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恭啓
ケルシーへ、今までも楽しかったけど最近はとっても楽しいです。
レッドが触りにいっても大丈夫な狼と会えたから、です。耳も尻尾もモフモフしても、怒りません。幸せです。
だけど、もう一人の狼が触らせてくれません。相方?相棒?と呼び合っていたので、大丈夫だと思ったのに。
でも、相方?が協力してくれるので触れるようになるかもしれません。とっても楽しみです。
ケルシーからなにかアドバイス、ある?
敬白
○年○月○日
レッド
Dr.ケルシー様
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読了した手紙を綺麗に畳み、机の上へと置く。そして自身の膝の上に顎を乗せているレッドを優しく撫でる。
ケルシーは優しく微笑みながら撫でると、レッドの尻尾がゆらゆらと揺れ始めた。
「うまく、書けた?」
「ああ、始めてにしては上出来だ」
「ほんと!?」
実際には手紙としてはおかしい部分は多々ある上に、字も少し崩れている。けれども形式としてはそうあろうとする努力が見られるためにケルシーは手放しでレッドを褒めた。
褒められたレッドは、ニパーと輝くような笑顔を見せた。尻尾も先ほどより勢いがよく、微風が感じられるほどであった。
「文字も大分綺麗に書けるようになったし、添削もしてみようか」
「てんさく?」
「もっと上手に手紙を書くお勉強のことだ」
「レッド、頑張る」
立ち上がりむふーと握りこぶしを作りながらやる気を満ち溢れさせる。そんなレッドにケルシーは良い方向に向かっていると、ペンギン急便派遣員に心のうちで感謝した。
やる気に満ち満ちているレッドだが、思い出したかのようにケルシーに詰め寄った。
「ケルシー、ケルシー。銀色の狼、どうしたらいい?」
「銀色、ラップランドか。そうだなこういうのはどうだろう」
Dr.ケルシーによる
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それから数日が経ち、知恵を授けられたレッドは実行していた。が。
「...」
「...」
「ジー...」
物陰からラップランドを見つめているだけなのだが。
ただ多少効果はあったのか、初日は逃げていたラップランドが逃げなくはなった程度だけれども。それでも一歩前進とばかりにレッドは継続している。
「...なぁ」
「私は知りませんよ?」
どういうことなのかと、聞きたそうに相方の袖口を引っ張るラップランド。当の相方も把握していないため、そっけなく返されてしまう。
見られているためか、背筋がむず痒くなっているのか時折身震いをしている。不安そうに尻尾も垂れ下がっておりプルプル震えている。股の間に挟まなくなったのも、進歩なのかもしれない。
暫く無視するものの、レッドの視線ビームに耐えられずにチラっと横目で確認すると。キラキラとした視線と重なった。
「っっ!何なんだ、本当に!」
「...ただ仲良くしたいだけじゃないですかね」
項垂れるラップランドに相方が鋭い指摘をするが、耳に入っていない様子。
流石にこれ以上はラップランドのストレスによって物理的な二次被害が出ると感じた相方が、救いの手を差し出した。
「ほら、行きますよ」
「どこに?」
「レッドさんの元に」
「い・や・だ!」
ラップランドにとっての救いの手とはならなかったようだが。
「何でそうなるんだよ!?」
「いえ、レッドさんが満足してくれれば止めてくれるのではと思いまして」
「それは、そうかもしれないけどさ...」
引きつった顔をしつつも納得できる部分が多いためか、語尾が弱くなる。相方とレッドを交互に見やりつつ渋面を作る。
と、ここで何かを察したレッドがガザゴソと行動を起こし始めた。ラップランドは背を向けているため分からなかったが、対面している相方にはバッチリと視界に入る。
「レッドさん?」
「赤いの?」
疑問に思い口にすると、確かめるように首だけ回して振り向いた。
レッドの手には白い物体が握られており、それを優しく飛ばす。ふわりふわりと飛んでくるそれは紙ヒコーキであり、ラップランドへと向かっていった。
薄れていたとはいえ、警戒していたラップランドは手が刀に伸びる。握り締め、切り上げようとした瞬間に相方に止められる。
「流石にそれはマズイです...!」
「うぐっ」
過剰反応な自覚があるのか、大人しく刀から手を離すと飛んできた紙ヒコーキをキャッチした。
真っ白な紙ヒコーキを広げると、多数の折り目がついた紙にこう書かれていた。
『仲良くしたいです』
決して上手とは言えず、少し崩れた字であったが込められたモノが分かるものであった。
「あら、いじらしいですね」
「~~っ!分かったよ!やればいいんだろ!?」
受け取った手紙と不安そうな表情のレッド、ラップランドもさすがに無碍にはできずやけくそ気味に叫ぶ。
といっても畏怖が拭えないのか、相方を掴んでレッドへと近づいていくのだが。
一歩一歩近づいていくラップランドに、徐々に表情を輝かせるレッド。対象的に相方の腕を掴んだ手には力が入り、尻尾も股の間へと入っていく。
そこまで離れていたわけでもない距離を、多くの時間を使い手を伸ばせば届くところまで近づいた。その頃には満面の笑みのレッドと顔面蒼白のラップランドと対象になった。
だがここまで近づいたはいいが、この後どうすればいいのか迷ってしまう。正面に捉えているだけで湧き上がる恐怖心に支配され、思考力が落ちているためだ。
それに気づいた相方はそっと耳打ちをした。
「手をだして」
「...?」
「握手でいいんですよ」
相方はラップランドの右手を優しく掴み、持ち上げる。
「あ、握手だよッ!ほらッ!」
「!、よろしく!」
ぷるぷる震える差し出された手に、首を傾げるレッドだがラップランドの裏返った声に気がつく。
花丸満点の笑顔で、ガシリッ!と硬い握手を交わした。
「あ、あ...」
「あー...」
ガクガクと壊れた機械のようにラップランドが痙攣し始めた。この反応に相方は掴まれていた腕を無理やり外した。
「した!!握手したからなっ!?これで最後だから覚えておけよぉおおおーーー....」
レッドの手を振り払うと、負け犬の遠吠えをかまして走り去ってしまった。これにはやってしまったと頭を抱える相方。
「すみません、レッドさん。彼女も頑張ったんですけど...レッドさん?」
「...触れた」
弁明と慰めようとレッドへと話しかけるが、レッドは握手を交わした手を見つめ残った感触を確かめるように閉じたり開いたりしていた。
その顔には悲観なものはなく、むしろ嬉しそうに見える。
「ケルシーー!触れたっ、触れたよー!!!」
話しかけてきた相方には目もくれず、ケルシーの名前を叫びながらどこかへ走り去ってしまった。
「まぁ、よかったんでしょうかね...?」
一人ポツンと残された相方は、悪くない方向に向かったことに胸を撫で下ろした。
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一応一連のシリーズはここまで、やる気が出れば続き書くかも
あと『ウォッカ・アイズバーグ』のあとがきにカクテル言葉を途中で追加しました。