

「でしょでしょ?」

 

 談笑していると切り分け終わり、それをアンジェリーナが小皿に分けDr.へと渡した。

 

「はいどうぞ」

 

「ありがとう」

 

 受け取ったDr.は、待ちきれないとばかりにフォークでクロスタータを口に運んだ。

 

「おお、美味しい。...うん、コーヒーにもマッチしてて食が進むな」

 

「ふふ、お口に合って何より」

 

 パクパクと食べ進めるDr.に、アンジェリーナは嬉しそうに微笑んだ。

 一切れ目を直ぐに食べ終えると二切れ目も食べようと、クロスタータを取ろうとするがアンジェリーナに止められた。

 

「ドクター、私がやるから、ね?」

 

「そうか? すまないな」

 

「いいの、好きでやるんだから」

 

 アンジェリーナはDr.の小皿へクロスタータを取り分けていった。それも上機嫌で、それこそ鼻歌が聞こえてきそうなほどに。

 Dr.は何がそこまで嬉しいのか首を捻るのみであったが。

 

「はいどうぞ」

 

「ありがとう、ってどうしたんだ? そんなにじっと見つめてきて」

 

 アンジェリーナは小皿を手渡すと、Dr.の顔を穴が開くほどに見つめ始めた。一体全体どうしたのか、Dr.の頭の中はクエスチョンマークで一杯であった。

 

「ドクター...、チョコ付いてるよ?」

 

「え!? 一体どこに...っ!?」

 

 ぴちゃり、とDr.の頬に生暖かいものが触れた。驚くDr.だが、視界には亜麻色の髪が一杯に広がっていた。

 

「...ここ」

 

 妖美に微笑むアンジェリーナは自身の右の頬を指差した。固まっていたDr.は自分が何をされたのか漸く理解すると、顔を茹で蛸のように真っ赤に染めた。

 

「そ、そうか...。ありがとう?」

 

 どもるDr.にアンジェリーナはクスクスと笑う。

 

「それはそうと! あまりこういうことはしないほうがいい...」

 

「大丈夫だよ。ドクターにしかしないから」

 

「そういう意味じゃない...」

 

 その後、食べるのを再開したDr.だったが、先ほどのこととニコニコと見つめてくるアンジェリーナにクロスタータの味は分からなかった。

 

 

 

 

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「というわけなんだ」

 

 とある一室で項垂れるDr.は目の前の人物、ケルシーにことの顛末を話した。Dr.の悩みとはアンジェリーナのスキンシップのことであり、少しずつだが遠慮がなくなってきていることに対してであった。

 聞かされたケルシーは、ブラックコーヒーを飲みながらも苦虫を噛み潰したような渋い顔をしていた。

 

「それで、ドクターはどうしたいんだ?」

 

 砂糖を入れていないはずのブラックコーヒーが甘く感じる話に、ケルシーはため息をついた。

 

「どう、と言われてもな...」

 

 腕を組み、考え込み始めるDr.にケルシーはやや怪訝な顔をした。Dr.の顔は平常心そのもので、ケルシーが想像してた回答が返ってこないようであったからだ。

 

「彼女、アンジェリーナは魅力的な女性だ。周りはよく見ているから気配りができるし、料理もできる、そして器量もいい。だからあんなことをしているといつか襲われてしまわないかと...」

 

「はああぁぁぁ~~?」

 

「ど、どうしたケルシー。したらいけない顔になってるぞ?」

 

 あまりにもあんまりな回答に、ケルシーの顔が歪んだ。本気で言っているのかこの男は、とDr.は見るがどうも何も分かっていない様子。

 ケルシーも分かってはいる、記憶がなくなり現在ロドスがおかれている状況で愛や恋にうつつを抜かしている暇なぞ無い事は。だがそれでもと、同じ女であるケルシーは思ってしまう。

 

「くたばれこの馬鹿」

 

「何故だ!?」

 

 

 

 

 

 

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