徒然なる方舟のままに   作:玖神 米利

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 とある方のリクエストから、サイレンスより
 サイレンスが納豆食べてるとは思わないけど、書きたかったから書いた、後悔はしていない
 あとイメージとして、サリアとの仲違い解消後としています。

 大雨覆(オオアマオオイ)とは、鳥類の羽の部位の一つ、胴体側中央付近の羽


大雨覆という贈り物 (サイレンス)

.

 

 

 

 ロドス食堂内の一角で、サイレンスは食事を摂っていた。といっても食事に集中しているわけではないようで、心此処に在らずといった様子。

 何か考え事をしているのか、普段は食べない納豆をグルグル、グルグルと手に持った箸でかき混ぜ回す。既にかき回しすぎてあわ立つのを超え、ひき割りへと変貌していた。

 

「...はぁ」

 

 漸く納豆をかき回せ過ぎたことに気づいたサイレンスは、手を止めると醤油を一滴垂らして食べ始めた。

 先ほども挙げたとおり、サイレンスは普段洋食を好んでいる。そのため和食は口にしたことはあまりなく、今回の白米、味噌汁、塩鮭、おひたし、納豆という純和食は始めてなのである。

 バランスよく順繰りに食べ進めて行き、お皿を空にしていく。最後に味噌汁を一飲みした。

 

「ほっ...」

 

 食べ慣れていないはずなのに、どこか心が落ち着くようなそんな心地にしてくれた。

 

「ごちそうさま」

 

 綺麗に食べ終えた食器を重ねて、和食に合わせて持って来た緑茶を啜る。両の手で湯のみを持ちながら背もたれに寄りかかり、天井を眺める。

 そして、落ち着いた。落ち着いてしまった。食事中に考えていたことが再び脳裏に蘇ったのであった。

 

 -ゴンッ! 

 

 サイレンスは勢いよくテーブルへと額をぶつけた。

 食堂にいたスタッフやオペレーター達も、何事かと振り向く。机に突っ伏すサイレンスを確認すると、どうしたのものかとザワつくが、一人のオペレーターが足を向けたことによって一先ずの落ち着きを見せた。

 

「どうかしたのかね、お嬢さん」

 

「ヘラグさん...」

 

 サイレンスの目の前に座ったのは、老兵のヘラグであった。声を掛けられたサイレンスは、顔を上げるが顎で頭を支えるようにしていた。ちなみに眼鏡は割れてはいない。

 

「随分と疲弊しているようだが...」

 

 ヘラグの気遣わしげな声音に、サイレンスは考え込む。今、自身が持て余している悩み事を言うべきか否か。

 

「...」

 

「悩み事かね? 無理にとは言わないが、話す事で頭の中の整理ができるとも思うが。どうだね?」

 

 サイレンスは上体を起こすと、口を開いた。

 

「...実は」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、なるほどなるほど。つまり何時もお世話になっているドクターに、何かお礼をしたいということかね」

 

「そう、なるのかしら...?」

 

 一通り話し終え、そう結論付けると二人は緑茶を啜る。言葉にして出したためか、サイレンスの顔色は幾分かよくなっていた。

 

「ドクターなら気にしないとは思うが、それでは君の気がすまないのだろう?」

 

「ええ、そう。そうね」

 

「となるとだ、一番手っ取り早いのは贈り物だろう」

 

「贈り物...」

 

「そうだなぁ。貰ってその人だと分かるもの」

 

「分かるもの...あ!」

 

 サイレンスはヘラグの一言一言に頷くと、何か閃いたのかガタリとイスを鳴らしながら立ち上がった。

 

「おや」

 

「ありがとうございます! ヘラグさん」

 

 そういうとサイレンスは小走りで食堂から出て行った。残されたヘラグは、自身の残りの緑茶を啜る。

 

「若いとは、いいものだな」

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 食堂から出たサイレンスが向かう先はDr.がいるであろう執務室であった。道中、自身の腕を翼にしたさいに、手ごろな大きさのものを一枚毟りとっていた。

 早歩きしながら毟りとった羽を見つめる。サイレンスにとって、自分の羽を贈るのには特別な意味がある。『あなたを信頼しています』、そう思いを込めて。

 

 サイレンスにとってDr.は頼れる人物である。ロドスに保護されるときも積極的に動き、オペレーターとなったときも医療班にも所属するときにも手を尽くしてくれた。

 そして何より、サリアとの関係修復を手助けしてくれたのが一番大きかった。ライン生命から抜け出す前後に悶着があったのだが、今はそれがない。Dr.のお陰である。

 

