徒然なる方舟のままに   作:玖神 米利

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 とある方のリクエストからハイビスカスがフォリニック、マッターホルン、グム、クーリエに健康料理腕の辛口評価より

 料理系は書くの辛いよ...。


第一回ダークマター批評会 (ハイビスカス・フォリニック・マッターホルン・グム・クーリエ・カシャ)

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「これより!第一回ダークマター批評会を開催します!」

 

 

 ロドス移動基地にある撮影スタジオ内にて、カシャがマイク片手に高らかに宣言した。スタジオ内には撮影機材と共に様々なスタッフがいるのだが歓声は一切上がらず、カシャの声だけが虚しく響いた。

 

 

「この批評会の目的は、無自覚な料理下手な人に自覚してもらおうという企画です!おっと、批判なんてしないでくださいよ?方々から承諾を得たものですので!」

 

 

 スタジオ内の空気を無視してカシャは、本企画の趣旨を伝える。

 そしてカシャが左手でカメラを誘導してやると、そこには無表情もしくは苦笑いをしている面々がおり三角名札には審査員と書かれてあった。ある意味、被害者とも言える。

 

 

「審査員の方々をご紹介させていただきます。一人目は医療部門からこの方、フォリニックさんです!」

「どうも」

「医療部門に従事しているフォリニックさんには見た目の華やかさや味よりも、栄養学的観点からの評価を期待したいです」

 

 

「二人目はカランド貿易からマッターホルンさんです」

「ど、どうも」

「マッターホルンさんはあのお貴族様であるシルバーアッシュさんの舌を満足させているとのことです。その味覚には定評があることでしょう!」

 

 

「三人目はウルサス学生自治団からグムさんです!」

「えへへー、グムだよー。よろしくね~」

「グムさんは若いながらもロドスの厨房に入ることを許された才女なのです!常日頃からお世話になっている方も多く、その腕前を疑う人はいないでしょう」

 

 

「四人目はまたしてもカランド貿易からクーリエさんです」

「お手柔らかにお願いします」

「何故クーリエさんが。とお思いの方もいらっしゃると思いますが、クーリエさんは各地に赴くことが多く地元料理なども食べ慣れていることでしょう。もしかしたらゲテモノなんかも?期待大です!」

 

 

「以上四名の方に審査員をしていただきます!なお!今回の出演者には料理批評会と伝えておりますのでお気をつけください!」」

 

 

 カシャの紹介に、スタッフ達から疎らな拍手が送られた。それでいいのかロドスの上役はと、審査員達は微妙な表情で迎えた。

 そんな空気の中で笑顔のカシャは気にもせず、審査員とは逆の側にある今回のために設置されたキッチンの側にある垂れ幕へ手で指し示した。

 

 

「では、栄えある第一回ゲストのご登場です!」

 

 

 カシャの言葉と共に、BGMが流れ垂れ幕が引かれた。演出の白煙から出てきたのは、菫色の頭髪に二本の角が飛び出ているハイビスカスであった。

 微笑みながらステージ中央へとやってくるハイビスカスに、カシャが言っていたように本来の目的を知らされていないことが窺える。

 

 

「ハイビスカスさん、本企画への参加ありがとうございます」

「いえ、私こそ参加させてもらいありがとうございます。腕によりをかけて作っちゃいますよ!」

 

 

 ハイビスカスは細腕で力瘤を作る動作をとるほど気合十分であった。ただ、ハイビスカスの料理を知っている審査員の表情は優れないどころか、顔を青くしていた。

 

 

「では、第一回ということもあるので指定する料理はありません!こちらで用意した食材を自由に使って、調理してください」

「わぁ...!分かりました!」

 

 

 舞台外から大きなワゴンが二台、多種多様な食材を乗せてやってきた。普段使えないような高級食材もあり、バイビスカスは目を輝かせる。ただワゴンを押してきたスタッフは、これから目の前の食材が無残な姿になるのを止めらない物悲しさを感じていた。

 

 

「時間制限は、スタジオを使用できる時間もありますので一時間とさせていただきます。ではスタート!」

 

 

 審査員とスタッフ達の不安を他所にカシャの宣言によって、銅鑼が高らかに鳴り響いた。

 

 

 

 

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「さぁ始まりました第一回料理批評会!ハイビスカスさんは一体何を作るのでしょうか!」

 

