途中、鳥の羽の種類がそこまでないことに気づいて頭抱えた…。
というか、今更ながらリーベリは頭以外に羽生えてるのだろうか。
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ロドス移動基地内にあるラウンジの一つにて、老齢のリーベリ、ヘラグが休息をとっていた。
少し前まで、戦闘オペレーターに手ほどきをしていたためかほんのり上気していた。とはいえ、教えられていた側は訓練室で死屍累々となっているのだが。
「ああ、いたいた。やぁ将軍」
「これはドクター。私をお探しだったのかね」
そこに茶封筒を抱えたドクターがやって来た。ヘラグを探していたようで、軽く手を上げながら近付く。
ヘラグもドクターに答えながら、姿勢を正した。
「訓練お疲れ様。これ最新のアザゼルに関する情報」
「ドクター…、前から言っているが呼び出しでも構わないのだが」
「いやいや、将軍には戦闘から参謀まで世話になってるんだからこれぐらいはしないとね」
ヘラグは書類が入った封筒を受け取りながら、苦笑を漏らした。ドクターは世話になっていると言っていたが、それはヘラグも同様である。むしろ衣食住及び崩壊し離散したアザゼルのメンバーの情報収集に再建の協力など、ヘラグの方こそ世話になっているといえる。
「とはいえ、目新しい情報はないんだけどねぇ」
「いや情報が得られなかったという情報が得られた。ありがとうドクター」
顔がバイザーで隠れて見えないが、すまなそうなドクターにヘラグは微笑みながらお礼を言う。
実際、ロドスからもたらされるアザゼルの情報は多く、それによって合流したメンバーも多く居る。むろん時が経れば有力な情報も少なくなるのは当然であった。
「それじゃあ将軍、私はこれで」
「情報ありがとう。今度、何かお礼でもしよう」
「気にしないでいいんだけど…。ま、期待して待ってるよ」
互いに微笑み合うとドクターはラウンジから去って行った。
ヘラグはドクターを見送ると、ソファに座り書類に目を通し始めた。ドクターが言っていた通り、目新しい情報はなかった。
書類を一通り読み終わる頃、ヘラグの居るラウンジへとやってくる人物がいた。小走りでやって来るのはヘラグの知っている顔、アザゼルのメンバーの一人であった。
「将軍~、ドクターが探してって、あら」
「おや、ドクターなら先ほど此処に来たよ」
「入れ違いになっちゃいましたか」
ヘラグが茶封筒を見せると、無駄足になってしまった彼は額に手を当てた。
「しかし、走ってきた割にドクターに遅れたな?」
「いやー…、基地内を覚え切れてなくて、迷ってしまって…」
「ロドスは広い、最近やって来た君なら仕方ないだろう」
苦笑いの彼に、ヘラグはフォローをする。
彼は大きくため息をつくと、ヘラグの持っている書類を見る。感心しつつも申し訳なさそうな顔をしながら呟いた。
「にしても、ドクターもよくやりますね。自腹切ってまで…ありがたいことですけど」
「何だって?」
「え?将軍、知らなかったんですか?」
彼の呟きにヘラグは驚き、そんなヘラグの反応に彼が驚いた。
「自分に接触したとき、『ロドスから』とは言わずに『ドクターから』って言われまして。気になって聞いてみたらドクター個人の依頼だって」
「まさか、ドクターがそこまで…」
ヘラグは手に持った書類をまじまじと見つめる。二週間に一度程得られる情報が、ロドスという組織からではなくドクター個人からのものであるとは。
「もっとも、動かしてる人員はロドス外部協力者でしたしロドスの意向も多分に含まれているでしょうけど」
「ロドスの意向が含まれていようがいまいが、ドクター個人で動いてくれていることに違いはない」
「ですな」
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「さて、知ってしまったからにはしっかりとしたお礼の品を用意せねば」
自室へと戻ったヘラグは、顎に手を添えながら思案する。まさあアザゼルの捜索にドクター個人が動いてるとは思ってもおらず、先に自身が言ったお礼に一層の気合が入る。とはいえ、既に贈る物は決めている。今ヘラグが片手で遊んでいる、自身の羽であった。