 手に持った羽の軸を持ちくるくると回すサイレンス。それを眺めていると、向かいから声を掛けられた。

 

「サイレンスじゃないか」

 

「ドクター!?」

 

 Dr.であった。思わぬ邂逅にサイレンスは驚き、思わず手に持っていた羽を背後に隠した。その間にもドンドン近づいてくるDr.に、サイレンスは気恥ずかしさから目を顔を合わせられない。

 

「今から食堂に行くんだが、サイレンスは?」

 

「え、えっと...」

 

「?」

 

 何も考えず勢いで行動してしまったので、咄嗟に返事ができずどもってしまう。サイレンスの様子にDr.は不思議に思う。

 

「どこか体調でも悪いのか...?」

 

 そう言いながら顔を近づけるDr.に、サイレンスは耐え切れなくなり。

 

「これ! あげるからっ」

 

 本当なら、ありがとうの一言でも伝えたかったのだが、手に持っていた羽をDr.に押し付けるとサイレンスはDr.の横を通り過ぎて去っていってしまう。

 

「あ、サイレンス!? ...行っちゃったよ」

 

 サイレンスを引きとめようと振り返るが、その背は既に遠く出していていた手は宙を泳ぐ。

 

「何だったんだ...。それにしても羽か。色合いからするとサイレンスのか?」

 

 サイレンスから貰った(?)羽をまじまじと見つめるDr.は、サイレンスの髪と同色でありながら綺麗なグラデーションに目を奪われる。

 いつまで眺めていたのか、Dr.は自身に近づいてくる足音に気づく。

 

「どうしたんだドクター」

 

「サリアか。いやサイレンスから羽を貰ったんだがな...ってなんだその顔は」

 

 Dr.の側に寄ったのはサリアだった。最初は不思議そうにしていたサリアであったが、Dr.の言葉を聞いたとたんににやついた顔つきへと変わった。

 

「そうか、サイレンスもドクターに渡したか」

 

「も? 何かこの羽に意味があるのか?」

 

「実はサイレンスはな――――

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

「はぁ...」

 

 Dr.に羽を渡し(押し付け)た次の日、サイレンスはため息をつきながら通路を歩いていた。ため息の原因はDr.に何も言わずに羽を贈ったことであった。せめて何か一言だけでも副えていれば、と今更ながらに後悔しているのである。

 

「やっぱり、ちゃんと言ったほうが...」

 

 ただ改めてとなると、恥ずかしさは倍増してしまいどうにも踏ん切りが付かないでいた。もういっそのこと、このまま何も言わなままでいいのではとさえ思い始める。

 そう悩んでいるうちに、サイレンスを呼び声が通路へと響いた。

 

「サイレンスー!」

 

「ど、ドクター!? あ、いや、ちょ...!」

 

 今一番会いたくない人物筆頭、Dr.であった。サイレンスの名前を呼びながら駆け寄ってくるので逃げる訳にもいかず、サイレンスはDr.に捕まった。

 

「ようやく、見つけたっ」

 

「大丈夫なの。そんなに息を切らして...」

 

 サイレンスを探してロドス内を走り回ったのか、Dr.は肩で息をしていた。整えるために暫く時間を要したが、息を整え終えるとDr.はサイレンスの手を両手で包み込んだ。

 

「サイレンス、ありがとう!」

 

「え、え?」

 

 突然のことに目が点になるサイレンス。手を取られるのもお礼を言われるのも心当たりがないのである。だがDr.は喜色満面といった様子。

 

「この羽、信頼の証なんだろ?」

 

「えっ!? な、なんでそのことを...!」

 

 Dr.は、片手でジャケットにつけていた羽飾りを手に取りサイレンスに見せた。Dr.はサリアから話を聞いた後、嬉しさのあまり直ぐにアクセサリーとして羽を改造したのだった。

 

「それが凄く嬉しくてさ」

 

「うっ、うん...。今までお世話になったし、これからもそうなるだろうなって思って...」

 

「そっか、これからもよろしく。そしてありがとう、サイレンス」

 

「...どう、いたしまして」

 

 Dr.の笑顔に、サイレンスははにかみながらそう返した。

 

 

 

 

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 評価・感想・お気に入り・誤字報告ありがとうございます。

 続きものでもここの短編集にあげていくことにしました。アンケートありがとうございました。

 活動報告にリクエスト箱ありますので、よろしければリクエストしていってください。
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