「最初に手に取ったのは、小麦粉!篩にかけてた後にバターを加えて切る様に混ぜていますね。現段階で何を作るか分かりますか、マッターホルンさん」

「そうですね、恐らくですがパイ生地を作っているのだと思います」

「ほうほう、パイ生地ですか」

「ただ...。バターの量が些か少ないような気がしますね。このままだと生地が固くなってしまうかと...」

「あとパイ生地は寝かせる必要があります。本来は一晩、短くても一時間は欲しいところでしょう」

「マッターホルンさん、それはつまり...」

「微妙に時間が足りませんね」

「Oh...」

 

 

 

「何やら先行きが不穏ですが、ハイビスカスさんは冷蔵庫に生地を入れて寝かせているようです。待ち時間が出来たわけですが、ハイビスカスさんは何やら乾物を幾つか手にとってますね」

「シャクヤク、ソウジュツ、ショウキョウ...」

「フォリニックさんはハイビスカスさんが手に取っている物が何かご存知なんでしょうか」

「...全部、漢方薬に使うものよ」

「え゛!?」

「料理に使うものではないわ。そもそもなんで食材としてあそこにあるの...!」

「あ、あたしにも何であるかまでは...。スタッフー!!」

 

 

 

「えー、どうやらスタッフが手当たり次第に食材を集めたみたいです。それでハイビスカスさんは食材を切り分けているようですが、先ほどの漢方薬とタマネギに加えてあの白い四角の物体は...?」

「あれは豆腐だね。極東発祥の大豆を加工した食品だよ」

「なるほど、大豆の加工品なんですねグムさん」

「ただ、パイ生地と合わせて使うことは滅多にないかな?」

「そうなんですか?」

「うん、豆腐は水分を多く含むからパイ生地と相性はよくないかも。グムは豆腐より高野豆腐か厚揚げのが相性がいいと思うの」

「それは、かなりまずいのでは...」

「んー、豆腐自体は癖が一切ないから一重にダメとは言い切れないかな?」

 

 

 

「い、色々ありましたが、ハイビスカスさんは食材を炒めたあと卵と牛乳と生クリームを混ぜ合わせていますね。ここは別段おかしいところはないように見受けられますが...どうでしょうか、険しい顔をしているクーリエさん」

「あの...調味料はどこですか?」

「えーと、見当たりませんね」

「恐らくアパレイユを作っているのだと思います。先ほどのパイ生地と合わせるなら、キッシュロレーヌが出来上がるでしょう」

「ふむふむ」

「ほとんど味のない、という枕詞つきますが」

「味のない、ですか?」

「ここまでまったくと言って良いほど調味料が使われていませんので...」

 

 

 

「...なんだか完成する前から色んな意味でお腹一杯です。がハイビスカスさんはパイ生地を型に、事前に温めておいたオーブンで焼き上げましたね。

 焼きあがった型に、チーズを加えたアパレイユを注ぎ入れてオーブンに入れましたね。

 

 チン、という音ともに出来上がったキッシュロレーヌですが。まって!まってください!?なん、なんで灰色になってるんです!?入れる前まではクリーム色だったじゃないですか!!」

「完成です!健康第一キッシュロレーヌです!」

「......はい」

 

 

 

 

 

 

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 調理時間の終わりを告げる銅鑼が鳴らされ、焦げたのかと見間違う一品が審査員の前に一切れずつ置かれた。スタジオ内が重い空気に包まれるなか、焼きたてのキッシュロレーヌを凝視する一同。

 司会役のカシャは、気が進まなくとも無慈悲な宣告をしなければならず冷や汗を垂らしていた。

 

 

「...それでは審査員の皆様、実食をお願いいたします。評価は一人十点満点で、お手元にある札を掲げてください」

「自信作なので、忌避のない意見をお願いします!」

 

 

 にこやかな笑顔のハイビスカスに審査員は、誰が最初に食べるのかと視線を交わす。

 沈黙が支配されて数秒後、最初に動いたのはクーリエであった。点数が書かれた札を勢いよく、卓上へと叩き付けたのだ。

 

 

「ゼロ点です!!」

「「ええ!?」」

 

 

 初っ端からゼロ点評価、しかもまだ食べてさえいないのにも関わらずなのに。これにはカシャもハイビスカスも驚き声を上げた。

 対するクーリエは、何かに耐えるように顔を俯かせており声を搾り出しながら発する。

 

 

