徒然なる方舟のままに   作:玖神 米利

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 エイプリルがドクターを癒すお話
 リハビリとして、私のアークナイツ二次創作の原点の膝枕を少々。

 レモンバームの花言葉は「思いやり」、ハーブティーにするとイライラや不安、緊張をやわらげ心安らかな気分にしてくれるそうです。







模様替えはレモンバームと共に (エイプリル)

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「ふんふふ~ん」

 

 

 早朝の艦内にてエイプリルは、お気に入りのポータブルミュージックプレイヤーで、これまたお気に入りの音楽を聴きながらドクターの執務室へと向かっていた。

 エイプリルは一ヶ月程前にドクターの秘書係に任命された。任命当初は嬉しさ半分、煩わしさ半分であったが、とある件から嬉々として秘書の仕事を励むようになった。それこそ鼻歌まで歌うまでに。

 

 

「おはよードクタ~」

 

 

 執務室へと着いたエイプリルは、元気に挨拶をしながら入室する。

 中では既にドクターが書類を処理しており、エイプリルは眉をひそめた。

 

 

「ん?ああ、おはようエイプリル」

 

 

 ドクターは挨拶を返すものの、既に始めていた書類仕事を止めることはしなかった。

 一体何時から始めていたのか、秘書を始めた頃から変わらないドクターの姿にエイプリルはため息をつくしかなかった。

 ドクターに呆れつつも、エイプリルは扉脇に置いてあったダンボールへと手を伸ばした。

 

 

「それで、ドクター。何か手伝うことある?」

「いや…、現状ないよ」

「じゃあ今日もやっちゃうからね」

 

 

 二人は会話しつつも顔を合わせず手の動きも止めない姿に、短くない期間同様のやり取りがあったことが伺える。そして、エイプリルがダンボールの中から取り出したのは満開の桜が描かれた絵画であった。

 エイプリルは絵画を様々な方向から見て一つ頷くと、ドクターが座っている位置からギリギリ視界の範囲に入る壁へと掛けた。

 そう、エイプリルが嬉々として秘書の仕事を励むようになったのは、執務室の模様替えを許可されたからであった。

 

 

 

 

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 元々エイプリルは自身の生活環境に関して拘りを持っていた。鉱石病になってからロドスにやってくるまでの間は悲惨であり、衣食住揃ったロドスに来てからは拘りが加速した。

 そのためエイプリルが始めて執務室に入ったときは、飾り気がないを通り越して無機質な室内に絶句したものだった。

 秘書の仕事はドクターの補佐が主であり、そこそこ自由な時間があった。その時間を利用して執務室を模様替えしているのであった。

 当初エイプリルは、観葉植物等の運び込める程度のインテリアで模様替えをしていた。本当に些細なものだったのだが、ドクターの健康、特に精神面に対して良好な結果が得られた。そのため医療部門から本格的な模様替えの依頼されたという経緯があった。

 

 

「これで大体出来たかな?」

 

 

 積まれていたダンボールの中身を全て出し終えたエイプリルは、執務室内を見渡す。

 今回の模様替えのために、家具の配置や配色などに気を使った執務室は生まれ変わった。無機質だった室内は、リラックス効果が見込めるグリーンを基調として明るさを与えてくれるホワイト、アクセントしてシックなブラウンで彩られておりお洒落でありつつも落ち着いたものへ替えられていた。

 

 もっともリラックスを求めるならピンク系統、ストレスを感じにくいベージュ系統、作業を行うならばブラウン系統などがある。その内グリーン系統を選んだのはエイプリルの名前由来の新緑の春をイメージさせるものであり、エイプリルの意向が多分に含まれている。

 

 

「あとは小物とかだけど…、ドクターと要相談かな?」

「呼んだかい、エイプリル」

 

 

 独り言として呟いたエイプリルであったが、耳聡くドクターは反応した。

 

 

「ドクター。書類はいいの?」

「今ある分は終わらせたよ」

「さっすがドクター、早いね~」

「ここ最近調子が良くてね。エイプリルが模様替えしてくれたからだと思う」

 

 

 ありがとう、と面と向かって言われたエイプリルは気恥ずかしそうに視線をドクターから外した。

 そんなエイプリルの様子にドクターは微笑むと、一つを伸びをして席を立つ。

 

 

「十時ちょっと過ぎ、少し休憩入れようか」

「あたしお茶とお菓子持ってくるね!」

 

 

 ドクターからの提案に、これ幸いとエイプリルは小走りで準備しにいった。

 エイプリルの後姿を眺めながら、ドクターはソファに腰掛けた。ふわりと身を包むような柔らかさのあるソファ、これもエイプリルが用意したものである。

 ソファの柔らかさに身を解かされながら、ドクターは劇的に変わった室内に満足していた。たかが室内の装飾だと侮っていた昔の自分を殴りたいほどには。

 

 

「落ち着くなぁ…」

 

 

 あまりにも居心地が良く、意識せず口から零れた言葉。と、そこに運が良いのか悪いのか、エイプリルが戻ってきていた。

 ドクターのためにと、気合を入れて寛げる空間を作り上げてきたエイプリルにとって落ち着けると言われたのは十の感謝の言葉よりも嬉しいものであった。

 

 

「おまたせ」

「…あ、ああ。ありがとう」

 

 

 エイプリルは持って来たアイスハーブティーとソフトクッキーをテーブルへと並べる。その顔は少し赤くなっていた。

 対するドクターは過度に寛いでいたせいか、先ほど自分が口にした言葉にも気づいていない様子である。それがまたドクターの本心からの言葉であることが分かり、エイプリルは顔をさらに赤くした。

 

 

「ん、このハーブティーは初めてだ」

「レモンバーム、緊張をやわらげ心安らかな気分にするんだって」

「私にピッタリなハーブティーだ」

 

 

 ドクターはハーブティーを気に入り、クッキーと共に堪能する。その姿にエイプリルははにかみながらお茶を共にした。

 ティータイムを雑談を交えながら二人で楽しんでいると、ドクターが大きな欠伸をした。

 

 

「…少し、眠くなってきたな」

「もう、朝早くから始めるからだよ」

「ぐうの音も出ないな…」

 

 

 余程強い睡魔なのか、うつらうつらとドクターの頭が揺れ始めた。今にも寝てしまいそうなドクターに、エイプリルはとあることを思いついた。

 

 

「ねぇ、ドクター」

「…んぅ?」

「よかったらだけど、膝枕、してあげようか…?」

 

 

 言った瞬間、エイプリルの顔が一瞬で真っ赤になる。自分は何を言っているのかと、固まってしまう。

 だがドクターはそんなエイプリルにお構いなし、というより最早限界なのかエイプリルにもたれ掛かるようにして横になった。

 

 

「ぴゃ!?」

「枕…?すまない、貸して、くれ…」

 

 

 それだけ言うとドクターは寝息を立て始めた。

 変な悲鳴を上げたエイプリルは、たっぷり五分経ってから再起動した。気恥ずかしさはある、嬉しさもある、色々ごちゃごちゃになった脳内であったが安心しきったドクターの顔は嫌ではなかった。

 

 

「おやすみ、ドクター」

 

 

 

 

.




ちょっとして言葉遊び
「模様替え=グリーン系統=新緑の春=エイプリル」
「レモンバーム=思いやり」

【エイプリルは思いやりと共に】
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