リーベリ族には信頼の意味を込めて、己の羽を渡す習慣がある。もっとも信頼以外にも様々な思いを込める場合もあるが。
「そのまま贈るというのも味気ない…」
無加工のままでも問題はないのだが、ヘラグは何か一手間加えたい様子。と言っても羽であるため出来ることは限られる。
お手軽なのはアクセサリー等であるが、ドクターは後生大事に引き出しに入れたままにしそうである。そうなると普段使いできる小物か飾っておけるインテリアが望ましい。
「何かあればいいのだが」
ヘラグは参考になるものがないか、部屋の中を見渡すとあるものに目が留まった。
それを手に取り様々な角度から観察する。
「ふむ、これなら」
先の条件全てに該当し、かつこれ以上のものはないと確信したヘラグは早速行動を開始した。
「資料室に工作室、あとはクロージャ嬢に頼むしかあるまい」
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ヘラグが行動を始めて四日後、準備が終わり後は渡すだけになったヘラグはドクターの執務室前へと来ていた。
丁寧に装丁された小箱を手に、ヘラグは扉をノックする。
「ドクター、少しいいだろうか?」
「やぁ将軍。構わないけど、どうしたんだい?」
部屋の中には書類の山があり、忙殺されていたドクターが居た。ヘラグが入ってきたのを確認すると、手に持っていたペンを机に置いて立ち上がった。
「いやなに、この前の約束を果たそうとね」
「約束…。あ、お礼をするっていうやつ?」
「無論だとも」
「別に構わなかったんだけどな~」
口では遠慮しているが、やはり贈り物というのは嬉しいのかドクターの声は上ずっていた。ヘラグもドクターの気持ちに気づいているのか、口元が緩んだ。
受け取ってくれることが分かると、ヘラグはドクターに近付き小箱を差し出した。
「気に入ってもらえるか分からないが、受け取ってくれるかな?」
「どんな物でも嬉しいさ」
ワクワクが抑えきれないのか、ドクターはそわそわしながらも装丁された小箱を受け取った。
「ここで開けても?」
「勿論、構わないさ」
ドクターが装丁を解きながら長方形の小箱を開けると、中には小さな小瓶と二枚の羽根が入っていた。
羽はそれぞれの羽先が黄色と青色をしており、軸の先端は加工されておりニブが取り付けられていた。
「これは、羽ペンかい?それにこの色合い…」
「想像の通り、私の羽を用いたものだとも」
「おぉ…」
感嘆の声を上げながらドクターは慎重に羽ペンを手に取った。大振りな羽は持ちやすく、鮮やかな色合いは目を楽しませてくれる一品であった。
「貴重な物、ありがとう将軍」
「気に入ってもらえて何よりだよ」
「でも貴重すぎて使えないな~これは」
「いやいや、使ってくれたまえドクター。そのために羽ペンにしたのだから」
羽ペンを壊れ物のように扱うドクターに、ヘラグは苦笑をする。
「付属にインクと換えのニブも入れておいたから、是非使ってくれ」
「将軍がそこまで言うなら…。大切な人宛のときに使わせて貰うよ」
「普段使いでも構わないのだがね」
ある種の一目ぼれとでも言おうか、ドクターの入れ込み具合に嬉しいやら普段使いしなさそうなことに悲しいやら複雑なヘラグであった。
「そうだ」
とそこに、ドクターが何か思いついたのか、白紙の紙を取り出すと小瓶を開け羽ペンを手に取り何やら書き始めた。
羽ペンが扱い易く、すらすらと書けることに驚くドクター。書くことは多くないのか、数十秒もすると出来上がりそれをヘラグへと渡した。
受け取ったヘラグが紙に目を落とすとそこには。
『素敵な贈り物をありがとう ドクターより』
と書かれてあった。
お礼のつもりで贈り物をしたはずなのに、逆に贈られたしまったヘラグは破顔した。
「どういたしまして、ドクター」
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