「料理はですね...!最初に見た目なんですっ!なんですかこの真っ黒な物体は...!そしてパイ生地が崩れて中身が飛び出している、盛り付けもなってませんっ!...それになんで無臭なんですか、匂いも食欲を刺激する大切なものなのに完全な無臭ッ!味以前の問題、故にゼロ点です」

 

 

 クーリエは全てを言い切ると、卓上に突っ伏してしまい動かなくなってしまった。

 最早動く気配のないクーリエに、カシャはどう進行していくのか悩み始める。企画自体、止めてしまったほうがいいのではと思い始めていると。

 

 

「グム、食べます!」

 

 

 一口分のキッシュロレーヌをフォークで突き刺したグムが言い放った。その目は覚悟が決まった目、などではなくただのヤケクソのやけっぱちなグルグル目をしていた。

 皆が呆気にとられている中、グムは口一杯に頬張った。一回、二回、三回と咀嚼するが、四回目で動きが止まった。

 グムが動かなくなって一分ほど、カシャが声をかけながら肩を揺すると

 

 

「ぐ、グムさん...?グムさん!?」

 

 

 グムがなんの抵抗もなく後ろへと、イスごと大きな音を立てて倒れてしまった。

 

 

「た、担架ー!!」

 

 

 

 

 

 

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「グムさんですが、気絶しただけで命の別状はありません。では引き続きやっていきたいと思います」

 

 

 撮影を始めた当初の元気はなく、事務的になってきているカシャに残された二人の審査員は冷や汗を流す。残された二人、フォリニックとマッターホルンが視線を交わすとフォリニックが一つ頷いた。

 フォリニックがフォークを手に取り、キッシュロレーヌを半口分口へ運んだ。フォリニックが咀嚼し始めると、眉間にどんどん皺が刻まれていった。言い表すなら、とても苦い青汁をさらに濃縮されたものを飲んだときのような顔であった。

 

 

「...んっ、ふぅ」

 

 

 何とか飲み込むと、コップ一杯の水を流し込んだ。口の中の苦さが和らいだのか眉間の皺は幾分薄くなり、フォリニックは点数が書かれた札を手に取った。

 

 

「一点、ですか」

 

 

 意外と言えばいいのか、一点だけとはいえ点数がついたことにカシャは驚いた。

 

 

「ええ、多種多様な野菜に必要かどうかは分かりませんが漢方が入っているため栄養価が高い故の一点です」

「それ以外は?」

「...」

 

 

 評価するべきところがあったからこその一点であるとフォリニックは言外に語った。逆にいえばそれ以外は...。

 これ以上語ることはないと、口を噤んだフォリニック。審査員最後の一人となったマッターホルンは、覚悟を決めた。

 

 

「ではまず最初に、この色ですね。使われた食材を見ても何故このような真っ黒になるのか理解できません」

「本来ならありえないと?」

「ええ、それに焦げ臭さもないので不思議ですね。そもそも無臭なのも不思議なのですが...」

 

 

 どうやったらこうなるのかと、首をしきりに傾げるマッターホルン。そのままフォークでキッシュロレーヌ(?)を切り分けるが、パイ生地は硬く中身のもボロボロに崩れてしまう。

 

 

「パイ生地は硬いです、いえ一部生焼けですね...。本来のキッシュロレーヌでは中身がボロボロになることもないのですが」

 

 

 不安しかないキッシュロレーヌを四分の一口分、口へと入れる。

 

 

「ンウフッ」

 

 

 むせた。

 

 

「...失礼しました。ふぅ...、口に入れた瞬間に苦味、次にエグミ、最後は口の中の水分を全てとられましたね。食感も硬いのか柔らかいのか、いえ同時に来てハッキリ言って気持ち悪いですね」

 

 

 マッターホルンもフォリニック同様、コップの水で洗い流すかのように飲み干した。

 もう終わりたいとカシャが思うほどに色々と酷い結果になった今回の企画、どこか上の空なマッターホルンに問いかけた。

 

 

「...マッターホルンさん、点数はいくつでしょうか」

「申し訳ありません、ゼロ点です。これは、料理ではありません」

 

 

 分かっていたことだが、辛口な評価であった。

 

 

「では、ハイビスカスさん作キッシュロレーヌの合計得点は一点ということなりました。ハイビスカスさん、今回の結果を受けてどう思われましたか?」

「まだまだ栄養価が低いみたいなので、もっともっと色んな食材を使っていきたいと思います!」

 

「「「違う、そうじゃない!!」」」

 

 

 

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